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二章 鬼の王に会いて
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山を降りるには暗くて危ないからという敦皇様の言葉もあり、鬼の王の屋敷に泊まることになった。鬼の王は心底嫌そうな顔をしたが、敦皇様の「わたしも久しぶりに笛を吹きたいのです」という言葉にころりと態度を変え、いそいそと笛を取りに部屋を出て行く。
「今夜はゆっくりしていってくださいね。……あぁ、ええと、名はなんと言いましたか」
「大変失礼しました。唐多千と申しますが、普段はカラギと呼ばれています」
「ではカラギ、どうかキツラのこと、よろしくお願いします」
「もちろんです」
勢いよく答えると、なぜか隣に座る金花に膝をぺしりと叩かれてしまった。
「ふふ、仲が良いようでよかった。……わたしは弟たちに何もしてやれませんでした。だからキツラには何かしてやりたいと常々思っていたのです。ほら、わたしはキツラの兄ですから」
「……そういうところが苦手なのですよ」
金花がぼそりとつぶやくと、敦皇様が「そうなのですか?」と首を傾げながら問いかける。
「朱天はまったく兄らしくないでしょうから、これからはわたしのことを兄と呼んでくれてもよいのですよ? あぁ、カラギも」
見た目で言えば自分よりも年下の、身分で言えばずっと上の敦皇様を兄と呼ぶのはどうだろうか。無邪気に笑う姿は微笑ましくあるが答えに窮してしまう。……なるほど、たしかに金花が苦手だと口にするのもわかる気がする。
「そうそうキツラ、あなたの衣装は烏たちが用意しているはずです」
「……そうでしたね」
すっくと立ち上がった金花だったが、不意に俺を見て、それから敦皇様を見た。どうしたのだろうと金花を見上げるが、少しばかり視線をうろうろとさせるばかりで何も言わない。
「大丈夫ですよ。カラギはわたしの弟も同然。この屋敷でわたしに害を成すもの、わたしの意に反するものはいません。安心してください」
「……それでは、カラギをお願いします」
「はい、兄としてしっかり見ておきますね」
最後の言葉には複雑そうな顔をしたものの、敦皇様に頭を下げた金花は俺を見てふわりと笑った。そのまま足音を立てることなく鬼の王が向かったほうへと姿を消す。
「キツラはよほどあなたを好いているのですね」
「俺も、いや、わたしも、その、好いております」
「うふふ、このくらいで照れるなんてかわいらしい。あぁ、それから俺でかまいませんよ? わたしはもはや親王ではありませんし、かしこまる必要はありません」
「しかし、……はい」
鬼の王とはまったく違うが、なんとなく逆らえない雰囲気なのは第一親王だったからだろうか。小柄で幼さが残る表情とは真逆の雰囲気を感じ、改めて背筋を伸ばす。
「ささ、こちらへおいでなさい」
「失礼します」
部屋の中へ招き入れられ庭を振り返ると、そこには大きな舞台のようなものがあった。たしか渡殿を通ったときにはなかったはずで、こんな大きなものが音もなく突然現れたことに驚く。驚き目を見開いて見ていると「キツラの舞う舞台ですよ」と言われ、また驚いた。
「ここへ案内した烏たちへのお駄賃だそうです」
「そういえばそんなことを言っていましたか」
「せっかくのキツラの舞ですから、今宵はわたしも笛を吹こうかと」
「敦皇様がですか!?」
「おや、そんなに驚かなくてもよいじゃないですか。わたしの笛の腕前はそこそこなんですよ?」
「あぁ、いえ、それはよく存じています。後壱帝が、笛の名手と言えば敦皇様だとおっしゃられていたので」
「それは嬉しいこと」と微笑む敦皇様は、気のせいでなければ少し寂しげにも見えた。
「あの頃はわたしがいなくなっても誰も困らず悲しまず、煙のように記憶から消えてくれることを願っていました。ですがわたしのことを覚えていて、そうして話をしてくれていたのだと知るとやはり嬉しいものですね」
自ら鬼となることを決めたと話していたが、やはり敦皇様も悩んだのだろう。複雑な立場でもあっただろうから、俺よりもよほど迷い悩んだに違いない。
「敦皇様は鬼になられて……よかったとお思いですか?」
俺の問いかけに、敦皇様は「もちろんですよ」と笑って答えた。その顔に安堵しつつも、気になっていたことを口にしてもよいものか迷った。鬼の王や金花がいるところでは聞けそうにないが、いまなら尋ねることができる。いまを逃せば一生知ることはできないだろう。そう思い、意を決して口を開いた。
「鬼は人を食らわねば生きられないと、金花に、キツラに聞きました。俺もその覚悟でいました。結果的に俺には必要なさそうですが……敦皇様は、その……」
駄目だ、どうしても最後まで言葉にできない。それでも俺が何を言おうとしたのかわかったようで、敦皇様はふわりと笑い、こくりと頷いた。
「わたしも鬼となった身ですから、あなたが考えているようなことをしています」
敦皇様の目が庭を見る。
「鬼になる前はそのような恐ろしいことをと怯えました。覚悟をしていても、やはり恐ろしかった。ですが、同時に自分が朱天と同じになったのだと否が応でも感じることができます。それがたまらなく心地よいのです。わたしはもう人ではないのだとはっきり気づいた瞬間でもありました」
ふわりと微笑んだ口元には、気のせいでなければ小さな尖るものがのぞいていた。俺はこのときの敦皇様の言葉と表情を、決して忘れることはないだろうと思った。
まだ冬は遠いとはいえ、夜になると風が冷える。中腹とはいえ山だからか麓の町とは違うのだろう。「冬には雪がたんまり降りますよ」とは敦皇様の言葉で、冬の間は烏たちの雪かきを眺めるのが楽しいのだと笑っていた。
都よりも随分寒そうだと覚悟したが、廊下と違い部屋の中はとても暖かい。しかし炭櫃や火桶は見当たらず、一体どういう具合なのだろうと不思議に思った。
「そういうことも、鬼のなせる技なのだろうなぁ」
「どうかしましたか?」
ごろりと寝転がったままそうつぶやけば、高灯台の灯りを消した金花が振り返る。
「いや、火がないのに暖かいのはどうしてだろうと思ってな」
「鬼火か狐火のおかげでしょうね」
“おにび”に“きつねび”……、気にはなったが、そういう何かしらがあるのだろうと思うだけに留めておいた。それに俺もいずれは鬼に転ずるのだ、そのうちそういうこともわかってくるのだろう。
(鬼になれるのだとわかったからか、俺の知らない鬼のことで苛立つ気持ちがなくなってきた)
昨日までは、金花の鬼の一面を考えるだけで胸がざわつき苛々とすることが多かった。知りたいのに知りたくないという相反する気持ちのせいだったのだろう。しかしいまは鬼に転ずる方法がはっきりわかったからか驚くほど気持ちが凪いでいる。
(それに俺が知らない金花のことは、これから時間をかけて知ればいい)
金花は舞だけでなく、じつは笛や琵琶、和琴も演奏できるのだと知った。昨日までなら「どうして教えてくれなかったのか」と寂しく思っただろうが、いまはいずれ見聞きできるだろうと考えると楽しみが増す。
「おまえは雅な鬼だったのだな」
「何を急に」
「俺なんか太刀を振るうばかりで、笛どころか書ですらままならない。おかげで兄上たちからは冷たい目で見られてきたものだが、いまさら習いたいとも思わないしなぁ」
「わたしでよければ教えますよ?」
「いや、いい。習うよりも、おまえが舞っているのを見るほうが絶対にいい」
「それは……ありがとうございます」
灯りが消えた暗い中でも、金花の頬がうっすら染まっただろうことは声から想像できる。
(それにしても見事な舞だった)
一人舞を見たのは初めてだったが、金花の舞はなんとも優美で御所で見た舞楽に勝ると劣らない姿だと思った。たまたま都に行ったときに御所や貴族の屋敷で行われていた雅楽や舞楽を見聞きし、なんとなく覚えたのだと金花は話していたが本当にそうなのだろうか。
(見聞きしただけで覚えられるものなのか?)
