装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

748 ウィンストの回答と真実への探求

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「すまん、待たせた」

 ガレーたちが色々と思い出の話をしている間。
 俺は少し抜け出してウィンストと合流していた。

 本に包まれた部屋。
 テーブルの上に置かれたポチが出してくれた茶と茶菓子。
 それをちまちまと食べつつ、話を進める。

「……山の方で何かあったのか?」

「ああ、ジェラスが言ってた敵勢力の一人が来てた」

「なに……!」

「あの女を追って来てたらしい」

「大丈夫だったか? トウジのことだから心配はいらないと思うが」

 鋭い目つきになりながらも少し心配そうにそう言うウィンスト。

「特に問題なくキングさんが蹴散らしたけど、少し下手うった」

「どうしたんだ」

「グリードの守護者連中、何かを奪う権限持ちだったらしくて」

「うむ……」

「なんか知らんけど、性欲を奪われてしまった」

「せ、性欲? そんなもん奪ってどうすると言うんだ?」

 俺の口から出たワードに、片眉を上げてぽかんとしていた。
 小賢者と呼ばれる人物には、馴染みのないワードか。
 だって賢者だもんな。

 俺だって、大学の時にサークルクラッシャーがいなかったら……。
 異世界で賢者入りしてましたとも。

「話せば長くなるんだけど」

「聞こう。事の顛末は結果のみではなく過程を聞いてこそ意味がある」

「オッケー」

 そんなわけでジェラスの稼ぐ様子から、その後までを話す。
 ギフのことはウィンストも知っていたようで。
 どうやっても救うことができない人もいる代表例だと言っていた。
 ギフさんさあ……。

「そうだ、結局ドアや部屋の修理代金はもらったのか?」

「一応な。家に戻ったら金の入った袋が置いてあった」

「それだけ?」

「それだけだ。後の回答は俺たちに委ねようとか、そんな算段だろう」

「なるほど」

「あの下品な女とは顔を合わせても否定的な意見しか浮かばない」

 故に、それが最良なのかもしれないと彼は語る。
 確かに俺もそう思った。
 俺たちの性分、いや俺の性格をわかってなかったんだろう。
 こう言うことされるのが一番ムカつくだよな、俺は。

「で、どうするんだウィンスト」

「うむ、少し考えてみたのだが……トウジの意見が正しいと思えた」

「お? マジで?」

「そして今の話を聞いて、少しだけ良からぬ予感が確信へと変わった」

「……ん?」

 少し不穏な空気を感じる。
 ウィンストの中には、何か思うところがあるらしい。

「キモキバとか、ロブリーとかいう敵の行動……強欲というより嫉妬の側面も強い」

「……確かに」

「実は、強欲とは私の本来の種族ゴブリンは密接な関係性を秘めているのだ」

 だから、俺の話を聞いて少しだけ何か毛色が違って見えるそうだ。
 ウィンスト自体は、因果とも言える強い欲求から解放されている。
 賢者と呼ばれる存在に至った上で、一切合切の欲がない。

 以前、怨嗟の鎖に取り憑かれた事態。
 それを招いたのは、たった一つの命を救うために欲をかいたからだとか。

「でもこうして最愛の存在は私の元へ帰って来た」

「ギャオ」

 テーブルの上でゴロゴロするチビに、慈愛の目を向けて優しく撫でるウィンスト。

「そして二人でまた一緒に暮らせている。まあ、これも私の未熟さゆえかもしれない」

「ウィンスト……」

「賢者としては失格なのかもしれない、が……後悔はしていない」

 何言ってんだよ。
 大切なもののために自分を捨てて頑張ったんだ。

「だれも何も咎めないさ」

 それに人、というか仲間は力だ。
 側にいてくれる存在は重要である。

 孤独。
 それはあのダンジョンコアにもどうすることもできない強い感情。
 誰だって、なんとかしようとするもんだ。
 だから、そこを捨てまで賢者だと言い張るのは正直違うだろう。

「それであの女の話だが」

「うん」

「その違和感がどうにも私の中で拭いきれないでいる」

 だいぶ回りくどいやり方をしたようだが、それはフェイク。
 本当に味方となってほしいのかすら怪しい。
 それがウィンストの回答だった。

「言われてみれば、確かに……」

「トウジが感じた殺気は本物だったか?」

「うーん、殺しのプロでもないからわからんけど。やばいものは感じた」

「ならばそれは真意だろう」

 金を払って筋を通したように見せかけているが、実は違う。
 ウィンストが言う通り、味方の振りをした敵なのかもしれない。

「しかし、奪われたと言う事実は確かだ」

「奈落墓標はわからないが、確実に魂枯砂漠と夢幻楼街は関わっているってことか」

「うむ。私の師匠の話を唐突に出したのは、誰かの入れ知恵の可能性もある」

 少し前のウィンストならば、言葉通りに動いていたらしい。
 師匠の言葉には逆らえないようなものだから。

「だが、トウジが発見した書物に残されていた言葉の方が重いと考えたのだ」

「重い、かあ」

 あの手記の内容はそこまで重たいものではなかった。
 勇者一行の好きな料理とか、書かれてるだけだったからね。

「師匠は運命を恨み、そして抗う術を探していた。私もその一部である」

「そうなの?」

「ああ。話せば長くなるからまた今度にするが、そんな師匠が運命に委ねている」

 それは即ち、この運命の流れに私も乗るべきだ、と彼は言う。

「トウジ、戦う前にやるべきことは、敵と味方をはっきりさせておくことだ」

「うん」

「合えば全てがわかるのだ。だから行こう」

 ウィンストは立ち上がった。

「──師匠の待つ、天海神塔へ。案内人は私が請け負うぞ」






=====
毎回思うんですけど。
感想鋭すぎです。
ネタバレ指定すると負けた気がするのでしませんけどね。

あっ、1日一回更新にすると言いましたけど。
ノッてる時は二回です。
もっとも、癖みたいになってしまってて、体が勝手に更新してましたビクンビクン。


コミカライズ、本日より連載スタートです!
初期初期初期の初期トウジ!
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