装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

779 誰がなんと言おうと大団円

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「右手の邪竜のことは、後で説明するよ」

 ……自分で言っといてなんだが、中二かこれ。
 まあいい。
 今、目の前にあること、いる奴に集中しろ。

 アイシクルミントの効果がどのくらいもつのか。
 それは全くわからないんだからな。

 HPは……うーん、お互いにミリ単位である。
 憤怒ことヒューリーは、憤怒の効果で減少中。
 俺は、攻撃食らって半死半生のまさに極限だ。

「見ろよ」

 割れたアイシクルミントの破片が辺りに散らばっている。
 確かな清涼感が辺りに立ち込めている。
 このなんとも言えないシリアスな雰囲気を緩和してんだ。

「……」

 黙ったままの憤怒に、なんとなくそれっぽいことを言う。

「す、すげぇ綺麗だよな」

 こ、交渉人とか言ってたけど、豪語してたけど。
 正直こっからどうやって話せば良いのかわからない。

 な、何話しゃいいんだっけ。
 暴食の時、俺は何をやってたっけ。

 記憶を辿る。
 ……な、何もしてねえ。

 腕喰われて、キングさんに頼って。
 やばいところでパインのおっさんが来た。

 交渉とか、したことねーぞおい。
 やばい、どうしよう。
 と、とにかく落ち着いている状況で何か。
 何かを言わなければ。

「す、すげぇ綺麗っすね、アイシクルミント」

「……トウジ、それさっき言ったし」

「……」

 し、ししし、知ってるし。
 言った本人なんだからわかってるし。

 なんか知らないけど。
 後ろで見ているジュノー、そしてイグニールたちの視線が痛い。

「くっ、愛娘がわざわざ危険を冒して取って来たんだよ」

 マジで頼むぞ。
 回復阻害でポーション使えないんだから、マジで。

「アイシクルミントなら、お前の正気を取り戻せるかもってな」

「……」

「死ぬかもしれない状況で、お前を助けるって宣言してんだわ」

 でもって、俺は何しにここに来た?
 そりゃ手伝いにってことだな。
 だったら、最後はあいつに任せるしかない。

 憤怒の強烈な魔力も、今は収まっている。
 今だったらかなり近くで安全に話せるだろう。
 うん、それがいい。
 一刻も早く俺はこいつから離れて安全圏へ。

 そうしないと、マジで今回ばかりは死ぬ。
 HP1だし、回復阻害だし。
 キングさんの無敵時間は一撃受けてから発動する。
 すなわち、HP1だったら普通に逝っちゃうのだ。

 そうと決まれば話は早い。

「ラブ! 後はお前が話した方が良いよ」

「ッ! わ、わかったのじゃ!」

 さっさとラブを呼んで、親子で語らってもらうことにした。
 この間も長く沈黙を続ける憤怒。
 心の中で、必死に抗っているのではないかと思えた。

 あの時の、暴食と同じように。
 呪いにも似た憤怒の衝動に抗っている。

「俺ができるのはここまでだ、後は親子でゆっくり話せ」

 憤怒の襟首から手を離して、ラブとバトンタッチ。

「トウジ……」

 駆け寄って来たラブは、すれ違いざまに言った。

「……ありがとう、なのじゃ」

「うん。終わったら飯でも食おうぜ? パパさんも入れて」

 幸い、ここにはとびっきりの料理人が二人も揃っている。
 パインのおっさんと、ポチだ。
 面倒ごとが終わったら、みんなで団欒するってのがうちの定番。

「こういう時は、美味い飯を食いながら過ごすの一番だ」

「ラブちゃん! 美味しいデザートあるから! 待ってるし!」

「うん! 後はわしがパパを戻すのじゃ! しばし待っとれ!」

「俺も戻るまで1日かかるし、ゆっくり過ごしてくれ」

 そんな訳で、えっちらほっちら俺もみんなの元へと戻る。
 呆れた表情をしていたみんなも、なんだか笑っていた。
 俺の選択は、これで合っていたんだな。

「とりあえず、なんだか良い感じにまとまったわね?」

「……イグニール、あれって良い感じだし? 無理やりじゃないし?」

「ぐっ」

 誰がどう見ても良い感じだろ!
 余計なこと言うなよ。
 せっかく演出して醸し出されたイイカンジ感が薄れる。

「まっ、なんでも良いってことよ。とりあえず飯の準備すりゃ良いんだな、俺は?」

「ええ、お願いします」

「おう任せろ。今日手に入れたアイシクルミント使って、とびきりのもん作ってやる」

「ポチも召喚しておきますね」

「おう!」

 キングさんを戻して、ポチを召喚した。
 今回は本当に助かりました、キングさん。
 不完全燃焼ですが、おやすみくださいませ。

「よしポチ公! 俺たちは料理つくるぞ! 大急ぎで特製オードブルだ!」

「アォン!」

 キッチン系も大きくなってしまっているのだが、パインさんがもってるからなんとかなった。
 食材もパインさんがもってるし、やっぱりおっさんは頼れる人だ。

「そう言えば、いつの間にか巨大化解けてるけど……」

「え?」

 イグニールの疑問に、なんとなく感じていた違和感を思い出す。

「た、確かに……」

 体大きいはずだったのに、いつの間にか小さくなっていた。
 襟首持つ、とか。
 大きかったら、普通つまんでるはずなんだよな?

「まあ憤怒の効果で俺のバフが弾き飛ばされたんだろ」

「そ?」

 じゃなきゃ、ペナルティが解ける意味がわからない。
 1日はでかいままかと思っていたが、都合がいい。
 大きいままだと移動とか諸々面倒だからね。
 でも、ペナルティがつく秘薬系は飲まないでおこう。

「……ひどい怪我ね」

「え? あ、思い出したら痛くなって来たかもしれん」

 左足無いは、右手は焼けただれてるわ。
 くそ、ポーション使えないからやばいぞ。
 熱とか寒さの環境ダメージは、装備とアイシクルミントで無効化。
 後は、火傷を負った場合のダメージだけど。
 霧散の秘薬を1日1回必ず飲んでるから、その辺は全部無効化。

「あっ」

「ん? 何よ? どうしたの?」

 ペナルティ、無い。
 つまり、秘薬の効果が切れている可能性があった。

「やばい、死──」






=====
トウジはいったいどこから戻っていたのか。
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