装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

731 これは高度な心理戦である


「じゃあ、結局誰なんだ……」

「知らん」

 ウィンストも知らない奴になると、本当に謎が深まった。
 迷宮入りだ。
 とりあえず、事のあらましだけでも説明しておくとする。

「ウィンスト、ここに来たのは色々と話があったからなんだ」

「ふむ? それで家を訪ねたら誰かいたってわけか?」

「そうそう。鍵空いてたからね」

「閉めたはずだが……おそらくぶっ壊したんだな、弁償ものだぞ」

 ウィンストはため息をつきながら言葉を続ける。

「で、何の話だ? 他に頼みたいことでもあるのか?」

「いや頼みごとと言うか……とりあえず俺、イグニールと結婚した」

「おお、おめでとう。親友の結婚報告はめでたいな」

「ありがとう」

「つまり、今は新婚旅行中ってことだろうか?」

 そこまで言った後、ウィンストは少し悲しそうな目をした。

「親友であると言うのに、挙式に呼ばれなかったのが非常に残念だ」

「怒涛の勢いで結婚することになったから、正式な挙式はまだだよ」

 この世界でウエディングドレスなんて着るのか知らないけど。
 彼の言葉で、是非とも着せてあげなければいけないと思った。
 そういうのって女性の夢だというし、俺も見てみたい。

「落ち着いたら是非挙式をあげるから、来てくれよ」

「良いだろう。必ず駆けつける」

 俺とイグニールの結婚式かあ……。
 誰を呼ぼうか。
 全てが終わった時、平穏が来るのはもう少し先かもしれないね。
 でも、悪くない忙しさなんじゃないかと、そう思った。

「世間話しながらグラグラするな! 下ろして!」

 女の声がする。
 で、結局お前は誰なんだ、という話に再び戻った。

「お前が自白しないと、永遠に世間話をし続けるぞ?」

「そうだ。これはトウジと私が仕掛けた高度な戦い方だ」

「え、そうなの?」

「む、そうじゃないのか?」

「「…………」」

 そういうことにしておこう、と言う運びになった。
 自白するまで、このままグラグラさせながら話を続行する。

 絶対吐くもんか、みたいな手合いには良いかもね?
 逆に。

 ほったらかしにされることによって、不安を募らせる。
 自分で考える時間、それは相手に活路を見出すことにもなりかねない。
 だがしかし、しっかり実力差を見せた後ならば、一転して不安になる。

 上司とか先輩が「ちょっと話がある」と呼び出すようなもんだ。
 何もしてないのに「怒られるのかな……」と感じてしまう。
 あの不安だ。

「で、結婚報告以外の理由だけどさ」

「うむ」

 ちなみにこの間、ポチとチビは飽きて別のことをしていた。
 一緒に本を読んだり、積み木みたいにして遊んでいる。

 って、え?
 本を積み木?
 何してんだあいつら!

「こらっ、本を積み木みたいにしてお城を作るんじゃありません!」

「アォーン」

「ギャーオ」

「まあ怒るなトウジ。暇なのだろう、私は別に構わない」

「でもなあ……?」

 とはいえ、人様を本を粗末に扱うのはダメだろう。
 もっとも、買った本は全て分解する俺が言うのもなんだけどな。

「その辺の本は全て読んだし、あとは私が書いたものだから」

「え? ウィンストが書いたの? マジ?」

「ああ、万が一にも再び自我を失うようなことがあれば……と、日記がてらに物語を綴っている」

「小賢者の大冒険って感じか、後で読ませてもらってもいい?」

「構わないが、そんなに面白いものでもないぞ」

「そんなことはないと思う」

 だって日記ってことは、ウィンストの私生活じみたことが書かれてるんだぞ。
 多分「へ~」って感じで面白いと思う。

「で、話が逸れに逸れてしまっているが、他の理由は何だ?」

「ウィンストの師匠に、会いに行きたいんだ。だから話を聞きに来た」

「私の師匠? ……確かにトウジならば私も是非とも会わせたい」

 だが、とウィンストは続ける。

「今はまだ無理だ。その理由に関しては、私も言えない。すまん」

「──ろくに魔法も使えないバカ弟子」

 何やら事情があって言えないと首を横に振るので。
 過去の賢者の手記に存在していたキーワードを言い放ってみる。
 すると、ウィンストの目の色が少しだけ変わるのがわかった。

「む? 居場所についての規制が取れた……トウジ、見つけたのか?」

 頷いて返答する。

「クロイツに再召喚された時、昔の賢者の情報を見つけたんだ」

 そしたら、案内役として弟子がいるってのがわかった。
 俺はおそらくウィンストのことだろうと思ったのだが、正しかった様だ。

「その言葉は、過去に私が師匠から言われたものである。懐かしいな」

 いったいどれだけ前の話なんだろう?
 そもそもウィンストはいつから生きてるんだ。
 色々と謎が深まるのだが、それは良い。
 長生きする魔物って無駄に多いし、上位種だったらさもありなん。

「よしトウジ、私が案内役をしよう。今すぐにでも向かうのか?」

「いや、一度タリアスに行くんだけど……その前のこの女だ」

「その素性もわからん得体の知れない下品な女か」

「や、やっとこっちに話題が向いてくれた……寂しかったよ……」

 今まで「おい」とか「話聞け」とか色々煩かったのだが、無視していた。
 そうすると、今にも泣き出しそうな感じになっている。
 服すら着させてもらってない状況で宙吊り拘束だから情けなくもなるか。

 だが、十分に考える時間はあっただろう。
 それを踏まえた上で、ウィンストと一緒に今一度尋ねる。

「「お前誰?」」

「夢幻楼街から遣わされた者だよお……そろそろ服着させてえ……」
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