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本編
887 不可抗力です
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「ギャオオオオオオオオオオオオ!」
「ひぃぃぃぃぃいいいいいい!?」
外が騒がしい。
けたたましい飛竜の雄叫びと、一人のギルド職員の悲鳴。
「ト、トトトトウジさーん!」
「はいトウジです」
ワシタカくんの足に装着された筒の中から顔を出す。
え、飛行中にうかつに顔を出していいのかって?
いいんだな、それが。
高速飛行中は、ワシタカくん自体が風除けになるのだ。
足が平行になるからね。
「な、なんでそんなに冷静でいられるんですかー!?」
「飛竜くらい別に、って感じだから」
何度も遭遇してるし、何度も撃退している。
様々な冒険を経て、多少の魔物には動じない。
「アォーン……」
「驚くのは構わないけど、もうちょっと静かに驚いてもらえますかだってさ?」
「ポチちゃんもなんでそんなに落ち着いていられるんですか!?」
「アォーン……」
ドラゴンですよドラゴンとうるさい彼女の言葉に、俺の腕の中でむにゃむにゃしながらポチが言う。
「唐揚げにすると美味しい。とのこと」
「食べるんですか!? ドラゴンを!?」
「……おいちょっと待て」
そんなポチの言葉を聞いて、俺も嫌な予感がした。
「まさかとは言わんがポチ、俺も知らんうちにドラゴン食べてる?」
「アォーン」
肯定だそうだ。
「マ、マジか……知らないうちにドラゴン食べちゃってた……」
「アォン」
「ちなみに竜田揚げと名付けましただと? ざけんなー!」
「ちょっと喧嘩しないでくださいよ! 今それどころじゃないですってば!」
「俺もそれどころじゃないよ!」
それに、世の中もっとえぐいのがいるから大丈夫だ。
ちゃんとしたドラゴンってのは、前足後ろ足あって翼が生えてるもんだ。
飛竜は文字通り飛ぶことに特化したのか、前足が翼になっている。
鳥みたいなもんだ。
むしろ、鳥だ。
「ドラゴンからすれば、一族の恥レベル」
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオ!」
俺の呟きが聞こえたのか。
ワシタカくんの後ろを追いかける飛竜がさらなる咆哮をあげている。
なんだなんだ?
そんなにコンプレックスだったのか?
「だったらワシタカくんに追いついてみなよ。彼一応鳥だよ、鳥」
体格は飛竜やワイバーンよりも倍近く大きいがね。
「ギュア……」
「アォン……」
悲しそうなワシタカくんの声と、ポチのじと目。
俺の「一応鳥」発言が少し心にきたらしい。
「ご、ごめん。別にワシタカくんを悪く言ったわけじゃないから」
そこいらの鳥と比べるなってことなのか。
それとも竜と一緒にしないでってことなのか。
正直、俺にはどっちかわからない。
どっちかが正解なのだろう。
ロック鳥は強く、鳥界の頂点に立つイメージがある。
故に、ドラゴンよりも強いと褒めておきましょう。
「ワシタカくんはむしろドラゴンより強いから誇っていいよ!」
「ギュァァ……」
悲しい声。
見事に逆だったようだ。
「ォン……」
「え、本当は小さくなってコレクトや南蛮と遊びたいって?」
「アォン」
「い、いやあ……」
秘薬のペナルティを使ったとしても、それはどうだろうか。
体が小さくなるというよか、幼体化するのがペナだから……。
子供の姿になったとしても、ロック鳥はロック鳥。
ワシタカくんの願いは、叶いそうもない。
「ちょっと! スピード遅くなってますって! ドラゴン迫ってますって!」
「今取り込み中なんだが……まあそれどころじゃないのもそうか……」
飛竜と戦闘になって、頻尿気味だというエリナの膀胱が耐え切れるかもわからん。
ここはさっさと引き離して撒くのが一番だ。
「ワシタカくん、とにかく今はぶっちぎっちゃって」
「ギュア!」
俺の一言で、グンッと加速する。
どうすればこの巨体からこんなスピードが出せるのか。
そんなことを思っているうちに、飛竜はどんどん小さくなった。
「あ、落ちた」
豆粒みたいになった飛竜が、力尽きてふらふらと落下していく姿が見える。
やはり、空中ではそんじょそこらの奴には負けないな、ワシタカくんは。
まさしく空の王である。
「じゃ、このまま一気にトガルを目指そう」
「ギュア!」
すぐに着くだろうし、もう一眠りしとこうか。
「あ、あのトウジさん……」
「はいなんでしょう」
「シーツとかって、このまま海に投げ捨てちゃってもいいですかね……?」
「………………つまり?」
「つまり? じゃなくて、捨てても良いか悪いかを聞いてるんです。こっち見ないでください」
マ、マジか。
=====
エリナ「不可抗力です」
「ひぃぃぃぃぃいいいいいい!?」
外が騒がしい。
けたたましい飛竜の雄叫びと、一人のギルド職員の悲鳴。
「ト、トトトトウジさーん!」
「はいトウジです」
ワシタカくんの足に装着された筒の中から顔を出す。
え、飛行中にうかつに顔を出していいのかって?
