装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

913 喰らう者、渇望する者、名を饕餮

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「なんで、そこまで人の血にこだわるんだ……?」

 ウィンストとトウテツが睨み合う中、ふと気になったので聞くことにした。
 今のままでも十分強く。
 さらには簡易式とか言う謎仕様だが、一応ダンジョンコアも手に入れた。

「あくまで可能性の範疇だけど、現状でもアローガンスを倒せるかもしれないよな?」

「ヌハハ、これか?」

 簡易式エンチャント・ダンジョンコアを手に取りながらトウテツは言う。

「こんな紛い物、長きに渡る年月を通して培われた迷宮相手には通用せんわ」

 あくまで、それは力を補うための一つの要素。
 という扱いらしい。

「ダンジョンコアに打ち勝つために、わしが求めたのは無限の可能性ぞ」

「無限の可能性?」

「生まれながらにしての強者、裏を返せば……そこで頭打ち」

 技術も魔力も何もかもが最高クラス、最強クラス。
 そう信じてやまなかったトウテツ。

 しかし、現実は残酷だった。

 世界にヒエラルキーが存在するとしたら、間違いなく強者の括り。
 ただ、その中では弱者だという現実が目の前には確かに存在していたのである。

「わしは努力という言葉を知った」

 さらに、好敵手がいる。
 撃ち倒したい奴がいる。
 それが如何に幸福なことなのかも、その時初めてトウテツは理解した。

「敗北からわしは多くの物を得て、そしてある意味絶望の淵に立たされた」

「成長限界が来たのか、いや……」

 そこで言葉を区切ったウィンストは言い直す。

「成長限界と言うよりは、生まれながらにして決まっている強さ、か」

 つまり、乗り越えられない壁のようなものだ。
 人は、丸腰では対面で猛獣に勝てない。

 強者として生まれたトウテツだが、ダンジョンコアとの間に存在する歴然たる差。
 そもそもの違いというものを突きつけられていた。

「強くあらんとすれば、何の因果か……弱者は強者に生まれ変わる」

 魔物の進化とか、クラスアップ的なやつだな。
 トウテツは、もともとが完成された最上位個体のような立ち位置でこれ以上強くなれなかった。
 努力はしても、それで練度を多少はませたとしても、溝が埋まることはない。

「だからこそ、わしは一度ゼロから考えることにした」

 そして一つの結論として見出したのが、人間だったそうだ。
 絶望に打ちひしがれ、戦うこともやめ、各地を放浪することになった。

 あてもなく、何となく、風の吹くままに。

 そこで人間の生活に触れた。
 その前から度々触れることはあったが、長期的に身を置いたのは初めてだった。

「今までは羽虫と同じくらい些細な奴らだと考えていたがな、人間はそこらの魔物とは根本が違う」

 当たり前だ、と言いたいところだが聞いておこう。
 人外からの人間を見たときの貴重な意見なのだからね。

「多種多様に枝分かれした色々な考え方、文化、そして個人」

 十人十色、という言葉が存在する。
 魔物だって深くみればそれぞれに個性が存在するのだろうが、人は圧倒的だ。

「その中には、英傑クラスに強くなり、中にはもっと……伝説クラスの魔物にも個で対抗しうる存在が生まれる」

 勇者とか、英雄とか、そんな感じの人種か。
 弱者は群れる、だからそうやって繁栄する。
 強者として感じていた常識が大きく崩れ去ったそうだ。

「多種多様の中に、時折生まれ出る突然変異」

 魔物にも度々そう言った特殊な環境で生まれる上位種があった。
 が、同じ様に自然環境下ではその実力は必ず頭打ちとなる。

「人間は、人間だけが、無限に強くなる」

 トウテツは拳を握りしめながら続けた。

「そして人間たちの血は、世代を経て研ぎ澄まされいくのだ!」

 人が強さの全てを知るわけではない。
 しかし、それでもある程度を自分たちのコントロール下に置けている。
 その事実に、トウテツは感づいた。

 だから……。

「こうして人の輪廻の中に自分の血を流し込んだのだ」

 再びウィンストに目を向けると、トウテツはいう。

「何の因果か、一つ壁を超えた者は人に近くなる。ウィンスト、貴様のその姿がそれを如実に表しているぞ?」

「……どうだか、私は自分自身を人間だとは思っちゃいないが」

「それは貴様が強さという物に、喉から手が出るほど、灼熱の砂漠の中で求める水ほどにも渇望していないからだ!」

 徐々に語尾を強くしながら叫ぶトウテツ。

「ダンジョンコアとて、元は人! 種族は違えど、元は人間である!!」



 “そして人という存在は、この世界に愛されている!”



「………………違うか?」

 もはや誰に話しているのか、問いかけているのか。
 わからなくなってしまうほどの叫び声だった。
 心の底から何かを求める時、誰しもがこうなってしまうのだろうか。
 片手に握り締められていた簡易式エンチャント・ダンジョンコアはいつの間にか握り潰されていた。

「確証はない。誰もそんなことは知らない」

 問われたウィンストは、真っ直ぐにトウテツの目を見てそう答える。

「未知への可能性、挑戦。わしはその言葉を人から学んだ」

「確かに人は強い。しかし、同時に弱い生き物だ」

 ウィンストの言葉は、何だか深いな。
 人は強くて弱い……か。
 何にしても表裏一体なんだよな、何事も。
 良いことがあれば悪いことがある然り。

「貴様のいう通り……器を得た後、今と同じ様な強さを保てる保証はない……が、わしは諦めんぞ」

 と、トウテツは宣言する。

「弱いことを理解する、それは強さへの第一歩なのだからな!」

「それには同意する」

「では続けようか。今一度、お互いの命をかけて。余計なものは……今はいらんのだ! ヌハハッ!」

 握り潰して、トウテツがスーッとエンチャント・ダンジョンコアから出た魔力を吸い尽くす。
 俺の体やレベルも戻り、再びサモニング図鑑を呼び出せる様になった。

 ……ん?
 ちょっと待って、なんかちょっと感覚が違うな……なんだろう……。

 あっ、レベル戻ってる。
 も、ももも、戻ってるぞ!!!!






=====
絶望後のトウテツのセリフ集

「美味い。焼くとこんなに美味いのか」

「ただ地面に寝るのとは、干し草の上とは、全く違う」

「なんだこの果実は」

「親切だと? そんなものはいらん……」

「なに? わしは浮浪者ではない。弱者ではあるがな……」

「そこまで窮地に立たされて、何故逃げ出さない。雑魚のくせに」

「諦めろ、雑魚は雑魚だ」

「…………変えられるかもしれない、か」

「教えろ、何故あいつはお前と違ってあれほどまでに強いんだ」

「限界があるだろう?」

「何度も窮地を潜り抜け、壁を壊し続けた……? ほう……」

「もし、どうあがこうとも超えられない壁があるとしたらどうする?」

「……なるほど、超えなくても穿てばいい、か。穿つことすらできなければ?」

「……なに? 難しいことを考えると腹が減る? 先ほど礼だ、肉をくれてやる」

「一緒に食うだと? ……まあいい、わしに振る舞ってみろ。わしも振る舞ってやる」

「美味い……」

※これはトウテツの記憶の一部ですが、長い眠りの中で一部抜けているものも存在します。








とかだったら最高にエモいよね。
ってすげぇ妄想しながら書きました。
今日は超絶美人甘やかし系幼なじみによしよしされてる妄想しながら寝るわ。
明日も更新しますので、よろしくお願いします!

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