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本編
812 真性の変態とロリコン眼鏡萌え
「んほおおおお、この唯我独尊を体現したような風格! まさに太初の生まれ変わり!」
「は、はあ……」
同じスライムの目からしても、キングさんの風格は唯我独尊のようだ。
「ぷるぁ」
「ひれ伏せ!? ハハァッ! お望みと合えば体と地面の付け根も舐めます!」
体と地面の付け根を舐めるって……。
スライム式の這いつくばって靴を舐めろってことかな?
「ハァハァハァハァ!」
ブルーは鼻息荒く、キングさんの側に這いつくばってもぞもぞしていた。
変態だ、真性の変態だ。
「ぷ、ぷるぁ」
この様子には、さすがのキングさんもたじろいでいるようだった。
本人はおそらくそこまでしろとは言ってないんだろう。
でも変態って予想の斜め上を超えてくるんだ。
「ハァハァハァハァ!」
「プルァ!」
ドシンとキングさんのボディでブルーはぶっ飛ばされる。
「そんな御無体なぁっ! もっとそのボディを、ボディを!」
「プルァ」
「えっ! これ以上触りたければいうことを聞けと?」
「プルァ」
「なんでも聞きますから是非私とつがいになっていただこう」
「プ、プルァ……」
やばい、キングさんが勢いに押されている!
あのキングさんが、変態に負けそうになっている!
あのキングさんが!
「ハァハァハァハァ交配交配交配交配」
「プ、プルァ!」
ドン引きしたように顔を歪めて俺の後ろに逃げ込むキングさん。
やば過ぎる。
「気になるんだけど、スライムの交配ってどうするのかしら?」
「呑気だな、イグニール……」
「だってセッ◯スでしょ? 気になるわよ」
「みなまで言うな」
女の子が軽々しくそんな言葉を使っちゃいけません。
そもそもスライムって勝手に発生するから交配とか言わんだろ。
あくまで自分の分体を生み出すもんだ。
つーか、寿命とかないだろうしな。
見せられた家系図も、分体を作り出したのちに本体が死滅した形だろう。
「あたしも気になるし、どーするし?」
「ジュノーくらいだったら別に見てても良いわよ」
「良いわけあるか!」
くそ、まずいな。
この話題になると、なんだかイグニールがぐいぐいくる。
しのごの言ってられない状況とか。
もう少し先に進みたいという気持ちの現れだってことはわかる。
色々と許容してくれて、本当にできた嫁だ。
しかし、見られるプレイとか嫌に決まってるだろ!
次の日絶対気まずいぞ。
「そこを退け人間、王に触れられないだろうが」
「プルァ」
キングさんに背中を押された。
話をつけろということか。
図鑑で会話した時は我に任せろって言ってたくせに……。
今日はらしくないぞ、キングさん。
まあいいや。
「ブルー、一つ良いことを教えてやるよ」
「む?」
「キングさんはお淑やかなスライムがタイプなんだよ」
「プルァ!?」
黙ってくれキングさん。
そう言うことにしておけば、こいつはその通りにするだろう。
狂信的な部分を逆手にとって、交渉を進めるんだ。
「かもーん、チロル」
「ピキィ」
俺はポチだけ残して、空いている図鑑の枠でチロルを召喚した。
腕に飛びつくチロルはひんやりプニプニで可愛い。
「なんだ、その雑魚スライムは」
「キングさんはこう言うのが好みで、人型は嫌いなの」
「なに!?」
「プルァ!?」
激しく背中をどつかれた。
HPが半分減った。
まったく、装備が整ってなかったら一撃で死んでたぞ。
「ぴきぃ?」
話の内容がわからずに首をかしげるチロル。
「こんな雑魚スライムが……タイプだとぉ!」
それに対して激昂するブルー。
「あざといのが良いのか! 太初は! こんな、ちょーっと自分が可愛いからってぶりっこして! あんなちっぽけなスライムがいいのか太初は! 恋敵か!」
「プ、プルァ……!」
