公達は淫らな美鬼を腕に抱く

朏猫(ミカヅキネコ)

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二章 鬼の王に会いて

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「あ、ぁ――!」
「ぐ、ぅ……っ」

 きゅうぅと絞るように熱い肉壁に絡みつかれ、たまらずどちゅんと貫いた奥深くで子種を撒き散らす。もう何度目かわからない交わりに体は疲労を訴えているが、俺の逸物はなおも力強いままで頭は妙に冴え渡っていた。
 関白家の荘園にある別邸に到着し、少し休んだあとにまず行ったのは体を洗うことだった。久しぶりに湯殿を使い、ざぶりざぶりと贅沢に湯を被りながら「やはり水とは違うな」と妙なところで感心した。別邸には風呂殿もあるが、あまり蒸し風呂が好きではない俺は滅多に使うことがない。蒸し風呂を使うくらいなら水を被ったほうがいいと思ってしまうのは、もしかしなくても師匠の悪影響だろうか。
 しかし金花は蒸し風呂が気になったようで、しばらく堪能してから湯殿を使ったようだ。「わたしの屋敷には湯殿しかなかったので」と言っていたが、鬼も湯を使うのだなと思い、それなら鬼になってからも湯を浴びることはできそうだと考えた。
 湯のあとは夕餉を食べ、旅の疲れもあるだろうからと早々と御帳で横になった。ところがなぜか眠くならない。妙に気が昂ぶり目が冴えて仕方がなかった。

(あぁそうか、金花と一緒でないからか)

 一人きりの御帳は久しぶりで、やけに静かだ。それでも寝なくてはと寝返りを打ったとき、するりと布が上がり金花が潜り込んできた。驚きながらも「休んだほうがいい」だとか「鬼の王に会うのだぞ」だとか言ってたしなめた。しかし月明かりにぼぅと浮かび上がる白く美しい顔を目にした瞬間、俺の手は金花の腕を掴んでいた。
 気がつけば細い体を組み敷いていた。単を剥ぎ取りながらがむしゃらに体を舐め、噛みつき、撫で回していた。

「あぁ!」

 艶やかな声に俺の逸物はぐぅんと天を向いた。同じように美しい色合いの金花の逸物が天を向いていることに喜びを覚える。気がつけば金花の逸物を咥え、金花が俺にするように震えるそれを舐めしゃぶっていた。
 しゃぶればしゃぶるほど腹をひくりと震わせ「だめ」と金花がか細く鳴く。その声を聞けば聞くほど鳴かせたくてたまらなくなった。金花のものをじゅぼじゅぼと口でかわいがり、ふと思いついて尻に指を差し込みぐちゅぐちゅと動かせば、鳴く声がますます高まり艶めいていく。
 気をよくした俺は、ますます熱心に舐めしゃぶった。尻に入れた指は鳴いて悶えるコリコリとした場所を撫で擦り、時々その奥をぐりぐりと押すように撫でる。そのうち金花の声は掠れ、腹がひくひくと震え出した。さぁもっと鳴けとばかりに指でコリコリしたところをぐぅと押し込めば、「あぁっ!」と一際高い声を上げて背中を浮かせた。
 口の中に吐き出された金花の子種は、伽羅香のようであり梔子の花の香りのような芳しさにも感じた。だからか、ためらうこともなくごくりと飲み干してしまった。それに驚いたのは金花のほうで、手足をもぞもぞとさせながら何やらつぶやいている。俺はかまうことなく足をぐぃと持ち上げ、月明かりにてらてらと光る尻の奥へと逸物を突き入れた。
 それからどのくらい交わっているのか覚えていない。たしか最初は正面から押さえつけるようにまぐわった記憶があるが、いまは後ろから尻の上に乗るようにねじ込んでいる。外はすっかり陽が昇り明るくなっていたが、鬼の王のところへ行く日までかまうなと命じたからか下男の一人も姿を現さなかった。

「ぁ……んぅ」

 俺が逸物をずるりと抜くと、金花が細くも甘い声を漏らす。見下ろすと真っ白な背に長い黒髪がうねるように散らばっていた。首や肩に赤い部分があるのは俺が無意識のうちに噛みついたからだろう。そういえば、いつもより気持ちが昂ぶり噛みつく加減ができなかったなとぼんやり思い出す。

(金花の子種を飲んだからか……?)

