装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

708 ユノ・レプリカ

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「ふむ、このソファーも中々どうして……む、──どうだった、盟主よ」

 飛空船に戻るとソファーに座ってだらぁっとしていたロイ様が、キリッと表情を変えて聞く。

「良い感じだった。あとそのソファー、良いよね」

「いやソファーの話は良い、忘れてくれ盟主よ」

 やや恥ずかしそうにしているが、キャラじゃないところを見られてしまったからだろうか。
 俺は別に気にしないんだけどな。
 ちなみにスライムがだらしなく座るってのは、なんだか溶けたアイスみたいな感じである。

「よし、みんなを戻すか」

 キングさんとロイ様を一旦図鑑に戻して、地上にいた奴らを全員帰還させる。
 そして再召喚。
 報告のために、ロイ様にはキングさんを話せる様にしてもらう。

「お疲れ様です」

「我にとって、あのくらいどうってことない」

 初撃以外は全て無敵の効果で何とかなるから、多少体が蒸発したくらいで済んだらしい。
 無傷、とは言えないがグレイト状態のキングさんなら余裕で無敵中に回避できるそうだ。
 相変わらず、規格外過ぎる。

「王よ、報告にあった桁違いの魔力を持つ彫像はどうした?」

「心配するな、もちろん保持してある」

 俺を挟んで話す、巨大で無敵のスライム二人。
 顔の圧力がやばい。
 こればっかりは気を張ってないと未だに慣れないのだ。

「主よ、これを今すぐ確認するべきだ」

「はいはい」

 キングさんから、すごい魔力を持っている彫像を受け取った。
 王冠の中にしまってあった小さな女神像。
 精巧な作りで何とも美しいが、メイドゴレオの彫刻の方が俺は好みだ。

「主よ、この女神像に関してなのだが、少しだけ不可解な点がある」

「不可解な点?」

 キングさんの話を聞く。

「大聖堂に鎮座している巨大な石像は、剣を空に向かって掲げた男の姿をしたものだった」

「なるほど、教団の崇拝する神って男の神様だってことね」

「その通り。そしてこの女神像があったのは、大聖堂の地下に存在する宝物庫の様な場所」

 いかにも怪しそうな地下への階段があって、流体ボディで鍵穴から侵入。
 すると、ポツンと一つだけ女神像が鎮座していたらしい。

「感じる魔力、そしていかにも過ぎて、これだけ回収してきた」

 他にも色々と聖人用の装備とか。
 神官兵団用の装備、防御用アイテム等、色々あったらしいが、俺からすればゴミ。
 全部が全部、魔力収束砲によって消滅して戦力もかなりダウンである。

 地上に降りて三文芝居をした時、ちょろっと確認したが……。
 あの場所はとんでもない大穴になっていて、やばかった。
 威力全開の魔力収束砲、まさに上位ドラゴン並みの一撃。
 ドラグーンという名前は伊達ではないと確信した。

「ちょっと見るよ」

「うむ」

 さっそく女神像を確認する。



【ユノ・レプリカ】
女神の姿を象った像。
神水晶で出来ている。



「……ユノ・レプリカ」

「む?」

「この女神像のアイテム名が、それだよ。女神の名前がユノなんじゃないかな?」

「なるほど……他には何かないのか?」

「いいや、これだけ。女神の姿を象った像で、神水晶で出来ているとしか」

 分解したら、神水晶が取れそうだ。
 神水晶、全く聞いたことがない素材である。
 俺の職人技能のレシピにも。
 必要素材としてこの水晶の名前は載っていない。
 新素材来たー!

「主よ、分解はするな。何か特別な意味を持つものかもしれないからな」

「ぐっ」

 顔に出ていたらしく、キングさんにそう言われてしまった。
 確かに、これを分解したらバチが当たりそうなので止めておく。
 多分分解はできると思うけど、分解したらどうなるかわからない。
 それくらい、キングさん的にはとんでもない魔力を持っているそうだ。

「しかし、何でまたこんなものが地下にあったんだろう?」

「それは我にもわからない」

 だが、とキングさんは続ける。

「あの教団の考えることだから、勇者の様な存在を神と崇めるために取り替えたのだろう」

「やりそうだ……」

 なんだかんだ勇者勇者勇者だからな、この世界の人たちって。
 それだけ、人と魔族の戦いが熾烈だったのかもしれない。

 そもそも。
 俺は神託によって勇者召喚をすることが決まった的なことしか最初に聞いていない。
 本当に神の意志だったのか、神の意志だったことにしたのかは、謎だったのだ。

 勇者が特別な力を持っていることはわかるけど。
 言い方を変えればただの人型戦略兵器みたいな感じだからなあ……。

「まあ、とりあえず厳重に保管しとくよ」

「うむ、それが良い」

 キングさんはキッとジュニアに目を向けながら、続ける。

「ジュニア。インベントリを共有しているからと、むやみに手を出すなよ」

「……わかってるよ」

 睨まれて渋い顔をするジュニアは言う。

「でも、なんかいい感じに華やかだからダンジョンの飾りにしていい?」

「ダメだ、触るな。お前はすぐ調子にのるからな」

「うぐ……パ、パパ~!」

 何とも愛くるしい表情で俺を頼ってくるジュニアだった。
 くう、ここはわがままを聞いてやりたいが……。
 俺のパパみたいな存在がキングさんだからなあ……。
 ファミリーカースト的には最頂点なのである。

「おじいちゃんの言うことを聞きなさい!」

 断腸の思いで、キングさんを支持。

「おじいちゃんとか、こんな流体野郎の孫なわけねーだろ! もう寝る! バカ死ね!」

「こら! そんな口の聞き方は教えてないぞ!」

 くそ、行ってしまった。
 まったく誰に似たんだかね!

「……おい主よ」

 そんな俺とジュニアのやり取りを見ていたキングさんがヌッと顔を寄せる。
 怖い。

「えっと、なんでしょう……?」

「この後イグニールを取り戻しに行くのだろう?」

「はい……そっすね……」

「ふざけている場合ではないと思うのだが、そこの所はわきまえているか?」

「は、はい。わきまえてます! もう全力で連れ戻します! はい!」

「良いだろう。腑抜けるな。男が女を連れ戻す。それがどういう意味か、しっかり考えておけ」

「あっはい……」

 そうだ、気を引き締めていかなきゃだ。
 イグナイト家の屋敷は、この王都に存在する。
 おそらく、この騒ぎをイグニールも知り、俺が来たことに感づいているはずだ。

 待っててくれ、イグニール。
 今連れ戻しに行くからな!

「それと話は変わるが、誰がおじいちゃんだと? 例え主とて、その発言は看過できん」

「えっ?」

「説教だ。甲板にこい」

「ちょ──」

 その後、俺はキングさんによって説教されました。
 主に、体に。


=====
ロイ様「実家に帰った娘を連れ戻しに行くって、盟主なかなかやるやつだ」
諸君ら『つまり、駆け落ちだ!』
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