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本編
851 衝撃の事実
「憤怒の……ヒューリーであーるか」
大穴から颯爽と現れたのは、断崖凍土のダンジョンコア。
憤怒の名を冠するヒューリー。
「これアローガンス! 何もしとらんじゃろうな!」
肩車されて、娘であるラブも一緒にやって来ていた。
ラブはぴょんと肩から飛び降りると、すぐにこちらへ走って来る。
「ジュノーっち! 無事かのう!」
「ラブっちー! うん! 大変だったけど無事だよ! トウジ以外」
「なぬ! そう言えば、トウジの姿が見えんのう!」
キョロキョロと辺りを見渡すラブ。
トウジがいない、という言葉を聞いて、憤怒の目がギロリとアローガンスを睨みつけた。
「アキノ・トウジはどうした、アローガンス」
「我がぶっ飛ばしたであーる」
ぐわっと、憤怒の体から熱気や殺気が混ざった魔力溢れ出す。
レベルが低い人だったら、それだけで卒倒しているレベル。
「心配しなくても殺してないであーる」
そんな強烈な魔力も意に介さず、アローガンスは言葉を続ける。
「貴様と戦って生き延びた男、我がそれなりに全力で殴っても生き延びたである」
「ならどこだ」
「我のダンジョンの外にぶっ飛んだから、それは知らんである」
「広域なこのダンジョンの外までぶっ飛ばされても生きておるとは、とんでもない生命力じゃの」
ジュノーと遊びながら、ラブも会話に加わった。
これは、ひとまず戦うルートからは外れたということでいいのだろうか。
「……ふう」
「おっと、私が支えてやろう」
「ありがとう、ロイ」
なんだか体の力が抜けてしまった。
戦い終わったあと、トウジもこうして座り込むことがあったのだけど。
いつもこんな思いをして、こんな化け物連中と戦っていたのかしら。
……合流したら、労ってあげないとね。
「おい、アキノ・トウジでは飽き足らず、彼女にも手を出したのか?」
「それは未遂であーる!」
「出したし! 思いっきりぶん殴ったし! ロイっちや私ごと!」
「自己であーる! だから貴様らの提案にも乗ってやったであーる!」
「とりあえず、もう戦わなくても良いのよね……?」
額を押さえながらそう尋ねると、憤怒のヒューリーが答えてくれた。
「恩人を危険に晒すわけにはいかない。私が来たからには安心して欲しい」
「危なかったんじゃー! パパが口を滑らすから!」
「こら、腰を叩くな……そしてこの件に関しては、すまないことをしたと思っている」
ラブの口ぶりに、どういうことかと聞いてみれば……。
目覚めたヒューリーの挨拶にアローガンスが出向いた時である。
断崖凍土の一件をヒューリーから聞いていた。
切れた憤怒と戦って生きていた男だということで、興味を持ってしまったらしい。
「もっと早く出るべきだったのじゃー!」
「すまない。しかし目覚めて落ち着いたら墓参りをすると決めていたのだ」
「なるほど……」
確か、過去に色々あった自分の家族のことだったかしら。
それは重要よね。
こっちとしては少し遅かったけど、来てくれただけで嬉しいもの。
「……さて、無事は確認した。一つ良いかアローガンス」
「なんであるか」
「闇雲にケンカをふっかけて遊ぶのは金輪際にしておけ」
「嫌である。なんで我が自制しなければいけないのであーる」
「これから少し騒がしくなるからだ」
「……ふむ」
その言葉を聞いて、そっぽを向いていたアローガンスも真顔になった。
なんだか重要な話のようね。
「ビシャスが何かを企んでいる。それに気づかないほどバカじゃないはずだ」
「事実、我のところにも来たである」
「そうか……奴は何か言っていたか?」
「これからお祭りがある、だから参加してみては、と提案されたであーる」
「祭り……それでお前はどんな返事をした」
「頭ごなしに仲間になれ、と言われていたらぶっ飛ばしてそれで終わりである」
「……回りくどいぞ」
含みをもたせたような言い回しに、ヒューリーの目が再び鋭くなった。