 やけに甘く感じた子種を飲み下した直後から熱に浮かされたようになり、止めどなく凶暴な気持ちが湧き上がった気がする。

(鬼の子種だったからだろうか)

 そんなことを思いながら、ハァハァと息を乱している白い体を見つめた。何度も見ているというのに、目にするだけで俺の逸物はぐぅんと逞しくなる。

「まるで盛りのついた獣のようだな」
「カラ、ギ……?」
「まだいけるだろう? キツラ」

 名を呼べば、それだけで金花――キツラの体がひくりと震えた。それに気をよくした俺は、うつ伏せのままのキツラの左肩を押さえつけた。逆に右腕はぐぃと引き上げるように掴む。何をするのかと振り返ったキツラにニィと笑った俺は、その体勢のままずぅんとキツラのぬかるんだ中を貫いた。

「ひ、あ――!」
「ぐぅ……っ。これは、また、すごい、うねりだな」
「ぁ、あ、……っ、ふ、……っ」

 ずん、ぬちゅん、ぱちゅんと突き入れるたびにキツラの背が跳ねた。すると中がぐぐぅと締まりえもいわれぬ心地よさに襲われる。俺は押さえつけていた左腕も掴み、上半身を引っ張り起こすようにぐぃと両腕を引いた。上半身を無理やり引っ張り起こされたキツラは、それさえもたまらないのだと言うように中を蠢かせた。

「あ――! あぁ、もぅ、だめ……、だめ……」
「駄目では、ないだろう? おまえの中は、ずっとうねって、はぁ、いまも俺の子種を、吸い取ろうとしている、くせに」

 そう言って奥を突き上げれば、細い声を上げてキツラがビクビクと震える。中がきゅうきゅうと締まり吸い取られそうになるが、奥歯を噛み締めて子種を吐き出すのをかろうじてこらえた。そうしてゆっくりとキツラの上半身をうつ伏せに戻し、汗に濡れた黒髪を何度か撫で、自分の右の人差し指を口に咥えた。

 ガリッ。

 ビリッとした痛みとともに鉄臭い匂いが口の中に広がった。うまいとは思えないが、これがキツラの……いや、鬼の食らうものなのだなと思うと何やら不思議な感覚になる。
 少なくとも俺は血に恐れを抱いたりはしない。武士もののふのように太刀を振るい鬼退治をする中で鬼の血を何度も見てきたからだろう。さすがにこれが食事だと言われると複雑な気持ちになるが、思ったよりも抵抗はなかった。

(気持ちはもう鬼といったところか)

 おかしなことを考えてしまったと思いながら、赤く濡れた人差し指をキツラの顔のほうへと回す。そうしてハァハァと息を乱している唇に押しつけた。
 指先で唇の柔らかさを堪能していると、ぺろりと熱いもので舐められたのがわかった。そのままぴちゃぴちゃと濡れた音がし、そのうち指先がすっかりキツラの口の中へ入ってしまう。

「あぁ、また中が、締まってきたな」
「んちゅ、ん、ちゅぅ、ちゅっ、ん、」
「ふ、く……っ。腰を動かさずとも、吸い取られ、そうだ……っ。ぐ、ぅぅ……っ!」

 逸物の根本から先端までしゃぶりつくされているような感覚に、気がつけばキツラに指を吸わせながら腰を激しく打ちつけていた。奥を穿つたびに音を立てて滑ったものが吹き出す。したたり落ちているのは俺が何度もキツラの中に撒き散らした子種だろう。それが互いの股をひどく汚しているが、そんなことを気にする余裕はなかった。ただひたすらに、まるで初めての交わりのようにキツラの中を穿ち続ける。
 時折り口に含ませた指にずきりと鋭い痛みが走るのは小さな牙が当たっているからに違いない。もしかしたら額に角が現れているかもしれない。その角を撫でながら交わってみたいなどと妙なことを思いながら、さらに奥へと逸物の先端を押し込める。
 そうしてすっかり慣れた狭い路を通り抜け、熱く濡れた奥の壁を貫き破る勢いで突き上げた。

 ぐちゅん、ぶちゅっ、どちゅん!

