装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

897 くーねる衆

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「美味い! 美味いぞおっ! がつがつがつがつ!」

『がつがつがつがつ!』

 がつがつ言いながらがつがつ食べてる奴らを初めて見た。
 さすが健康優良児しか生まれてこない井守衆である。

「すごい食べっぷりですね」

「もともとの食欲もそうだけど、大きくなるためには必死なんじゃないか?」

 全員白ごはん大盛りで5杯くらい食べている。
 山のようにあった唐揚げがすごい勢いで減っていった。
 これには、急遽ゴレオと水島をヘルプにつかせる始末。

「アォーン!」

「……!」

「キュイ!」

 それぞれ仕込み係、配膳係、調理係に別れて頑張っていた。

「それにしても、飯に集中し過ぎて話どころじゃないな……」

「そうですね……」

 結局こうなるのか、と思いながら彼らの動向に注目する。
 料理には霧散の秘薬を混入させてある。
 これで小さくなってしまった身体が治ればこの事態も解決だ。

 あとは恩を売って、こいつらに変な薬の出どころを調べさせ。
 トガルを裏で守る俺専用の密偵部隊になってもらおう。

 こんな山の中ではなく、街に住んで諜報活動に勤しんでもらうのだ。
 筋骨隆々の男たちが街で忍者の格好をしていたら隠密どころじゃない?
 大丈夫、大丈夫。
 最近カタログ販売を始めた義母のところで配達員とか。
 牛丼屋のバイトとか、利用方法は色々ある。

「……ふむ」

 そろそろかと思っているのだが、一向に身体が大きくなる気配がない。
 あらゆる異常状態を消し去ることのできる霧散の秘薬だぞ。

「おかしいな」

「確かにおかしいですよね。この食欲……お腹のどこに入ってるんですか……」

「いや、そうじゃないんだけど……」

 確かにポチくらいしかない小さな体のどこに入っているのか。
 気にならんこともないが、今はそうじゃない。

「ふいー、食ったら眠くなりますなー」

『長! そろそろお昼寝の時間です!』

「思考もって話は聞いてましたけど、食べた後昼寝って……」

 うむ、幼稚園児だ。
 だが話の途中だから寝かせるわけにはいかない。

「ほら起きて起きて飯食ったんだから話す義務があるぞ」

 カンカンカンカンと鍋の底をお玉で叩く。

「おっと、そうでしたのじゃ。お昼寝なんかしてる場合じゃないぞ皆の衆!」

『むにゃむにゃ、お~……むにゃむにゃ……』

「むむむ、なっとらん。本当はワシだって昼寝したいしたい!」

 子供か……。
 いちいち掛け声をあげてうるさかった奴らが静かになるのはそれはそれでよし。

「長さん、ちょっと良いですか?」

「何ですぞ?」

「この食事には、あらゆる毒を打ち消す効果を持つ薬を使っていたんですけど……」

 何故、それでも姿が元に戻らないのだろうか。
 異常状態ならば、確実に元に戻るはずである。
 霧散の秘薬の信頼性はフグ毒すらも打ち消すほどだ。
 一部例外はあるけど、その例外はこの世の常識が通用しないような奴らである。

「そんなものを……! 感激ですぞ乱神様!」

 ですが、と長は悲しそうに下を向く。

「我らとて、今日までの3ヶ月間ありとあらゆる解毒方法を試してきましたのじゃ」

「そうなんですか? 意外ですね」

 ナチュラルに毒舌だな、エリナ。

「百足衆には脳筋だと馬鹿にされますが、馬鹿はこの森で生きてはいけませぬ」

 まあそうだな、ここは山脈の奥である。
 冒険者でもかなり腕の立つ奴らじゃないと、ここまで来れないほど。
 そこに隠れ里を作り今まで住んできた事実は、割ととんでもない。

「おそらく、これは毒を媒介にした一種の呪いではないかと思うのでありますじゃ」

「呪い……」

 呪いでも霧散の秘薬なら問題はないのだけど、例外はある。
 かけてそれで終了タイプの呪いと、何かを媒介として持続する呪い。
 ダンジョンコアが、ダンジョン内で使ってくる回復阻害がそれだ。

 根本的なものがある限り、霧散の秘薬で解除することはできない。
 予め飲んでおく、というスタイルが取れれば良いのだけどね。

「乱神様が空でドラゴンを一撃で葬り去る姿を見まして、我らは藁にもすがる思いで後を追って来たのですぞ」

「なるほど、そうだったんですか」

「古来より我らに良い伝わる怪力乱神“饕餮”の伝説」

 とうてつ……?
 なんかどっかで聞いたことあるぞ、その名前!

「あのお姿は、まさに乱神様の加護を受けた伝説の忍び……超影でありますぞ!」

「コカゲって……」

 なんだか勝手に勘違いされているみたいだが、霧散の秘薬で解決できないものはどうにもならない。
 この状況で違うと断言するのは酷だが、先延ばしにするよりも良いだろう。

「あの俺は長さんが思ってるような」

「とはいえ、ウィンスト殿が探しにいった超影をまさか我らがこの目で目撃し見つけてしまうとは……次はウィンスト殿を探し歩かねばなりませぬな……」

「むっ」

 事情が変わった。





=====
トウジ「超影って……怒られるぞ!」
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