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木漏れ日の願い
木漏れ日の願い・・・その13
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ここで倉根は、なぜか、あやねの容疑者に対しての接し方を思い出した。
普通であれば、冤罪かもしれない人が逮捕されてしまったわけなのだから心配のひとつもするものではないだろうか?
それなのに、冤罪の可能性がある男が逮捕されたというのに少しも慌てる事も心配する事もなく、
どこか楽しんでいるようにさえ思えてしまうあやねの仕草に少し戸惑っていた事を思い出していた。
「あの・・・ちょっと変な事をお聞きしますが、その先ほど言っていましたあの男のためというのは?」
「何か思い当たる事でも?」
「まあ、あると言えばあるような・・・」
「もしかして、その誰かさん?」
「ええ、実はですね、その誰かさんはすぐに冤罪だと見抜いてしまったんですけどね」
「すぐに・・・ですか?」
「ええ、そうなんです。僕が事件の事を話したら、僅か数分で見抜いてしまったんです」
「数分で?」
「ええ、そうなんです。まあ、それに関してはいつもの事なので、ちょっとは驚きましたけど、でも、それほど気にはしなかったんですけどね」
「いつもの事って、なんか、とっても凄い人みたいですね?」
「凄いっていうか、変わってるというか、まあ、ははは。なにせ、初めから存在しないトリックとかって言う人ですから」
「見抜いたんですか・・・それを?」
これには冷静に会話をしていた紗耶香も流石に驚いた様子で、おそらくは無意識になのだろう、
今まで表情を変えなかった紗耶香も信じられないという顔つきに変わってしまった。
「えっ?・・・まさか、ほんとに初めから存在しないトリックっていうのって?」
「ふふっ。正直、今の言葉には驚きました。まさか、あれを見抜く人がいるなんてちょっと信じられないですね」
「それじゃ、あの・・・」
「ええ・・・ご想像の通りです。でも、その分だと、他の仕掛けもすでに見抜いているかもしれませんね」
「それって、もしかして、僕たち警察が勝手に迷路を書いてしまったとか?もしくは後追いトラップとか?」
「ふふっ・・・本当に信じられないですね?」
「それだけじゃないんですよ!信じられないかもしれませんが実は紗耶香さんの存在まで見抜いていたんですよ」
「まさか・・・だって、刑事さんがその誰かさんを尋ねられた時には、まだ、私はどこにも存在していなかったはずですよ?」
「なんですよ!なにせ紗耶香さんの存在は僕たち警察でさえ知らなかったんですから」
少しの恐怖なのだろうか?
紗耶香の表情がどこか得体のしれない恐れに戸惑っているように倉根の視界に映っていた。
そんな紗耶香の表情の変化に倉根はある事を言ってみようと思った。
「先程、紗耶香さんが旦那さんと紗耶香さんの関係を亡くなった被害者は知らなかったはずと言っていましたよね?」
「ええ・・・」
「僕もその話を聞いた時は信じてしまったんですけど・・・思い出したんです」
「と、言いますのは?」
「その誰かさんが言っていたんです。被害者の女性はお二人の関係を知っていたって言っていたんです」
「まさか?」
「いえ、きっと、まさかではないと思えるんです。と言うのも、一度海外に戻られた旦那さんはすぐに戻って来るからとも言っていたんですから」
「それで彼を見張っていたら・・・私が?・・・に・・・」
「だと思います・・・。とはいっても、僕自身もいまだに信じられないんですけどね」
「その分だと、私から刑事さんに声をかけることも・・・そして、その理由も・・・ふふっ、正直、参っちゃいましたね」
「はい?」
「でも、やっぱり知っておられたんですね、奥様は・・・私と彼の関係を・・・」
「信じるんですか?その、誰かさんの言っていた事を?」
「ふふっ。信じない理由を探す方が難しいのでは?」
「はあ・・・まあ、確かに・・・ですね。ってか、あの、もしかして何かの理由があったんですか?僕に話しかけてきたのって?」
「ふふっ、ただの気まぐれです。でも、正直、驚きました。いったい何者なんです?その誰かさんって?」
「さあ、実は僕もよく分からないんです。実際、僕が知っているのは、とんでもないくらい凄い霊能力があるって事くらいなんですよ」
「霊能力?それじゃ、今回の事もその霊能力で?」
「いえ、本人は霊能力は一切使っていないって言ってました」
「ほんとですか?」
「僕としてはなんとも・・・。でも、本人曰く、霊能力は知らなくてもいい事まで知ってしまうから使いたくないって言っていました」
「刑事さんは怖くないんですか?」
「怖くないって?その誰かさんですか?」
「ええ、だって、全てを見透かされているみたいで、正直、怖いって思ってしまいましたけど」
「確かに、怖くないといえば嘘になるかもしれませんね。でも、それよりも正義とは何なのかって?、いつも考えさせられてしまうんですよ」
「正義とは何なのか・・・ですか、難しいですね。初めから存在しないトリックもある意味そうなのかもしれませんね」
「初めから存在しないトリックも・・・ですか?」
「ええ、初めから存在しないトリックは、それを描く人によって姿を変えてしまう正義という名の陽炎。亡くなった奥様がそう言っていました」
「姿を変えてしまう正義という名の陽炎?でも、なぜ?そこまで深く考える事が出来る人が自ら死を選んでしまったんですか?」
「ふふっ。それは、誘導尋問なのかしら?」
「あっ・・・いえ・・・ははは、参りました」
「ふふっ、でも、流石は刑事さん。抜け目がないですね」
いえいえ、瞬時にそれに気が付いた紗耶香さんの方が遥かに抜け目がないと思われますけど。
でも、上手く聞き出せるかな?って、ちょっとは期待したんだけどな~やっぱり駄目でした。
「それで、あの、先程も訊きました、あの男のためというのは?」
「聞きたいですか?」
えっ?聞きたいですか?って、そこって溜めが入っちゃうんですか?
