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本編
727 針路は一度サルトへ
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さて、デプリでの用事もひとまず終えた朝。
俺は、飛空船内の自室の黒板とにらめっこしていた。
超危険兵器を搭載した飛空戦だが、航空する分には問題ない。
滞空させておかなければ、良いのである。
「うーむ……」
「また何で悩んでるのよ」
唸っていると、イグニールが反応していた。
何の用事もないのに、最近部屋にずっといる。
そしてじーっと背中を見つめられていた。
視線が気になって仕方ないなあ……。
それにしても「また」とは何でしょう、イグニールさん。
俺はそんなに悩んでいるのだろうか?
精神年齢的には、まだ悩める若者だということにしておこう。
「帰りの旅程と次に向かうダンジョンで悩んでる感じ」
「次のダンジョン? タリアスの天界神塔のこと?」
「まあそれもいいけど……先に天海深塔かなあ……」
天海深塔にいると予測される賢者に会っておきたいのだ。
今の勇者一行を元の世界に返す上で、重要な一歩である。
それを告げると、イグニールの肩の上にいるジュノーが声をあげた。
「えー! バニラ! タリアスが最初だし!」
「うーん」
確かに、タリアスに存在するバニラと温泉は捨てがたい。
だが、問題をこれ以上先送りにするのもなあ……。
自分の人生がRPGのシナリオだとしたら、だ。
遊ぶのはクリア後でも良いんじゃないか、と思うわけである。
そのためには、やることはさっさとやっておかないと。
足となる飛空船も完成したし、整備を終えたらすぐにでもね。
「だめー! バニラ! バニラバニラバニラ~!」
「わがまま言うなよ」
「約束したし! ずーっと前に約束してたしっ!」
ジュノーの言う通り、だいぶ道を逸れてしまっている感はある。
「他の場所は、飛空船の材料を取りに行くからだったし!」
「まあね」
「飛空船完成したんだから、タリアス! タリアスタリアス!」
「……わかったよ」
熱意に負けた。
先に約束を守るところから始めることにするか。
タリアスにはご大層な目的もないんだ。
温泉入って、ダンジョン行って、バニラをもらう。
タリアスにある天界神塔のダンジョンコア。
傲慢のアローガンスは、断崖凍土の最終守護ラブと知り合いだ。
その辺を話して、頼まれたから貰いに来たとでも言えば良い。
「話変わるけど、タリアスとマクラスって語呂似てるし」
「しらんがな」
急に何だこいつ。
「ジュノー、ただサルトには一度寄らせてもらうぞ」
「サルトってトガルの? 何するし?」
「ウィンストと少し話したいことがあるんだ」
クロイツに存在していた賢者の手記。
それに寄ると、会うための鍵となるのがウィンストである。
俺の予想が正しければ、賢者の弟子がウィンストだ。
彼を連れて行くことによって、万が一にも敵対関係になることはない。
そう考えている。
「それくらいなら許すし!」
「ありがと」
「それにしてもサルト……何だか久しぶりね」
自分が育った故郷の話を聞いて、少しだけ懐かしむイグニール。
「イグニール、母親の墓とかってサルトにあったりするの?」
「そう言うのないから、別に挨拶とかは平気よ」
「そっか」
その辺の事情はあまり聞くもんじゃないな。
「きっとあの世で祝ってくれてるんじゃないかしら?」
「そうだね」
実はな、イグニール。
俺たちが結婚したこと、伝わってるんだぜ。
しかも目の前でしっかりと見てたからな……。
できれば教えてあげたいけど。
母であるイフリータ本人がそれを拒んだ。
だからその意思に従って言わないでおく。
「ガレーとノードはどうしてるかしら?」
「どうだろ? 未踏挑戦にはいなかったから、まだBランクとか?」
「そうねえ、サルトに着いたらギルドで居場所を聞いてみましょ?」
俺とイグニールの共通の友人だから、彼らにはちゃんと報告だ。
ついでにレスリーの顔も見ておこう。
ウィンストの一件から、連絡なんて全く届いてない。
この寄り道は、みんなの生存確認的な意味も込められている。
「トウジ、苔っちには会いに行く?」
「時間があればな」
立ち寄るが、あくまで本題はウィンストだ。
話が終わればすぐさまギリスに戻り、オスローにドラグーンのことを問い詰める。
んで、イグニールとの結婚報告した後、休日を少し挟んでからタリアスへ。
タリアスで過ごしたらトガルを経由し、ウィンストを連れて天海深塔に行くのだ。
「できれば、この旅程を2ヶ月でこなしたい」
「普通は絶対無理だけど、飛空船があったら行けそうね」
「うん、たぶんいける」
各地へ飛び回るために、飛空船を作ったんだ!
がっつり運用しても耐えれるように、しこたま丈夫な素材を用いたんだ。
これくらいさらっとこなしてくれなきゃ、困るのである。
「それが終わったらどうするし?」
「勇者を帰還させる目処がついたら? そのあとは魂枯砂漠だぞ」
骨が骨になった謎を解明しに向かわねばならないのだ。
本人が元いた世界に帰りたいなら、勇者と一緒に帰す。
その際、肉付けしとかなきゃいけないからな。
「まるでダンジョンクルーズね」
「ハハハ、言うな」
イグニール、自分でもわかってるだよそんなこと。
残りのダンジョン全部危ない雰囲気が漂ってるから、正直行きたくない。
骨のために魂枯砂漠には行くけど、奈落墓標と夢幻楼街はちょっと……。
でも、なんだかんだいずれ行くことになりそうな予感がする。
だからこそ、先に色々と終わらせておきたいのだ。
「まっ、一先ずサルトだな!」
=====
奈落墓標は最後。
俺は、飛空船内の自室の黒板とにらめっこしていた。
超危険兵器を搭載した飛空戦だが、航空する分には問題ない。
滞空させておかなければ、良いのである。
「うーむ……」
「また何で悩んでるのよ」
唸っていると、イグニールが反応していた。
何の用事もないのに、最近部屋にずっといる。
そしてじーっと背中を見つめられていた。
視線が気になって仕方ないなあ……。
それにしても「また」とは何でしょう、イグニールさん。
俺はそんなに悩んでいるのだろうか?
