425 / 650
本編
725 落とし前・中
しおりを挟むポチとともに〈百頭蛇〉のクランハウスにかちこんだ。
「な、なんだテメェ! 敵対クランか!?」
「なんだなんだ!?」
すると、中からわらわらとクランメンバーが現れる。
「どーもー、個人的な依頼を終えに来ましたー」
「個人的な依頼? 今は依頼なんてしてねぇよ!」
「そうだぜ! いったい何なんだテメェ!」
してるんだよなあ?
信じてなくても、お前らの頭を出せば済む話である。
「ハウザーはどこだ、ハウザーを出せ」
「テメェの要求が通ると思うなよ? 俺らを倒し──ばぶっ」
「なら、倒して押し通るぞ」
目の前に立ちふさがった雑魚を蹴飛ばして先に進む。
もういろんなところから刃物とか鈍器で攻撃される……が、効かんな。
VITどんだけ積んでると思ってるんだ。
適当なレベルで、適当な装備で。
俺に太刀打ちできると思うことなかれってやつだ。
「な、なんだこいつ!」
「何で避けねえんだよ!」
「いや、なんで効いてねえんだよ!」
そりゃ、今回は紛れもなく本気モードに近いからだ。
キングさんを外で待機させてるからね?
ダメージ受けても無敵入るし、ちょっと削れても装備の効果で回復さ。
「とりあえずお前らは何も知らない雑魚っぽいから退け」
「な、なんだと! この野郎!」
「──獄卒」
「ゴアッ!」
空きスロットにて獄卒を召喚し、ほかの奴らの相手をさせる。
今回の布陣は、ポチ、キングさん、獄卒で行きましょうか。
「オ、オーガだ!? オーガ出しやがったこいつ!」
「くそっ! それくらいなんだ! やってやれ!」
召喚された獄卒の凶悪な顔に慄くクランメンバーたち。
だが、さすがは上位クラン。
すぐに持ち直して再び攻撃を仕掛けてくる。
しかし獄卒の特殊能力は反射。
故に、攻撃は相手に返っていくのだ。
「たま潰してヤラァッ──ぎゃああああああ!?」
「あーあ……」
下手に急所攻撃すると、逆に危ないんだよなあ。
雑魚の一人がいつぞやのギフみたいな感じになっていた。
「お前らじゃ相手にならんから、さっさとハウザー呼んでこいよ」
「う、うるせー! 殺すぞこら!」
「テメェなんかがそう易々とマスターに会えると思うなよ!」
「ふーん、でもオーガどころかコボルトにも勝てない雑魚クランだよね?」
「……テメェ、あんまり舐めたこと言ってっとマジでよお」
煽ってやると、プライドが刺激されたのか額に青筋を浮かばせる雑魚。
だが、すぐに仲間の悲鳴に視線を向けて青い顔をする。
「何だこのコボルト!?」
「うわあああ!?」
「アォォン!」
足元に食らいついたポチは、そのままブンブンと雑魚を振り回して攻撃していた。
とてもコボルト一体の力とは思えないほどの大立ち回りに、奴らは恐れ慄く。
「いけポチ! 仕返ししたれ! 生き地獄だ!」
「グルルルッ!」
なんなら股間食いちぎっても俺は許すぞ。
こいつらは殺すよりも生き地獄の刑に処した方がいい。
冒険者としての尊厳とか、男としての尊厳とか。
今まで作り上げたものを全て、ここでお釈迦にする。
そっちの方が、俺のカルマも揺らがない。
でもまあ……。
勢い余ってやっちゃったとかなら、俺は許すけどねポチ。
「よーし、俺も色々派手にやっちゃうぞー」
そんなわけで、それなりに大きなクランハウス。
その中にちらほら見える調度品を破壊だ。
依頼者ように多少見栄えをよくしてるみたいだけど。
賊専門クランだろ?
そんなもんいらねえよ。
没収だ没収。
「獄卒、ポチ、どんどんやっておしまい!」
「ォン!」
「ゴアッ!」
「……プルァ?」
キングさんが「中はどうだ?」と言った風にドアを覗き込んでいた。
「あ、ここは俺らで十分なんで大丈夫です」
もともと出張って来たハウザーを脅す要因でもあった。
俺らの力をわからせるための、最終兵器キングさん。
雑魚は我の獲物じゃないってスタンスだろうし待機していただく。
「プルァ……」
それを告げると、キングさんはどことなく寂しそうにしながら引っ込んだ。
参加したいのだろうけど、これに参加したら一瞬で終わる。
そうすると、ポチの鬱憤とか俺の鬱憤が晴れないので……たまにはね?
たまには俺たちにも雑魚相手に無双させてくれたっていいじゃないの?
「高価そうなものデストロイ! デストロイ!」
「アォン!」
「ゴアアアアアアア!」
こんだけごちゃごちゃ騒がしくしてたら、さすがにハウザーも気付くだろう。
そんな俺の思惑が功を奏したのか。
奥の扉からパンツ一丁のハウザーが姿を現したのである。
「……ふあああ、なんだ騒がしいなテメェら……」
あくびをしながら、スケスケのやばい格好の女性を両サイドに。
何ともいいご身分だろうか。
俺は初夜失敗したってのに、こいつ、マジで、やっつける。
「……ん? なんだこの有様……って、テメェは」
目の前の有様、そして俺の顔を見たハウザーは殺気に満ちた表情となった。
やはり思うところあり、と言ったところだろう。
「どうも。約束の泡沫の浄水を持って来ましたよ」
=====
関係のない怒りも
70
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。