「なにー! ロリコンか貴様! ぐいぐいくるタイプは嫌いだと! 恋はモーションかけてこそだろうが!」
……キングさん、いったい何を言ったんだろう。
ジュノーに翻訳を頼もう。
ちなみにロイ様を出して、キングさんを話せるようにする案もあった。
しかし、図鑑で話しかけると「絶対に出すな面倒臭い」とのこと。
「ジュノー」
「なんだし?」
「キングさん、なんていったの?」
「我、寄り添ってくれるようなスライムが良い。お前すげぇ存在感強いし、やばいから近寄るなって言ってるし」
「そ、そうか……」
「太初! 唯我独尊ならば私を屈服させてあの手この手で手篭めにするくらいしろ!」
もう何言ってるのかわからないレベルの変態メスライムだった。
さあほら、と両腕をいっぱいに広げてにじり寄ってきている。
俺を中心として、キングさんと睨み合いをしながらぐるぐる回っている。
「プ、プルァ!」
「トウジ、キングさんがなんか上手いこと言いくるめろってさ。そういうの得意だろって」
「えー……」
「確かに言い訳は得意よねトウジ」
「えー……」
イグニールにもそう言われたので、とりあえずパッと頭に浮かんだことを話すことにした。
ちなみに、ポチはチロルを連れてその辺の草むらにいる虫を観察している。
俺もそっちに混ざりたい。
「ブルー、熱烈モーションも大事だが、合わせるってことも重要なんだぜ?」
「なに? それで太初が私とつがいになってくるのか?」
「可能性を飛躍的に向上させることはできる」
「ほう」
聞く耳を持ってくれたみたいなので、そのまま続ける。
「まず、体の9割を分体にします」
「こうか?」
むにょん、とブルーの体から小さなスライムが出てきた。
王冠の代わりにカチューシャをして、モノクルをつけている。
こいつ、確かスライムワイズだっけ?
ワイズ(賢者)要素がモノクルしかないな……。
それにカチューシャって……。
「久々だな、この体も」
「で抜け殻みたいになった分体の方は、俺との約束通り衛星に乗って空に向かってもらう」
「なに! いざという時、何も対処できなくなってしまうぞ!」
「馬鹿、それが良いんだよ」
「言ってる意味が……ハッ──!」
ブルーはそこで気がついたようだった。
そう、この時点で彼女は儚く幼気なスライムになっているのだよ。
「真実味を得るためには、遠くの空まで分体を飛ばす方がいいぞ?」
「なるほど。これで私もあのぶりっ子と同じステージに立てたわけか」
「そうそう。ちなみにキングさんは眼鏡萌えだから」
「プルァ!?」
「眼鏡萌えとは?」
「眼鏡をかけた異性に対して、並々ならぬ性的欲求を抱くんだ」
「なに! すでにモノクルをかけている! これも眼鏡だ!」
「追加して、さっきの眼鏡を分体にかけさせたら効果2倍じゃない?」
「確かに! これでいいか! よしできたぞ!」
よし。
衛星に乗せる、眼鏡をかけさせる。
ここまで成功したぞ。
「プルァ」
「キングさんが後で殺すだって」
「……」
でも仕方ないじゃないか!
キングさん頼りにならなかったし、くそが!
「で、最後だけど」
「うむ、的確なアドバイス。なかなかお前は筋がいいな」
「俺の任せた仕事をしてくれるならば、キングさんとの間を取り持ってやる」
「……任せろ。これでいつでも太初の側にいれるなら私はそれでいい」
分体の方と固く握手を交わして、とりあえず契約成立した。
そして、今日からキングさんはロリコンかつ眼鏡萌えである。
=====
イグニール「今夜は眼鏡、かけようかしらね」
ジュノー「なんでかけるし?」
イグニール「いつもよりちょっと変わった印象ってのが、ぐっとくるのよ」
ジュノー「へー! ならあたしもかけるし!」
もうすぐ4巻発売ですぞ!
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