いいんだな、それが。
高速飛行中は、ワシタカくん自体が風除けになるのだ。
足が平行になるからね。
「な、なんでそんなに冷静でいられるんですかー!?」
「飛竜くらい別に、って感じだから」
何度も遭遇してるし、何度も撃退している。
様々な冒険を経て、多少の魔物には動じない。
「アォーン……」
「驚くのは構わないけど、もうちょっと静かに驚いてもらえますかだってさ?」
「ポチちゃんもなんでそんなに落ち着いていられるんですか!?」
「アォーン……」
ドラゴンですよドラゴンとうるさい彼女の言葉に、俺の腕の中でむにゃむにゃしながらポチが言う。
「唐揚げにすると美味しい。とのこと」
「食べるんですか!? ドラゴンを!?」
「……おいちょっと待て」
そんなポチの言葉を聞いて、俺も嫌な予感がした。
「まさかとは言わんがポチ、俺も知らんうちにドラゴン食べてる?」
「アォーン」
肯定だそうだ。
「マ、マジか……知らないうちにドラゴン食べちゃってた……」
「アォン」
「ちなみに竜田揚げと名付けましただと? ざけんなー!」
「ちょっと喧嘩しないでくださいよ! 今それどころじゃないですってば!」
「俺もそれどころじゃないよ!」
それに、世の中もっとえぐいのがいるから大丈夫だ。
ちゃんとしたドラゴンってのは、前足後ろ足あって翼が生えてるもんだ。
飛竜は文字通り飛ぶことに特化したのか、前足が翼になっている。
鳥みたいなもんだ。
むしろ、鳥だ。
「ドラゴンからすれば、一族の恥レベル」
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオ!」
俺の呟きが聞こえたのか。
ワシタカくんの後ろを追いかける飛竜がさらなる咆哮をあげている。
なんだなんだ?
そんなにコンプレックスだったのか?
「だったらワシタカくんに追いついてみなよ。彼一応鳥だよ、鳥」
体格は飛竜やワイバーンよりも倍近く大きいがね。
「ギュア……」
「アォン……」
悲しそうなワシタカくんの声と、ポチのじと目。
俺の「一応鳥」発言が少し心にきたらしい。
「ご、ごめん。別にワシタカくんを悪く言ったわけじゃないから」
そこいらの鳥と比べるなってことなのか。
それとも竜と一緒にしないでってことなのか。
正直、俺にはどっちかわからない。
どっちかが正解なのだろう。
ロック鳥は強く、鳥界の頂点に立つイメージがある。
故に、ドラゴンよりも強いと褒めておきましょう。
「ワシタカくんはむしろドラゴンより強いから誇っていいよ!」
「ギュァァ……」
悲しい声。
見事に逆だったようだ。
「ォン……」
「え、本当は小さくなってコレクトや南蛮と遊びたいって?」
「アォン」
「い、いやあ……」
秘薬のペナルティを使ったとしても、それはどうだろうか。
体が小さくなるというよか、幼体化するのがペナだから……。
子供の姿になったとしても、ロック鳥はロック鳥。
ワシタカくんの願いは、叶いそうもない。
「ちょっと! スピード遅くなってますって! ドラゴン迫ってますって!」
「今取り込み中なんだが……まあそれどころじゃないのもそうか……」
飛竜と戦闘になって、頻尿気味だというエリナの膀胱が耐え切れるかもわからん。
ここはさっさと引き離して撒くのが一番だ。
「ワシタカくん、とにかく今はぶっちぎっちゃって」
「ギュア!」
俺の一言で、グンッと加速する。
どうすればこの巨体からこんなスピードが出せるのか。
そんなことを思っているうちに、飛竜はどんどん小さくなった。
「あ、落ちた」
豆粒みたいになった飛竜が、力尽きてふらふらと落下していく姿が見える。
やはり、空中ではそんじょそこらの奴には負けないな、ワシタカくんは。
まさしく空の王である。
「じゃ、このまま一気にトガルを目指そう」
「ギュア!」
すぐに着くだろうし、もう一眠りしとこうか。
「あ、あのトウジさん……」
「はいなんでしょう」
「シーツとかって、このまま海に投げ捨てちゃってもいいですかね……?」
「………………つまり?」
「つまり? じゃなくて、捨てても良いか悪いかを聞いてるんです。こっち見ないでください」
マ、マジか。
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エリナ「不可抗力です」
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