装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

706 見えなきゃ誰がやったかわからない

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「ロイ様、首尾は?」

 甲板に立つ俺は、もう豆粒……いや、黒ごまのようになってしまったデプリ王都を見下ろしながら尋ねる。

「良好だ、盟主よ」

「よし」

 現在、高度何メートルかもうわからんところまで俺たちは上昇していた。
 空にこんな物体があるなんて、地上の連中は夢にも思わない。
 適当に、あっさり考えついた作戦はこうである。

 まず、ロイ様の仲良し……じゃなかった王室諸君、そしてキングさんが地上で待機だ。
 その間に俺とロイ様は飛空戦を限界高度まで上げて、マップを見ながら待機。
 教団の本部である大聖堂、それがどこにあるかはキングさんの位置で一目瞭然。

 そう……何をするかといえば、超高度からのドラグーンを用いた一斉掃射だった。
 魔力収束砲を真下に向けて、フェアリーの分も合わせて一気に撃ち下ろす。
 俺の姿は、超高度にある分、確認不可能だ。
 どうにでも良い訳ができるし、一般向けの飛空船はこの高さまで飛べない仕様。

 アリバイは完璧だな!
 こうして待機している間、王室諸君は無関係な人が寄り付かないように警備を行う。
 離れていてもロイ様と意思疎通できる王室諸君は良い連絡係ってもんだ。
 ちなみに、教団関係者でも聖堂内にいる奴らは基本的には殺さない方針である。

 向かってきた神官兵士に関しては、殲滅してしまったのだけど。
 それはもう、その場で殺しに来たのだから仕方なかったということで。

 俺の頭上にあるお天道様よ。
 とりあえず、その辺の流儀はしっかり尽くしたのだから、許しておくれ。

「それにしても、盟主よ」

「ん?」

「何とも美しい景色だろうか」

「ああ……」

 飛空船から少し湾曲した世界を一望し、何ともいえない感動を覚えるロイ様。
 ここまで来ると、大地と空の境目というか。
 空と宇宙の境目のようなものが見え出して来る。
 雲が海のようになっている場所もあって、この世界は一つの星なんだなと理解した。

 ファンタジーの世界では、よくあるような世界地図の先が奈落的な状況ではない。
 俺が元住んでいた地球のように、この異世界も丸い一つの星のようだ。
 そして宇宙があって、星が存在する。

 どことなくSFチックな感動があるのだが、舞台は下だ。
 俺は宇宙進出なんてするつもりも熱意も毛頭ない。

「みんなにも見せたかったな、この風景」

「盟主の目を通して、図鑑の中の者もしっかり見ているだろう」

 ロイ様はそう言う。
 そっか、そうだよな。

 ポチやイグニールにも見せたいのだけど、無事に帰ってきたらで良いか。
 そうだ、酸素的な部分で大丈夫なのかって部分があるけど。
 そういうダメージ無効化する装備を身につけていたら、俺でも平気だ。

 割と、宇宙空間でも生存できそうな気がする……。
 いや、宇宙に行く気はさらさらないけどね?
 生物と鉱石の狭間を行き交う何らかの生命体みたいになったら困る。

「感動に浸るのは良いけど、そろそろだろ。ほら、マップ見せろよ」

「うん」

 ジュニアに急かされてマップを大きく表示する。
 周りに被害を与えず、下にある大聖堂に届かせるには、かなり精密なコントロールを要するのだ。
 その辺はジュニアに操船を任せて、そして良きタイミングで発射してもらうだけである。

「ロイ、もう一度状況報告」

「王の中の王にボコボコにされたお前が、私を呼び捨てにするな」

「ま、まだ負けてねえ! こっちの準備が整ってなかったんだ!」

「ふん、減らず口だな、相変わらず」

「ぐぬぬぬ、次は絶対に勝つから覚えてろよ!」

 ジュニア、調子こいた結果、やっぱりキングさんにボコられてたっぽい。
 俺が図鑑を統べる的なことを言っておきながら、やはりキングさんには敵わない。

「つーか、早く報告!」

「よかろう、周りの者たちはそれとなく強制退去を促した」

「ロイ様、素性は知られてないよな?」

 念のために聞いておくと、ロイ様は自信満々で頷いていた。

「無論、抜かりはない。大聖堂から謎の洪水が発生したような状況を作り出したからな」

「洪水て……」

「スライムだとバレるわけにはいかんのだろう? だったら水浸しにする方が良い」

 家の中で煙を炊けば、虫が出て行くように。
 大聖堂で謎の洪水という超常現象を引き起こすことで、人を締め出したそうだ。

「裁きの前に、一度水で流される。なかなか乙なやり方だろう?」

「まあね」

 創世記の大洪水のような演出は、まさに宗教チックとも言えるだろう。
 残念ながら教団の奴らを乗せる方舟は存在しないけどな。
 いきなり大聖堂が水浸しになり、そして全ての人を排除し、光の裁きが下る。
 この状況を信者の方々はどう思うだろうか、気になるところだった。

「ジュニア、やり終えたら下に行って、適当に演技するのを忘れるなよ」

「わかってるって」

「大丈夫? 練習しとけ? 俺が見てやるから」

「父親面すんじゃねーよ!」

 できるかな、ジュニア。
 なんだかジュノーの気持ちがわからんでもなかった。

 攻撃を行った後は、ジュニアを市民に紛れ込ませて言わせる。
 ──ああ、神の裁きが下ったんだ!
 とか何とか、適当なことをね。

 簡単な意識誘導だ。
 一番最初の言葉を聞いて、状況を見て、人は割と勘違いする。
 それも衝撃的な光景を前にすれば、そうとしか思えなくなる。

「よし、準備は上々。一丁やってやりますか」

 教団の勢力を黙らせるには、このやり方が現状一番だ。
 わざわざ敵を作ることもあるまい。

「む? 盟主よ、ちょっと待て」

「え? どうしたのロイ様」

 そろそろかってところで、ロイ様が言う。

「王が、何だかとんでもない魔力を感じる彫像を発見したそうだ」

「ふむ……」

「聖堂にある盟主の作った装備の超絶劣化版とは比べものにならない類の代物らしい」

「なるほど、とりあえず回収だけしておいてもらえる? なんか高価そうだしな」

「了解、伝えておく」

「頼むね」

 言い忘れていたけど、王室諸君と一緒に大聖堂にいるキングさんの役目は受け皿。
 魔力収束砲が万が一にもずれてはいけないと、周りに被害があってはいけないと。
 下から大聖堂を囲った水柱を全力展開してもらう。
 水のブラインドのような形となり、気がつけば大聖堂がないってのがシナリオだ。

「よし、盟主よ。回収したとの連絡が入った。いつでも良いとのことだ」

「了解。じゃ、ジュニア任せたぞ」

「まったく、ダンジョンコア使いが荒い奴だな、お前は……」

「それを言うなら人使いだぞ? 勉強ちゃんとしとけ?」

「だから、父親面した雰囲気で言うのやめろよ! それに俺はダンジョンコア!」

 いや、俺はダンジョンコアでも魔物でも、身内のことは一匹二匹ではなく一人二人と数えるよ。
 だって、それが対等な家族ってもんなんだから。
 それを告げると、ジュニアは少しだけ笑った後、迷わず魔力収束砲を発射した。





=====
水と光のドッキング。
一歩間違えればキングさんが蒸発しかねないですが、無敵のおかげで大丈夫です。
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