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本編
744 どうていふたり
「……は? いきなりどうしたかと思えば、痴話喧嘩か?」
「~~~~///」
ガレーの言葉に、イグニールの顔がぼっと真っ赤になる。
「うわっちぃっ!?」
そして、何故か火の粉が身体中から放出されて爆竹みたいに連鎖爆発していた。
……え、何その恥ずかしさで溢れ出してくる爆発する火の粉。
「ガレー大丈夫か?」
「トウジ、イグニールはいつからこんな危険な体質になったんだ」
「いや……どうだろう……」
昔のヒステリックな時、そういうものはまったくなかった。
烈火のような凄味はあったとしても、ここまでではない。
恐らく、レベルアップや装備の効果で強くなり過ぎた結果だ。
有り余るINTやMP。
それが体外に放出されていると考えて良い……のかもしれない。
本当のところはどうか知らんけど。
詠唱とかしなくても、魔法スキルって普通に発動するしな。
意志の力とか言うもんで。
「トウジ! 聞かれちゃったじゃないの! もう!」
「いや俺に言われても……」
叫んだのはイグニールであって、俺は何も。
悶々とさせてしまっているのは悪い。
でも俺も当時は多分悶々としていた気がする。
結局、ポチとピーちゃんがいないと寝れない。
「俺がポチ、イグニールがピーちゃんを抱っこして寝るって良いよね」
「まあそれはそれで良いんだけど。話すり替えてない?」
「ちょっと! あたしもいるし! 一緒に寝てるし!」
「お前はマクラスとな」
いつも抱っこして寝ているポチが、稀に枕になっていることがある。
抱き枕とかじゃなくて、普通に腹をガチ枕にしている時だ。
そういう時って、だいたい朝、ポチが口聞いてくれなくなります。
「どうしたんですぞ~?」
「ぷぴ」
「アォン」
「クエッ」
「……」
後からみんなが連れ立って続々と廊下に出てきた。
骨、ピーちゃん、ポチ、コレクト、ゴレオである。
「騒がしくなってきたな」
ちなみに、場所はガレーとノードが住むアパートである。
今後のパーティーメンバー増加を見越しての広い部屋。
だが、相変わらず二人で暮らしているそうだ。
「隣で? え? 毎晩悶々? え? どういうことですか?」
未だ首をかしげるノードに、ガレーが言う。
「まだわからんのかノード。イグニールとトウジは恋人だ」
「えええええええええ!」
大口を開けて驚くノード。
話のついでに俺はガレーの言葉を訂正する。
「一つ語弊があるなガレー」
「なにがだ」
「恋人じゃなくて、こないだ結婚した」
「はええええええええええええ!!」
ガレーじゃなくてノードの方から大声が上がる。
いや、流石に驚き過ぎだと思うんだけど。
ノードはまだまだこう言う話に疎いらしい。
「落ち着けノード」
両ほほを抑えて顔を真っ赤にするノードを呆れた様子で横目に、ガレーは言う。
「つーか、その兆しは前に会った時に感じてなかったのか? 俺は結局はこういう結果になるだろうな、と思っていたぞ? Cランク昇格依頼の時から、こいつらは仲よさそうだったし、トウジはイグニールが他の冒険者とパーティー組んでないか逐一聞いてたし、イグニールもイグニールで誰とも組まずにソロだって言い張ってそれを貫き通していたからな? これはもう付き合ってるレベルをとうに越していると感じていたのだが、それでもあの時はあくまでパーティーメンバーになるとかならないとかそんなくだらないことで思春期の若者みたいなむず痒展開をお披露目してくれやがったからな!」
久しぶりに聞いた、ガレーのワンブレスペラペラ。
このペラ回し、相変わらず健在で何よりである。
「片や25、片や30、正直良い年こいた大人が何をやってるのかと思えば……なんだ付き合うどころか結婚までして、同じベッドで寝てるくせに、何の進展もなく悶々しているカミングアウトとか……はあ、生まれ変わって子供からやり直せ、お前らの年齢的には時間の無駄だぞ」
