430 / 650
本編
730 謎の女
しおりを挟む
寝室のドアの前に落ちていた布は、赤いブラジャーである。
ウィンストめ、ちゃっかりしてんな。
まったく想像し難いのだが、なんとなく親近感が湧いたぞ。
「ってことは、まだ寝てんのか?」
そう考えると、いきなり寝室のドアを開けるのは憚られる。
とりあえず自然に起きるまで椅子に座って待っておくか。
それとも、いっそのことドッキリ感覚で開けてしまおうか。
「どうする?」
「ォン……」
知らん、聞くな、と冷たい反応を示すポチ。
ポチを見てると自分がゲスに思えて来るな。
いや、割とゲスなタイプなんだけどさ?
「まあいいや、強めにノックだけしてみる──」
ドアの前で手を挙げた瞬間だった。
ドゴッとドアが俺の方に弾け飛んで来た。
「──ッ」
顔面にぶつかって、そのまま木っ端微塵になる木造のドア。
その有様が衝撃の強さを物語っている。
のだが、相変わらずダメージはまったくない。
「な、なんだ?」
「ォン?」
いきなりの出来事にあっけらかんとしていると。
「……ふああ、誰よ」
紫色の長い髪を持った全裸の女が姿を現した。
いや、そっちこそ誰だ、服着ろよ。
「ウィンストの知り合い……では無さそうだな……」
体をよく見ると、でかい胸よりもその後ろに目がいく。
コウモリの様な皮膜を持った翼が生えていた。
特徴的には、魔族のそれに近いと思える。
クロイツや魔国の軍には、こういう形質を持った人もいたのだ。
「小賢者の知り合い? そんなことあるわけないでしょ」
女はせせら笑う。
その雰囲気に、俺はすぐさま片手剣の柄に手をかけた。
「そういうあんたはどこの誰で何よ」
「ウィンストの友人だ」
「ふーん、あっそ」
なんともいえない反応を見せる女に言う。
「久しぶりに友人の家に立ち寄ったのだが、そこには友人ではなく変な女がいた」
「で?」
「知り合いでもなんでもないと言う女こそ、どこの誰だ?」
そう聞き返すと、女は口元をひどく歪めて言う。
「敵」
そしてすぐに俺の首筋に向けて右腕を振るった。
右手の爪が、黒く変色して鋭く長くなっている。
「アハァッ!! ──ッ!?」
必殺の一撃だったのだろうか。
恍惚そうな目をして体をぶるっと震わせる女は、すぐに表情をガラッと変える。
「な、ッ!?」
通用しなかったからだな、うん。
明らかに隙を狙った一撃というか、早い攻撃。
もちろん、俺はとっさに反応できなかったよ。
でも、首筋から血管えぐる前に、俺の肌を貫通できていない。
「もう一度聞くぞ?」
唖然とする全裸女に、今一度問いかけた。
「ウィンストはどこだ。で、お前は誰だ」
「こっちから言わせれば、あんたこそ何者よ」
「いいから質問に答えろ。この状況を見過ごすほど、甘くないぞ」
たとえ女性であったとしても、敵なら平等だ。
ウィンストが何かの標的になっているのならば、このトガルの地に危険が及びかねない。
まったく、次から次に面倒臭いな……。
「チッ」
女は舌打ちすると、すぐにシーツを拾って踵を返す。
寝室の壁をぶち破って逃走を図るつもりだった。
「言葉のキャッチボールができないやつだな」
「うっ!?」
はい、引力。
俺の防御も貫通できないようじゃ、この引力からは逃れられない。
ちなみに引力と斥力を連続使用することでグラグラできる。
グラグラして行動もなかなかできない状況だから、バインドだ。
「このまま外にほっぽり出しても良いんだぞ?」
「くっ」
「恥ずかしい目に会うのはお前なんだからな?」
「ね、ねえちょっと、全部話すから拘束解いてちょうだい? お礼に良い事もしてあげる」
「お前の体なんか見ても俺はなんとも思わないから、ハニートラップとか無駄だぞ?」
「あなた、不能なのね、かわいそ~」
……よし消す。
不能ではなく、みんなの目があるだけだちくしょう。
俺の今一番繊細な悩みを侮辱しやがって……。
怒っちゃうおじさん。
おじさん怒っちゃう。
「お前みたいな下品な女が一番嫌いなんだ」
恥じらいがなければエロくもなんともない。
それが美学。
男が体一つで落ちると思ってるこういう奴に言いたい。
「そんなもんしょうもない男にしか通じないんだ」
そのまま引力で寄せて斬り倒そうと思ったら。
「久方ぶりに家に戻ってみれば、トウジじゃないか」
後ろからウィンストの声がした。
頭の上にはいつもどおりチビがいる。
「ウィンスト……? 無事だったのか!」
「無事も何も、別にトラブルらしいトラブルになんて見舞われてないが……」
そして俺が拘束している女に気づく。
「……誰?」
「え? 敵じゃないの? ウィンスト狙ってる人っぽいけど……」
「こんな下品な女は知らんぞ」
=====
ウィンスト「む? そんなことより寝室のドアがめちゃめちゃじゃないか!」
トウジ「こいつがやりました」
ポチ「アォン」(ドアが吹っ飛んできて勝手に木っ端微塵になりました)
ウィンスト「弁償だ! アパート追い出されたら次に住む部屋を見つけるのが面倒なんだぞ!」
トウジ「なんで?」
ウィンスト「この部屋はドラゴンOKで、裏庭で遊ばせても良いらしいからな。前の人が従魔連れですっかり魔物もOKなアパートとして有名らしい」
ウィンストめ、ちゃっかりしてんな。
まったく想像し難いのだが、なんとなく親近感が湧いたぞ。
「ってことは、まだ寝てんのか?」
そう考えると、いきなり寝室のドアを開けるのは憚られる。
とりあえず自然に起きるまで椅子に座って待っておくか。
それとも、いっそのことドッキリ感覚で開けてしまおうか。
「どうする?」
「ォン……」
知らん、聞くな、と冷たい反応を示すポチ。
ポチを見てると自分がゲスに思えて来るな。
いや、割とゲスなタイプなんだけどさ?