精神年齢的には、まだ悩める若者だということにしておこう。
「帰りの旅程と次に向かうダンジョンで悩んでる感じ」
「次のダンジョン? タリアスの天界神塔のこと?」
「まあそれもいいけど……先に天海深塔かなあ……」
天海深塔にいると予測される賢者に会っておきたいのだ。
今の勇者一行を元の世界に返す上で、重要な一歩である。
それを告げると、イグニールの肩の上にいるジュノーが声をあげた。
「えー! バニラ! タリアスが最初だし!」
「うーん」
確かに、タリアスに存在するバニラと温泉は捨てがたい。
だが、問題をこれ以上先送りにするのもなあ……。
自分の人生がRPGのシナリオだとしたら、だ。
遊ぶのはクリア後でも良いんじゃないか、と思うわけである。
そのためには、やることはさっさとやっておかないと。
足となる飛空船も完成したし、整備を終えたらすぐにでもね。
「だめー! バニラ! バニラバニラバニラ~!」
「わがまま言うなよ」
「約束したし! ずーっと前に約束してたしっ!」
ジュノーの言う通り、だいぶ道を逸れてしまっている感はある。
「他の場所は、飛空船の材料を取りに行くからだったし!」
「まあね」
「飛空船完成したんだから、タリアス! タリアスタリアス!」
「……わかったよ」
熱意に負けた。
先に約束を守るところから始めることにするか。
タリアスにはご大層な目的もないんだ。
温泉入って、ダンジョン行って、バニラをもらう。
タリアスにある天界神塔のダンジョンコア。
傲慢のアローガンスは、断崖凍土の最終守護ラブと知り合いだ。
その辺を話して、頼まれたから貰いに来たとでも言えば良い。
「話変わるけど、タリアスとマクラスって語呂似てるし」
「しらんがな」
急に何だこいつ。
「ジュノー、ただサルトには一度寄らせてもらうぞ」
「サルトってトガルの? 何するし?」
「ウィンストと少し話したいことがあるんだ」
クロイツに存在していた賢者の手記。
それに寄ると、会うための鍵となるのがウィンストである。
俺の予想が正しければ、賢者の弟子がウィンストだ。
彼を連れて行くことによって、万が一にも敵対関係になることはない。
そう考えている。
「それくらいなら許すし!」
「ありがと」
「それにしてもサルト……何だか久しぶりね」
自分が育った故郷の話を聞いて、少しだけ懐かしむイグニール。
「イグニール、母親の墓とかってサルトにあったりするの?」
「そう言うのないから、別に挨拶とかは平気よ」
「そっか」
その辺の事情はあまり聞くもんじゃないな。
「きっとあの世で祝ってくれてるんじゃないかしら?」
「そうだね」
実はな、イグニール。
俺たちが結婚したこと、伝わってるんだぜ。
しかも目の前でしっかりと見てたからな……。
できれば教えてあげたいけど。
母であるイフリータ本人がそれを拒んだ。
だからその意思に従って言わないでおく。
「ガレーとノードはどうしてるかしら?」
「どうだろ? 未踏挑戦にはいなかったから、まだBランクとか?」
「そうねえ、サルトに着いたらギルドで居場所を聞いてみましょ?」
俺とイグニールの共通の友人だから、彼らにはちゃんと報告だ。
ついでにレスリーの顔も見ておこう。
ウィンストの一件から、連絡なんて全く届いてない。
この寄り道は、みんなの生存確認的な意味も込められている。
「トウジ、苔っちには会いに行く?」
「時間があればな」
立ち寄るが、あくまで本題はウィンストだ。
話が終わればすぐさまギリスに戻り、オスローにドラグーンのことを問い詰める。
んで、イグニールとの結婚報告した後、休日を少し挟んでからタリアスへ。
タリアスで過ごしたらトガルを経由し、ウィンストを連れて天海深塔に行くのだ。
「できれば、この旅程を2ヶ月でこなしたい」
「普通は絶対無理だけど、飛空船があったら行けそうね」
「うん、たぶんいける」
各地へ飛び回るために、飛空船を作ったんだ!
がっつり運用しても耐えれるように、しこたま丈夫な素材を用いたんだ。
これくらいさらっとこなしてくれなきゃ、困るのである。
「それが終わったらどうするし?」
「勇者を帰還させる目処がついたら? そのあとは魂枯砂漠だぞ」
骨が骨になった謎を解明しに向かわねばならないのだ。
本人が元いた世界に帰りたいなら、勇者と一緒に帰す。
その際、肉付けしとかなきゃいけないからな。
「まるでダンジョンクルーズね」
「ハハハ、言うな」
イグニール、自分でもわかってるだよそんなこと。
残りのダンジョン全部危ない雰囲気が漂ってるから、正直行きたくない。
骨のために魂枯砂漠には行くけど、奈落墓標と夢幻楼街はちょっと……。
でも、なんだかんだいずれ行くことになりそうな予感がする。
だからこそ、先に色々と終わらせておきたいのだ。
「まっ、一先ずサルトだな!」
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奈落墓標は最後。
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