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本編
819 サルトきた
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さて、イグニールの使用した帰還のスクロールにより、一瞬の内にサルトへとやって来た。
「やっぱりとんでもないわね、これ」
「そうだね」
クロイツはそれなりに遠方の国である。
それを一瞬のうちにひとっ飛びだなんて、本当にすごい代物だと思った。
ただ、惜しむらくは……。
現時点で帰還場所が近くの町ではなく生まれた場所ってところである。
ゲームで言うところのスポーンポイントだ。
変更する方法は、召喚魔法陣を用いて召喚されること。
上手く利用すれば、帰宅が非常にらくになる寸法だ。
しかし、召喚魔法陣と言えば対象が勇者や魔王を召喚する物。
下手に使ってしまうと、余計な何かを呼びかねない。
勇者や魔王は関係ない、至って普通の召喚魔法陣が見つかるまでは封印だ。
きっとあるよな?
「ここがイグニールの生まれた場所だし?」
目の前に存在する古い民家を見ながらジュノーが尋ねる。
「そうね。でももう他の誰かの家よ」
「えー、なんで?」
「昔パーティー組んでたアホに金をたかられた時に売っぱらった」
「あいつらか……」
杖だけかと思っていたが、まさか家まで売っぱらってるとは。
「まあ、別に良いんだけどね。冒険者って家を空ける多いし」
それに、と彼女は俺の腕を抱きながら言葉を付け加える。
「もう帰る場所はあるから」
「そうだね」
とりあえず心の中でしっかり言っておきましょう。
イグニールの両親……には挨拶したか。
祖父母やその他親戚の方々へ。
必ず、とは約束できないけど。
人並み以上の幸せだけは保証できたら良いなと思います。
俺が俺の願望言ってるだけみたいだが……。
約束したら守らないジンクスがあるからね。
「よし……じゃ、アルバート商会に行くか」
「サルト指折りの大商会ね? ポーションが安いから結構お世話になったわ」
そのポーション、俺が作ったやつだな。
なんか懐かしい。
「恐らくだけど、そこにマイヤーはいる」
「妙な自信ね」
「まあね。昔聞いてたから」
何がどうあっても、マイヤーの生まれ故郷がトガルであることは揺るがない。
ここがダメなら首都に向かうだけだし、それでもダメならどこ出身か聞くだけだ。
もしかしたらマイヤーの母親が里帰り出産とかかもしれないからね!
「よし、コレクト頼むぞ」
「クエー」
「トウジ、もっとマイヤーのことを考えろってさ」
「わかった。マイヤーマイヤーマイヤーマイヤーマイヤーマイヤー……」
念仏のようにマイヤーと唱える俺。
「や、やってることは理解できるけど、なんかヤバい人よね……」
そしてその様子を見ながら嫉妬するわけでもなく引くイグニール。
嫉妬してくれた方が、俺の心のダメージは少なかっただろう……。
「クエーッ!」
コレクションピーク占いの結果。
「ほとんどマイヤーっぽい気配の人を見つけたって言ってるし」
「ほとんどマイヤーっぽいってなんだよ、マイヤーだろ」
「クエーッ! クエクエクエクエ!」
バサバサバサ!
ツンツンツンツンツンツン!
「うわっ! こら頭皮を突くな鳥!」
「100%じゃないから文句言うなってさ。それに頭皮マッサージだって」
「デリケートだからやめて!」
これで禿げたら、俺は一度死んで再び蘇生してもらうぞ。
死も辞さない、そんな考えです。
◇
そうして懐かしきサルトの街を歩き、俺たちはアルバート商会サルト支店へと到着した。
久方ぶりに訪れたアルバート商会。
前に見たときよりも少しだけ……いや、めちゃくちゃ大きくなっていた。
「な、なんじゃこりゃ」
「明らかに前とは違うわね」
2階建だった建物は3階建に。
そして両サイドにあった店を2~3軒分巻き込んで、ワイドに。
前は、来店した客を中で手厚く対応する。
そんな接客方法だったのだが……。
「いらっしゃーい! いらっしゃーい! サルト初の総合商会にいらっしゃーい!」
赤と黄色の目立つ色のハッピっぽい服を身につけた店員が呼び込みを行ってた。
その声につられて、冒険者や街のファミリーたちがぞろぞろと店内へ足を運ぶ。
個別対応していた以前とは大違いだった。
感覚として言えば、商店街にイオンがきた。
そんな感じ。
「パパァ! 今日は中の屋台街で海鮮丼食べるぅ!」
「よーし、パパは大盛り頼んじゃうぞ~! ママもそこでいいかな?」
「サルトで新鮮な魚が食べられるなんて、便利になったものね~」
屋台街!?
それはフードコートみたいなもんか?
