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本編
785 ちちだんぎ
「イグ姉、見ないうちにちょっと大っきなったんちゃう?」
「そう? 前と変わらないともうけど……」
「うちは誤魔化されへんで! なんなん、なんなんもう!」
「きゃっ! ちょっと、いきなり鷲掴みにしないの!」
「むぐわー! 世の中不平等やねん! なんでうちだけ!」
風呂に入って何を話すのかと思えば、乳談義か。
イグニールのを、マイヤーが怒りのままに揉みしだいている。
ちなみに体を洗っている最中なので、大事な部分は見えない。
(お、おおお、お姉様、私がお背中をお流しながしなし)
(落ち着け、ちょっと落ち着け)
霊体だってのに、鼻血を流しながら興奮するローディ。
本当にこいつ大丈夫か、主に頭の方とか。
「ぐぬぬぬ、何があかんのやろ……」
「酒ばっか飲んでるからよ」
「ぐっ」
イグニールの無慈悲な返答に、返す言葉が出ないマイヤー。
そうだよな、不健康は発育に影響するだろうし。
しかしながら、マイヤーはしっかり20歳になってからお酒を始めた。
故に、今更酒をやめたところで……うん、まあどんまい。
「マイヤー、女は胸じゃないわよ、胸じゃ」
うむ、少なくとも俺は胸で決めたりなんかしない。
恋愛ってのは、フィーリングが大事なんだぜ?
嫁さんゲットした勝ち組として、その説を提唱しよう。
「そうやねんけど……なんやみんなデカいやんけ……」
「周りに比べたら、私も小ぶりの範疇よねえ」
「骨もなんや昔は巨乳やったっぽいやん?」
「そうね、でもノーカンでしょ?」
「せやねんけど、骨抜きでも地味にジュノーが一番大きいってのが!」
「あー、確かに。でもそれは比率的にはって感じでしょ?」
「むぐぐ」
「それなら、私とマイヤーでワンツーフィニッシュよ」
さすがに無理やり過ぎる乳番付だった。
ワンツーフィニッシュて。
生活を共にするメンツの中で、人間の女性はイグニールとマイヤーしかいないから当たり前である。
「それもそうやね。うちがナンバーツーや!」
「何がナンバーツーだし?」
そんな他愛もない話をしている最中、浴室にジュノーも飛び入りした。
「ねえねえ、なんの話だし? なんの話だし?」
「胸の大きさのことよ」
「ははーん、だったらバランス的にはあたしがナンバーワァーン!」
すっぽんぽんで高らかに腕を上げて宣言するジュノー。
話は再び振り出しに戻るのであった。
(私はお姉様オンリーワンです! ハァハァ、ハァハァ……ッ)
(もうどうしようもねえな……)
なんだこの空間、はたから見ていて辟易としてきた。
男の夢である桃色空間なんだが、ローディの存在。
これが全てを台無しにしている。
まあ、良いんだけどさ……。
「それで、話ってなんなん?」
体を綺麗にした後、みんな湯船に浸かり始めた中で、マイヤーがポツリと話を戻した。
「ああ……忙しくて言うの遅くなったんだけど……」
「うん」
「私、トウジと結婚したのよ」
さらっと告げられたイグニールの言葉。
一瞬だけ、時が止まったような感覚がした。
「…………え?」
しばらくの時間をおいて、ようやく思考が元に戻ったように言葉が溢れた。
なんとなく話の内容は予測できていたのだが、まさかこんなにあっさりだとは……。
俺とイグニールが結婚しましたって報告を聞いたマイヤーがいささか心配になる。
別に自慢するわけではないが、彼女の好意には薄々気づいていることもあった。
一緒に暮らすだなんて、本当はあっちゃいけないことだと思うけど。
なし崩し的にそういう状況になってしまった現状をどうするべきか。
激しく思い悩むこともあった。
だが結論として、俺はイグニールが好きである。
マイヤーは、ビジネスパートナー的な存在なのだ。
……求めすぎだろうか?
俺の選択は間違っていたのだろうか。
結果、関係性が変わってしまうのがすごく怖い。
30歳にして、異世界でできた縁が切れてしまう。
心が締め付けられるような感じだった。
「お、おめでとう、イグ姉」
凝り固まっていた表情筋を無理やり動かしたような笑顔を作るマイヤー。
それを見つめるイグニールも、なんだか難しい顔をしている。
一方ジュノーは、泡でお馬鹿な遊びを……していなかった。
珍しく、イグニールたちの話に真剣な顔で耳を傾けている。
(はあ? イグ姉が、結婚……?)
対する俺は、ローディの首が180度回転する姿をまじまじと見据えていた。
キリキリと歯切りしが聞こえて来なくもない。
こ、怖い。
(ご説明していただけますか?)
(えっと……デブリのイグニールの実家で結婚した……かな?)
(かな? ってなんですか。殺しますよ?)
(いや、もう死んでます。だから勘弁してください)
真剣な話をしてるんで、落ち着いてください。
もうなんだよこの状況。
とりあえず鬼の形相で追いかけてくるから、この場からエスケープすることにした。
=====
ここから数話ほど、登場人物はトウジ以外全裸です。
それだけで十分でしょう、ふんどしぱいん。
感想 9,840
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