 これ以上は入らないだろうと思われる先を目掛けて、なおも逸物で貫いた。まろい尻たぶを押し潰し、限界まで尻の間にねじ込み、もっと奥へと昂ぶる気持ちのまま穿ち続ける。
 先端がとけそうなほど熱く濡れた壁にぶつかった。そのままくぃと少し曲がった先にぶつかったところでキツラの腰が激しく震える。つられるように中も激しく蠢き、擦るように舐めるように根本から先端までを絞り上げられた。さすがに今度は耐えきれず、俺は思う存分子種を吐き出した。

「つっ!」

 びゅうと勢いよく噴き出す衝撃に驚いたのか、キツラががじりと俺の指を噛んだ。痛みはあるもののそれすら心地よく、続けざまにびゅうびゅうと子種を撒き散らす。キツラも指をがじがじと噛み締め、最後には骨にまで食い込むような鋭い痛みを感じた。
 おそらく小さな牙に思い切り噛みつかれたのだろう。以前なら「鬼の牙に貫かれた」と恐怖を感じたかもしれないが、いまの俺にはその痛みさえも心地よかった。

「キツラの牙になら、噛みつかれてもいいかもな」

 俺の言葉にひくりと体を震わせたキツラだったが、さすがに精魂尽き果てたのかうつ伏せのまま動かない。

(これが噛み痕というものか)

 キツラの口から引き抜いた指先には小さな穴のようなものがあったが、血はすでに止まっていて痛みもほとんど感じない。これも鬼のなせる技かと思いながら、ぺろりとその傷を舐める。
 力の抜けたキツラの中から逸物をずるりと抜き出せば、ぬちょぉと滑った筋が逸物の先端とキツラの尻の間に伸びた。あれほど吐き出したというのに、最後までこれほど濃いものをと思うと、我ながら己の精の強さには笑うしかない。
 気を失ったキツラを寝かせると、御帳から出て水の入った桶や何枚もの手拭いを手にした。ついでに飲み水や簡単に食せるものを御帳へと運び入れる。互いの身を清めたあとは軽く腹ごしらえをし、少し眠った。
 目が覚めたときにはまだ陽は高く、わずかの間しか眠らなかったことがわかった。

(鬼の王に会うのだ、気が高ぶっているのだろう)

 そう思いながら、隣ですぅすぅと寝息を立てているキツラに視線を向ける。美しい寝顔を目にした瞬間、あれほど交わった体がカッと熱くなった。逸物はむくむくと力をみなぎらせ、もう何も出ないだろうと思っていた先端には白の混じった玉のような雫が滲んでいる。

(俺はいったいどうしたというのだ)

 そう思いながらも俺の手はキツラの白い頬を撫で、首を撫で、肩を撫でていた。そうして気がつけば太ももを押し開き逸物を突き入れていた。鬼の王に会うまでの二日間、俺はまるで何かに取り憑かれたかのように金花を求め、ひたすらにその美しい体を貪り続けた。



 賑やかな通りを抜けた先は、川沿いに進む道と目的地である山へと向かう道とに分かれていた。大きな荷物を抱えた者や馬に乗った者、僧や白拍子のような姿をした者たちは皆、川沿いのほうへと歩いていく。
 川沿いの道を進めば大きな港町があった。そこから太宰府へ向かう舟も出ているという話だから大方はそこを目指すのだろう。さらに途中で南に下れば山伏たちの修行の場へ向かう山道もある。

(そういえば師匠はそちらへも行ったことがあると話していたな)

 もし鬼になったなら、長い命の間にそういった場所へ行くのもおもしろいかもしれない。そんなことを思いながら山へ向かう道へと踏み行った。そうしていつもと同じ速度で歩きながらちらちらと金花を見る。