「言ってくれるじゃない、ガレー」
「だが、恋人を通り越した夫婦ともなれば、将来の話だって出てくるだろう。あ、そうだ。そう言えば今日なんか道端で出会った女からこんなものをもらったんだが、俺は現状使い道がないからお前らで使えよ」
話の途中でガレーがポケットから何かを取り出した。
唇マークがついた名刺とともに、小さな紙袋。
「何よ、これ」
「有名な娼館の娼婦とやらがくれた。何やら賢者のアーティファクトを改良して作られた避妊具とか何とか言っていた」
「へー」
手紙を入れるようの小さな紙袋から取り出したそれを、イグニールは何気無しに見つめるのだが、一方の俺は呆れ返っていた。
どう見てもコンドームです、本当にありがとうございました。
「あっ、それ僕ももらいました」
ノードも取り出す。
ガレーと同じものをもらっているようだ。
「……誰から何でもらったんだ、そんなもん」
聞いてみると。
「紫色の髪の毛で、露出の激しい赤いドレスを身につけたボンキュッボンな女からだ」
「ですね。なんか二人とも童貞臭すごいからって、哀れみの目を向けられましたね?」
ねえ、童貞って何ですか?
避妊具って、何に使うものなんですか?
何で僕たち、哀れみの目を向けられたんですか?
そんなことを呟きつつ、首をかしげるノード。
ノ、ノードぉ……。
どこまでも純粋なんだな、今後が心配だよおじさん。
そんでもってジェラス、お前は何営業してんだ。
「ノード知らなかったのか? 童貞っていうのはまだ女性と一回もしたことない人のことを言うんだぞ?」
「え? 女性と……なにを──はわわっ」
ガレーの説明を聞いて、一瞬首を傾げた後すぐに察して顔を真っ赤にするノード。
「こ、怖い! このもらったやつ怖い! ガレーさんもそんなもの持っちゃダメです!」
「あがっ!?」
おおう、昔の記憶がフラッシュバックしたんだな。
エリカに襲われかけた時の、あの時の記憶が。
唐突に後頭部を殴られたガレーの顎が外れていた。
「あががががが」
「イ、イグニールさんにあげます! 僕にはとても! うわあああああ!」
「あ、ちょ」
そのまま顔を両手で押さえて部屋の奥へと走っていくノード。
ああもう、話が一向に進まないなと目で追っていると、骨がニヤケ面で寄ってくる。
「トウジ様、良いものをもらえましたぞね」
「ぞねて。語尾よ」
でも、もらったとしても現状俺も使い道が……。
「ねー、それなんだし? どう使うし?」
「……イグニールに聞いとけ」
「ねえ、毎回思うんだけど。あんた、そういう質問全部私に丸投げしてない?」
「ぎくり」
「前だっていきなり突拍子もなく聞かれたんだけど? 丸投げしてるわよね?」
「そういうのは同性同士で話した方がいいと思うからね? うん、やっぱり?」
「はあ……まあいいわよ。とりあえず部屋に入りましょ。ノード部屋に引きこもっちゃったみたいだし、宥めてあげて、あとはガレーの顎を元に戻さなきゃ」
「そっすね」
ため息一つで話を一気にまとめたイグニールの手腕。
さすがである。
何でこんな話で言い合いしていたのかって説明もしなきゃっぽいし。
この際みんなにこれから戦う相手と奪われた俺の性欲の話するか。
「そうだトウジ」
みんなを部屋に戻していると、俺の耳元でイグニールが囁いた。
「これ適当なものに全部カナトコしなさい。今後を見越して1000個くらい」
「えっ」
そんなにたくさん面倒臭いよ……。
=====
下ネタではない。
1話1話にコンセプトを持たせると、少し筆が進みました。
やる気出ました頑張ります。
どんな時も、私は皆様の応援によって支えられてきました。
頑張ります、頑張りますので。
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