477 / 650
本編
777 激おこプンプンすな。
他の戦い方かあ……と言っても、基本的にはラブ頼み。
賢者の残したヒント、アイシクルミントが唯一の道。
俺の直感が告げる、それさえあればなんとかなるはずだと。
聞いただろ、激おこプンプンダンジョンコアの叫び。
「消えろとか、失せろとか、退けとか……」
怒りって、そんな拒絶するようなもんか普通。
キレたら誰彼構わずボコボコにしたい。
古来よりDQNとはその様な猿みたいなもんだ。
「聞いてる限りじゃ、子供の癇癪にしか聞こえんな」
「でも、怒ったトウジもそんな感じだし」
俺のため息混じりの愚痴を聞いていたジュノーが言う。
「いや遠ざけるのは冷静に怒ってる時だな」
普通に怒ったらとにかく顔を殴るとか。
相手が嫌がることを真っ先に考えるのが俺だ。
「それ……誇らしく言えることじゃないし……」
「理解してるから大丈夫だ、問題ない」
誇らしい人生なんて、生まれてこの方歩んだことはない。
だからこそ、こっちの世界では、と思っていたんだけど。
それもままならない状況な訳である。
「でも冷静に怒ってる時なら、憤怒のヒューリーも同じだし?」
「あ、確かに」
ジュノーの言う通りだ。
奴から出てくる言葉は、なぜ拒絶によるものばかりなのか。
さらに、憤怒は本気で殺しに来ず、奥に引きこもったのか。
いや、一度は確かに死んだ。
しかし、フォルの効果で俺たちは蘇った。
ダンジョンコアならば、その状況に気づかないはずがない。
だが奴は最奥に引きこもると言う選択肢を取った。
それは何故か。
どうやら、俺が思っている以上に物事は単純明快なのかもしれない。
「……死なせたくないって気持ちは、強く残ってるんだろう」
「そうだし! だって、ラブちゃんのパパだし!」
「そうだよな」
ラブは、血縁ではないものの、憤怒のことを本当の家族だと思っている。
すなわち、それだけの愛情を持って育てられたからだ。
「ふふ」
「何笑ってるし」
「いや、ちぐはぐだよな、ダンジョンコアって」
黙って俺の話を聞くジュノーに言う。
「世界を食い尽くさない様に、自分の食い扶持を作る暴飲暴食の奴」
片や。
「世界を壊さない様に、自らを氷漬けにする、激おこプンプンの奴」
こいつは憤怒、と呼ばれるダンジョンコアなのに。
娘の名前はラブ……愛と来ている。
「それだけ、必死なんだろうな、あいつも」
「うん、みんな多分色んなことで悩んでるんだし」
「よし」
「わわっ、急に動き出さないでよ!」
もう少し、色々と話す必要があると感じた。
こういう時は、腹を割って話すことが重要だ。
もっともこの状況の場合。
死線とやらをくぐり合うことになるけどな。
でも、きっとそっちの方が伝わるだろう。
「キングさん!」
「主よ、何か妙案でも思いついたのか?」
「いいや、改めて腹を括っただけだけど」
それで十分だろう。
そう思いながら笑うと、キングさんも笑い返した。
「十分だ」
俺たちが死んで。
そのまま憤怒も力を使い果たすまで暴走して死んで。
世界に力が溢れ出して崩壊して。
そんな結末なんて、誰も望まない。
目の前にいる憤怒もな。
「だから、説得する」
「主よ、通じると思うか?」
「通じるよ」
きっとな。
それを信じて突き進むしか、お互い救われるエンドは来ない。
「今この状況でも、憤怒は誰も殺したくないと思っているはずなんだから」
その時、声がした。
「トウジ! 持って来たわよ!」
「時間稼ぎご苦労じゃったのー」
イグニールとラブの声。
その手には、いくつかの鉢植えを抱えていた。
来たか、トイレの芳香剤。
もとい、アイシクルミント。
氷漬けにされたミント、と言うよりは。
氷でできた様な透き通るミントという形。
「うーむ、テイスティングして見たがそのままじゃ刺激が強いな」
「だが、この刺激ならば1ヶ月くらいは目と思考が冴え渡りそうだ」
「ギャオ……」
もぐもぐするパインとウィンストに、チビがツッコミを入れていた。
なんとなく、向こうの様子が想像できる。
ツッコミ役を買って出てくれたんだな、チビが……。
ポチみたいに……。
「あれジュニアとロイ様は?」
「やるべきことをしといてやるよって、外層部分に行ったわね」
イグニールが答えてくれる。
「なるほど」
外側を補強して、影響が外に向かうのを止めてくれるのか。
やるじゃん、ジュニア。
そしてサポートよろしくなロイ様。
「って、いつのまにでっかくなっとるのかのー!」
「まあ、色々あってな」
地味に巨大化したおかげで、焼けただれるのは右手で済んだ。
デカさ、さまさまである。
「貸してくれ、アイシクルミント」
「うむ!」
一度インベントリに入れてから、取り出す。
これで巨大アイシクルミントの完成だ。
「よし、行ってくる」
「わしも行くぞー!」
「いや、ここは俺がやる。小さいと危ないからな」
「でものう!」
「ダンジョンコアの説得は、これでも得意分野なんだよ」
アイシクルミントの鉢植えを持って、再び飛び出した。
ここにピリオドを打つぞ。
「まったく、何百年愛娘に心配をかけてんだ──」
ジャンプして、鉢植えを振り上げて。
「プルァ!」
キングさんが作ってくれた隙をついて、叩きつける。
「──起きろよ憤怒!」
ドガシャン!
氷でできた鉢植えと一緒に、巨大なアイシクルミントも氷みたいに粉々に砕けた。
「長い休暇は終わりだ!」
=====
イグニール「勢いで叩きつけちゃったけど、使い方あれであってるの?」
パイン「説得って言ったのに、思いっきり叩きつけたな」
ウィンスト「おそらく、ノリと勢いに身を任せたんだろう」
チビ「ギャオ……」
ラブ「のおおおお! パパが潰されてしまったんじゃー!」
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました