装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

947 見捨てることはしない。重要参考人だから

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「…………ご迷惑をおかけしました」

 華子はそう言うと、俺たちに頭を下げて踵を返す。
 とぼとぼと鬱蒼とした茂みの中へと歩き出した。

「どこに行くんだ?」

 さすがに野放しにはできないのだが……。

「私の意思に関係なく記憶を奪ってしまうのならば、誰にも近づかない方がいいんですぞ……」

 彼女は続ける。

「どうやら貴方様の敵対関係に当たるかもしれませんので」

 不可抗力だとしても、信じる要素には至らない。
 だからこそ受け入れて距離を取るという選択になったようだ。

 確かに、信用はできない。
 仮に彼女の意思は関係ないとしても、鵜呑みにするのは危ないからだ。
 相手は、確かグリードと呼ばれるダンジョンコアだったっけ。
 この世界の上位存在相手に、そんな迂闊なことはできないのである。

「いや待って欲しい」

 しかし俺は呼び止めた。

「へ? 待つも何も、私がいてはろくなことにならないですぞ……」

 事故もあり得ますし、と華子は言葉を濁していた。
 本音は離れたくないんだろう。
 自分が誰かを知っている俺に縋った目は本物だったと思いたい。
 それも全て演技だとしたら、もう何も信じれないよな。

「逆に管理しておくのがいいと思う。要は手に触れなきゃいいんだろ?」

 過去の勇者一行というのは、俺と同じ世界からきた者たち。
 とぼとぼと歩く後ろ姿を見ていて、居た堪れない気持ちになった。
 それにここで放置するのは、よくない気がする。

「いやいや、手なんて何かの拍子にタッチしてしまいますぞ……」

「気をつければ大丈夫だって」

「へーい」

「うぇーい……あっぶね」

 離れようとする彼女に近づいてそう告げると、ハイタッチを要求された。
 思わず返そうとしてしまって、危うく記憶奪われるところだった。

「ひーん、こういう事故もあり得ますよって冗談ですぞ~!」

「冗談で済まないんだよなあ……」

 とりあえず彼女を厳重に縛り上げておく。
 同時に手もがっちり固定してコレクトと交代で召喚したグリフィーに乗せておこうか。

「これはこれで、なんかありですね」

「すっかり調子を取り戻したというか、なんかそっちの口調の方がいい感じがする」

 シリアスでしんみりした空気は俺たちには合わない。
 もっとコミカルに、面白おかしく自由にやっていくのが一番なのだ。

「見捨てずにいてくれてありがとうございます……ですぞ」

「まあ、重要参考人ってことで身柄を拘束しただけなんで」

「それも一つの救いの形でしょう。聖女の名において、貴方様に加護を」

「へいへい」

 このやりとりを見ていたポチもふうと溜息を吐いていた。
 こいつもどうするべきか悩んでいたらしい。
 敵の可能性も十分だが、ギリスにいる骨であることも否めない。

「取り急ぎ、結果オーライにしとく? ポチ?」

「アォン」

「だったら次の行動に移そうか。ロイ様、何をすればいい?」

「私たちは盟主についていくのみ、自分で考えろ……と言いたいところだが、仕方ない」

 俺が重要な記憶の一部を奪われている状況だから、と代わりにロイ様が指揮を取ることになる。
 すいません、使い物にならなくて。

 でも、いつも俺が全てを判断して、手助けしてもらっている状況ばかりだったので新鮮だ。
 ちょっとロイ様に身を任せてみようかな、なんて思っていたりする。

「今しがた、半径50キロメートル圏内は全て索敵を終えた」

「うん」

「ここからそう遠くない泉にて、何らかの戦闘が行われた形跡を発見している」

「おお! 話が早い。だったらそこに向かってみるのが一番かな?」

「うむ、現状これ以上証拠もない」

 呼び出したスライムキングのうち、半分はウィンストの応援と状況確認。
 残りの半数を連れて、俺たちは戦闘が行われたであろう箇所へ向かうことになった。

 何もわからない以上、何かがあったかもしれない場所に向かうしかない。
 コレクトの力も、記憶の一部が失われてから効果が出にくいらしいからね。

「よし、ならみんなで」

「レッツゴー、ですぞ!」

「……」

「そ、そのくらい良いではないかですぞ~……?」

「そうだな」

 本当にこの女を一緒に連れてっていいものか、と少し不安になった。
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