雅なことに疎い俺に真似をすることなどできないが、金花にはどうということもなかったのだろう。その証拠に動きは滑らかで美しく、あの鬼の王でさえ「ほほぅ」と声を漏らすほどだった。
舞に合わせる敦皇様の笛も素晴らしかった。あの音色を後壱帝が聴かれたならどれほど喜ばれたか……そんなことを、ふと思ったりもした。
(それにしても、金花の衣装は煌びやかでよく似合っていた)
烏たちが用意したという萌黄色の袍は山や庭の紅葉に美しく映え、金花の美しさをより一層引き出していたように思う。これまで金花自身が用意する狩衣や直衣ばかりを見てきたが、こうなると俺が用意したものを着せてみたい気もする。たとえば近ごろ見かけるようになった白拍子の衣装も似合うだろうし、公卿の堅苦しい装いも似合いそうだ。水干姿も似合いそうだが、まさか童子のような着物を着せるわけにはいかない。……いや、それはそれで……。
「カラギ、どうかしましたか?」
「……っ! あぁ、いや、大丈夫。なんでもない」
金花の声にハッと我に返った。まさかとんでもない想像をしていたというわけにもいかず、慌てて思い描いた姿を消す。しかし、妙に熱を持った体はなかなか冷めてはくれない。だからといって女や童の姿を想像して滾ったと悟られるわけにもいかず、「少し夜風に当たってくる」と言って御帳の外へと出た。
真っ暗な廊下を少し進むと、金花が舞った庭が見えてきた。すでに舞台は消えていたが、夜目で見てもなんと大きく立派な庭だろうかと感心する。それもこれも鬼の王が敦皇様のために用意したものだとしたら、なんと情の深い鬼なのだろうか。
(だからこそ、敦皇様は鬼に転ずることを決めたのだろう)
好いてしまえば相手が鬼かどうかなど関係なくなるのは俺自身もよくわかる。そんなことを思いながら、さて部屋へ戻ろうかと踵を返したとき、どこからか泣くような声が聞こえた気がした。
鳥か何かとも思ったが、なんとなく気になって声のしたほうへと足を向ける。廊下を少し歩き、舞を見た部屋に降ろされた御簾に近づいたとき、一際細い声が響いた。
驚き、何事かと思わず御簾に手をかけた。わずかにめくった隙間から覗き込んだそこには――白い肌を晒し混じり合う二つの影があった。
(あれは……)
そこでまぐわっていたのは鬼の王と敦皇様だった。
ぬちゅ、ぬぽ、ぐちゅ。
濡れた音がするたびに高い声が響く。俺よりもずっと大きな体に背中を預けるようにしているのは敦皇様で間違いない。太い足で組む胡座に腰かけた敦皇様は、童子のように頼りなく見えた。
折れそうなほど細い腰は大きな手にがしりと掴まれ、掴んでいる逞しい腕に引っかけられた白い足は上下に動かされるたびにゆらゆらと揺れている。もしも部屋が明るければ、なんと淫らなことだと卒倒したかもしれない。いや、逆にわずかな灯りに照らされているからこそのいやらしさだろうか。
「ほれ、もっと奥で咥えろ」
「ん……っ、もぅ、むり、です、ん……っ」
「体は小さいが、ここは随分と俺に馴染んだだろう? ほぅら、一度抜いてやるから、もっと奥を開け」
ぬろろろろと現れた逸物は驚くほどの大きさだった。わずかな灯りに照らされたそれは太く長く、恐れを抱くほど筋が張り巡らされエラはがっしりと広い。ぬぽ、と先端が抜けると、続けてとぷとぷと大量の子種が垂れこぼれるのが見えた。
「こんなにこぼしてどうする。もう俺の子種はいらぬか?」
体を持ち上げた敦皇様の耳に口を寄せている顔を見て、ひゅうと小さく息を呑んだ。額には立派な角が二本、にょきりと生えている。それだけではない。昼間見たときにはたしかに黒かった髪は真っ赤に燃え、灯りに照らされているところなど本物の炎にすら見えるほど鮮やかだ。なにより一番驚いたのは、暗い中でぎらりと光る黄金の眼だった。黒々としていた両目は、いまや陽の輪かと思うほど強く光り輝いている。
あまりの姿に呆然と見つめていた俺を、すぃと黄金の目が見たような気がした。一瞬どきりとしたものの、鬼の王はニヤリと口元を歪めながら敦皇様の耳元で囁き続ける。
「ほら、もっと子種を飲め」
「ひ――……!」
ばちゅんと大きな音を立て、恐ろしいほど逞しい逸物が薄い腹の中に突き入れられた。あまりの衝撃からか、敦皇様の口からは悲鳴のような高い声が上がり、抱え込まれた白い体はブルブル震えているように見える。そんな敦皇様の様子を気に留めることもなく、鬼の王の太い腕は腰を激しく上下に動かし、結合した部分からはぬちゅぬちゅと濡れた音が鳴り続けていた。
「ぁ、ぁ、もぅ、だめ……。ぃって、しまう……」
「おぉ、何度でも気をやるがいい。そのほうがおまえにも腹にもいい」
「ぁ……、ぁ、だめ、ほんと、に……、しゅて、ん、だめ……。きて、しまうから、きて、あぁ、くる、く……っ、る……!」
またもや細い泣き声を上げた敦皇様は、首を大きくのけ反らせて体をぶるりと震わせた。直後、ゆらゆらと揺れていた逸物からどびゅぅと勢いよく子種が噴き出す。
(いや……あれは本当に子種か?)
まるで尿のような液体にも見えたそれは二人の頭上まで吹き上がり、その後もびゅっびゅと何度かにわけて吹き出し続けている。そうしてどのくらい経ったのか、両足を下ろされた敦皇様は、くたりとしながらも頬を撫でる大きな手に自らすり寄っていた。もう片方の大きな鬼の手は、まだ逸物が入っている白い腹を優しく撫でているように見える。
「次はおまえの食事だ」
「……ん、」
頬擦りをしていた鬼の王の手を握った敦皇様が小さく口を開けた。そのまま指にぱくりと噛みつく。薄暗いため何をしているのかはっきり見ることはできないが、俺の耳には何かを啜るような音が聞こえていた。
敦皇様が熱心に指を吸っている間、もう片方の鬼の王の手はずっと腹を撫でている。その仕草が妙に気になり手に視線が向いたとき、「よい子を生まねばな」という言葉が聞こえてきた。
(うむ……?)
すぐには意味がわからなかった。一体どういうことだと混乱する俺の耳に、今度は敦皇様の「ならば、子のためにも、もっと子種を」という言葉が聞こえてきてますます混乱する。
鬼の王は腹を撫でながら「よい子を生まねばな」と言い、敦皇様は「子のために」と言った。それはすなわち――。
「鬼王の閨を覗き見るなど、カラギも随分と大胆ですね」
「……!」
急に耳元で声がして息が止まるかと思った。慌てて振り返れば単をまとっただけの金花がいる。
「戻りが遅いので見に来てみれば、あんなものを覗き見るなんて」
「いや! これは偶然で覗き見ようとしたわけじゃなくてだな。いや、見ていたのはたしかだが、あぁだから、そういうことではなくて、」
「しぃっ」
金花の人差し指に口を押さえられ、ぐぅと唇を噛み締めた。
「ふふっ、覗き見て逸物を滾らせるなんて、本当にかわいい方」
「……っ!」
「それとも親王様に興奮でもしましたか? それならば口惜しい限りですけれど」
「ちがう……っ! そんなこと、あるわけないだろう! 俺にはおまえだけだ! それに敦皇様は、いわば俺にとって先祖のような方で、」
「だから、しぃっ」
またもや口を指で塞がれてしまった。俺はただただ情けなく金花を見つめることしかできない。
この部屋にたどり着いたのは本当に偶然で、うっかり覗き見たのだって偶然だ。もし中に敦皇様たちがいるとわかっていれば、絶対に御簾に手をかけたりはしない。それに逸物が滾ったのは男として当然の結果で、あんな痴態を見て何の反応もしないほうがおかしいだろう。あぁだから、そういうことではなくて……。
「では、この逞しいものはわたしが慰めてもよいですか?」
「……っ」
金花の濡れた黒目に見つめられ、さらに形を確かめるように撫でられてしまってはどうすることもできなかった。むんずと細い手首を掴んだ俺は、ずんずんと歩きあてがわれた部屋へと戻った。
部屋に入った途端に何もかも我慢できなくなった。すぐさま金花を掻き抱き、そのまま単衣を剥ぎ取り性急に肌を重ねる。口を吸いながら尻の奥を指で掻き混ぜ、金花が濡れた声を上げたところで滾った逸物をずんと突き入れた。
ぶちゅ、ぶちゅ、ぶちゅう。
尻を押し潰すように逸物を深く突き入れる。大きく尻を震わせた金花は腕の力が抜けたのか、肘がかくりと折れて四つん這いから尻だけを高く突き上げる姿になった。
互いが着ていた単衣や寝るときに掛ける袿などを下敷きにしているが、こんなに激しくしては金花の膝を痛めてしまうかもしれない。そう思っているのに突き上げる腰を止めることができない。それどころかますます激しく打ちつけてしまう。
「はっ、ハッ、三度も、出したというのに、はっ、収まりが、つかない、とは、ハッ」
俺はもう三度も金花の、キツラの中に子種をぶちまけていた。それなのに股間はますますいきり勃っている。一度目は逸物を突き入れてすぐだった。耐えようと力むこともできず、あっという間の出来事に思わずぐぅと唸り声を上げてしまった。びゅうびゅうと吐き出した逸物はそれでも衰えることはなく、俺は抜くことなくすぐさまキツラの奥に目がけて先端をねじ込んだ。
そうして床にキツラを押さえつけるようにしながら二度目の子種を吐き出した。そのまま今度は獣のように交わらんと四つん這いにさせ、滑った尻になおも天を向く逸物を突き込む。三度目もたっぷり吐き出したはずなのに、どうしたことかキツラの中ですぐさまムクムクと逸物が大きくなってしまった。
「これでは、まるで……っ」
まるで先ほど見た鬼の王のようではないか。思わずよぎった考えに、何を馬鹿なと頭を振った。いずれは鬼になるとしても、まだ俺はキツラの血を食らってはいない。精は何度か飲んだりもしたが、それでは鬼になるには弱いのだと聞いたばかりだ。それなのに体はこんなにも滾って、これではまるで鬼のようだと何度も考える。
「あぁ、駄目だ。まだ、はっ、落ち着きそう、にも、ハッ、ない、」
まったく衰えを見せない逸物でゆっくりとぬかるんだ中を擦った。すると「あ、ぁ――」と甘い声を上げてキツラが背中を仰け反らせる。
「あぁ、はふ、ふふ、なんて、はぁ、強い、ふ、精だ、こと」
「おまえの中が、よすぎ、る、ハッ、のだ、ハッ」
「あぁ、うれし、ぃ」
泣くようにそうつぶやいた声に、またもや逸物がぐぅんと力を増した。これでは四度目が済んでも収まらないかもしれない。そんなことを考えながら、ふと先ほど目にした敦皇様のことを思い出した。
鬼の王の腰に跨がった姿は心地よさそうに見え、鬼の王も十分に感じ入っているように見えた。さすがに鬼の王のように腰を掴んで上下に動かすことは難しいだろうが、キツラをあのように跨がらせてみたいという欲がわく。
キツラと俺は同じくらいの背丈だが、細身だからか俺でも抱えられるほどの重さしかない。それなら胡座の上に抱きかかえることもできるのではないだろうか。それにああして腰に載せればキツラが仰向けの俺に跨がるときと同じくらい奥まで入りそうだ。そこまで考えた俺の逸物が、そうしたいのだと言わんばかりに膨れ上がった。
「ふぁ……!」
急に大きくなったことに驚いたのか、キツラが白い背を震わせた。うっすら浮かぶ背骨を指でなぞりながら「両手をついて四つん這いになれるか?」と訊ねた。
「四つ……?」
「先ほどの格好だ。……あぁそうだ、手をついて……今度はそのまま俺に腰掛けるようにするんだ。そう、俺が支えるから……ぐぅ……っ!」
「ふぅ、ふ、んぅ……!」
キツラの尻が俺の上に座った瞬間、逸物がぐぐぅと奥深くを貫いた。あまりの気持ちよさに、慌てて奥歯を噛んで子種が噴き出すのを堪える。あまりにも深い場所を抉られたからか、キツラが頭をのけ反らせながらも嫌々と首を振った。そのせいで汗に湿ったキツラの髪が首や肩をくすぐるが、それがなんともいえず心地いい。
「ふ、ふは、これは、すごい、な。おまえが上に、乗るのと同じくらいか……?」
「ぁぅ、ぅ……、だめ、うごか、ないで」
「く……っ! いや、これは上に乗る、よりも、ハッ、奥に、くっ、入る、な」
「ひっ、だめ、動いては、だめ、だめ、」
「なぜ、だ? ほら、こうして、わずかに動くだけで、ぅっ、いつもより、うねっている、ぞ?」
「ふぅっ! ……ねがい、だめ、そこは、あぁ、いけ、ない、おく、はいって、あぁ、だめ、だめ、もぅ、おくは、だめぇ」
ぬっぽぬっぽと小刻みに突いていた逸物の先端が、ぐにゅりと曲がった気がした。とっくに狭い路を抜けて熱い壁に当たっていたと思っていたが、それよりさらに奥深くに先端が潜り込み始める。
(いや、前にもこれに近いことがあったか)
以前にも狭い路の先に先端が入り込むような感覚になったことがあった。しかしその感覚の比ではない。
ぐにゃりと曲がり入り込んだそこは、口の中とも腹の中とも言い難い、しかし間違いなく法悦を感じる場所だった。ぐにゅうとカリ首を締められながら先端をちゅうちゅうと吸われているような錯覚さえ感じる。さらに根本からカリ首のすぐ下までは熱く濡れたもので揉まれ、一気に二つの玉が迫り上がった。
どぴゅう、びゅるびゅる、びゅう!
四度目とは思えない勢いで子種が噴き出したのがわかった。あまりの心地よさから思わずキツラの腰を掴んでいた手に力がはいり、薄い腹を指先でぐぐぅと押す。すると指を押し返すように、いや、押されることに反応するように腹がビクビクと震え出した。
「ぁ、ぁ……! ぁ、だめ、くぅっ。だめ、きて、きて、しまう……っ」
「キツ、ラ?」
「ひんっ! だめ、だめ、ぁあ! く、る、くる、いっ、ぃく、ぃって、しま……っ、ぅ――……!」
心配になるくらい全身をガクガクと震わせたキツラは、俺の太ももをぎゅうぅと力任せに掴みながら盛大に逐情した。つられるように逸物の包む肉もうねりを増し、ますます子種を食らおうと蠢く。あまりの衝撃に一瞬気が遠くなった。頭の芯がぼうっと痺れるような心地よさに浸っていると、聞き慣れない水音がしていることに気がついた。
いったい何の音だと肩越しにキツラの股を覗き込めば、ピンと天を向いたままの逸物からしょろしょろと何かがこぼれている。それは匂いもなく、指先で触れても子種のような粘り気や色もなかった。
(……もしや)
覗き見たときの敦皇様が噴き出したものを思い出した。あれが何かはわからないが、あのときの敦皇様は法悦の極みといった様子だった。
(それと同じ状態にキツラがなっているということか……?)
