装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
427 / 650
本編

727 針路は一度サルトへ

 さて、デプリでの用事もひとまず終えた朝。
 俺は、飛空船内の自室の黒板とにらめっこしていた。
 超危険兵器を搭載した飛空戦だが、航空する分には問題ない。
 滞空させておかなければ、良いのである。

「うーむ……」

「また何で悩んでるのよ」

 唸っていると、イグニールが反応していた。
 何の用事もないのに、最近部屋にずっといる。
 そしてじーっと背中を見つめられていた。
 視線が気になって仕方ないなあ……。

 それにしても「また」とは何でしょう、イグニールさん。
 俺はそんなに悩んでいるのだろうか?
 精神年齢的には、まだ悩める若者だということにしておこう。

「帰りの旅程と次に向かうダンジョンで悩んでる感じ」

「次のダンジョン? タリアスの天界神塔のこと?」

「まあそれもいいけど……先に天海深塔かなあ……」

 天海深塔にいると予測される賢者に会っておきたいのだ。
 今の勇者一行を元の世界に返す上で、重要な一歩である。
 それを告げると、イグニールの肩の上にいるジュノーが声をあげた。

「えー! バニラ! タリアスが最初だし!」

「うーん」

 確かに、タリアスに存在するバニラと温泉は捨てがたい。
 だが、問題をこれ以上先送りにするのもなあ……。

 自分の人生がRPGのシナリオだとしたら、だ。
 遊ぶのはクリア後でも良いんじゃないか、と思うわけである。
 そのためには、やることはさっさとやっておかないと。
 足となる飛空船も完成したし、整備を終えたらすぐにでもね。

「だめー! バニラ! バニラバニラバニラ~!」

「わがまま言うなよ」

「約束したし! ずーっと前に約束してたしっ!」

 ジュノーの言う通り、だいぶ道を逸れてしまっている感はある。

「他の場所は、飛空船の材料を取りに行くからだったし!」

「まあね」

「飛空船完成したんだから、タリアス! タリアスタリアス!」

「……わかったよ」

 熱意に負けた。
 先に約束を守るところから始めることにするか。
 タリアスにはご大層な目的もないんだ。
 温泉入って、ダンジョン行って、バニラをもらう。

 タリアスにある天界神塔のダンジョンコア。
 傲慢のアローガンスは、断崖凍土の最終守護ラブと知り合いだ。
 その辺を話して、頼まれたから貰いに来たとでも言えば良い。

「話変わるけど、タリアスとマクラスって語呂似てるし」

「しらんがな」

 急に何だこいつ。

「ジュノー、ただサルトには一度寄らせてもらうぞ」

「サルトってトガルの? 何するし?」

「ウィンストと少し話したいことがあるんだ」

 クロイツに存在していた賢者の手記。
 それに寄ると、会うための鍵となるのがウィンストである。
 俺の予想が正しければ、賢者の弟子がウィンストだ。
 彼を連れて行くことによって、万が一にも敵対関係になることはない。
 そう考えている。

「それくらいなら許すし!」

「ありがと」

「それにしてもサルト……何だか久しぶりね」

 自分が育った故郷の話を聞いて、少しだけ懐かしむイグニール。

「イグニール、母親の墓とかってサルトにあったりするの?」

「そう言うのないから、別に挨拶とかは平気よ」

「そっか」

 その辺の事情はあまり聞くもんじゃないな。

「きっとあの世で祝ってくれてるんじゃないかしら?」

「そうだね」

 実はな、イグニール。
 俺たちが結婚したこと、伝わってるんだぜ。
 しかも目の前でしっかりと見てたからな……。

 できれば教えてあげたいけど。
 母であるイフリータ本人がそれを拒んだ。
 だからその意思に従って言わないでおく。

「ガレーとノードはどうしてるかしら?」

「どうだろ? 未踏挑戦にはいなかったから、まだBランクとか?」

「そうねえ、サルトに着いたらギルドで居場所を聞いてみましょ?」

 俺とイグニールの共通の友人だから、彼らにはちゃんと報告だ。
 ついでにレスリーの顔も見ておこう。
 ウィンストの一件から、連絡なんて全く届いてない。
 この寄り道は、みんなの生存確認的な意味も込められている。

「トウジ、苔っちには会いに行く?」

「時間があればな」

 立ち寄るが、あくまで本題はウィンストだ。
 話が終わればすぐさまギリスに戻り、オスローにドラグーンのことを問い詰める。
 んで、イグニールとの結婚報告した後、休日を少し挟んでからタリアスへ。
 タリアスで過ごしたらトガルを経由し、ウィンストを連れて天海深塔に行くのだ。

「できれば、この旅程を2ヶ月でこなしたい」

「普通は絶対無理だけど、飛空船があったら行けそうね」

「うん、たぶんいける」

 各地へ飛び回るために、飛空船を作ったんだ!
 がっつり運用しても耐えれるように、しこたま丈夫な素材を用いたんだ。
 これくらいさらっとこなしてくれなきゃ、困るのである。

「それが終わったらどうするし?」

「勇者を帰還させる目処がついたら? そのあとは魂枯砂漠だぞ」

 骨が骨になった謎を解明しに向かわねばならないのだ。
 本人が元いた世界に帰りたいなら、勇者と一緒に帰す。
 その際、肉付けしとかなきゃいけないからな。

「まるでダンジョンクルーズね」

「ハハハ、言うな」

 イグニール、自分でもわかってるだよそんなこと。
 残りのダンジョン全部危ない雰囲気が漂ってるから、正直行きたくない。
 骨のために魂枯砂漠には行くけど、奈落墓標と夢幻楼街はちょっと……。

 でも、なんだかんだいずれ行くことになりそうな予感がする。
 だからこそ、先に色々と終わらせておきたいのだ。

「まっ、一先ずサルトだな!」






=====
奈落墓標は最後。
感想 9,840

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました