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本編
746 実はただの社畜引き抜きである
「力になれることは、正直に言うがない」
俺は良い雰囲気をぶった切るように、ガレーとノードを見据えてそう告げた。
「……」
「そ、そんな」
ガレーは、ただ俺の目をじっと見返して黙っており。
ノードは、少しだけ焦ったような表情を見せる。
もっと良い言い方があったかもしれないのだけど。
……彼らは、友達だから。
「強いて言うなら、だけど……トガルからギリスに活動拠点を移して欲しい」
「どう言う意味だ、トウジ」
「そのままの意味」
今までトガルの守護はウィンストに任せていた。
けど、彼も一緒に行くから、安全な場所に行け。
ただそれだけである。
「だいたいの敵が今日みたいにいきなり来るんだ」
今から行きますよ、だなんて警告してからは来ない。
かと言って、来るかもしれないと毎日気を張るのも疲れる。
国をまたいでも安全かどうか、それは定かではない。
ただギリスにはダンジョンがある。
他の奴らもいて、マッドサイエンティスト親子が物騒なものを作っている。
手立てを尽くすこと。
それが現状俺に一番必要なことではないだろうか、と。
「トウジ、お前……」
ガレーはアホだがバカじゃない。
むしろ、頭はすこぶる回る人物でもある。
俺の言葉の意味を理解したようだった。
同時に、熱い人物でもある。
だからこそ。
その曲がった口から出るセリフは真摯に受け止めなければならないと思った。
ナメるなよ、とか、見くびるな、とか。
それでも俺はぶっちゃけイグニールすらも置いていく気持ちでいるんだ。
面倒ごとは、あくまで俺個人に降りかかる火の粉なんだから。
「ここで熱い奴ならば、俺たちを見くびるなと立ち上がるだろう」
「ん?」
「しかし、話はもっともだった。俺には、お前が何と戦ってるのかも想像できん」
「ガレー……」
「Sランクは俺たちからすれば雲の上のような存在」
ガレーは言葉を続ける。
「評価で行けばその最高峰にも近いお前が戦う舞台に、もう時期Aランクの俺たちがどうやって立つ。舞台袖どころか、観客席側だ」
「で、ででででもでもガレーさん!」
場の空気に飲まれたのか、ノードが久しぶりに吃りながら言う。
「トウジさんは大事な友達なんですから、なんかここで決別みたいな空気にしないでくださいよ!」
「……は? 別にそんなつもりじゃないぞ?」
「あれ? そうなんですか? トウジさんも?」
「え? うん、そんなつもりじゃないけど?」
「あれぇー?」
首をかしげるノードをほっといて話を進める。
「掻い摘んで言いたいのは、あんまり関わるとろくな目に合わない、だろう?」
「うん。万が一に備えて避難しといて欲しいだけ」
「ならば言う通りにしよう。Sランクのお前が危険だと判断するなら、Bランクはその指揮下に入らねば」
「ついでに色々と手伝って欲しいことがあるんだけど、それも良いかな?」
「む? まあ必要なことがあれば力にはなろう。だがお前の力になれるかはわからないぞ」
「いや、戦闘するとかじゃないから良いよ」
俺は、ガレーの管理能力には素直に感心している。
Cランク昇格依頼の時の情報収集能力。
そして、それを元に日程を決めて遂行することはとてつもない力だ。
冒険者じゃなくても、どこでだって通用する能力なのである。
自己管理能力。
簡単そうに見えて、完璧にこなすって意外と難しいからね。
それができるガレーは、異世界を生きる社畜。
面接で「潤滑油です!」って宣言して、本当に潤滑油パターン。
「冒険者以外にも、ギリスで商会を設立してそこにお金出してるんだけど」
「そんなことまでやってるのか、トウジ……」
「うん、まあ成り行きでね。で、そっちに力を貸して欲しいんだよ」
「なに? 冒険者をやめて商会に入れと言うのか!」
「そうそう。冒険者にプライドがあるなら別に俺は良いんだけ──」
「──いいだろうやろう」
お?
二つ返事だった。
=====
明日からコミカライズ連載スタートです。
あと8万pt下回ったので、明日から更新速度遅くします。
1日一回更新で気が乗ったら二回です。
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