「まあいいや、強めにノックだけしてみる──」
ドアの前で手を挙げた瞬間だった。
ドゴッとドアが俺の方に弾け飛んで来た。
「──ッ」
顔面にぶつかって、そのまま木っ端微塵になる木造のドア。
その有様が衝撃の強さを物語っている。
のだが、相変わらずダメージはまったくない。
「な、なんだ?」
「ォン?」
いきなりの出来事にあっけらかんとしていると。
「……ふああ、誰よ」
紫色の長い髪を持った全裸の女が姿を現した。
いや、そっちこそ誰だ、服着ろよ。
「ウィンストの知り合い……では無さそうだな……」
体をよく見ると、でかい胸よりもその後ろに目がいく。
コウモリの様な皮膜を持った翼が生えていた。
特徴的には、魔族のそれに近いと思える。
クロイツや魔国の軍には、こういう形質を持った人もいたのだ。
「小賢者の知り合い? そんなことあるわけないでしょ」
女はせせら笑う。
その雰囲気に、俺はすぐさま片手剣の柄に手をかけた。
「そういうあんたはどこの誰で何よ」
「ウィンストの友人だ」
「ふーん、あっそ」
なんともいえない反応を見せる女に言う。
「久しぶりに友人の家に立ち寄ったのだが、そこには友人ではなく変な女がいた」
「で?」
「知り合いでもなんでもないと言う女こそ、どこの誰だ?」
そう聞き返すと、女は口元をひどく歪めて言う。
「敵」
そしてすぐに俺の首筋に向けて右腕を振るった。
右手の爪が、黒く変色して鋭く長くなっている。
「アハァッ!! ──ッ!?」
必殺の一撃だったのだろうか。
恍惚そうな目をして体をぶるっと震わせる女は、すぐに表情をガラッと変える。
「な、ッ!?」
通用しなかったからだな、うん。
明らかに隙を狙った一撃というか、早い攻撃。
もちろん、俺はとっさに反応できなかったよ。
でも、首筋から血管えぐる前に、俺の肌を貫通できていない。
「もう一度聞くぞ?」
唖然とする全裸女に、今一度問いかけた。
「ウィンストはどこだ。で、お前は誰だ」
「こっちから言わせれば、あんたこそ何者よ」
「いいから質問に答えろ。この状況を見過ごすほど、甘くないぞ」
たとえ女性であったとしても、敵なら平等だ。
ウィンストが何かの標的になっているのならば、このトガルの地に危険が及びかねない。
まったく、次から次に面倒臭いな……。
「チッ」
女は舌打ちすると、すぐにシーツを拾って踵を返す。
寝室の壁をぶち破って逃走を図るつもりだった。
「言葉のキャッチボールができないやつだな」
「うっ!?」
はい、引力。
俺の防御も貫通できないようじゃ、この引力からは逃れられない。
ちなみに引力と斥力を連続使用することでグラグラできる。
グラグラして行動もなかなかできない状況だから、バインドだ。
「このまま外にほっぽり出しても良いんだぞ?」
「くっ」
「恥ずかしい目に会うのはお前なんだからな?」
「ね、ねえちょっと、全部話すから拘束解いてちょうだい? お礼に良い事もしてあげる」
「お前の体なんか見ても俺はなんとも思わないから、ハニートラップとか無駄だぞ?」
「あなた、不能なのね、かわいそ~」
……よし消す。
不能ではなく、みんなの目があるだけだちくしょう。
俺の今一番繊細な悩みを侮辱しやがって……。
怒っちゃうおじさん。
おじさん怒っちゃう。
「お前みたいな下品な女が一番嫌いなんだ」
恥じらいがなければエロくもなんともない。
それが美学。
男が体一つで落ちると思ってるこういう奴に言いたい。
「そんなもんしょうもない男にしか通じないんだ」
そのまま引力で寄せて斬り倒そうと思ったら。
「久方ぶりに家に戻ってみれば、トウジじゃないか」
後ろからウィンストの声がした。
頭の上にはいつもどおりチビがいる。
「ウィンスト……? 無事だったのか!」
「無事も何も、別にトラブルらしいトラブルになんて見舞われてないが……」
そして俺が拘束している女に気づく。
「……誰?」
「え? 敵じゃないの? ウィンスト狙ってる人っぽいけど……」
「こんな下品な女は知らんぞ」
=====
ウィンスト「む? そんなことより寝室のドアがめちゃめちゃじゃないか!」
トウジ「こいつがやりました」
ポチ「アォン」(ドアが吹っ飛んできて勝手に木っ端微塵になりました)
ウィンスト「弁償だ! アパート追い出されたら次に住む部屋を見つけるのが面倒なんだぞ!」
トウジ「なんで?」
ウィンスト「この部屋はドラゴンOKで、裏庭で遊ばせても良いらしいからな。前の人が従魔連れですっかり魔物もOKなアパートとして有名らしい」
70
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。