ずるりと逸物を引き抜いた。そうして腰を掴んでいた手を離すと、キツラの体がぐらりと前に倒れる。どこにも力が入らないのか、キツラは膝を曲げたままうつ伏せになりヒクヒクと体を震わせていた。震えるせいか、それとも膝を曲げているせいか、体が揺れるたびに尻の間からぼたぼたと俺の吐き出したものがこぼれ落ちる。
それは見る間に小さな水溜りを作り、さらに尻から糸を引くように子種がぽたりぽたりと滴り始めた。それを見ただけで、またもや俺の逸物はギンギンに滾ってしまった。
「……ぐぅ。駄目だとわかっていても、止まらないんだ」
鬼の王が敦皇様に与えるほどの心地よさを俺はキツラに与えることができた。キツラが食らい尽くせないほどの子種を注ぎ込むことができた。そう思うだけで燃えさかるような感覚が体をぐるりと巡り、目眩がするほどの熱が頭の中をぐるりと駆け抜ける。
「キツラ、キツラ……俺の、俺だけの……」
囁きながら仰向けにすると、すぅと瞼が開き艶々とした黒目が俺を見た。
「あぁ、キツラ、もっともっと、おまえを」
まるで泣くようにつぶやいた俺の頬を、俺よりも熱いキツラの手が包み込む。
「ふふ、まるで、童子のよう……、かわいぃ、方」
「キツラ、」
「よいの、ですよ……。さぁ、もっと、わたしを、貪って……」
気がつけば仰向けのキツラの両足を掴み上げ、さらに床に押さえつけるようにのし掛かっていた。そうして子種があふれ出す熱い中を再び逸物で貫いていた。
「今夜はゆっくりしていってくださいね。……あぁ、ええと、名はなんと言いましたか」
「大変失礼しました。唐多千と申しますが、普段はカラギと呼ばれています」
「ではカラギ、どうかキツラのこと、よろしくお願いします」
「もちろんです」
勢いよく答えると、なぜか隣に座る金花に膝をぺしりと叩かれてしまった。
「ふふ、仲が良いようでよかった。……わたしは弟たちに何もしてやれませんでした。だからキツラには何かしてやりたいと常々思っていたのです。ほら、わたしはキツラの兄ですから」
「……そういうところが苦手なのですよ」
金花がぼそりとつぶやくと、敦皇様が「そうなのですか?」と首を傾げながら問いかける。
「朱天はまったく兄らしくないでしょうから、これからはわたしのことを兄と呼んでくれてもよいのですよ? あぁ、カラギも」
見た目で言えば自分よりも年下の、身分で言えばずっと上の敦皇様を兄と呼ぶのはどうだろうか。無邪気に笑う姿は微笑ましくあるが答えに窮してしまう。……なるほど、たしかに金花が苦手だと口にするのもわかる気がする。
「そうそうキツラ、あなたの衣装は烏たちが用意しているはずです」
「……そうでしたね」
すっくと立ち上がった金花だったが、不意に俺を見て、それから敦皇様を見た。どうしたのだろうと金花を見上げるが、少しばかり視線をうろうろとさせるばかりで何も言わない。
「大丈夫ですよ。カラギはわたしの弟も同然。この屋敷でわたしに害を成すもの、わたしの意に反するものはいません。安心してください」
「……それでは、カラギをお願いします」
「はい、兄としてしっかり見ておきますね」
最後の言葉には複雑そうな顔をしたものの、敦皇様に頭を下げた金花は俺を見てふわりと笑った。そのまま足音を立てることなく鬼の王が向かったほうへと姿を消す。
「キツラはよほどあなたを好いているのですね」
「俺も、いや、わたしも、その、好いております」
「うふふ、このくらいで照れるなんてかわいらしい。あぁ、それから俺でかまいませんよ? わたしはもはや親王ではありませんし、かしこまる必要はありません」
「しかし、……はい」
鬼の王とはまったく違うが、なんとなく逆らえない雰囲気なのは第一親王だったからだろうか。小柄で幼さが残る表情とは真逆の雰囲気を感じ、改めて背筋を伸ばす。
「ささ、こちらへおいでなさい」
「失礼します」
部屋の中へ招き入れられ庭を振り返ると、そこには大きな舞台のようなものがあった。たしか渡殿を通ったときにはなかったはずで、こんな大きなものが音もなく突然現れたことに驚く。驚き目を見開いて見ていると「キツラの舞う舞台ですよ」と言われ、また驚いた。
「ここへ案内した烏たちへのお駄賃だそうです」
「そういえばそんなことを言っていましたか」
「せっかくのキツラの舞ですから、今宵はわたしも笛を吹こうかと」
「敦皇様がですか!?」
「おや、そんなに驚かなくてもよいじゃないですか。わたしの笛の腕前はそこそこなんですよ?」
「あぁ、いえ、それはよく存じています。後壱帝が、笛の名手と言えば敦皇様だとおっしゃられていたので」
「それは嬉しいこと」と微笑む敦皇様は、気のせいでなければ少し寂しげにも見えた。
「あの頃はわたしがいなくなっても誰も困らず悲しまず、煙のように記憶から消えてくれることを願っていました。ですがわたしのことを覚えていて、そうして話をしてくれていたのだと知るとやはり嬉しいものですね」
自ら鬼となることを決めたと話していたが、やはり敦皇様も悩んだのだろう。複雑な立場でもあっただろうから、俺よりもよほど迷い悩んだに違いない。
「敦皇様は鬼になられて……よかったとお思いですか?」
俺の問いかけに、敦皇様は「もちろんですよ」と笑って答えた。その顔に安堵しつつも、気になっていたことを口にしてもよいものか迷った。鬼の王や金花がいるところでは聞けそうにないが、いまなら尋ねることができる。いまを逃せば一生知ることはできないだろう。そう思い、意を決して口を開いた。
「鬼は人を食らわねば生きられないと、金花に、キツラに聞きました。俺もその覚悟でいました。結果的に俺には必要なさそうですが……敦皇様は、その……」
駄目だ、どうしても最後まで言葉にできない。それでも俺が何を言おうとしたのかわかったようで、敦皇様はふわりと笑い、こくりと頷いた。
「わたしも鬼となった身ですから、あなたが考えているようなことをしています」
敦皇様の目が庭を見る。
「鬼になる前はそのような恐ろしいことをと怯えました。覚悟をしていても、やはり恐ろしかった。ですが、同時に自分が朱天と同じになったのだと否が応でも感じることができます。それがたまらなく心地よいのです。わたしはもう人ではないのだとはっきり気づいた瞬間でもありました」
ふわりと微笑んだ口元には、気のせいでなければ小さな尖るものがのぞいていた。俺はこのときの敦皇様の言葉と表情を、決して忘れることはないだろうと思った。
まだ冬は遠いとはいえ、夜になると風が冷える。中腹とはいえ山だからか麓の町とは違うのだろう。「冬には雪がたんまり降りますよ」とは敦皇様の言葉で、冬の間は烏たちの雪かきを眺めるのが楽しいのだと笑っていた。
都よりも随分寒そうだと覚悟したが、廊下と違い部屋の中はとても暖かい。しかし炭櫃や火桶は見当たらず、一体どういう具合なのだろうと不思議に思った。
「そういうことも、鬼のなせる技なのだろうなぁ」
「どうかしましたか?」
ごろりと寝転がったままそうつぶやけば、高灯台の灯りを消した金花が振り返る。
「いや、火がないのに暖かいのはどうしてだろうと思ってな」
「鬼火か狐火のおかげでしょうね」
“おにび”に“きつねび”……、気にはなったが、そういう何かしらがあるのだろうと思うだけに留めておいた。それに俺もいずれは鬼に転ずるのだ、そのうちそういうこともわかってくるのだろう。
(鬼になれるのだとわかったからか、俺の知らない鬼のことで苛立つ気持ちがなくなってきた)
昨日までは、金花の鬼の一面を考えるだけで胸がざわつき苛々とすることが多かった。知りたいのに知りたくないという相反する気持ちのせいだったのだろう。しかしいまは鬼に転ずる方法がはっきりわかったからか驚くほど気持ちが凪いでいる。
(それに俺が知らない金花のことは、これから時間をかけて知ればいい)
金花は舞だけでなく、じつは笛や琵琶、和琴も演奏できるのだと知った。昨日までなら「どうして教えてくれなかったのか」と寂しく思っただろうが、いまはいずれ見聞きできるだろうと考えると楽しみが増す。
「おまえは雅な鬼だったのだな」
「何を急に」
「俺なんか太刀を振るうばかりで、笛どころか書ですらままならない。おかげで兄上たちからは冷たい目で見られてきたものだが、いまさら習いたいとも思わないしなぁ」
「わたしでよければ教えますよ?」
「いや、いい。習うよりも、おまえが舞っているのを見るほうが絶対にいい」
「それは……ありがとうございます」
灯りが消えた暗い中でも、金花の頬がうっすら染まっただろうことは声から想像できる。
(それにしても見事な舞だった)
一人舞を見たのは初めてだったが、金花の舞はなんとも優美で御所で見た舞楽に勝ると劣らない姿だと思った。たまたま都に行ったときに御所や貴族の屋敷で行われていた雅楽や舞楽を見聞きし、なんとなく覚えたのだと金花は話していたが本当にそうなのだろうか。
(見聞きしただけで覚えられるものなのか?)
