装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

754 危険なお味

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 みんなを連れて、俺は以前入ったことのある入り口からダンジョン内へと入った。
 城型ダンジョンの外壁部にあたるエリア。
 懐かしのエリアなのだが、前来た時とは大きく様変わりしているようだった。

「なんだ、これ」

 さらさらの土が辺り一面に撒き散らされているのだ。

「こんなの前なかったし」

「アォン」

 いぶかしむ表情を作るジュノーと頷くポチ。

「そうなの?」

「イグニールは前はそのまま直通だったから、知らないのも無理ないな」

 一部、ギリス北方の島を取り込んだ大迷宮だからか。
 もちろん土だったり地面はところどこにある。
 が、基本的にこのダンジョンは地面を土っぽくした氷製。
 凍てつく大地ではなく、氷が大地並みのデカさなのだ。

「ギリスとノルトの北方2国をつなぐ巨大な氷の橋をイメージしたらいい」

「なるほどね」

 海面から見上げると、まさに崖のようにそり立つ氷である。

「氷の粒とかじゃ……いや、砂だな。不味い」

「食べたんですか……?」

「ふはは、世の中食べれる砂だってあるんだぜ?」

「いや……そういう問題じゃなくて……」

 さも当然のようにペロッとしたけど。
 青酸カリじゃねーんだぞ。
 地面にあるものを口に入れるなと言いたい。
 赤ちゃんか。

「アォン」

「なんだポチ公、味見してどう感じたのかって?」

「ォン」

「そうだな~、どことなく危険な感じの味がする」

 危険な感じの味というのが理解できない。
 でも、このおっさんの言うことだから正しいんだろうな。
 今まで一人でこうやって冒険して生き残って来たのだし。

「どうする、この危険味の道を先に進むのか?」

「危険味て」

 ウィンストさあ……。
 そういう真面目か不真面目かわからないノリなんとかならないのか。

「味覚で例えられてもよくわからんのだが、この砂は明らかにグリードの手の者だろう」

 魂枯砂漠って言うくらいだしな。

「ならば敵勢力がすでにこのダンジョン内部に侵入しているってことか」

「うん、そう言うこと」

「ラブちゃん! トウジ、ラブちゃんが心配だし!」

「わかってるから! いちいち髪引っ張るな!」

「ふんがー!」

「おい!」

 髪だけはやめて、よして、よしこちゃん。
 引っ張るのって毛根にダイレクトアタックしていることと同義。

「でもトウジ、どうやって行くのかしら? 前みたいに直通じゃないんでしょ?」

「ああ、コレクトとジュニアチェンジで」

 俺はイグニールの疑問に答えるべく、ジュニアを呼び出した。
 今まではダンジョン対策はリソース合戦だった。
 しかし、これからは同じ土俵で陣取り合戦が可能なのである。

「はい登場。縦一直線で道作りゃ良いんだな?」

「そう、頼むね」

「あのさあ、俺ってダンジョン専門の土木作業員じゃないんだけど?」

「良いからさっさとしろジュニア! お母さんが言ってるでしょ!」

「お前失恋したくせにまだその設定引きずっ──」

「──早くやれ。そしてその話題を蒸し返すな」

 慌てて口を押さえてジュニアに言い聞かせる。
 本人も何の感情かそこまで理解していない。
 ただ悲しかったとか、そういう思いなのである。
 いちいち蒸し返す必要性なんて皆無だ。

 と、言うか。
 その話題になると俺の胃が開きそうになる程疲れる。

「へいへい」

 面倒臭そうに頷いたジュニアはさっさとダンジョン内にダンジョンを作った。

「一応言っておくけど、このダンジョンの中に干渉するのはコスパ悪いぞ」

「どのくらい?」

「わかりやすくポーション換算してやるけど、一番良いので100個分」

「ああ、魔力全快100個ってこと? 別に良いよ使ってしまえ」

「1立方メートル単位だから、もっとかかるけどお前は良いのか?」

「ぶっちゃけそこまで使わないしなあ……?」

 以前ならば、ケチっていたところだろう。
 しかし、今はいくらでも作れる上に、暇つぶしでたくさん作った分があるのだ。

「……MP全部回復するポーションなんて存在するってのがおじさん驚きなんだけど」

「うむ、そのクラスのポーションは師匠でも作るのに時間がかかるのだが……な」

 呆れたような顔をするパインとウィンスト。

「俺の手持ちにはそれが万単位であるから、別に問題はないぞ」

 更に言えば。
 この世界でいかに神薬霊薬、そんな類だと呼ばれる代物でも外には出さん。
 外に出さない限り、値打ちなんてつけようがないから、関係ないのである。
 こういう非常事態のためにあるもんだと思えば、別に痛手はない。

 それに、MP50%回復するポーションも全快と同じ個数ある。
 あと、%回復ではないが、現状十分すぎる回復量を持ったポーション。
 その辺に至ってもめちゃくちゃ大量に在庫を抱えてるから困ることはない。

 まさにあふれんばかり過ぎて逆にラストエリクサーってこと。
 もったいなくて使わないのではなく。
 他に使うものが多過ぎて選択肢に入らない結果ってことだ。

「砂舐めて危険を感じ取る方が、びっくりなんですけどね」

「ハハハ、空気にも味があるんだから砂にだってあるだろ!」

「いや知らんけど」

 話が食い違ってるから、この呑気なおっさんは無視することにした。
 かき氷に砂まぶして食ってろ。

「ジュニア頼む」

「りょーかーい」

 お願いすると、ジュニアは早速ダンジョンを展開した。
 グンッと強烈な魔力が辺りに広まって行くような感覚。

「とりあえず100×100だから、ポーションほとんど消えた」

「……あのさ」

「なに?」

「……縦に伸ばすと思ってたんだけど?」

 強烈な浮遊感。
 このバカは、100メートルの巨大な空間を作りがった。

「俺は道を作りつつ中央へ、と思ったんだけど?」

「ワシタカ出せば良いじゃん。手狭だけど」

「いや出すしかないのはわかってるけど、一ついい?」

「なに?」

「なんでこんなことするの?」

「派手だから」

 ああ、バカ息子!

「それに、下の方になんか固まっていたっぽいから隔離したんだぞ」

「え?」

 ほれ、と指さされたので見てみると、確かに何かがいた。
 黒光りする巨大なサソリのような化け物が、下でカサカサ動いている。
 小さなサソリを率いて、それはもうカサカサカサカサ。

「ゴキブリみたい」

「ありゃデザートキングスコーピオンじゃないか!」

「ってことは砂の正体はこいつらですかパインさん」

「それは知らん。でも肉の食感はカニ、味は強烈なエビだ!」

「知らんよ!」

 サソリとか食べないし!
 こんな状況なのに、なんでもうこんな……危機感ないかなあ……。

「今に始まった事ではけどさあ……」

 ゴレオと交代したワシタカくんの背に乗りながらため息をつく。

「ツッコミを入れるこっちの身にもなってくれ……」

「それこっちのセリフよね」

 ジト目で白けきった顔をしながらイグニールが言う。

「ドロップアイテムを目の前にしたトウジも、だいたいこうよ。いやもっとひどいかも」

「……」

 そ、それは確かに否めない。

「よーし! サソリ倒すぞー! うおおおおおおお!」

「すぐ話そらすし」







=====
749話の記念でいただいたイラストですが。
一部観覧に不具合があるそうなので、書影等の方に載せ替えます。
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