装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

862 プルァ(鼓舞)

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 “──助けようとした二人が死ぬ姿を、存分にご覧ください”

 それだけ言い残して、ソルーナはその場を後にした。
 本気だな、これは、マジで。
 裏で色々と動いていたビシャスが、いよいよ直接俺を狙ってきた。
 そういう話である。

「今更打ち拉がれたところで、罪状は変わらないぞ」

 入れ替わりで戻ってきた看守のエルフ。
 呆然と膝から崩れ落ちた俺の姿を見下ろしながら、彼は言う。

「明日、ソルーナさんが先代の葬儀と過去に分割された魂の解放を行うそうだ」

「……」

「サミュエルさんを殺した貴様に、その儀式を見せるとは……優しい人だな」

 黙ったままの俺に、看守はただ語りかける。

「咎人よ、その光景を目に焼き付けて反省しろ。きっとお前の魂は今よりマシになるはずだ」

「……看守さん、死んだ後の魂って、どうなると思います?」

 ふと、そんなことを尋ねていた。
 ソルーナへ攻撃し、かち割ってしまった魂の一つ。
 その行方が気になったのだ。

 エルフの死生観はわからない。
 俺の世界で神を信じるものはいたが、実際に見た人はいない。
 しかし、この世界にはそのような位置付けに収まったのがいる。

「太初の源へと還る、ただそれだけだと言われている」

「太初……」

「そして再び、世界を構成する一つとして生まれ出ずる」

 輪廻転生みたいなもんか。

「仮に、その前に魂が壊れてしまったり、消滅してしまった場合は?」

「同じことだ。還る。すべて、この世に溢れた魔素の元にな」

 もっとも、と看守は続けた。

「だからといってお前がまともな存在になれるとも思えんがな」

「それを聞いて安心しました」

「はあ?」

 俺の言葉に眉をあげる看守。
 極刑を待つ囚人がいう言葉ではないから、当然か。

 サミュエルは、完全なる無になったわけではない。
 その事実を知ることができて、少しだけほっとした。

 だからと言って。
 メイヤとマイヤーが死んでもいいだなんてこれっぽっちも思ってない。
 考えろ、ここからどうするべきか。

 ソルーナはビシャスの意向を汲み取って、俺をへし折る気でいる。
 そのために、わざわざ二人が死ぬ姿を俺に見せるというのだ。

 逆手に取れ。
 むしろ、二人一緒に揃っているのがその時じゃないか。
 俺の持つカードを全てそこに捧げても、やる価値はある。

「……今もどっかで見てるんだろ、ビシャス」

「急に何を呟いている。狂ったのか?」

 呟く俺に、眉をひそめる看守。
 こんな状況、あいつが見ていないわけがない。
 どこかでほくそ笑んでいるに決まっている。

 ……ビシャス。
 俺は、絶対に諦めないし、折れないからな。

「そうだ、プルァだよ、こういう時こそ、プルァ」

「???」

 いつも頼りになるキングさんを思い浮かべ、自分を奮い立たせる。
 キングさんは、どんな状況でも俺に勝利を約束してくれた。
 だったら俺は、どんな状況でも諦めないことを約束するぞ。

 摩訶不思議な世界だ。
 死んでも生き返る世界だ。

 たとえ死んだとして、蘇生が無理だとしても。
 魂が還るというのなら、直接ユノに会いに行って何とかしてもらう。
 向こうが何でもありの人質作戦をするのならば……。

 俺だって何でもありの何でもかんでも作戦をするだけだ。
 てめぇらを凌駕するくらい、なんでもありのな。

「交代の時間」

「ん? あ、ああ……少しこいつ、気味が悪かったから助かったよ……」

 そんなことを考えていると、看守の交代の時間が訪れた。
 俺の様子に若干引いていたエルフの看守に変わって、若い女性が引き継ぐ。

「何かあったの?」

「いいや、何もない。が、さっきから少し変なんだ」

「そう。この仕事も大変ね。お疲れ様」

 別に変じゃないぞ。
 プルァは俺たちの間では鼓舞の言葉だ。
 何度、救われてきたか……。

 キングさんとイグニールたち、大丈夫だろうか。
 HPは全員マックス。
 でもマップに登録されたイグニールとジュノーの位置は動いていない。
 硬直状態、もしくは町の中に逃げおおせたとか?

 わからん。
 でもこっちもいっぱいいっぱいだから、そっちはそっちで頑張って欲しい。

「大丈夫かしら?」

 女性の看守が俺に言葉をかける。

「どこもおかしくないですけど。気味が悪いなら無視しててください」

 今は考える時間が欲しいからね。

「そ、なら看守の独り言として聞いといてもらえる?」

「……? って……どこかで見たような覚えが……」

 女性看守の顔を見ると、なんだか見に覚えがあった。
 どこだっけな……どっかで見たことがある。

「私はないけど。見にきてたかもね」

「見にきて……思い出した、魔術芸団にいた人!」

 目の前にいる黒髪褐色の女性は、氷舞の魔術師サンドラと呼ばれた女性だった。
 サルトに来ていた魔術芸団を見に行った時のことである。
 キリッとした目が印象的だったのを覚えていた。

「そんな人がなんで」

「その話は今はいい、ナタリア・アルバートからの伝言だけど」

「ナタリア?」

「マイヤー嬢の母。話が長くなるから、今は聞くことに集中して」

「はいすいません」







=====
プルァ!!!!!!!!!!!!
最近世の中が騒がしいですが、プルァで頑張りましょう。プルァ。
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