雅なことに疎い俺に真似をすることなどできないが、金花にはどうということもなかったのだろう。その証拠に動きは滑らかで美しく、あの鬼の王でさえ「ほほぅ」と声を漏らすほどだった。
舞に合わせる敦皇様の笛も素晴らしかった。あの音色を後壱帝が聴かれたならどれほど喜ばれたか……そんなことを、ふと思ったりもした。
(それにしても、金花の衣装は煌びやかでよく似合っていた)
烏たちが用意したという萌黄色の袍は山や庭の紅葉に美しく映え、金花の美しさをより一層引き出していたように思う。これまで金花自身が用意する狩衣や直衣ばかりを見てきたが、こうなると俺が用意したものを着せてみたい気もする。たとえば近ごろ見かけるようになった白拍子の衣装も似合うだろうし、公卿の堅苦しい装いも似合いそうだ。水干姿も似合いそうだが、まさか童子のような着物を着せるわけにはいかない。……いや、それはそれで……。
「カラギ、どうかしましたか?」
「……っ! あぁ、いや、大丈夫。なんでもない」
金花の声にハッと我に返った。まさかとんでもない想像をしていたというわけにもいかず、慌てて思い描いた姿を消す。しかし、妙に熱を持った体はなかなか冷めてはくれない。だからといって女や童の姿を想像して滾ったと悟られるわけにもいかず、「少し夜風に当たってくる」と言って御帳の外へと出た。
真っ暗な廊下を少し進むと、金花が舞った庭が見えてきた。すでに舞台は消えていたが、夜目で見てもなんと大きく立派な庭だろうかと感心する。それもこれも鬼の王が敦皇様のために用意したものだとしたら、なんと情の深い鬼なのだろうか。
(だからこそ、敦皇様は鬼に転ずることを決めたのだろう)
好いてしまえば相手が鬼かどうかなど関係なくなるのは俺自身もよくわかる。そんなことを思いながら、さて部屋へ戻ろうかと踵を返したとき、どこからか泣くような声が聞こえた気がした。
鳥か何かとも思ったが、なんとなく気になって声のしたほうへと足を向ける。廊下を少し歩き、舞を見た部屋に降ろされた御簾に近づいたとき、一際細い声が響いた。
驚き、何事かと思わず御簾に手をかけた。わずかにめくった隙間から覗き込んだそこには――白い肌を晒し混じり合う二つの影があった。
(あれは……)
そこでまぐわっていたのは鬼の王と敦皇様だった。
ぬちゅ、ぬぽ、ぐちゅ。
濡れた音がするたびに高い声が響く。俺よりもずっと大きな体に背中を預けるようにしているのは敦皇様で間違いない。太い足で組む胡座に腰かけた敦皇様は、童子のように頼りなく見えた。
折れそうなほど細い腰は大きな手にがしりと掴まれ、掴んでいる逞しい腕に引っかけられた白い足は上下に動かされるたびにゆらゆらと揺れている。もしも部屋が明るければ、なんと淫らなことだと卒倒したかもしれない。いや、逆にわずかな灯りに照らされているからこそのいやらしさだろうか。
「ほれ、もっと奥で咥えろ」
「ん……っ、もぅ、むり、です、ん……っ」
「体は小さいが、ここは随分と俺に馴染んだだろう? ほぅら、一度抜いてやるから、もっと奥を開け」
ぬろろろろと現れた逸物は驚くほどの大きさだった。わずかな灯りに照らされたそれは太く長く、恐れを抱くほど筋が張り巡らされエラはがっしりと広い。ぬぽ、と先端が抜けると、続けてとぷとぷと大量の子種が垂れこぼれるのが見えた。
「こんなにこぼしてどうする。もう俺の子種はいらぬか?」
体を持ち上げた敦皇様の耳に口を寄せている顔を見て、ひゅうと小さく息を呑んだ。額には立派な角が二本、にょきりと生えている。それだけではない。昼間見たときにはたしかに黒かった髪は真っ赤に燃え、灯りに照らされているところなど本物の炎にすら見えるほど鮮やかだ。なにより一番驚いたのは、暗い中でぎらりと光る黄金の眼だった。黒々としていた両目は、いまや陽の輪かと思うほど強く光り輝いている。
あまりの姿に呆然と見つめていた俺を、すぃと黄金の目が見たような気がした。一瞬どきりとしたものの、鬼の王はニヤリと口元を歪めながら敦皇様の耳元で囁き続ける。
「ほら、もっと子種を飲め」
「ひ――……!」
ばちゅんと大きな音を立て、恐ろしいほど逞しい逸物が薄い腹の中に突き入れられた。あまりの衝撃からか、敦皇様の口からは悲鳴のような高い声が上がり、抱え込まれた白い体はブルブル震えているように見える。そんな敦皇様の様子を気に留めることもなく、鬼の王の太い腕は腰を激しく上下に動かし、結合した部分からはぬちゅぬちゅと濡れた音が鳴り続けていた。
「ぁ、ぁ、もぅ、だめ……。ぃって、しまう……」
「おぉ、何度でも気をやるがいい。そのほうがおまえにも腹にもいい」
「ぁ……、ぁ、だめ、ほんと、に……、しゅて、ん、だめ……。きて、しまうから、きて、あぁ、くる、く……っ、る……!」
またもや細い泣き声を上げた敦皇様は、首を大きくのけ反らせて体をぶるりと震わせた。直後、ゆらゆらと揺れていた逸物からどびゅぅと勢いよく子種が噴き出す。
(いや……あれは本当に子種か?)
