装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

745 あがが

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「あがー!? あがが! あががががが!」

「誰かガレーの顎戻し忘れてるぞ」

 俺の身に降りかかった面倒ごと事細かに話している最中だ。
 ずーっとガレーがうるさかった。
 誰だよガレーの顎を元に戻し忘れたやつ、いい加減にしろ。

「ノード、何とかしろ」

「最近癖になっちゃってるみたいなんですよね」

 精神を取り戻し、自室から出てきたノードに頼む。
 何度もなんども戻しても、最近勝手に外れるらしい。

「もともとはノード、お前のせいだろ!」

「人聞きの悪いことを言わないでください。ガレーさん無駄に食べ物をよく噛み過ぎですよ」

「咀嚼回数とともに健康指数も上がっていくのが家訓だったんだよ!」

 ガレーは常人の3倍の速さでよく噛んで食べるとか。
 冒険者としての活動中、飯は早急に食べる。

 しかし、健康的な食事はよく噛んで食べること。
 ならば咀嚼スピードを倍々だ……とのこと。
 いくら家訓だとしても、やり過ぎはよくない事例である。

「で、話を戻すがトウジ」

 顎を戻してもらったガレーが真剣な面持ちで言った。

「ランクSになった話はレスリーから聞いた。まずはおめでとう」

「おめでとうございます、トウジさん! イグニールさん!」

 あと結婚も、と付け加えるノード。
 二人の中では、結婚よりSランクの方が大きなことらしい。
 さすがは冒険者だ。

「トウジさん、二人もそろそろAランクに駆け上がりますよ」

「そうなんですか」

「ええ、ゆっくりですが、確実に一歩一歩と業績を伸ばしています」

 彼ら二人の担当であるレスリーがそう言うのなら問題ないな。

「ふふふ、急がば回れたぞトウジ」

「覚えてたんだな」

「当然だ」

 俺がCランク昇格依頼の時、ガレーを立ち直らせるために送った言葉。
 忘れず大切にしてくれているなんて、言った価値が上がるなあ。

「しかし、急がば回れと言われた割にはお前は全然回り道してないな!」

「ああ……話すと長くなるんだよ……」

 俺だって別に急いで冒険者のランクを上げたかった訳ではない。
 ただ、なんか色んな騒動に遭遇したり巻き込まれたり。
 そんな小さな積み重ねみたいなものが、爆速で訪れただけ。

 だから基本的には実利がでかい依頼しか受けなくなったんだけど。
 結局それが来てクリアしました、で内部評価が上がってしまう。

「気づいたら最速Sランクでしたっていうね……」

 でもまあ、事情を知る奴が冒険者ギルドの支部長やってるのもでかいけど。
 今まで隠して来た部分がそれで明らかになっちゃってるんだからなあ……。

「内部評価を見た感じだと、トウジさんはSランク最上位に位置付けてますよ」

「まじすか」

 唐突にそう言うレスリー。
 オデッセイにいるカリプソの評価とか、チェックしてくれてるのだろう。

「上層部は懐疑的な部分も持ち合わせていますけど、それでもまだ過小評価なんでしょうね」

「……つまり?」

「見てないところでもっとえげつないことやってそうだな、と思いましてね」

「ははは……まあ、秘密ってことでよろしくお願いします」

 色々と勘付いてそうな雰囲気。
 女の勘とやらは、本当に恐ろしい。

「話を戻すが、何をしてるかと思えば……ダンジョンと戦ってるのか」

「しかも、八大迷宮のうちの二つから因縁つけられてるんですよね……ひええっ」

 イグニールと何で言い合っていたか、に対する回答でダンジョンコアを相手にしていることを伝えた。
 そして、ここに来る前に一度その手先と戦い性欲を奪われたこともしっかりと話していた。
 あらぬ誤解を生みそうだから、そこはしっかりと話しておかなくてはならないのである。

「しかし、ダンジョンって攻めて来るものなのか? どっちかといえば待ち構えてるものだろう」

 ガレーもノードも、ダンジョンと戦うことに今一つピンときていない様子。
 確かに、攻略するものだからなあ……。
 コアが人格を持っていることなんて、まったく知らなかったという面持ちだった。

「あいつら、基本引きこもりだから攻めて来ることなんてまずあり得ないはずだよ」

「なんだし! トウジだって引きこもってるし! 似たようなもんじゃん!」

 ジュノーを見つつそう言うと、後ろ髪を引っ張られた。
 彼女なりの抗議活動である。

「ダンジョンを引きこもりと称することがすでにアレだが……まあいい続けてくれ」

「続けるも何も、単純に今からバチバチにやり合いますってことよ」

 俺の代わりに、隣に座るイグニールが話した。
 握られた俺の右手を彼女は固く握っている。

「旦那の性欲を奪われて、そのままにしておくわけがないじゃないの」

「お、おお……とりあえずちょっと一旦落ち着こう、イグニール……」

「落ち着いてるわよ!」

 落ち着いてないじゃん、なんか熱いぞ。
 熱い気持ちではなく、普通に迸る魔力が熱い。

「違う、俺が言いたいことは、俺らでも何か力になれるのかってところだ」

「そうですね。怖いですけど、何かあれば僕らも……!」

 それは……。
 正直言えばないかもしれない。





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明日からコミカライズスタートです!
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