装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

912 男の俺でも惚れてまうやろが

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「ヌハァアアアアーーッ! やはり、欲しい! 欲しいぞ人の血が! その因子!」

 ウィンストのなんだかとんでもない魔法を耐え切ったトウテツが中央で叫ぶ。
 体はかなりボロボロになっているが、トウテツの放つ威圧感は変わらない。
 むしろ、前よりもその圧力は強まっている気がした。

「……驚くほどに硬いな」

 鋭い視線をトウテツにむけたまま、ウィンストは眉を顰める。
 耐え切ることはできても、ここまでピンピンしているとは予想していなかったようだ。

「ウィンスト、回復なら俺に任せてくれ!」

「助かる」

 ウィンストは、俺から受け取った秘薬を一気飲みして再び魔法陣を生成した。

「硬くとも、同じ攻撃をもう千回繰り返し——」

「——二度目はない」

 すぐにトウテツが超速で接近し、ウィンストをぶん殴る。
 俺たちの隣から消えたウィンストと同時に後ろに存在していた木々がへし折れる音が響いた。

「確かに、そこにいる坊主の力を借りれば何千回と今の攻撃を繰り返し、もしかすればわしを倒し切ることもできるかもしれんが……それはわしが何の対策もせず愚かに攻撃を受け続けるだけの話だろうに」

 トウテツはそう独り言ちながら何もない空間を殴りつける。
 その度に、ドンッ、ドンッ、とウィンストがぶっ飛ばされた方向で何かが弾ける音がした。

「ヌハハ、丸腰だからと言って遠距離攻撃ができないと思ったか? ヌハハハハハッ!」

「ギャオ……ッ」

 俺を守ってくれているチビの表情が険しくなる。
 ウィンストがやられっぱなしになっているのを見ちゃいられなかったのだろうか。

「チビ、俺のことは良い。自分で何とかするから、ウィンストに加勢を」

「ギャオ」

 チビは首を振る。
 そして大きくを息を吸うと、大きな声で吠えた。

「ギャオッ!!!!!!!」

 何してるんだ、ウィンスト。
 俺には、そう言っているような気がした。

「——大丈夫だ、問題ない」

 チビの声に応えるようにして、ウィンストの声が風に乗って耳に届いた。

「ヌ?」

 トウテツにも聞こえていたのか、動きが止まる。

「——どうした、力の神。失速しているぞ」

「フンッ、ならばわからせてやろう! ヌアアアアッ!」

 ドドドドドドドッ!

 煽られたトウテツは、笑いながらギアを一段階上げた。
 空気が揺れて、とんでもない衝撃を生む。
 チビに咥えられてなかったら、今頃遠くにぶっ飛ばされていただろう。

「——力の神、貴様の攻撃は理解した」

 しかし、そんな中でもウィンストの声はどこからともなく響いてくる。
 まるで頭の中に直接語り掛けられているような、そんな感覚がした。

「この世の全てには魔素が内包されている。風のように流れ、循環している」

「ウィンスト……!」

 遠くへぶっ飛ばされていたウィンストの姿がようやく見えた。
 トウテツの攻撃によって木々がへし折れ、見通しのよくなった森の中を。
 けたたましい衝撃音が鳴り響く森の中を。
 ウィンストは悠然とした表情でゆっくりと歩いていた。

「そんな魔素の持つ微弱な揺らぎを強制的に増幅させて衝撃へと変換させる」

「ほう……」

「機動力にも防御にも生かせる神業、いや無理やり揺らぎを増幅させる……まさに力技か?」

「ヌハハハハッ! 見破ったか流石だ!」

 見破られたと言うのに、トウテツは何故か嬉しそうだった。

「ヌハハ、そんなわしの神業を防ぎ切るウィンストの技も一つご教授いただこうか」

 次はウィンストのターンだぞ。
 というふうに、手をクイクイッとさせるトウテツ。

 戦闘狂はどこまでいっても戦闘狂なのだろう。
 恐らくこいつもアローガンスも、キングさんと同じような思考回路の持ち主なのだ。
 そんなの相手に飯で勝負を挑むのは、些かお門違いだったらしい。

「簡単な話だ。大きく改変されてしまった魔素の中和……」

 衝撃によって巻き起こった乱気流にも似た突風が吹き荒れる中、ウィンストは長い杖で地面をトンとついた。

「ただ、それだけだ」

 その瞬間、風が止んだ。
 ウィンストを中心として、スッと森の木々の間を突き抜けていた風が一瞬にして止んだ。
 微風となり、茂った葉っぱの揺れる音がサワサワと心地よく耳をくすぐる。

「す、すげぇ……」

 思わず鳥肌が立ってしまうほどに、目の前に立つウィンストの姿が神々しく見えた。

「…………なるほど、戻したか。先ほどの複合魔法陣から出たあらゆる属性魔法の合わせ技の応用……わしのが劣るほどにとんでもないほどの神業ではないか……ヌハッ!」

「一人じゃ無理だ」

 ウィンストは俺から受け取った小瓶を握りながら続ける。

「トウジからもらった秘薬があったからこそ、これだけの規模を中和することができた」

 ウ、ウィンストォ~!
 お前ってやつは、お前ってやつは……!
 モテオーラ半端ないぞ。

「さて、どうする力の神。同じ攻防を延々と繰り返すのか?」

「千日手は好かんなあ、わし」

「貴様がトウジを狙うのならば、私は死んでも立ち塞がるぞ」










=====
ウ、ウィンストォ~~~!

次回でウィンストがどこに言っていたのか書かれます。
恐らく!

感想ありがとうございます。
ひとまず毎日更新と私の毎日配信をお楽しみください。

また明日!
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