「もちろん、面白いことがあれば参加するであーる」
ただし、とアローガンスは付け加える。
「我がどっちかにつくことは、断じてありえない。我は貴様が起きるのを今か今かと待ちわびていたである」
「……まったく、とことん面倒な性質だ」
「貴様に言われたくないである。我は自分が好きでたまらない。貴様は自分が憎くてたまらない」
一触即発な雰囲気。
第三者としてトウジとダンジョンコアの戦いに参加されたら、面倒なことになりそうな予感がした。
いや、予感ではなく、確定。
「我は今この場でやりあっても良いであるが……」
私に視線を向けながら、アローガンスは言う。
「……能力のフル使用は不可能であるな?」
「当たり前だ。人がいる場所で私は戦わない。そして貴様も同じことだろう」
「その通りで。故に、貴様が心配していたようなことは断じてないである!」
「……本当だろうな?」
「信じ難いし! イグニールを無限なんとかパンチするとか言ってたし!」
疑り深いヒューリーは、ジュノーの言葉でより一層眉間にしわを寄せていた。
「あれは売り言葉に買い言葉であーる!」
「そうなの……? 私は本気でどうしようか焦ってたけどね……」
「本当である! アキノ・トウジと戦う以外、我に興味はないであーる!」
「まあ、それは本当だろう。傲慢が傲慢である所以は、そこにあるのだから」
「ちょっとよくわからないんだけど?」
何故私を中心として話が進んでいるのか。
なにもわからず首を傾げていると、ラブが教えてくれる。
「アローガンスは、戦える者以外を殺すと、天罰が下るのじゃよ~」
「その通り。万が一破れば、一定期間スキルが剥奪される」
「秘密を軽率に喋るなであーる!!」
それを傲慢の必約というらしい。
……でも、それでも脳筋ステータスだけは残るわけね。
「ぐぬぬ、それがなければ無限の業火相手にどれだけ我が強いか証明できたであるのに……」
「……一応私、戦えるんだけど、なんでかしら?」
「「気づいてないのか(であるか)?」」
素朴な疑問に、ヒューリーとアローガンスの言葉が被った。
「……なるほど、つまりイグニールは、身重か」
私のクッションがわりになってくれているロイが、気づいたようにそう言った。
「えっ」
「えっ」
「プルァ?」
今まで黙っていたキングも、私やジュノーに混ざって唖然とていた。
「イグニール、妊娠してるの……?」
「いや、全然つわりとかまだだけど」
そもそも、私も家庭内事情ごたついてる人間だし。
別世界の人間であるトウジと、まともに子供ができるのか心配だった。
……ま、まだそんなに回数も重ねてないのに、とんでもないわね。
「アキノ・トウジの嫁の体には、もう一つ別の魔力を感じるであーる」
「うむ、ほんの僅かな魔力の揺らぎ。普通の者では感じえないだろう」
アローガンスは今いるダンジョンの主だから気づいたらしい。
そしてヒューリーは竜族だから気づいて当たり前とのこと。
「そ、そうなのね……私に……赤ちゃんが……」
「……無敵があるとはいえ、思いっきりぶっ飛ばしてしまったな、王の中の王よ」
「……プルァー」
「あっ! 喋れない振りしてごまかそうとしてるし! ロイっちいるから喋れるのお見通しだし!」
「だ、大丈夫かしら」
かなり激しい動きとかしてしまったわけだけど。
「心配しなくとも、女性には本能的に子を守る性質が存在する。魔力が強いものは特に頑丈だ」
ヒューリーにそう言われて、少しだけホッとした。
これは、トウジにもっと防御がすごい装備を作ってもらわないとかも。
「ただし、子に魔力のリソースを割く以上、君の制御が不安定になる。魔力が強いものはその差が顕著に表れる」
「わ、わかった……」
「もともと魔力がバカみたいにある竜族の女も、それでかなり大変な思いをするであるな~」
「その通り。君の魔力はすでに竜族を遥かに凌ぐ。何か困ったことがあれば私を頼ると良い」
「あ、ありがとう……ヒューリーさん」
すごく嬉しい反面、これからトウジと一緒に冒険できない。
