装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

906 強欲は身を滅ぼす

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 その後、元に戻ったロイ様が呼び出したキング種の面々を用いてここら一帯を制圧。
 彼らが収めるはずだった分の金品も回収できた。

「やっぱり足りないみたいだな」

 手甲が祀られている石造りの祠だが、回収してきた金額を投じても動かなかった。
 話を聞いた限りだと、この祠は恐らく特殊強化を行うためのものなのだが、この様子では成功率100%ではなく、強化失敗時の装備破壊効果を打ち消してくれるものである。

 一応詳細が見れるか触ってみたのだが、力の祠としか書いてなかった。
 結果を見て予測するしかない。

「追加で投資してみるか」

 ケテルは存分にある。
 ぶっちゃけ手甲に興味はなく、この祠自体が欲しいのでさっさと強化を進めることにした。
 強化を全て終えないと取り出せないっぽいから仕方ない。

「むッ」

 俺の後ろからその様子を見ていたキングさんが眉を潜めた。
 何かを感じ取ったらしい。
 ちなみにロイ様のおかげでデフォルトで普通に喋れる状態になっている。
 手間が省けます。

「どうしたんだ、キングさん?」

「祀られている手甲の魔力が脈動し、大きく増えた」

「……なら、成功したみたいだね」

 俺にはそんな雰囲気は感じられなかったけど、見る人が見ればそうなるのか。
 良いね、わかりやすいね。

 特殊強化には、一部装備の破壊確率が存在する。
 全てのUGを消費してからという強化方法の性質上、保険を用意しておかなければその境地まで踏み込めなかった。
 この祠があれば金さえ払えば全部、ぜーんぶその問題が解決してしまう。

「よし、どんどんいくぞ!」

 喉から手が出るほど欲しい。
 手甲は井守衆に返すが、この祠だけは俺が管理するんだ。
 井守衆を強化し雇用して守ってもらうのも手だろう。

「再び魔力が膨れた。次の脈動は、先ほどよりも大きいぞ」

「来てるな、これ」

 キングさんに成功のアナウンスをしてもらいながら、どんどんケテルを投じていく。
 さっき投じた百足衆のお金分よりも成功率が高い。
 やはり悪いことをして稼いだお金より、徳を積んだ俺のお金の方が価値があるんだな。

「成功の流れが来てるし、一気に解放までいこう! ほらほらほらほら!」

「……主よ、強欲は身を滅ぼすぞ」

「キングさんがそれ言う?」

「それもそうか。我が見ている、異変を感じればすぐに知らせよう……そして再び魔力が増えたぞ」

 恐らくもう少し、もう少しで全ての特殊強化が完了するのだ。
 特殊強化を完了させてしまえば、この祠は俺のもの。
 そして全てのスペリオル装備を強化してビシャス以下、あいつらの仲間内を懲らしめる。

 前にボコボコにされたタリアスのアローガンス。
 あいつもついでに装備パワーでボコボコにしてやる。

 俺の弱体化情報とか、イグニールの妊娠情報とか。
 一日中、俺に張り付いてないと流出しないような情報。

 多分あいつの口から伝えられたんだろうな、と予測している。
 立場的には敵でも味方でもなく、面白い方につくと言っていた。

 敵対しなければ良いと思っていたが、俺からすれば利敵行為はすなわち敵である。
 こっちにも何か情報を流していれば、まだ一考の余地もあったけどな。

 そんなことを思いながら、俺は湯水の如くお金をつぎ込んでいく。
 すると、いつしかお金が吸い込まれなくなった。
 置いたらスッとお金が消えてしまっていたのに、うんともすんとも言わなくなる。

「終わりか」

「……主よ、一応構えておいたほうがいい」

「え?」

「これほどまでに膨れ上がった強い魔力は、八大迷宮のコアや邪竜に匹敵する可能性もある」

 要するに、何が起こるかわからない。
 とキングさんは言っているようだった。

 強くて濃い魔力はそれだけ強い魔物を生む。
 さらには強い力を持った人間だってそう言った要因から生まれ出る。
 そう考えると、本当に不思議な存在だよな、この魔力ってやつ。
 魔力を蓄積すると装備も強くなるし。

「わかっ——」

 ——た、と言おうとした時だった。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!



 祠を中心として、周りが急に揺れ始めたのである。
 地面も空気も何もかもが振動しているように感じた。

「こ、これは……!?」

「主よ、我の後ろにいろ」

 スッと俺の前に出てくれるキングさん。
 惚れてまうやろ。

 さて、ここからどうなるのか。
 しっかりと装備が完成されて出てくるのか。
 そのための演出みたいなものなのだろうか。
 だとしたら、いちいち装備を強化する度に地震が発生するのは面倒だ。

 それ以外の展開。
 そもそも祀られている手甲の真実は全て間違いだったとか?

 奉るって、基本的にあんまりよろしくない神様の怒りを沈めるためとかそんなもんだしな?
 封印されていた者が、封印を解かせるためになんらかの伝承としてポジティブなイメージを残した、とか……わりかしありがちな話である。

「魔力が収束し……主、伏せていろ!」

「りょ、了解!」

 キングさんに言われるがままに伏せると、青白く光り始めた祠から青白い光が空へと放出された。
 これは見たことがある。

 飛空船に積んでいた魔力収束砲と同じ。
 極限まで圧縮された魔力は、眼に見えるような青白い光を持つのである。

「明らかに、普通に装備ができましたって演出じゃないなこれ!」

 天を貫く魔力の柱を見ていると、上空で再び大きく光り輝いた。
 頼むぞ、何事もなく装備よ降ってきてくれ。
 できればこれがデフォルトの演出であってくれ。

 しかし、俺のそんな祈りは届かなかった。

「主よ——その体——」

「え?」

 俺に目を向けたキングさんが、驚いた顔をしてシュンッと消えてしまった。
 そして俺の視野もローブの男と戦っていた時のように再び低くなる。

 いや、もっとだ。
 足に力が入らなくなり、立っていられなくなって転んでしまう。

 一体何が起きてるんだ。
 体の時が戻されてしまうエンチャント・ダンジョンコアはローブの男ごと空に……。

 そこで気がついた。
 魔力の柱が伸びる先には、そのダンジョンコアがあったことに。






=====
コミカライズ担当のシオン先生と一緒に配信する際の質問とか募集しています。
ちなみにシオン先生の好きなキャラは我らがパンケーキ師匠でした!
コミカライズ版でキングさんが出た時、皆さんのコメントがすごく盛り上がっていてとても嬉しかったそうです。

いつも読んでいただきありがとうございます!
本当に感謝永遠に
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