まるで尿のような液体にも見えたそれは二人の頭上まで吹き上がり、その後もびゅっびゅと何度かにわけて吹き出し続けている。そうしてどのくらい経ったのか、両足を下ろされた敦皇様は、くたりとしながらも頬を撫でる大きな手に自らすり寄っていた。もう片方の大きな鬼の手は、まだ逸物が入っている白い腹を優しく撫でているように見える。
「次はおまえの食事だ」
「……ん、」
頬擦りをしていた鬼の王の手を握った敦皇様が小さく口を開けた。そのまま指にぱくりと噛みつく。薄暗いため何をしているのかはっきり見ることはできないが、俺の耳には何かを啜るような音が聞こえていた。
敦皇様が熱心に指を吸っている間、もう片方の鬼の王の手はずっと腹を撫でている。その仕草が妙に気になり手に視線が向いたとき、「よい子を生まねばな」という言葉が聞こえてきた。
(うむ……?)
すぐには意味がわからなかった。一体どういうことだと混乱する俺の耳に、今度は敦皇様の「ならば、子のためにも、もっと子種を」という言葉が聞こえてきてますます混乱する。
鬼の王は腹を撫でながら「よい子を生まねばな」と言い、敦皇様は「子のために」と言った。それはすなわち――。
「鬼王の閨を覗き見るなど、カラギも随分と大胆ですね」
「……!」
急に耳元で声がして息が止まるかと思った。慌てて振り返れば単をまとっただけの金花がいる。
「戻りが遅いので見に来てみれば、あんなものを覗き見るなんて」
「いや! これは偶然で覗き見ようとしたわけじゃなくてだな。いや、見ていたのはたしかだが、あぁだから、そういうことではなくて、」
「しぃっ」
金花の人差し指に口を押さえられ、ぐぅと唇を噛み締めた。
「ふふっ、覗き見て逸物を滾らせるなんて、本当にかわいい方」
「……っ!」
「それとも親王様に興奮でもしましたか? それならば口惜しい限りですけれど」
「ちがう……っ! そんなこと、あるわけないだろう! 俺にはおまえだけだ! それに敦皇様は、いわば俺にとって先祖のような方で、」
「だから、しぃっ」
またもや口を指で塞がれてしまった。俺はただただ情けなく金花を見つめることしかできない。
この部屋にたどり着いたのは本当に偶然で、うっかり覗き見たのだって偶然だ。もし中に敦皇様たちがいるとわかっていれば、絶対に御簾に手をかけたりはしない。それに逸物が滾ったのは男として当然の結果で、あんな痴態を見て何の反応もしないほうがおかしいだろう。あぁだから、そういうことではなくて……。
「では、この逞しいものはわたしが慰めてもよいですか?」
「……っ」
金花の濡れた黒目に見つめられ、さらに形を確かめるように撫でられてしまってはどうすることもできなかった。むんずと細い手首を掴んだ俺は、ずんずんと歩きあてがわれた部屋へと戻った。
部屋に入った途端に何もかも我慢できなくなった。すぐさま金花を掻き抱き、そのまま単衣を剥ぎ取り性急に肌を重ねる。口を吸いながら尻の奥を指で掻き混ぜ、金花が濡れた声を上げたところで滾った逸物をずんと突き入れた。
ぶちゅ、ぶちゅ、ぶちゅう。
尻を押し潰すように逸物を深く突き入れる。大きく尻を震わせた金花は腕の力が抜けたのか、肘がかくりと折れて四つん這いから尻だけを高く突き上げる姿になった。
互いが着ていた単衣や寝るときに掛ける袿などを下敷きにしているが、こんなに激しくしては金花の膝を痛めてしまうかもしれない。そう思っているのに突き上げる腰を止めることができない。それどころかますます激しく打ちつけてしまう。
「はっ、ハッ、三度も、出したというのに、はっ、収まりが、つかない、とは、ハッ」
俺はもう三度も金花の、キツラの中に子種をぶちまけていた。それなのに股間はますますいきり勃っている。一度目は逸物を突き入れてすぐだった。耐えようと力むこともできず、あっという間の出来事に思わずぐぅと唸り声を上げてしまった。びゅうびゅうと吐き出した逸物はそれでも衰えることはなく、俺は抜くことなくすぐさまキツラの奥に目がけて先端をねじ込んだ。
そうして床にキツラを押さえつけるようにしながら二度目の子種を吐き出した。そのまま今度は獣のように交わらんと四つん這いにさせ、滑った尻になおも天を向く逸物を突き込む。三度目もたっぷり吐き出したはずなのに、どうしたことかキツラの中ですぐさまムクムクと逸物が大きくなってしまった。
「これでは、まるで……っ」
まるで先ほど見た鬼の王のようではないか。思わずよぎった考えに、何を馬鹿なと頭を振った。いずれは鬼になるとしても、まだ俺はキツラの血を食らってはいない。精は何度か飲んだりもしたが、それでは鬼になるには弱いのだと聞いたばかりだ。それなのに体はこんなにも滾って、これではまるで鬼のようだと何度も考える。
「あぁ、駄目だ。まだ、はっ、落ち着きそう、にも、ハッ、ない、」
まったく衰えを見せない逸物でゆっくりとぬかるんだ中を擦った。すると「あ、ぁ――」と甘い声を上げてキツラが背中を仰け反らせる。
「あぁ、はふ、ふふ、なんて、はぁ、強い、ふ、精だ、こと」
「おまえの中が、よすぎ、る、ハッ、のだ、ハッ」
「あぁ、うれし、ぃ」
泣くようにそうつぶやいた声に、またもや逸物がぐぅんと力を増した。これでは四度目が済んでも収まらないかもしれない。そんなことを考えながら、ふと先ほど目にした敦皇様のことを思い出した。