それを考えると少し寂しい気持ちがあった。
「で、話を戻すが、君たちは何故ここにいる?」
おめでた話はこれくらいにして、ヒューリーが私に尋ねる。
「あれ、知ってるから駆けつけてくれたんじゃないの?」
「いや、アキノ・トウジはダンジョンコアに関わる数奇な運命を持っている可能性があるから、先に釘を刺しに来ただけだ……まあ、時すでに遅かったわけだが……」
ほんとね。
本当に、数奇な運命だと私も思う。
「マイヤーを探しに来たんだし! マイヤー!」
「マイヤー……?」
「一緒に住んでた女の子だし! 説明面倒だから色々省くけど、こっちで見失っちゃったんだし」
「そうね。向かう先がタリアスの首都で、空から追っていたらアローガンスのガーディーアンに襲われたのよ」
それで、何か繋がりがあると感じてアローガンスの元へやって来た。
結論としては、本人は全く繋がりのない状況。
大きく時間を取ってしまったし、私はあまり無理できない理由もできてしまった。
トウジと合流して探したいのだけど、妊娠してると伝えたらギリスに戻されるだろう。
いや、飛空船もバラバラになってしまったから、ここでお留守番かもね……。
「人探しの途中で、運悪くアローガンスに絡まれたのか。災難だったな」
「人を災害みたくいうのは失礼であーる」
「八大迷宮のダンジョンコアは災害みたいなもんじゃよー」
「それもそうであーる」
ダンジョンコア勢は随分お気楽な口調だけど。
普通の人からすれば本当に大変な騒ぎよね……。
「アローガンス、迷惑をかけたお詫びにマイヤーという人を探してやったらどうだ」
「なんで我が人の願いを叶えてやらんといかんのであーる」
「アキノ・トウジは物事の価値をしっかりわかる男だ。叶えてやればお前の頼みも聞いてくれるだろう」
「えー」
「どんな戦いをしたのかわからないが、限界ギリギリだった私を止めた男なわけだ。彼の仲間であるスライムキングも、実はもう1段階余力を残している。中途半端だったのだろう、良い案だと私は思うが」
「ふむ、ギリギリの貴様相手にであるか。やはり、まだ色々と隠し持っているであるな! 奴は!」
ならばのったである、とアローガンスはヒューリーの要求を飲んだ。
「よーし! とりあえず無駄じゃなかったし! 一歩前進だし!」
「そ、そうね」
本人のいないところで勝手に約束されちゃってるけど、良いのかしら。
マイヤーが見つかるなら、トウジも受け入れてくれるだろうか……。
無邪気に喜ぶジュノーを他所に、私はそこはかとなく心配になった。
「ちなみにであるが、もうすでにマイヤーとやらの場所には届けてあるであーる」
「えっ!? どうやってだし!?」
「天才の我は、ぶん殴った時にすでに候補地に辺りをつけておいたであーる」
「珍しく気が回るじゃないか、アローガンス」
ヒューリーに褒められ、鼻を高くするアローガンス。
大方、マイヤーのことでトウジが集中できてないからだろう、そう思っていると。
「マイヤーとかいう奴のせいで、アキノ・トウジが本気にならないからであーる」
その通りだった。
「うちのダンジョンの最下層にある温泉を任せるダーナ商会が、ビシャスが来てからどうもきな臭かったであーる」
「ビシャスと関わりがあるのか、詳しく教えろ」
「かかって来たらまとめてぶっとばすだけ故、どんな会話をしたかまでは気にも止めてないである……が、タリアス南方のさらに先にある大森林にて、同じ魂を持った双子を月と太陽の主に捧げるとか捧げないとか……?」
「アバウトだな、他に何か情報はないのか?」
「確か、スピリットマスターも巡業から帰って来て、話に加わっていたのは覚えているである。なにやら最強の力を手にするとかしないとかの話をしていたから、我もわくわくしながらお見送りしたのであーる。そこでマイヤーという名前を耳にしたようなしてないような、でも語感はそんな感じだったからとりあえずアキノ・トウジをそこに送っといたである」
=====
分割しようかと思いましたが、そのままあげることにします。
分割はよくない!
