459 / 650
本編
759 怒るジュニア?
しおりを挟む「え……そ、そんな……っ!」
アンダンテの一言を聞いて、俺も眉をひそめる中。
ジュノーが愕然とした表情を作る。
「ジュノー、耳を貸すな」
相手は虚飾の一部で、嘘をつく可能性しかないのだ。
虚飾、内容が伴わない上辺だけの飾り、見栄。
バカみたいに色々と語ってくれたが、それが真意だとは思わない。
「で、でも! あの髪、ラブちゃんの!」
「大丈夫だ」
襲撃を受けたとして、それに気づかないほどバカではない。
そしてかなりのリソースは蓄積されているのだ。
邪竜戦後、使用した希少鉱石とかリソースはほとんど返却している。
さらに勇者一行が来た一件のあとも、色々とリソースを渡していた。
「最終守護者が、そんなに一瞬でやられる訳ないだろ?」
ブラフだ、ブラフ。
信じて動揺する必要もないのである。
そんな俺たちのやり取りを聞きながら、アンダンテはくつくつと笑う。
「まあ、私としてはどうだっていい、些細なことだけどね?」
「黙るし!」
「でも、作られたわけでもなく彼女はただの代理権限持ち……この意味がわかるかな?」
「良いから黙るし! ラブちゃんはお前なんかにやられたりしないし!」
俺の肩に乗ったジュノーは、唇を噛み締めながら俺の後ろ髪を強く握る。
今はいいか、握らせておこうか。
「そうだぜジュノー、別に心配することはないぞ」
ふわふわ宙に浮かんで今まで様子を見ていたジュニアが降りてくる。
「ただの守護者に、権限持ちが負ける訳ないだろ?」
ジュニアは続ける。
「代理権限は、ダンジョンコアとほぼ同じと言ってもいい存在だ」
コアが守護者に負ける?
そんな非常識がまかり通ったら、ダンジョンコアなんてこの世にいない。
そう言いながら、ジュニアは鼻で笑っていた。
「ざっと周りを感知して見た感じだと、このダンジョンはすげぇ入り組んでる」
「ああ、前に勇者が来た時、みんなで改造したからな」
アスレチック風味に。
ラブも面白がって、全部に難易度とか宝を設定して楽しくすると言っていた。
かなり時間も経過しているし、作り込みも捗っていることだろう。
「んでもって、俺が無理やり奪った分以外は、特に傷一つ付いちゃいないんだ」
「ん? ってことは……」
ジュニアの話を聞いて、イグニールがぽろっとこぼした。
「ひょっとしてクリアできなくて立ち往生してたんじゃないの?」
「あっ、確かに」
奥に進むにつれてクリア困難になっていく。
相応の知恵があればクリアすることも可能かもしれないが……。
魔物連れじゃまず無理だよな?
それに、こういうものにこの世界の人たちは慣れてない。
勇者たちがちまちまクリアできていたのは、事前知識を持っていたからである。
アスレチックとか、別に珍しくもなんともないただの遊戯なのだ。
「ははーん、珍妙なダンジョン内部は、お前らの入れ知恵だったってこと?」
「別にそんなご大層なものじゃないけどな」
ここに来てそれなりに役に立っているものだとは思わなかったけどね。
後手後手に回っているかと思いきや、割と先手を打てていたようだ。
「なら、ラブちゃんは生きてるの!? トウジ!!」
「ああ、あいつの嘘の可能性の方が高いぞ」
所詮虚飾。
こういうブラフを用いた揺さぶり攻撃に長けているのだろう。
ジェラスやキモキバくんの時から、そういうもんが見え隠れしてるからな。
まったく、気持ち悪いやり方だ。
「トウジ、その髪もらって確かめてみ? 本当にその守護者のなのか」
「そうだな。それが一番手っ取り早い」
ジュニアの言葉に頷くと、アンダンテは言う。
「だったら、力尽くで奪って確認してみたらいいさ」
「そのつもりだ」
「アハハッ……さて、真実はどっちでしょう?」
高笑いを浮かべるアンダンテ。
どうやって攻撃を仕掛けようかと考えていると。
ジュニアが空中からミサイルのように飛び出した。
「トウジ、こいつは俺が相手する。お前らはその守護者を探しに行け」
俺たちを背にしながら、大広間から横に伸びる一本道を作り出す。
「珍しいな、ジュニア」
「ハッ、別に真実とかはどうだって良いんだけど、少しムカついたよ」
恐ろしいほどの殺気を持って、ジュニアはアンダンテの正面に立った。
「派手さは認めるが、裏側は陰湿なやつ。俺が一番嫌いなタイプだわ」
60
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。