422 / 650
本編
722 筋は通したい
しおりを挟む「なんだあいつ」
飛び去ったジュノーを見送りつつそう零すと、イグニールが呟いた。
「まあ、立場が違えば私もそうなってたかもしれないわね」
「立場って……ダンジョンコアだから、俺はあいつに恋愛感情なんてないぞ」
「そうだけど、そんな問題じゃないわよね?」
そんな問題である。
俺は人間、そしてジュノーはダンジョンコア。
大きな隔たりがある分、ごっこくらいならば良い。
「なんにせよ、これでイグニールとの関係を見直すことになるのは嫌だ」
「……まあ」
そんなつもりはない、という彼女の反応だけど。
心の中には何か煮え切らないものがあるようだった。
俺が、少し浮かれ過ぎてたかもしれない。
確かにこの環境の変化が怖かった部分はある。
でも、曲げられない思いだってあるだろう。
昨日の今日で反故にするつもりは絶対ない。
いや今後も俺はイグニールを裏切ることはない。
「まあいい、とりあえず探しに行ってくる」
立ち上がって、ジュノーを追うことにした。
マップを確認すればどこに行ったかなんでわかる。
「行ってどうするのよ」
「甘いもの食べさせておけば大丈夫だろ」
「食べさせておけばって……トウジ……」
俺の発言になんだか呆れた表情をするイグニール。
だが、俺は彼女の目をまっすぐ見ながら言う。
「いや、ジュノーとの約束事はパンケーキだよ」
それ以上でもそれ以下でもない。
全ての始まりはそこ。
「あいつが何を言ってもな、家族ごっこにしないのは確かだよ」
恋心はないとしても、家族愛は感じている。
今まで一緒に冒険してきた仲間なんだから。
夫婦ごっこも全部あいつの中では本気だったのかもしれない。
だが、俺には複数人を本気で好きでいることなんてできない。
そんなに器用な人間じゃないのだ。
その辺は、はっきりとさせておく必要があるだろう。
良い機会だから、少し話をしようと思った。
ここでお互い道を別にする展開になったとしても。
本気で思ってるなら、俺はそれを飲む覚悟をする。
筋は通しておくべきだもんな、なんにせよ。
「なんだか気まずい話ですぞ」
「骨、操を立てるってのはそう言うことだろ」
「日本男児ですぞ~!」
ちなみに、と骨は言う。
「あっちでもこっちでも、別に罪ではないですけどね?」
「たとえ罪じゃないとしても、違うだろ」
貴族階級は認められてるとか、そんな話でもないだろ。
俺は平気で嘘をつくし、人を騙すし、本当のことを喋らない。
だからこそ、身内には偽りなくいたいと言う思いもある。
とかなんとか、綺麗事言って。
実はマイヤーに俺の出自を詳しく話してないんだけどな。
帰ったら報告がてら話すか。
色々と話すことがある中に混ぜてぽろっと伝えよう。
重っ苦しい雰囲気にするのは、正直好きじゃないんだ。
「そのくらいの筋は通すんだよ」
スローフから大切にしろと言われたが、してる。
でもそれは一人の男と女の話ではない。
家族と同じような意味合いでってことなんだ。
「だから、誰がなんて言おうと俺の気持ちは変わらん」
「誰も何も言ってないですぞ。何と戦ってるんですぞ」
「骨、後で、バラバラにする」
「おー怖っ」
「つーか、あいつはアホだけど、バカじゃない」
自分で自分の気持ちの整理とか、できるはずだ。
あいつの気持ちにまで、俺がズカズカと入れるわけがない。
入るつもりもない。
ただ伝えるのは、パンケーキ食べるかとか。
飯の時間だ、くらいである。
「じゃ、行ってくる」
「あんまり私が口出しできることじゃないから、任せた」
任された、と言えるほど俺も自信があるわけでもない。
だが、俺に思うところがあるなら言えば良いさ。
はあ……。
これ、もしかしたらマイヤーとも同じ展開あるんじゃないだろうなあ……。
なんか自分の人生じゃないみたいだぞ、これ。
なんとなく、モテ男って憧れじみたものがあったけど。
実際はこんな感じなんだな、としみじみ思う。
多分だけど、なあなあで済ませてきたんだろう。
それこそ罪じゃねーの?
俺はさすがにそんなことはできませんよ……。
71
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。