装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

711 強い※イグニール視点


 解放されていたイグニスの魔力を、私のが包み込み押し返す。
 たとえ着替えてフル装備じゃないとしても、下着とアクセサリーはトウジのものだ。
 国宝指定でもおかしくないってくらいの性能の前に、この男がいくら歴戦でも霞む。

「この、魔力は……バ、バカな……」

「あのね、一つ言っておくけど」

 押し返されて尻餅をついたイグニスを見下ろしながら言った。

「私が抵抗せずに戻って来たのは、色々と思うところがあったからよ」

 何か事情があって、頼るべきところが私しかない。
 そんな状況だと言うのならば。
 形はどうであれ、解決に向けて動くつもりだった。

 それくらいの義理立をするのも、今まで自由にして来たお礼である。
 一応、まだ受け止めきれてないけど、貴族の出ならばそれは責務だ。

「もっとも、結婚はお断り、子供を作るのもお断りだけど」

 あくまで名前を貸す程度である。
 誰か王家とか他の有名どころを婚約者に立てて、そっちで上手くやって欲しい。
 私の立場がある程度なものになれば、敵は減るんじゃないかと少し考えた。

「でも、全部やめておく。権力のために子供を死なす家なんて潰れてしまえ」

 訓練中に焼け死んだ、その一言が、こいつが子殺しだと言うことを意味していた。
 最初に魔法は誰に教わる?
 私は母。
 もしかしたら先生をつけていたのかもしれないけど……普通はそこまでしない。

 この男の恐ろしいほどまでの殺気がこもった視線とか。
 さっきの話し方を聞いて、確信した。

「……許せんのだ、その魔力が」

 尻餅をついていたイグニスは、立ち上がりながら抵抗する。

「くっ、さすがは精霊を力を扱えた姉の娘だ……」

 とイグニスは言った。

「精霊の力? そんなものがなくとも、今はこんなもんよ」

 形見の杖の力は、確かに大きい。
 でも、今の魔力は単純にレベルが上がったことによるINTの上昇。
 そしてトウジの装備によるステータス強化が大きな要素なのだ。

 だからこそ思う。
 そんな杖に頼るよりも、レベルを上げて基礎ステータスを伸ばすべき。
 優れた装備に頼ることは、一般的だけど……。
 世の中に溢れた魔装備の類は、こうした個人の基礎能力をもとにする。

 火を精密に扱えるとか、親和性が高いとか、そんな才能もあるけど。
 結局は、地道に練習してレベルが上がる時に伸びるINTの量を増やす。
 それが一番重要なことなのだ。

「平和な時代なのに、個での強さを息子に求めてどうするのよ」

 大きな力を持ったところで、目立ったところで。
 敵が増えて二進も三進もいかなくなる。

 苔の生えたゴーレムも言っていた。
 強大な力は、災いをもたらる脅威になるとかなんとか……。
 この国が召喚した勇者一行が、そのもっともたるたとえね。

「そんなものに頼らないで欲しいから、母は家を出たんじゃないの?」

 予測だが、なんとなくそう思った。
 あくまで勘だけど、私もきっとそうするだろう。

「お前に私の何がわかる!」

 私の言葉が逆鱗に触れたのか、イグニスは叫び出した。

「認める、お前は、そしてお前の母親は天才だ」

「……普通よ」

「いいや普通ではない!」

 イグニスは続ける。

「イグナイト家の者が持っているものを全て持っている奴に言われたくないのだ!」

 そんなこと言われても、イグナイト家とか知らないんだけど。
 ここに連れてこられる前に、言われただけだから。

「知ってるか、この国の状況を。お前はずっと他国にいたから知らんだろうな」

「いきなりなんの話よ」

「王がそそのかされ勝手に指示した勇者召喚から、この国は徐々に他国から見放されて傾きつつある」

「ああ、その話」

 トウジも散々苦労させられたわよね、とばっちり。
 傾きつつあるって、求められた勇者召喚じゃないから、因果応報よ。

「今は頼みの綱だった勇者も失い、デプリは新たな英雄を各貴族から出そうと躍起になっている」

「それで私に目をつけたわけ?」

「その昔、賢者を身請けし、魔法を教え、見返りとして精霊の力を承ったイグナイト家には大きな期待がかけられている」

「ふーん……だからって、頼み方が悪いじゃないの?」

 なんとなく、トウジの真似して嫌味を言ってみた。
 ちょっとだけ口喧嘩に強くなれた気がする。
 前の私って、こういう時はヒステリックに叫ぶだけだったから……。
 あっ、なんか目の前の男とちょっと似てる……。
 本当に血縁者なんだなって、ちょっとだけ自己嫌悪。

「その力は本物だ。杖がなくとも、今のお前は精霊のごとき火力を持つ!」

「で?」

「……協力しろ、いや、するべきだ。お前にはイグナイト家の血が入っているのだろう! 王家の血も!」

「全力で、──お断りします」

 跡目がいないなら、適当に名前だけは貸すつもりだったけど。
 この国に与するのは嫌だ。
 それは、彼の敵になってしまうことをつげているのだから。
 その辺の最後の一線を越えるつもりは毛頭ない。

「話は済んだ?」

 そんな理由で息子を訓練中に潰すような奴と家には用はない。
 ここできっちり蹴りをつけるために、全力で魔法の詠唱を開始すると……。

「ま、待ってください!」

 小さな子供が部屋に入ってきた。
 顔の半分が焼けただれた、小さな男の子である。
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