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本編
831 唐突な訃報
トガル南の海峡を超えた先に存在する国、タリアス。
空高く聳え立つ大迷宮、天界神塔を保有する大国だ。
「わー! トガルとあんまり代わり映えしないし!」
「どういう感想……?」
タリアス北端の港町を見渡したジュノーの感想。
トガルもどちらかと言えば暖かめな国。
海を隔てた隣国だから、大した違いはあまりない。
強いて言うならば、石でできた建物が多いってところかな。
そして日に焼けた浅黒い肌を持った人が多く、格好もまあ……。
「開放的ね」
「あだっ……! そ、そっすね」
透け感を重視した格好の人々に視線を向けていると、イグニールに腕をつねられた。
「目立つから、現地の服でも買いましょ? あとで装備に見た目写してもらえるかしら?」
「オッケー」
俺たちの身につけている装備は、気候の変化を一切感じない優れたもの。
しかし、周りの視線が痛い気がしたので、多少は変えておくことにした。
「これとかどうかしら?」
「イグニール、結構攻めてるし……胸と下半身以外見えてるし……」
「くびれが綺麗な人はお腹を出すのがトレンドなんだって?」
「へー、ならあたしもお揃いのにするし!」
服屋へ向かい、女性陣が衣服を選ぶ間、ポチを抱っこしながら待つ。
ほうほう、へそだしルックのイグニールか……。
最高じゃないか。
「アォン」
「ん? 俺は服を選ばないのかって? 着慣れてないのはちょっとな……」
今身につけてる服が一番なんだ。
流石にフードは脱いでおくけど、シャツとベストは欠かせない。
「アォン」
「え? 長袖は見てるだけで暑いって?」
腕まくりしときゃ、別に良いだろ。
下着や肌着以外は常に同じ格好ってのが、引きこもりのルーティンなのだ。
ポチとそんなことを話している間に、イグニールたちが戻ってきた。
ちなみに初めての町ではゴレオを出すわけにもいかんので、図鑑でお留守番だ。
「お待たせ」
「待たせたし! 野郎どもー!」
サービスシーンを期待している方もいると思うが、まだ着ていない。
ジュノーに合うサイズがない故に、一度カナトコで見た目をコピーしないといけないからだ。
「ほらさっさと見た目変えるし!」
「へいへい」
早く着たくてたまらない、といった面持ちのジュノーのためにさっさと変えといた。
そして再び服屋の試着室を借りて、タリアス式の衣服を身にまとった女性陣。
「どうかしら?」
「どうだし!」
「よく似合ってるよ」
眼福である、本当に。
二人ともタリアスでは基本的にこの格好で過ごすそうだ。
旅行を楽しんでいるのは結構だが、趣旨はそこではない。
「はやくマイヤーを探さないと」
「そうね。縁談先の人と出会っちゃう前に抑えないとね」
予想では、すでに船を降りて首都へと向かっているはず。
一応港町に降りた理由は、無事に船が着いたか確かめるためだ。
天候によっちゃ出航しないことなんて普通にあるからね。
「──号外号外! 大ニュースだ!」
新聞配りの子供が、駆けずり回りながら何やら叫んでいる。
「トウジ、大ニュースだって! なんだろ?」
「迷宮で何かすごいものが出たとかじゃない?」
天界神塔を中心として成り立つ国だ。
日夜行われる迷宮探索で、何かすごい掘り出し物が出たのだろう。
「謎の海上災害で、貿易船団が全滅だって! こりゃ大変だよ!」
「えっ!? ちょっと、一枚ください!!」
貿易船団だって!?
すぐに新聞を買うと、そこにはこう書かれていた。
“──貿易船団、全滅。生存者なし”
“被害総額20億ケテルを超える!”
「う、嘘だろ……」
タリアスとトガルを結ぶ海峡を渡っていた貿易船との連絡が途絶え、すぐに調査へ赴くと、大海原に船の残骸のみ浮かんでいる状態だったらしい。
新聞の訃報欄に、乗っていた人の名前が記載されている。
──“マイヤー・アルバート”
俺は手に持っていた新聞をくしゃくしゃに握りつぶした。
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