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本編
772 、 ※ジュノー視点。
しおりを挟む「ヒューリー、いつまでそうして頬を膨らませているつもりですか」
「……失せろ、失セロ、ウセロ」
気さくに話しかける悪意と、片や鋭い目つきを見せる憤怒。
鋭い目つきっていうか、もうただの筋張った白目だし……。
こ、怖い。
動けばすぐさま殺されそうな雰囲気だけど。
話、と言うものを聞くために堪える。
何かあれば、すぐにトウジに報告するためだった。
「まあ、怒ったままで聞いていただいて結構ですよ」
「そもそもビシャス、なんでそんなに余裕だし!」
なんとなく気になったことを聞いた。
「権限持ちの守護者でしょ? 物を申せる立場じゃないし!」
「ああ、そんなことですか?」
ビシャスはクフフと笑いながら続ける。
「権限持ちの守護者でもありますが、私もダンジョンコアですから」
「え、ダ、ダンジョンコアだし!?」
「はい、ダンジョンコアですし」
ですから、対等ですよ対等、と胸を張っていた。
守護者でありながら、ダンジョンコアでもある。
そんなの聞いたことない。
「守護者はダンジョンコアが作り出したモノだし!」
「私の主が少々特殊な出自をお持ち故に、ですがね」
「どんなだし?」
「あまり余計な情報を教えるつもりはないのですが……」
少しだけ考えたビシャスはやれやれと肩をすくめる。
「貴方には話しておかなければならないことかもしれませんね」
「あたしに……?」
「ええ、スローフは接触しなかったみたいですが……私は違う方針ですから」
「な、なんだし!」
何を言っているのかわからない。
八大迷宮。
あたしは、それに憧れるただの一般的なダンジョンコア。
まるで話の渦中にいるような口ぶり、謎なんだし。
「帰れ、言うことを聞かなければ、逆鱗が貴様らを襲う」
あたしとビシャスのやり取りなんて気にも留めないで。
憤怒の背後に、大量の鋭い短剣のような鱗が浮かぶ。
「落ち着きましょうね、ヒューリー」
「失せろ──」
問答無用、と逆鱗があたしたちを襲う。
「失せません。これは貴方たちの中に存在する“根源”に関わる話ですから」
「──、」
ビシャスの言葉を聞いて、飛来していた逆鱗がピタッと止まった。
「……根源?」
憤怒がゆっくりと問いかける。
そのゆっくりさが、なんとも今にも噴火しそうな怖さ。
「……私の、この、無限に湧き上がる怒りの源のことか?」
「その通り。誰かに塗り固められたモノは、壊しましょう」
「こ、壊すって何をだし?」
「クフフフ、簡単な話です」
ビシャスは笑いながら言う。
「世界ですよ。秩序ですよ。法則ですよ。呪縛ですよ」
「い、意味わかんないし!」
「私もバニティ様もすでに飽き飽きとしているのです」
全てのダンジョンコアが、抗えない衝動に対して。
太古から今の今まで苦しめられてきているらしい。
ビシャスの主張はそうみたいだし。
「いったいどこまで、私たちは使命を果たせば良いのか、良いのか、良いのか!」
「……静かにしろ、キレそうだ」
「好きに怒ってくださいよ、ヒューリー。貴方の怒りは許容範囲です。その力は“届きうる”んですから」
「だから、話の意味がわかんないんだし! さっきから!」
勝手に話を進めている、というか。
ビシャスがただ一人でずっと喋るだけで、わからない。
憤怒も憤怒で、激おこぷんぷんで話通じてないし。
言葉のキャッチボールってやつがあるんだよ!
トウジが前に言ってたし。
「言葉のキャッチボールができないやつが、全員もれなく逝かれ野郎だって!」
「よくご存知で。八大迷宮を司るダンジョンコアは……」
ビシャスは右手で頭を、左手で胸のあたりを指し示しながら言った。
「全員もれなくバグってますから」
「──侮辱か。黙って聞いていたが、興味はない」
ボッと噴火したように魔力が爆発する。
周りの氷でなんとか平穏を保っていたのに、それが融解しだした。
「良いですね、久しぶりに見ました」
「や、やばっ、煽るなし! バカ!」
「邪竜の時以来ですか? クフフ、いや邪竜以降は氷漬けでしたね?」
「貴様が何を企てているのかしらんが、この怒りを私はどこに向ける」
「あ、それはご自由に」
「貴様だ。消えろ」
「もっとも、向けるのならば神に向けて欲しいですけどね? 私と主の悲願ですから」
「神!? いったい何を言ってるし!」
「ずっと考えてきたんですよ、私たちは。この閉塞した状況を打開する日を」
=====
長くなりグセが出てしまいかねないので
ちゃっちゃと進めれるように努力いたします。
毎朝の快便と同じように、すんなりと。
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