装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

730 謎の女

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 寝室のドアの前に落ちていた布は、赤いブラジャーである。
 ウィンストめ、ちゃっかりしてんな。
 まったく想像し難いのだが、なんとなく親近感が湧いたぞ。

「ってことは、まだ寝てんのか?」

 そう考えると、いきなり寝室のドアを開けるのは憚られる。
 とりあえず自然に起きるまで椅子に座って待っておくか。
 それとも、いっそのことドッキリ感覚で開けてしまおうか。

「どうする?」

「ォン……」

 知らん、聞くな、と冷たい反応を示すポチ。
 ポチを見てると自分がゲスに思えて来るな。
 いや、割とゲスなタイプなんだけどさ?

「まあいいや、強めにノックだけしてみる──」

 ドアの前で手を挙げた瞬間だった。
 ドゴッとドアが俺の方に弾け飛んで来た。

「──ッ」

 顔面にぶつかって、そのまま木っ端微塵になる木造のドア。
 その有様が衝撃の強さを物語っている。
 のだが、相変わらずダメージはまったくない。

「な、なんだ?」

「ォン?」

 いきなりの出来事にあっけらかんとしていると。

「……ふああ、誰よ」

 紫色の長い髪を持った全裸の女が姿を現した。
 いや、そっちこそ誰だ、服着ろよ。

「ウィンストの知り合い……では無さそうだな……」

 体をよく見ると、でかい胸よりもその後ろに目がいく。
 コウモリの様な皮膜を持った翼が生えていた。
 特徴的には、魔族のそれに近いと思える。
 クロイツや魔国の軍には、こういう形質を持った人もいたのだ。

「小賢者の知り合い? そんなことあるわけないでしょ」

 女はせせら笑う。
 その雰囲気に、俺はすぐさま片手剣の柄に手をかけた。

「そういうあんたはどこの誰で何よ」

「ウィンストの友人だ」

「ふーん、あっそ」

 なんともいえない反応を見せる女に言う。

「久しぶりに友人の家に立ち寄ったのだが、そこには友人ではなく変な女がいた」

「で?」

「知り合いでもなんでもないと言う女こそ、どこの誰だ?」

 そう聞き返すと、女は口元をひどく歪めて言う。

「敵」

 そしてすぐに俺の首筋に向けて右腕を振るった。
 右手の爪が、黒く変色して鋭く長くなっている。

「アハァッ!! ──ッ!?」

 必殺の一撃だったのだろうか。
 恍惚そうな目をして体をぶるっと震わせる女は、すぐに表情をガラッと変える。

「な、ッ!?」

 通用しなかったからだな、うん。
 明らかに隙を狙った一撃というか、早い攻撃。
 もちろん、俺はとっさに反応できなかったよ。
 でも、首筋から血管えぐる前に、俺の肌を貫通できていない。

「もう一度聞くぞ?」

 唖然とする全裸女に、今一度問いかけた。

「ウィンストはどこだ。で、お前は誰だ」

「こっちから言わせれば、あんたこそ何者よ」

「いいから質問に答えろ。この状況を見過ごすほど、甘くないぞ」

 たとえ女性であったとしても、敵なら平等だ。
 ウィンストが何かの標的になっているのならば、このトガルの地に危険が及びかねない。
 まったく、次から次に面倒臭いな……。

「チッ」

 女は舌打ちすると、すぐにシーツを拾って踵を返す。
 寝室の壁をぶち破って逃走を図るつもりだった。

「言葉のキャッチボールができないやつだな」

「うっ!?」

 はい、引力。
 俺の防御も貫通できないようじゃ、この引力からは逃れられない。
 ちなみに引力と斥力を連続使用することでグラグラできる。
 グラグラして行動もなかなかできない状況だから、バインドだ。

「このまま外にほっぽり出しても良いんだぞ?」

「くっ」

「恥ずかしい目に会うのはお前なんだからな?」

「ね、ねえちょっと、全部話すから拘束解いてちょうだい? お礼に良い事もしてあげる」

「お前の体なんか見ても俺はなんとも思わないから、ハニートラップとか無駄だぞ?」

「あなた、不能なのね、かわいそ~」

 ……よし消す。
 不能ではなく、みんなの目があるだけだちくしょう。
 俺の今一番繊細な悩みを侮辱しやがって……。

 怒っちゃうおじさん。
 おじさん怒っちゃう。

「お前みたいな下品な女が一番嫌いなんだ」

 恥じらいがなければエロくもなんともない。
 それが美学。
 男が体一つで落ちると思ってるこういう奴に言いたい。

「そんなもんしょうもない男にしか通じないんだ」

 そのまま引力で寄せて斬り倒そうと思ったら。

「久方ぶりに家に戻ってみれば、トウジじゃないか」

 後ろからウィンストの声がした。
 頭の上にはいつもどおりチビがいる。

「ウィンスト……? 無事だったのか!」

「無事も何も、別にトラブルらしいトラブルになんて見舞われてないが……」

 そして俺が拘束している女に気づく。

「……誰?」

「え? 敵じゃないの? ウィンスト狙ってる人っぽいけど……」

「こんな下品な女は知らんぞ」






=====
ウィンスト「む? そんなことより寝室のドアがめちゃめちゃじゃないか!」
トウジ「こいつがやりました」
ポチ「アォン」(ドアが吹っ飛んできて勝手に木っ端微塵になりました)
ウィンスト「弁償だ! アパート追い出されたら次に住む部屋を見つけるのが面倒なんだぞ!」
トウジ「なんで?」
ウィンスト「この部屋はドラゴンOKで、裏庭で遊ばせても良いらしいからな。前の人が従魔連れですっかり魔物もOKなアパートとして有名らしい」
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