装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

729 懐かしみと土足

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 初期に滞在していたサルトのアパートへとやってきた。

「懐かしいな、ポチ」

「アォン」

 この街で、俺の異世界生活は改めて再スタートした。
 もう異世界に来て何度感慨深いと思っただろうか。

 サルトに来て。
 冒険者ギルドに来て。
 アパートの入り口に来て。
 前に住んでいた部屋の前に来て。

 うーん、感慨深すぎる。
 何度でも思っちゃうね、感慨深いって。

 感慨深いぞ。
 いやマジで、ガチのリアルで。

「頑張って暮らしていけてるって、改めて実感するよな?」

「ォン」

 頷くポチも、俺と同じ気持ちのようだった。
 最初は、何も無いところからのスタートと言える。
 何もかもが初めての異世界。

 とにかくお金をと、一番下のランクの冒険者から始めた。
 コツコツと、たまにはせこいことしつつ。
 冒険者としての活動中に、イグニールと出会った。

 次に来た時は、Bランク冒険者。
 イグニールとパーティーを組んだ。

 そして今。
 Sランク冒険者になって、嫁さんとしてイグニールがいる。
 もちろん彼女だけじゃ無い。
 どんどん友達や家族も増えてって、今ではかなりの大所帯。

 俺は、この世界で生きている。
 過去を振り返ることで、確かに実感するものがあった。

 なんとも主体性がないのかもしれない。
 誰かに頼られることでしか、存在価値を見出せないなんて。

 生きてるからそこに存在してるだろとか。
 一部の人間は皮肉を言うだろう。
 だが、そんなに能天気になれるほど、バカじゃない。

 知り合いも、繋がりも、親も。
 何もない別の世界を独りってのは、思ったよりもキツいもんだ。

「でも、今はみんないる」

「ォン」

「さっさと前の賢者に会いに行って、平和に暮らしたいな!」

「アォン!」

 そんなことを玄関先で話しつつ、俺はウィンストの部屋の扉を叩いた。
 コンコンコン。

「おーい、ウィンストー」

 ……返事はない、外に出てるのだろうか。
 ウィンストくらいの実力なら、俺かイグニールの魔力に反応して顔を出すはず。

「ってあれ、鍵空いてるな……?」

 まあいいや、とりあえず中で待たせてもらうことにした。
 そもそも、あの人間モドキがどんな私生活を送っているのか。
 非常に気になるところである。

「ゴブリンちっくなのか、それとも普通に人間なのか」

「アォン……」

「え? ここに人と同じ暮らし、そして炊事洗濯全てできるコボルトがいるって?」

 た、確かに。
 でも、何となく私生活が気になるので俺は見ます。

 友達が一人の時何をやってるのかってやっぱね?
 気になるよね?
 あんまりプライベートな部分は見ちゃいけないけど。

 ウィンストだったらとんでもない性癖とか。
 見ちゃいけないようなものはないはずだし、安心できる。

「ま、どうせ本とか読んでんだろ」

 隻眼だが、見た目的には端正な顔立ちである。
 身長は低いけれど。
 勤勉さから女性は寄って来そうだった。

 冒険者やってかなり真面目に稼いでるだろうし。
 わりかし優良物件といっても過言ではないのだ。

 しかし、当の本人は女性に興味なんてなさそう。
 つーか、性欲があるのかも怪しいからなあ……。

「まあいいや、早く入ろっと」

 ドアを開けると、懐かしの間取り。
 大きな本棚が四つ両サイドにあり、少し狭く難じる。
 備え付けの家具ではないから、自分で買ったっぽい。

「なんかすげぇな……」

 小さな図書館というか、資料室というか。
 中央にテーブルがあって、そこにも本がたくさんあった。

「アォ……わふんっ」

「ちょっと埃っぽいな? 窓開けておくか……」

 埃っぽいってことは、長期間留守にしてる証拠である。
 こりゃ時期を間違えたかな?

 ウィンストが帰って来るまでサルトで待機。
 もしくは、書き置き残してギリスで待つってところだ。

「まあ、2~3日いて、残りは書き置きでいいだろ」

 そんな感じの決断をした時。
 ふと、寝室の方が気になった。

 正直、この資料室みたいな場所は面白みのかけらもない。
 想像通りといえばいいのだろうか?
 だが、寝室はなんだかんだ内面が浮き彫りになるからな!
 見てやろう、へへ。

 ちなみにその理論でいくと、俺の寝室にプライベートなんて存在しない。
 誰かしらいるし、マクラス奪われてるし、甘い匂いが常時してる。
 ほとんど師匠のせいな……。

「──こ、これは!?」

 見つけた。
 寝室のドアの前に、なんか落ちてるなと思ったら……。
 ブラジャーだった。








=====
ウィンスト実は女性だった説、とかそんなのはないです。
不思議な不思議なせいよくにかんしてですが。
元がゴブリンである、ということでお察し。
そして小賢者である、ということでもさらにお察し。
制御しつつも、秘めています。
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