装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

777 激おこプンプンすな。

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 他の戦い方かあ……と言っても、基本的にはラブ頼み。
 賢者の残したヒント、アイシクルミントが唯一の道。

 俺の直感が告げる、それさえあればなんとかなるはずだと。
 聞いただろ、激おこプンプンダンジョンコアの叫び。

「消えろとか、失せろとか、退けとか……」

 怒りって、そんな拒絶するようなもんか普通。
 キレたら誰彼構わずボコボコにしたい。
 古来よりDQNとはその様な猿みたいなもんだ。

「聞いてる限りじゃ、子供の癇癪にしか聞こえんな」

「でも、怒ったトウジもそんな感じだし」

 俺のため息混じりの愚痴を聞いていたジュノーが言う。

「いや遠ざけるのは冷静に怒ってる時だな」

 普通に怒ったらとにかく顔を殴るとか。
 相手が嫌がることを真っ先に考えるのが俺だ。

「それ……誇らしく言えることじゃないし……」

「理解してるから大丈夫だ、問題ない」

 誇らしい人生なんて、生まれてこの方歩んだことはない。
 だからこそ、こっちの世界では、と思っていたんだけど。
 それもままならない状況な訳である。

「でも冷静に怒ってる時なら、憤怒のヒューリーも同じだし?」

「あ、確かに」

 ジュノーの言う通りだ。
 奴から出てくる言葉は、なぜ拒絶によるものばかりなのか。
 さらに、憤怒は本気で殺しに来ず、奥に引きこもったのか。

 いや、一度は確かに死んだ。
 しかし、フォルの効果で俺たちは蘇った。

 ダンジョンコアならば、その状況に気づかないはずがない。
 だが奴は最奥に引きこもると言う選択肢を取った。

 それは何故か。
 どうやら、俺が思っている以上に物事は単純明快なのかもしれない。

「……死なせたくないって気持ちは、強く残ってるんだろう」

「そうだし! だって、ラブちゃんのパパだし!」

「そうだよな」

 ラブは、血縁ではないものの、憤怒のことを本当の家族だと思っている。
 すなわち、それだけの愛情を持って育てられたからだ。

「ふふ」

「何笑ってるし」

「いや、ちぐはぐだよな、ダンジョンコアって」

 黙って俺の話を聞くジュノーに言う。

「世界を食い尽くさない様に、自分の食い扶持を作る暴飲暴食の奴」

 片や。

「世界を壊さない様に、自らを氷漬けにする、激おこプンプンの奴」

 こいつは憤怒、と呼ばれるダンジョンコアなのに。
 娘の名前はラブ……愛と来ている。

「それだけ、必死なんだろうな、あいつも」

「うん、みんな多分色んなことで悩んでるんだし」

「よし」

「わわっ、急に動き出さないでよ!」

 もう少し、色々と話す必要があると感じた。
 こういう時は、腹を割って話すことが重要だ。

 もっともこの状況の場合。
 死線とやらをくぐり合うことになるけどな。
 でも、きっとそっちの方が伝わるだろう。

「キングさん!」

「主よ、何か妙案でも思いついたのか?」

「いいや、改めて腹を括っただけだけど」

 それで十分だろう。
 そう思いながら笑うと、キングさんも笑い返した。

「十分だ」

 俺たちが死んで。
 そのまま憤怒も力を使い果たすまで暴走して死んで。
 世界に力が溢れ出して崩壊して。

 そんな結末なんて、誰も望まない。
 目の前にいる憤怒もな。

「だから、説得する」

「主よ、通じると思うか?」

「通じるよ」

 きっとな。
 それを信じて突き進むしか、お互い救われるエンドは来ない。

「今この状況でも、憤怒は誰も殺したくないと思っているはずなんだから」

 その時、声がした。

「トウジ! 持って来たわよ!」

「時間稼ぎご苦労じゃったのー」

 イグニールとラブの声。
 その手には、いくつかの鉢植えを抱えていた。
 来たか、トイレの芳香剤。
 もとい、アイシクルミント。

 氷漬けにされたミント、と言うよりは。
 氷でできた様な透き通るミントという形。

「うーむ、テイスティングして見たがそのままじゃ刺激が強いな」

「だが、この刺激ならば1ヶ月くらいは目と思考が冴え渡りそうだ」

「ギャオ……」

 もぐもぐするパインとウィンストに、チビがツッコミを入れていた。
 なんとなく、向こうの様子が想像できる。
 ツッコミ役を買って出てくれたんだな、チビが……。
 ポチみたいに……。

「あれジュニアとロイ様は?」

「やるべきことをしといてやるよって、外層部分に行ったわね」

 イグニールが答えてくれる。

「なるほど」

 外側を補強して、影響が外に向かうのを止めてくれるのか。
 やるじゃん、ジュニア。
 そしてサポートよろしくなロイ様。

「って、いつのまにでっかくなっとるのかのー!」

「まあ、色々あってな」

 地味に巨大化したおかげで、焼けただれるのは右手で済んだ。
 デカさ、さまさまである。

「貸してくれ、アイシクルミント」

「うむ!」

 一度インベントリに入れてから、取り出す。
 これで巨大アイシクルミントの完成だ。

「よし、行ってくる」

「わしも行くぞー!」

「いや、ここは俺がやる。小さいと危ないからな」

「でものう!」

「ダンジョンコアの説得は、これでも得意分野なんだよ」

 アイシクルミントの鉢植えを持って、再び飛び出した。
 ここにピリオドを打つぞ。

「まったく、何百年愛娘に心配をかけてんだ──」

 ジャンプして、鉢植えを振り上げて。

「プルァ!」

 キングさんが作ってくれた隙をついて、叩きつける。

「──起きろよ憤怒!」

 ドガシャン!
 氷でできた鉢植えと一緒に、巨大なアイシクルミントも氷みたいに粉々に砕けた。

「長い休暇は終わりだ!」





=====
イグニール「勢いで叩きつけちゃったけど、使い方あれであってるの?」
パイン「説得って言ったのに、思いっきり叩きつけたな」
ウィンスト「おそらく、ノリと勢いに身を任せたんだろう」
チビ「ギャオ……」
ラブ「のおおおお! パパが潰されてしまったんじゃー!」
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