トウジ「……えっ、俺、なに? あいつとまた戦うルートあるの? えっ」
大穴から颯爽と現れたのは、断崖凍土のダンジョンコア。
憤怒の名を冠するヒューリー。
「これアローガンス! 何もしとらんじゃろうな!」
肩車されて、娘であるラブも一緒にやって来ていた。
ラブはぴょんと肩から飛び降りると、すぐにこちらへ走って来る。
「ジュノーっち! 無事かのう!」
「ラブっちー! うん! 大変だったけど無事だよ! トウジ以外」
「なぬ! そう言えば、トウジの姿が見えんのう!」
キョロキョロと辺りを見渡すラブ。
トウジがいない、という言葉を聞いて、憤怒の目がギロリとアローガンスを睨みつけた。
「アキノ・トウジはどうした、アローガンス」
「我がぶっ飛ばしたであーる」
ぐわっと、憤怒の体から熱気や殺気が混ざった魔力溢れ出す。
レベルが低い人だったら、それだけで卒倒しているレベル。
「心配しなくても殺してないであーる」
そんな強烈な魔力も意に介さず、アローガンスは言葉を続ける。
「貴様と戦って生き延びた男、我がそれなりに全力で殴っても生き延びたである」
「ならどこだ」
「我のダンジョンの外にぶっ飛んだから、それは知らんである」
「広域なこのダンジョンの外までぶっ飛ばされても生きておるとは、とんでもない生命力じゃの」
ジュノーと遊びながら、ラブも会話に加わった。
これは、ひとまず戦うルートからは外れたということでいいのだろうか。
「……ふう」
「おっと、私が支えてやろう」
「ありがとう、ロイ」
なんだか体の力が抜けてしまった。
戦い終わったあと、トウジもこうして座り込むことがあったのだけど。
いつもこんな思いをして、こんな化け物連中と戦っていたのかしら。
……合流したら、労ってあげないとね。
「おい、アキノ・トウジでは飽き足らず、彼女にも手を出したのか?」
「それは未遂であーる!」
「出したし! 思いっきりぶん殴ったし! ロイっちや私ごと!」
「自己であーる! だから貴様らの提案にも乗ってやったであーる!」
「とりあえず、もう戦わなくても良いのよね……?」
額を押さえながらそう尋ねると、憤怒のヒューリーが答えてくれた。
「恩人を危険に晒すわけにはいかない。私が来たからには安心して欲しい」
「危なかったんじゃー! パパが口を滑らすから!」
「こら、腰を叩くな……そしてこの件に関しては、すまないことをしたと思っている」
ラブの口ぶりに、どういうことかと聞いてみれば……。
目覚めたヒューリーの挨拶にアローガンスが出向いた時である。
断崖凍土の一件をヒューリーから聞いていた。
切れた憤怒と戦って生きていた男だということで、興味を持ってしまったらしい。
「もっと早く出るべきだったのじゃー!」
「すまない。しかし目覚めて落ち着いたら墓参りをすると決めていたのだ」
「なるほど……」
確か、過去に色々あった自分の家族のことだったかしら。
それは重要よね。
こっちとしては少し遅かったけど、来てくれただけで嬉しいもの。
「……さて、無事は確認した。一つ良いかアローガンス」
「なんであるか」
「闇雲にケンカをふっかけて遊ぶのは金輪際にしておけ」
「嫌である。なんで我が自制しなければいけないのであーる」
「これから少し騒がしくなるからだ」
「……ふむ」
その言葉を聞いて、そっぽを向いていたアローガンスも真顔になった。
なんだか重要な話のようね。
「ビシャスが何かを企んでいる。それに気づかないほどバカじゃないはずだ」
「事実、我のところにも来たである」
「そうか……奴は何か言っていたか?」
「これからお祭りがある、だから参加してみては、と提案されたであーる」
「祭り……それでお前はどんな返事をした」
「頭ごなしに仲間になれ、と言われていたらぶっ飛ばしてそれで終わりである」
「……回りくどいぞ」
含みをもたせたような言い回しに、ヒューリーの目が再び鋭くなった。
「もちろん、面白いことがあれば参加するであーる」
ただし、とアローガンスは付け加える。
「我がどっちかにつくことは、断じてありえない。我は貴様が起きるのを今か今かと待ちわびていたである」
