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tera

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本編

734 義憤マン先輩再び

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 “──とにかく弁償しろ、話はそれからだ”

 そう言い残して、少し考えるとその場を後にしたウィンスト。
 向かう先は、おそらく山脈だろう。
 誰にも邪魔されずに思考に浸れる場所ってことで、だ。

 そして、弁償しろと言われたものは仕方がないと。
 ジェラスも「めんどくさいわね」と零しつつ外に。

「金持ってないって言ってたけど、どうすんだろ?」

 俺はなんとなくどうやって稼ぐのか気になった。
 だから彼女の後をつけることしにしたのである。

「アォン」

 ポチは肩をすくめながらメモ帳に考えを書いた。

「魅了もってるならいくらでも貢がせれるって?」

「ォン」

「な、なるほど……」

 確かにポチの言うとおりである。
 魅了は生き物に対して抜群の効果を持つスキルだ。
 尽きることなき欲望を持つ人間には、特に。

 ウィンストは賢者だから通用しないそうだが……。
 俺は、朝からしっかり霧散の秘薬を飲む癖をつけておいてよかった。
 今頃どうなってたかもわからんぞ。
 結婚してまだ1ヶ月も経ってないのに裏切る結果になるところだった。

「アォン」

「え? でもそんなお金で弁償させるわけにはいかないって?」

「ォン」

「なんなら、1週間くらい丼ものパイン本店で働かせたらいい、か……」

 実に正義感の強いポチらしい意見。
 しかし、俺は相手を選べばそんなの知ったこっちゃないと思った。
 持ってないやつから巻き上げるのは許容できない。
 だが、許される状況はどこかしらにあったりするのだ。

 ……例えば。

「おうおう姉ちゃん可愛いじゃんか、そんな薄着で誘ってんのかあ?」

「赤いドレスたぁ、起きてくる時間間違えてんじゃねえのお?」

 ああ言う、しょうもない奴らとかね。
 色目立ちする露出の多いドレスを着ているから、早速魚みたいに男が寄って来ていた。
 俺は特にそうでもないけど、ジェラスの見た目は一般的には妖艶な美人タイプである。

 グラマラスで胸もでかい。
 フェロモン見たいなのが漂っている雰囲気すら感じる。

「あら、私は高いわよ?」

「おいおいおいおい、もう売り出してんのか? 真昼間っから?」

「テンション上がって来たぜ! フハーフハー!」

 会話を遠くから聞いていて理解した。
 あいつ、弁償代は体を売って稼ぐ気である。
 ジェラスが視線を向ける度に、男の鼻息が荒くなっていた。
 やっぱり魅了使ってやってんだな……。

「アォン……」

 それを見ながらため息をつくポチ。

「ま、まあ方法の指定はないから……それに一応真っ当な商売だよ……」

 どの世界にも、こう言った夜の商売ごとなんかつきものだ。
 この世に性欲というものが存在する限り、消滅することはない。
 なんかそう言った概念体もいそうな予感がして来たぞ……。
 できることなら、俺を関わり合わないことを願うばかりだ。

「なら、裏路地行きましょ?」

「ここでかぁっ!? 好きもんじゃねえかよぉ~!」

「お、おれはどこでもいいぜ! 早くしろよ!」

「もう、手を引っ張らないで? 時間はたっぷりあるんだから」

「いいや待ちきれねえ! 金なら有り金全部積んでやるからよ!」

「契約成立──」

 ニヤリとジェラスが口角を上げた瞬間。
 彼女の手を引っ張っていた男が吹き飛んだ。

「昼間っから女を手篭めにするとは、お前ら最低なゲス野郎だな!」

「なんだテメェ! 良いんだよこの女はよ!」

「うるさい黙れ!」

「ぐはっ!? テメェいきなり何を……」

 もう一人の男は、顔面を思いっきり殴られて壁にぶつかり昏倒した。
 それを鼻で笑いながら、突然躍り出た男は言う。

「俺はテメェみたいなゲス野郎が大っ嫌いなんだ!」

 こ、これは……!
 聞き覚えのある声。

「お嬢さん、危ないところでしたね。そんな腐った野郎よりも、俺と一緒にお茶しませんか?」

 そして聞き覚えのあるセリフ。

「はあ? あんた誰よ」

「俺はギフマン! このサルトを守護する冒険者、ひと呼んで神がくれた贈り物……ギフト!」

 ギフだあああああああああああ!
 義憤マン先輩きたああああああ!

 前にサルトで一悶着あって以来だな、ギフ。
 なんと、まだサルトで冒険者をしているみたいだった。
 それにしてもサルトを守護する冒険者。
 ひと呼んで神がくれた贈り物ギフトとか。

「絶対自称だろうなあ……」

「ワフゥ」

 俺の言葉に、ポチもため息交じりに頷いてくれる。
 しかし、まさかこのタイミングとは……。
 あいつ、なんかそう言う星の元なんじゃないの?
 運命論とやらを、なんとなく信じてみたくなりました。








=====
1話破滅予定が、思ったより人気なんで2話使って彼の近況描写します。
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