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本編
724 落とし前・前
さて、少しだけ話は変わるが、もう一つだけやっておきたいことがあった。
教団に関しては、神官兵どもは大量処分。
聖人も一人しかいないなら、また出てくるまでに時間がかかるだろう。
教皇の倅も事実上の行方不明扱いということで、大きな戦力ダウンだ。
王家に関しては、これからゆっくりゆっくり首を絞めて行くとして……。
「すいませんちょっとお聞きしたいことがあるのですが」
王都の冒険者ギルドに尋ねる。
「なんでしょう?」
「対盗賊狩り専門クラン〈百頭蛇〉のクランってどちらにあるかわかります?」
報復、というご大層な代物ではない。
だが落とし前はつけておかないといけないのである。
頼まれたから、依頼されたから。
いや、そんな理由はこっちは知らない。
ただ関係者という理由で十分なのだ。
「えーと、〈百頭蛇〉のクランハウスはタブーの方にございますね」
「なるほど」
「でも、今は未踏挑戦の時期ですから、依頼は基本的に受け付けてないと思いますが」
まあ、確かにそうだろうな。
一攫千金の中でも弩級の未踏挑戦。
全ての望みや威信をかけて冒険者は挑戦する。
色々忙し過ぎて忘れていた。
つーか、泡沫の浄水自体はすでに発見している。
故に、終わらせようと思えば終わらせることができるのだけど。
ハイオークとかが関わってくる浄水だから、知らない振りをしておく。
永遠に探しとけよ、みんな。
デプリ主催で金も多少出してるってなら、3年くらい立って浄水持って行く。
そして、かかった経費3年分を全部請求してやるんだ。
「タブーの方ですか、了解しました」
それだけ告げて、俺は王都の冒険者ギルドを後にした。
地味に、この冒険者ギルドは1年ぶりである。
正面にある料理屋は未だに営業中で、なんだか懐かしかった。
「こっからちょっとずつ進んで行ったんだよなあ……」
「アォン?」
ポチの手を引いて歩きながら、ホロリとそんな言葉が漏れた。
気がつけば、怒涛の一年だったと思える。
俺は、今まで経験したこのない一年間をようやく終えたのだ。
「いや、一年でこれは……正直目を疑う結果だよな?」
「ォン」
頷くポチ。
運命論を信じるか信じないか、そんな話はおいといて。
少しばかり早過ぎるのではないかと怖くなった。
太く短く。
そんな言葉が似合うような、人生になっている気がする。
し、死亡フラグだ……。
「ォン!」
「あいたっ……まあネガティブなことを考えても仕方ないな」
「ワフ」
人生まだまだこれからなんだから、希望を胸に邁進しよう。
そんな訳で、街を出てワシタカくんに乗ってタブーに向かった。
後顧の憂いを断つ訳ではない、単純に仕返しするだけだ。
◆
もらった情報通りに、タブーに存在する〈百頭蛇〉のクランハウスにやってきた。
ギルド職員が言っていたように、未踏挑戦で忙しいのは理解できる。
だが、おそらくハウザーたちはクランハウスにいるだろうと予想していた。
あいつらは、未踏挑戦なんかに興味なかっただろうからである。
個人的な依頼をさっさと済ませて、悠々自適の生活だ。
教団のバカ息子は、羽振りだけは良かったからね。
「すいませーん、ハウザーさんいますかー?」
クランハウスの玄関口までポチとともに向かうと、ドアを叩いてそう言った。
「あー?」
すると、中から少し血色の悪い男が頭を掻きながら出てきた。
「誰だよ、マスターは今取り込み中なんだが?」
「顔色悪いですけど大丈夫ですか?」
「そりゃ、最近宴会続きだからなあ……ふあああ……」
男はあくびをしつつ続ける。
「ほら帰れ。俺らは1ヶ月間休暇だからよお、依頼は受け付けてねーんだ」
「それは……1ヶ月、毎日飲んで食ってってことですか?」
「たりめぇだ、でけぇの一個終わらせたからなあ! このクランに入って良かったぜ!」
「あれ、未踏挑戦はどうするんですか? 参加されてましたよね?」
「あんな本当にあるかもわからんもんにチャレンジするのはバカだけだぜ」
本当にあったけどな、と心の中で呟く。
しかし、この男の発言を否定できないのも本心だった。
割と現実感あるんだよな、この世界の冒険者って。
とにかく、ビンゴだな。
最初から未踏挑戦とか、こいつらは興味なしで依頼されて来ていた。
イグナイト家の裏にいた、教団連中にである。
「で、ハウザーさんいますか?」
「だからマスターは今取り込み中──ぐふっ」
「良いから中に通してください」
話が通じないので首根っこ掴んで後ろに放り投げた。
押し通りましょう。
俺がハウザーから受けた取引はまだ有効だぞ?
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