鬼の王の腰に跨がった姿は心地よさそうに見え、鬼の王も十分に感じ入っているように見えた。さすがに鬼の王のように腰を掴んで上下に動かすことは難しいだろうが、キツラをあのように跨がらせてみたいという欲がわく。
キツラと俺は同じくらいの背丈だが、細身だからか俺でも抱えられるほどの重さしかない。それなら胡座の上に抱きかかえることもできるのではないだろうか。それにああして腰に載せればキツラが仰向けの俺に跨がるときと同じくらい奥まで入りそうだ。そこまで考えた俺の逸物が、そうしたいのだと言わんばかりに膨れ上がった。
「ふぁ……!」
急に大きくなったことに驚いたのか、キツラが白い背を震わせた。うっすら浮かぶ背骨を指でなぞりながら「両手をついて四つん這いになれるか?」と訊ねた。
「四つ……?」
「先ほどの格好だ。……あぁそうだ、手をついて……今度はそのまま俺に腰掛けるようにするんだ。そう、俺が支えるから……ぐぅ……っ!」
「ふぅ、ふ、んぅ……!」
キツラの尻が俺の上に座った瞬間、逸物がぐぐぅと奥深くを貫いた。あまりの気持ちよさに、慌てて奥歯を噛んで子種が噴き出すのを堪える。あまりにも深い場所を抉られたからか、キツラが頭をのけ反らせながらも嫌々と首を振った。そのせいで汗に湿ったキツラの髪が首や肩をくすぐるが、それがなんともいえず心地いい。
「ふ、ふは、これは、すごい、な。おまえが上に、乗るのと同じくらいか……?」
「ぁぅ、ぅ……、だめ、うごか、ないで」
「く……っ! いや、これは上に乗る、よりも、ハッ、奥に、くっ、入る、な」
「ひっ、だめ、動いては、だめ、だめ、」
「なぜ、だ? ほら、こうして、わずかに動くだけで、ぅっ、いつもより、うねっている、ぞ?」
「ふぅっ! ……ねがい、だめ、そこは、あぁ、いけ、ない、おく、はいって、あぁ、だめ、だめ、もぅ、おくは、だめぇ」
ぬっぽぬっぽと小刻みに突いていた逸物の先端が、ぐにゅりと曲がった気がした。とっくに狭い路を抜けて熱い壁に当たっていたと思っていたが、それよりさらに奥深くに先端が潜り込み始める。
(いや、前にもこれに近いことがあったか)
以前にも狭い路の先に先端が入り込むような感覚になったことがあった。しかしその感覚の比ではない。
ぐにゃりと曲がり入り込んだそこは、口の中とも腹の中とも言い難い、しかし間違いなく法悦を感じる場所だった。ぐにゅうとカリ首を締められながら先端をちゅうちゅうと吸われているような錯覚さえ感じる。さらに根本からカリ首のすぐ下までは熱く濡れたもので揉まれ、一気に二つの玉が迫り上がった。
どぴゅう、びゅるびゅる、びゅう!
四度目とは思えない勢いで子種が噴き出したのがわかった。あまりの心地よさから思わずキツラの腰を掴んでいた手に力がはいり、薄い腹を指先でぐぐぅと押す。すると指を押し返すように、いや、押されることに反応するように腹がビクビクと震え出した。
「ぁ、ぁ……! ぁ、だめ、くぅっ。だめ、きて、きて、しまう……っ」
「キツ、ラ?」
「ひんっ! だめ、だめ、ぁあ! く、る、くる、いっ、ぃく、ぃって、しま……っ、ぅ――……!」
心配になるくらい全身をガクガクと震わせたキツラは、俺の太ももをぎゅうぅと力任せに掴みながら盛大に逐情した。つられるように逸物の包む肉もうねりを増し、ますます子種を食らおうと蠢く。あまりの衝撃に一瞬気が遠くなった。頭の芯がぼうっと痺れるような心地よさに浸っていると、聞き慣れない水音がしていることに気がついた。
いったい何の音だと肩越しにキツラの股を覗き込めば、ピンと天を向いたままの逸物からしょろしょろと何かがこぼれている。それは匂いもなく、指先で触れても子種のような粘り気や色もなかった。
(……もしや)
覗き見たときの敦皇様が噴き出したものを思い出した。あれが何かはわからないが、あのときの敦皇様は法悦の極みといった様子だった。
(それと同じ状態にキツラがなっているということか……?)
ずるりと逸物を引き抜いた。そうして腰を掴んでいた手を離すと、キツラの体がぐらりと前に倒れる。どこにも力が入らないのか、キツラは膝を曲げたままうつ伏せになりヒクヒクと体を震わせていた。震えるせいか、それとも膝を曲げているせいか、体が揺れるたびに尻の間からぼたぼたと俺の吐き出したものがこぼれ落ちる。
それは見る間に小さな水溜りを作り、さらに尻から糸を引くように子種がぽたりぽたりと滴り始めた。それを見ただけで、またもや俺の逸物はギンギンに滾ってしまった。
「……ぐぅ。駄目だとわかっていても、止まらないんだ」
鬼の王が敦皇様に与えるほどの心地よさを俺はキツラに与えることができた。キツラが食らい尽くせないほどの子種を注ぎ込むことができた。そう思うだけで燃えさかるような感覚が体をぐるりと巡り、目眩がするほどの熱が頭の中をぐるりと駆け抜ける。
「キツラ、キツラ……俺の、俺だけの……」
囁きながら仰向けにすると、すぅと瞼が開き艶々とした黒目が俺を見た。
「あぁ、キツラ、もっともっと、おまえを」
まるで泣くようにつぶやいた俺の頬を、俺よりも熱いキツラの手が包み込む。
「ふふ、まるで、童子のよう……、かわいぃ、方」
「キツラ、」
「よいの、ですよ……。さぁ、もっと、わたしを、貪って……」
気がつけば仰向けのキツラの両足を掴み上げ、さらに床に押さえつけるようにのし掛かっていた。そうして子種があふれ出す熱い中を再び逸物で貫いていた。
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