「あー、その何だ、体はきつくはないか?」

 この二日間、旅の疲れを癒すどころか昼夜問わず交わり続けてしまった。そんな体で山道を歩くのはつらくないだろうかと心配になる。すると艶やかな白い顔にニィと笑みを浮かべた金花が「たっぷりと精を頂戴したので、むしろ力がみなぎっているくらいですよ」と答えた。それにうろたえてたのは俺のほうで、「そうか、ならばいいが」と言いながらも視線をうろうろとさせてしまう。

「ふふっ、本当にいつまでもかわいい方」
「……っ! か、かわいいなどと、いつまでも言うな!」
「そうですね。この二日間は妖魔であるわたしを何度も気絶させたくらいですから、その精の強さにかわいいは似合わないかもしれません」
「金花!」

 思わず声を荒げた俺に、金花は「ふふっ」と笑い軽やかに坂道を登り始めた。その足取りを見ればたしかに大丈夫そうだと安堵し、後を追いかける。
 鬼の王の屋敷は山の中腹あたりにあるのだという。中腹とはいえ大きな山ならそれなりに時間がかかるだろう。そう考え、朝日が昇ってすぐに別邸を後にした。そういえば、別邸を出るときに見送りに顔を出した下男たちがやけに金花を見ていた気がする。中には顔を赤らめ明らかによくない眼差しを向ける者までいた。

(すべては俺のせいなんだろうな)

 すぐ前を歩くすらりとした背中にすら匂い立つような色気を感じる。美しい顔はいつも以上に艶やかで、やや潤んだ黒目は吸い込まれそうなほど輝いていた。とくに目を引いたのは紅く熟れた唇で、見るだけで吸いつきたくなるような具合だ。そんな姿を見ては普通の男など一瞬にして虜になってしまうだろう。それもこれも、俺の精をたっぷり頂戴したからだと金花は笑いながら話していた。

(これからは誰にも見られないようにしなければ)

 自分の行いを棚に上げ、そう思ってしまった。肌を重ねるたびにこれでは誰に懸想されるかわかったものじゃない。美しい奥方を迎えると隠しておくのが大変だとは、母上が読み耽っている物語に書かれていた言葉だ。読んだときには「何をおかしなことを」と思ったが、今回その気持ちが初めて理解できた。

「どうかしましたか?」

 あまりにじっと背中を見ていたからか、不意に金花が振り返った。

「いや、なんでもない。それより思っていたよりも獣道ではないのだな」
「おそらく町から人の道具を運ぶために烏たちに整えさせたのでしょうね」
敦皇あつおう様の使う道具か」
「えぇ。鬼となっても人と大差ない生活を送っているでしょうから」

 そうか、鬼になってもそういうところは変わらないのか。それなら俺もこのまま鍛錬を続けられるのかもしれない。安堵するとともに心配なこともあった。

(鍛錬はできたとしても、退魔の太刀である鴉丸からすまるを使うことができるかどうか……)

 触れることさえできなくなるようなら、母上の元へ送り届けることにしよう。そんなことを考えながら整えられた山道をひたすら登り続けた。すれ違う人の姿はなく、ざく、ざくと二人の足音だけが聞こえる。口数が減りながらも歩き続け、陽がてっぺんに見え始めた頃、ようやく開けた場所にたどり着いた。

「ほぉ」

 目の前には、やや小ぶりながら母上の屋敷に劣らないほど立派な建物があった。思わず感嘆の声を上げてしまう。金花の屋敷もそうだったが、こんな山奥にどうやってこれほど立派な屋敷を建てたのだろう。
 入り口らしきところには立派な藤の枝が門のように枝を茂らせていた。その先には整えられた道が続いており、それが建物へと繋がっている。藤の枝をくぐり少し歩くと奇妙な面をつけた者が立っていた。黒い面の目の辺りには朱色の化粧が施され、鼻は尖っていながら先端は少し下を向いている。面が覆っているのは鼻の辺りまでで、口から下は素顔のようだ。

