装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
449 / 650
本編

749 わいわいがやがや

しおりを挟む
「す、すげぇ……これが飛空船とやらか……」

「そ、空を飛んでますよ本当に!」

「改めて乗ってみると、トンデモナイ代物ですね」

 ガレー、ノード、レスリーの反応である。
 飛空船はすぐさまサルトを発ち、ギリスに向かっていた。

「外に出てみたいんですけど、良いんですか?」

「試しに出てみたら? どうなるか知らんけど」

「えっ」

 うずうずとするノードの言葉にそう返すと固まっていた。

「し、ししし、死ぬんですか?」

「ある程度レベルが高かったら問題ないはず。俺は問題なかった」

 装備の効果にもよるんだけどね。
 寒さ、暑さ、環境によるダメージは装備で無効化してるから。
 それでもイグニールの炎が熱いと思えてしまうのって……。
 超特大の火球を見たイメージによる精神的ダメージである。

「ガレーさん試しに出て見てくださいよ」

「吹っ飛ばされたら真っ逆さまだぞノード!」

「風の魔法スキルでなんとかなるでしょ!」

「ならんわ!」

 やいのやいの言い合う二人に、骨がニョホニョホと笑いながら言った。

「大丈夫ですぞ~、あくまで船の上だったら心配無用ですぞ~」

「そうなの?」

「トウジ様はそういうの関係ないレベルだからわからないと思いますけど、クロイツから帰る途中みんな出てましたぞ」

「あーね」

 説明によれば甲板の上でも浮遊結晶の効果によって安定しているとのこと。
 それに追加して、オカロは一般市民を乗せることを想定しているため。
 魔力障壁を利用した薄い膜のようなものも常に張り続けているそうだ。

「出ても死なないってさ、船長のお墨付きだよ」

「わーい! ガレーさん行きましょう!」

「ほ、本当に大丈夫か? でも少しでも甲板から顔を出したら……」

「ワシタカくんの飛行速度は尋常じゃないので持ってかれますぞ」

「もっ……」

 ロック鳥はドラゴンがいなければ空の王者のような存在。
 その最高速度は、計り知れないのである。
 俺らを連れて飛んでくれている時は、気を使って手を抜いているらしい。

「ほ、本当に大丈夫だろうな~! 落ちた時のことを想定するととんでもなく怖い!」

「わかるよ、その気持ち」

 飛行機に乗ったりすると、常に考えちゃうよね。
 無事に離陸できるかな、とか。
 無事に着陸できるかな、とか。

「鳥の翼のような揚力ではなく、浮遊力なので基本問題ありませんぞ」

 そう、骨の言う通り。
 揚力ではなく浮遊力という異世界仕様だから、あまり危険はない。
 コア部分の浮遊結晶はヒヒイロカネ製の朽ちることのない超合金。
 そして船自体は竜の名を冠する大樹のもので、鉄より軽くて丈夫。

 すごいよなあ異世界って。
 魔力とかいう謎システムでとんでもないものが作れてしまうのだ。
 その分コスト面で行くと、バカみたいな代物なんだけどね!
 でも自分で取ってきたもんだから、俺の人件費以外ただだぞ。

「安全ですって! ガレーさんこういう時だけビビりますよね!」

「お前の無邪気さに付き合って、何度死にかけたと思ってんだ!」

「お外行くの? あたしも行く! ポチとピーちゃんとゴレオも行くし!」

 やいのやいのと連れ立って甲板に出て行く大勢。
 変な雲が出なきゃ良いね。
 あのいやらしいやつ。
 でも男勢が多いから別に出たところでって感じか。

「それにしても、良き関係性ですなあ」

 そんな様子を見ながら骨が呟いた。

「おう、仲良しが一番だ」

「いえ、昔の賢者どのが見たら鼻血を出す光景ですぞ」

「……どう言うこと?」

「ボーイズラブとやらが大好物と言っていたんですぞ~」

「へ、へえ」

「空き時間によく漫画を書いてらっしゃいました。剣聖と勇者のラブストーリーを」

 すっごいどうでも良い情報だった。
 骨から色々な時系列を聞いたのだが、召喚された異世界側の時間軸は違えど。
 召喚元になった俺たちのいた世界の時間軸は同じらしい。

 残念ながら、俺はバイトを曜日単位で入れていて、日時とかそう言うのは覚えていない。
 だから詳しい日時を照合することはできないのだが、生年月日は似たようなものである。

「何かしら、そのボーイズラブって?」

「イグニールさんも興味ありますかぞ?」

「知らないから気になっただけなんだけど……男同士の恋愛のこと?」

「恋愛というか、友情というか、とにかく信頼し合う。そこに迸る真性のラブを感じるらしいですぞ!」

 あ、あくまで賢者がですが、と言葉を後付けする骨。

「ふーん……」

 そしてイグニールの視線が俺に向く。

「な、なんすか」

「トウジはそういうのじゃないわよね?」

「断固としてな」

 俺はノーマルだ。
 ってか結婚したじゃん、夫婦じゃん、証拠あるじゃん。
 ノーマルの。
 性欲は消えてしまえど、家族愛は残っている。
 あ、でもそれって守りたい連中って意味だから男も女の関係ないのか。
 あれあれ、なんだか色々と分からなくなってきたぞ……。

「俺は、ノーマルだよな?」

「ん? 何の話かよくわからんが、とりあえずひと風呂一緒に浴びようトウジ。この船、そこそこ大きめの風呂もついてて実に快適な船じゃないか。入らねば」

「お前に聞いたの間違いだった」

「聞いておいて頭を抱えるとは失礼だな。ギリスの家にもでかいのがある通り、風呂は好きだろう? 今後の予定について色々とゆっくり話しておきたかっただけなのだが……」

 タイミングよ。
 ホモの話題の途中で、男と一緒に風呂に入るのは地雷だ。

「ふーん」

 案の定、イグニールの視線が鋭くなっていた。

「ふ、風呂は良いや……あとでイグニールと一緒に入るから……」

「何気に爆弾発言ですぞ」

「なんでこの話の流れで私と一緒に風呂に入ることになってんのよ。性欲ないくせに」

「ぐっ」

 性欲あったほうがマズイだろ!
 風呂ってのはな、体を清めるところなんだよ。
 あと、ポチの無駄に泡立つ毛並みで泡を作って雪だるまとか言って遊ぶんだ。
 そしてポチに俺の生え際チェックをしてもらい、安心する行事である。

「まあ良いわよ。入るわよ。抜け毛のチェックでもしてあげる」

「ど、どうも……ってなんでそれ知ってるの」

「ポチが教えてくれた」

 ポチ!!!!!!!!!!!!!

「なんだ、トウジは薄毛に悩まされているのか? 特別そうでもない気がするが」

「未来への不安ってやつだ」

 ただでさえゴタゴタのストレスで、胃に穴が開くんじゃないかって気持ちである。
 おきて枕の髪の毛をチェックする生活が続いているのだ。
 異世界なんだからハゲに効くポーションとかないのか?
 最近デコが広くなってきた気がしないでもなくて、気が気じゃないんだ。

「こないだジュノーが食べながら寝落ちした飴が溶けて枕と髪の毛くっついてたわね」

「デリケートなのに、あいつのそういうところ嫌い!」





=====
あまり描写はありませんでしたが、基本ポチをトウジが洗い、トウジをポチが洗います。
頭部に関しては、基本的にやさーしくやさーしくポチがマッサージしてくれています。
髪は、カルマストレスとともに生きるトウジの中でもかなり大事なものとなっています。
はたして。
しおりを挟む
感想 9,839

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。