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本編
784 ムラムラします
しおりを挟む(戻る方法? 本体が死んでて戻れるわけないじゃないですか、お疲れ様です。じゃ──)
(──待て待て、まだ行きてるからこうして幽霊になってんだって)
(はあ……?)
(他に幽霊とかって見た? 見てないでしょ?)
基本的にはゴーストチックな魔物だもんね、この世界にいるの。
つーか、そんな魔物がいるのなら、だ。
こうして霊体になっている俺たちだって、見えてて良いと思う。
なぜ見えてない……?
魔力なんて、俺からすれば霊力と変わらない部類だ。
(少し違う立ち位置なのだろうか……うーん……)
(何をぶつぶつ言ってるんですか? 気が散ります)
(お前はなんでこの状況で平然としてるんだよ……)
(別にいいじゃないですか)
呆れたような視線を向けながら、ローディは続ける。
(誰にもバレずにお姉様を見守れるならばそれで良いでしょう)
(俺にバレてるけどな……つーか、見るなよ! どっか行け!)
(はあ? 貴方に関係ないでしょう?)
(いや……)
言っていいのだろうか、結婚したから今は俺の嫁だって。
だから関係なくないし、例え女性でも見て欲しくない。
だが、知られてしまうと少し状況が変わってくる……。
(何か、関係が、あるって言うんですか?)
(えっと……)
(まさか、同じパーティーだからって、お姉様と何か)
(そ、そんなことは!)
今にも呪って来そうな表情をしていたので、言うのは避けることにした。
怖すぎる。
幽霊状態でも殺されかねない……。
今死んだら、それこそ2度と復活できない気がして来たのだ。
「イグ姉、入ってもええ?」
「……私から出るわよ」
ローディとそんな話をしている間に。
イグニールとマイヤーの話に動きがあった。
「イグ姉……」
「お風呂、入りましょ? マイヤーとゆっくり話したいこともあるし」
「うん、せやね……旅から帰って来たばっかりやし、さっぱりせな」
(お風呂ですかお姉様。では、私も)
そそくさと二人の後をふわふわついていくローディ。
(待て、何するつもりだ)
(何って、ごくごく普通にお姉様と一緒にお風呂に入るだけです。何か?)
何かって、いや確かにおかしくないけどさ。
くそ、なんか嫌なんだよ。
(霊体で一緒に入る意味ないだろ。家で入れよ。それかウチに来て入れ)
(仕事が忙しいのでそんな暇はないですよ? そもそも、入れてもらえませんし)
(ああ、俺が拒否してるからだな)
(やっぱり貴方のせいですか! 私の恋路を阻むのは貴方ですか!)
(いや、だってなんかお前キモいじゃん。イグニールに何かしそうだし)
(何もしませんよ。ええ、何も。うふふふ、何も。うふっ、えへえへへ)
(……するだろ)
説得力ねえぞ、こいつの恍惚とした今のヤバイ顔。
知ってるんだぞ、謎の薬を作ろうとしていたこと。
(しませんって!)
(信じられるか!)
(本当ですよー。今ならマイヤーさんにかぶって、お姉様にお背中流していただいたり、マイヤーさんと同じように手を動かして、お姉様のお背中をお流ししたり、現実的なプレイが可能です。普段は添い寝とか、お姉様の独り言に合わせてお話したりとか、そう言うことしかできませんけど!)
(……)
う、うわぁ、こいつ……ガチか。
ガチ過ぎて引くわ、マジで。
こんなやつに風呂を覗かれるとか、アウトだろ。
同性だからとか、そんな問題じゃない。
生身だったら自衛できるが、霊体ともなればやりたい放題になっちまう。
(行かせんぞ、風呂には)
(ふふん、霊体の歴が違いますよ──社長)
(なっ……!)
立ちふさがった俺を颯爽とすり抜けて行くローディ。
何もしてないのに、なんかかっこいい瞬間だった。
歴とか関係ないだろ!
ダメだダメだ行かせないぞ、行かせない!
(ちょっと邪魔ですってば!)
(ぬがー!)
掴めないので、なんとか立ちふさがるのだが、それでもダメだった。
すり抜けてを繰り返す。
お互いの体が重なりまくって、表現としてはなんとも官能的である。
「なあ、何があったん?」
「ダンジョンコアとの戦いが終わって、急にああなっちゃったのよ……」
「ほーん……って、相変わらずとんでもないのと戦っとんのやね!?」
「すごい巡り合わせよね。でもトウジ、そういうのほっとけないタイプだから」
「あー、それわかるわあ……見て見ぬ振りすることもあるけど、基本なあ……」
そうこうしている間に、脱衣所に来てしまっていた。
目の前で衣服を脱ぎ始めるイグニールとマイヤー。
(お姉様ぁ~! 私が脱がせて差し上げたいのに! もどかしい!)
(やめろってば、おい!)
(ちょっと、男子禁制ですよ! なんであなたまで入って来てるんですか!)
(そ、それはお前が入るから! ダメだよ、出ろってば! ほら、退散だ!)
(やれるものならやって見なさい、まあ無理でしょうけどね)
(ぐぬぬ)
だ、だったら仕方ないね。
監視するしかない。
こいつを。
それに俺は性欲失って……ん?
あ、あれ?
なんだかムラムラして、イグニールたちから目が離せない。
性欲、戻ってますね、これは。
デスして、色々とリセットかかっちゃったのかな?
なんにせよ、久々にムラムラします。
「あと、他に色々と話したいこともあるんだけど」
「なんなん、どうしたん?」
「つかりながら話しましょ」
一糸まとわぬ姿で髪を結びながら浴室へと向かう彼女たち。
(私もご一緒しますよお姉様~ぁん!)
ごくごく自然に後を追うローディを、俺も追って浴室へ。
……つーか、どうやってローディも服脱いでんだ。
霊体の物理法則とか、マジでどうなってんだろうと思う。
そんな俺は、特に脱がずにいつもの格好で風呂場へ続いた。
え、そのまま回れ右しろって?
ローディを止めるっていう大義名分があるんだ。
普通、入るだろ!
=====
トウジ「ムラムラする人この指止まれ~、描写が変わるぞ」
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