=====
長らく行き詰まっていたんですが、できるだけ毎日投稿を心がけようと思います。
お待たせしてしまって申し訳ないです。
継続は力なりというか。
毎日コツコツやるのが、しがないウェブ作家にできることだと、気づかされました。
「やっぱりとんでもないわね、これ」
「そうだね」
クロイツはそれなりに遠方の国である。
それを一瞬のうちにひとっ飛びだなんて、本当にすごい代物だと思った。
ただ、惜しむらくは……。
現時点で帰還場所が近くの町ではなく生まれた場所ってところである。
ゲームで言うところのスポーンポイントだ。
変更する方法は、召喚魔法陣を用いて召喚されること。
上手く利用すれば、帰宅が非常にらくになる寸法だ。
しかし、召喚魔法陣と言えば対象が勇者や魔王を召喚する物。
下手に使ってしまうと、余計な何かを呼びかねない。
勇者や魔王は関係ない、至って普通の召喚魔法陣が見つかるまでは封印だ。
きっとあるよな?
「ここがイグニールの生まれた場所だし?」
目の前に存在する古い民家を見ながらジュノーが尋ねる。
「そうね。でももう他の誰かの家よ」
「えー、なんで?」
「昔パーティー組んでたアホに金をたかられた時に売っぱらった」
「あいつらか……」
杖だけかと思っていたが、まさか家まで売っぱらってるとは。
「まあ、別に良いんだけどね。冒険者って家を空ける多いし」
それに、と彼女は俺の腕を抱きながら言葉を付け加える。
「もう帰る場所はあるから」
「そうだね」
とりあえず心の中でしっかり言っておきましょう。
イグニールの両親……には挨拶したか。
祖父母やその他親戚の方々へ。
必ず、とは約束できないけど。
人並み以上の幸せだけは保証できたら良いなと思います。
俺が俺の願望言ってるだけみたいだが……。
約束したら守らないジンクスがあるからね。
「よし……じゃ、アルバート商会に行くか」
「サルト指折りの大商会ね? ポーションが安いから結構お世話になったわ」
そのポーション、俺が作ったやつだな。
なんか懐かしい。
「恐らくだけど、そこにマイヤーはいる」
「妙な自信ね」
「まあね。昔聞いてたから」
何がどうあっても、マイヤーの生まれ故郷がトガルであることは揺るがない。
ここがダメなら首都に向かうだけだし、それでもダメならどこ出身か聞くだけだ。
もしかしたらマイヤーの母親が里帰り出産とかかもしれないからね!
「よし、コレクト頼むぞ」
「クエー」
「トウジ、もっとマイヤーのことを考えろってさ」
「わかった。マイヤーマイヤーマイヤーマイヤーマイヤーマイヤー……」
念仏のようにマイヤーと唱える俺。
「や、やってることは理解できるけど、なんかヤバい人よね……」
そしてその様子を見ながら嫉妬するわけでもなく引くイグニール。
嫉妬してくれた方が、俺の心のダメージは少なかっただろう……。
「クエーッ!」
コレクションピーク占いの結果。
「ほとんどマイヤーっぽい気配の人を見つけたって言ってるし」
「ほとんどマイヤーっぽいってなんだよ、マイヤーだろ」
「クエーッ! クエクエクエクエ!」
バサバサバサ!
ツンツンツンツンツンツン!
「うわっ! こら頭皮を突くな鳥!」
「100%じゃないから文句言うなってさ。それに頭皮マッサージだって」
「デリケートだからやめて!」
これで禿げたら、俺は一度死んで再び蘇生してもらうぞ。
死も辞さない、そんな考えです。
◇
そうして懐かしきサルトの街を歩き、俺たちはアルバート商会サルト支店へと到着した。
久方ぶりに訪れたアルバート商会。
前に見たときよりも少しだけ……いや、めちゃくちゃ大きくなっていた。
「な、なんじゃこりゃ」
「明らかに前とは違うわね」
2階建だった建物は3階建に。
そして両サイドにあった店を2~3軒分巻き込んで、ワイドに。
前は、来店した客を中で手厚く対応する。
そんな接客方法だったのだが……。
「いらっしゃーい! いらっしゃーい! サルト初の総合商会にいらっしゃーい!」
赤と黄色の目立つ色のハッピっぽい服を身につけた店員が呼び込みを行ってた。
その声につられて、冒険者や街のファミリーたちがぞろぞろと店内へ足を運ぶ。
個別対応していた以前とは大違いだった。
感覚として言えば、商店街にイオンがきた。
そんな感じ。
「パパァ! 今日は中の屋台街で海鮮丼食べるぅ!」
「よーし、パパは大盛り頼んじゃうぞ~! ママもそこでいいかな?」
「サルトで新鮮な魚が食べられるなんて、便利になったものね~」
屋台街!?
それはフードコートみたいなもんか?
=====
長らく行き詰まっていたんですが、できるだけ毎日投稿を心がけようと思います。
お待たせしてしまって申し訳ないです。
継続は力なりというか。
毎日コツコツやるのが、しがないウェブ作家にできることだと、気づかされました。
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