「あれが烏ですよ」

 耳元でそう囁いた金花の声に、咄嗟に鴉丸からすまるの柄に手を伸ばしそうになった。すんでのところで手を止め、代わりにぐっと拳を握る。初めて目にするが、あれが烏天狗というアヤカシなのだろう。鬼の王に仕えるくらいだから強者つわものに違いないと用心しながら、ぐぐっと丹田に力を入れた。
 この先に鬼の王がいるのだとようやく実感が湧いた。まさか出会い頭に痛めつけられることはないだろうが、緊張からか体に力が入る。

「お久しゅうございます、キツラ」
「舞は後ほど。鬼王は?」
「奥の座敷にて奥方と庭を愛でておいでです」
「鬼王が庭を……?」

 わずかに眉を寄せた金花は、「本当に変わったようですねぇ」と少し戸惑うようにつぶやいた。

「では、カラギをそこへ案内してあげてください」
「金花?」
「わたしの案内はここまでです。この先は烏が案内してくれますから安心してください」
「おまえは行かないのか?」

 立ち止まった金花に思わずそんな言葉をかけていた。

「ふふっ、カラギもやはり鬼の王は恐ろしいのですか? かわいい方」
「金花っ」
「かわいいカラギの手を引いてあげたいところですが、最初に言ったとおりわたしは屋敷までの案内です」

 そうだ、鬼の王に会いたいと言ったとき、たしかに金花は「案内は・・・しましょう」と言っていた。なるほど、あれは鬼の王には会わないということだったのか。

「しかし、せっかくここまで来たのだから……その、兄弟なのだろう?」
「わたしも鬼王も互いを兄弟だと思ったことはないと言ったでしょう? 会いたいと願うことも懐かしいと思うこともありませんから気にしないでください」

 そう言われてしまえば、なおも共に行こうとは言えない。ここからは俺一人で行くしかないかと腹に力を入れたところで、面を付けた男がキツラの名を呼んだ。

「キツラ、鬼王はあなたもお呼びです」
「……鬼王が? なぜ?」

 訝しむ声や眉間の皺から自分まで呼ばれるとは予想していなかったのだろう。

(まさか、金花によからぬことが起きるのでは……)

 いや、それならそもそも御所で助けたりはしないはず。それでも一抹の不安は消えない。

「我らに鬼王の胸の内を推し量ることはできません。ですが、申しつけられたからにはキツラも連れて参らねばなりません」
「……否とは言えませんか」
「ご無理を。烏は鬼王の命じることを滞りなく成すもの。ささ、キツラもこちらへ」

 なおも渋る金花に違和感を抱きながら、烏が先導するのを追うように屋敷へと足を踏み入れた。
 建物の中はまさに公卿の住まう屋敷といわんばかりの様子だった。あまりの見事さに、またもや「ほぉ」と小さく声を漏らしてしまう。目に入る御簾や衝立などは御所にあってもおかしくない品ばかりで、女房たちの姿がないのが不思議なくらいだ。廊下を進み、渡殿わたどのを抜けた先に見えた庭には思わず息を呑んだ。これほど見事な庭は御所か帝の別邸かと見まがうばかりの景色に、思わずため息が漏れる。
 大きな池には美しい弧を描く橋が架けられ、池の中に造られた島には整えられた木々が美しく枝を伸ばしている。池の手前には花でも咲くのか、いくつか仕切られた場所に枝の名残が見えた。その近くを水鳥たちが優雅に泳ぎ、時折り山のほうから美しい鳥の鳴く声が聞こえる。おそらく池には見事な姿をした魚も泳いでいることだろう。
 いまが春や秋であったならどれほど美しかっただろうか。そんなことを想像しながら見入っていた俺の耳に、聞き覚えのある男の声が響いた。

「そんなところで呆けていないで、さっさとこっちへ来い」

 驚いて周囲を見渡したが前方には面を付けた男、後ろには金花の姿しかない。

「さっさとしろ。俺は気が長いほうではない」

 再び聞こえた声に促されるように廊下を進んだ。美しい庭に面した広い部屋の前で面の男が止まる。すべて開けられた御簾の向こうには御所で出会った鬼の王の姿が見えた。その隣にはあでやかな小袿を体にかけた小柄な男が座っていた。
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