「……まったく、とことん面倒な性質だ」
「貴様に言われたくないである。我は自分が好きでたまらない。貴様は自分が憎くてたまらない」
一触即発な雰囲気。
第三者としてトウジとダンジョンコアの戦いに参加されたら、面倒なことになりそうな予感がした。
いや、予感ではなく、確定。
「我は今この場でやりあっても良いであるが……」
私に視線を向けながら、アローガンスは言う。
「……能力のフル使用は不可能であるな?」
「当たり前だ。人がいる場所で私は戦わない。そして貴様も同じことだろう」
「その通りで。故に、貴様が心配していたようなことは断じてないである!」
「……本当だろうな?」
「信じ難いし! イグニールを無限なんとかパンチするとか言ってたし!」
疑り深いヒューリーは、ジュノーの言葉でより一層眉間にしわを寄せていた。
「あれは売り言葉に買い言葉であーる!」
「そうなの……? 私は本気でどうしようか焦ってたけどね……」
「本当である! アキノ・トウジと戦う以外、我に興味はないであーる!」
「まあ、それは本当だろう。傲慢が傲慢である所以は、そこにあるのだから」
「ちょっとよくわからないんだけど?」
何故私を中心として話が進んでいるのか。
なにもわからず首を傾げていると、ラブが教えてくれる。
「アローガンスは、戦える者以外を殺すと、天罰が下るのじゃよ~」
「その通り。万が一破れば、一定期間スキルが剥奪される」
「秘密を軽率に喋るなであーる!!」
それを傲慢の必約というらしい。
……でも、それでも脳筋ステータスだけは残るわけね。
「ぐぬぬ、それがなければ無限の業火相手にどれだけ我が強いか証明できたであるのに……」
「……一応私、戦えるんだけど、なんでかしら?」
「「気づいてないのか(であるか)?」」
素朴な疑問に、ヒューリーとアローガンスの言葉が被った。
「……なるほど、つまりイグニールは、身重か」
私のクッションがわりになってくれているロイが、気づいたようにそう言った。
「えっ」
「えっ」
「プルァ?」
今まで黙っていたキングも、私やジュノーに混ざって唖然とていた。
「イグニール、妊娠してるの……?」
「いや、全然つわりとかまだだけど」
そもそも、私も家庭内事情ごたついてる人間だし。
別世界の人間であるトウジと、まともに子供ができるのか心配だった。
……ま、まだそんなに回数も重ねてないのに、とんでもないわね。
「アキノ・トウジの嫁の体には、もう一つ別の魔力を感じるであーる」
「うむ、ほんの僅かな魔力の揺らぎ。普通の者では感じえないだろう」
アローガンスは今いるダンジョンの主だから気づいたらしい。
そしてヒューリーは竜族だから気づいて当たり前とのこと。
「そ、そうなのね……私に……赤ちゃんが……」
「……無敵があるとはいえ、思いっきりぶっ飛ばしてしまったな、王の中の王よ」
「……プルァー」
「あっ! 喋れない振りしてごまかそうとしてるし! ロイっちいるから喋れるのお見通しだし!」
「だ、大丈夫かしら」
かなり激しい動きとかしてしまったわけだけど。
「心配しなくとも、女性には本能的に子を守る性質が存在する。魔力が強いものは特に頑丈だ」
ヒューリーにそう言われて、少しだけホッとした。
これは、トウジにもっと防御がすごい装備を作ってもらわないとかも。
「ただし、子に魔力のリソースを割く以上、君の制御が不安定になる。魔力が強いものはその差が顕著に表れる」
「わ、わかった……」
「もともと魔力がバカみたいにある竜族の女も、それでかなり大変な思いをするであるな~」
「その通り。君の魔力はすでに竜族を遥かに凌ぐ。何か困ったことがあれば私を頼ると良い」
「あ、ありがとう……ヒューリーさん」
すごく嬉しい反面、これからトウジと一緒に冒険できない。
それを考えると少し寂しい気持ちがあった。
「で、話を戻すが、君たちは何故ここにいる?」
おめでた話はこれくらいにして、ヒューリーが私に尋ねる。
「あれ、知ってるから駆けつけてくれたんじゃないの?」
「いや、アキノ・トウジはダンジョンコアに関わる数奇な運命を持っている可能性があるから、先に釘を刺しに来ただけだ……まあ、時すでに遅かったわけだが……」
ほんとね。
本当に、数奇な運命だと私も思う。
「マイヤーを探しに来たんだし! マイヤー!」
「マイヤー……?」
「一緒に住んでた女の子だし! 説明面倒だから色々省くけど、こっちで見失っちゃったんだし」
「そうね。向かう先がタリアスの首都で、空から追っていたらアローガンスのガーディーアンに襲われたのよ」
それで、何か繋がりがあると感じてアローガンスの元へやって来た。
結論としては、本人は全く繋がりのない状況。
大きく時間を取ってしまったし、私はあまり無理できない理由もできてしまった。
トウジと合流して探したいのだけど、妊娠してると伝えたらギリスに戻されるだろう。
いや、飛空船もバラバラになってしまったから、ここでお留守番かもね……。
「人探しの途中で、運悪くアローガンスに絡まれたのか。災難だったな」
「人を災害みたくいうのは失礼であーる」
「八大迷宮のダンジョンコアは災害みたいなもんじゃよー」
「それもそうであーる」
ダンジョンコア勢は随分お気楽な口調だけど。
普通の人からすれば本当に大変な騒ぎよね……。
「アローガンス、迷惑をかけたお詫びにマイヤーという人を探してやったらどうだ」
「なんで我が人の願いを叶えてやらんといかんのであーる」
「アキノ・トウジは物事の価値をしっかりわかる男だ。叶えてやればお前の頼みも聞いてくれるだろう」
「えー」
「どんな戦いをしたのかわからないが、限界ギリギリだった私を止めた男なわけだ。彼の仲間であるスライムキングも、実はもう1段階余力を残している。中途半端だったのだろう、良い案だと私は思うが」
「ふむ、ギリギリの貴様相手にであるか。やはり、まだ色々と隠し持っているであるな! 奴は!」
ならばのったである、とアローガンスはヒューリーの要求を飲んだ。
「よーし! とりあえず無駄じゃなかったし! 一歩前進だし!」
「そ、そうね」
本人のいないところで勝手に約束されちゃってるけど、良いのかしら。
マイヤーが見つかるなら、トウジも受け入れてくれるだろうか……。
無邪気に喜ぶジュノーを他所に、私はそこはかとなく心配になった。
「ちなみにであるが、もうすでにマイヤーとやらの場所には届けてあるであーる」
「えっ!? どうやってだし!?」
「天才の我は、ぶん殴った時にすでに候補地に辺りをつけておいたであーる」
「珍しく気が回るじゃないか、アローガンス」
ヒューリーに褒められ、鼻を高くするアローガンス。
大方、マイヤーのことでトウジが集中できてないからだろう、そう思っていると。
「マイヤーとかいう奴のせいで、アキノ・トウジが本気にならないからであーる」
その通りだった。
「うちのダンジョンの最下層にある温泉を任せるダーナ商会が、ビシャスが来てからどうもきな臭かったであーる」
「ビシャスと関わりがあるのか、詳しく教えろ」
「かかって来たらまとめてぶっとばすだけ故、どんな会話をしたかまでは気にも止めてないである……が、タリアス南方のさらに先にある大森林にて、同じ魂を持った双子を月と太陽の主に捧げるとか捧げないとか……?」
「アバウトだな、他に何か情報はないのか?」
「確か、スピリットマスターも巡業から帰って来て、話に加わっていたのは覚えているである。なにやら最強の力を手にするとかしないとかの話をしていたから、我もわくわくしながらお見送りしたのであーる。そこでマイヤーという名前を耳にしたようなしてないような、でも語感はそんな感じだったからとりあえずアキノ・トウジをそこに送っといたである」
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分割しようかと思いましたが、そのままあげることにします。
分割はよくない!
トウジ「……えっ、俺、なに? あいつとまた戦うルートあるの? えっ」
感想 9,840
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