普通であれば、冤罪かもしれない人が逮捕されてしまったわけなのだから心配のひとつもするものではないだろうか?
それなのに、冤罪の可能性がある男が逮捕されたというのに少しも慌てる事も心配する事もなく、
どこか楽しんでいるようにさえ思えてしまうあやねの仕草に少し戸惑っていた事を思い出していた。
「あの・・・ちょっと変な事をお聞きしますが、その先ほど言っていましたあの男のためというのは?」
「何か思い当たる事でも?」
「まあ、あると言えばあるような・・・」
「もしかして、その誰かさん?」
「ええ、実はですね、その誰かさんはすぐに冤罪だと見抜いてしまったんですけどね」
「すぐに・・・ですか?」
「ええ、そうなんです。僕が事件の事を話したら、僅か数分で見抜いてしまったんです」
「数分で?」
「ええ、そうなんです。まあ、それに関してはいつもの事なので、ちょっとは驚きましたけど、でも、それほど気にはしなかったんですけどね」
「いつもの事って、なんか、とっても凄い人みたいですね?」
「凄いっていうか、変わってるというか、まあ、ははは。なにせ、初めから存在しないトリックとかって言う人ですから」
「見抜いたんですか・・・それを?」
これには冷静に会話をしていた紗耶香も流石に驚いた様子で、おそらくは無意識になのだろう、
今まで表情を変えなかった紗耶香も信じられないという顔つきに変わってしまった。
「えっ?・・・まさか、ほんとに初めから存在しないトリックっていうのって?」
「ふふっ。正直、今の言葉には驚きました。まさか、あれを見抜く人がいるなんてちょっと信じられないですね」
「それじゃ、あの・・・」
「ええ・・・ご想像の通りです。でも、その分だと、他の仕掛けもすでに見抜いているかもしれませんね」
「それって、もしかして、僕たち警察が勝手に迷路を書いてしまったとか?もしくは後追いトラップとか?」
「ふふっ・・・本当に信じられないですね?」
「それだけじゃないんですよ!信じられないかもしれませんが実は紗耶香さんの存在まで見抜いていたんですよ」
「まさか・・・だって、刑事さんがその誰かさんを尋ねられた時には、まだ、私はどこにも存在していなかったはずですよ?」
「なんですよ!なにせ紗耶香さんの存在は僕たち警察でさえ知らなかったんですから」
少しの恐怖なのだろうか?
紗耶香の表情がどこか得体のしれない恐れに戸惑っているように倉根の視界に映っていた。
そんな紗耶香の表情の変化に倉根はある事を言ってみようと思った。
「先程、紗耶香さんが旦那さんと紗耶香さんの関係を亡くなった被害者は知らなかったはずと言っていましたよね?」
「ええ・・・」
「僕もその話を聞いた時は信じてしまったんですけど・・・思い出したんです」
「と、言いますのは?」
「その誰かさんが言っていたんです。被害者の女性はお二人の関係を知っていたって言っていたんです」
「まさか?」
「いえ、きっと、まさかではないと思えるんです。と言うのも、一度海外に戻られた旦那さんはすぐに戻って来るからとも言っていたんですから」
「それで彼を見張っていたら・・・私が?・・・に・・・」
「だと思います・・・。とはいっても、僕自身もいまだに信じられないんですけどね」
「その分だと、私から刑事さんに声をかけることも・・・そして、その理由も・・・ふふっ、正直、参っちゃいましたね」
「はい?」
「でも、やっぱり知っておられたんですね、奥様は・・・私と彼の関係を・・・」
「信じるんですか?その、誰かさんの言っていた事を?」
「ふふっ。信じない理由を探す方が難しいのでは?」
「はあ・・・まあ、確かに・・・ですね。ってか、あの、もしかして何かの理由があったんですか?僕に話しかけてきたのって?」
「ふふっ、ただの気まぐれです。でも、正直、驚きました。いったい何者なんです?その誰かさんって?」
「さあ、実は僕もよく分からないんです。実際、僕が知っているのは、とんでもないくらい凄い霊能力があるって事くらいなんですよ」
「霊能力?それじゃ、今回の事もその霊能力で?」
「いえ、本人は霊能力は一切使っていないって言ってました」
「ほんとですか?」
「僕としてはなんとも・・・。でも、本人曰く、霊能力は知らなくてもいい事まで知ってしまうから使いたくないって言っていました」
「刑事さんは怖くないんですか?」
「怖くないって?その誰かさんですか?」
「ええ、だって、全てを見透かされているみたいで、正直、怖いって思ってしまいましたけど」
「確かに、怖くないといえば嘘になるかもしれませんね。でも、それよりも正義とは何なのかって?、いつも考えさせられてしまうんですよ」
「正義とは何なのか・・・ですか、難しいですね。初めから存在しないトリックもある意味そうなのかもしれませんね」
「初めから存在しないトリックも・・・ですか?」
「ええ、初めから存在しないトリックは、それを描く人によって姿を変えてしまう正義という名の陽炎。亡くなった奥様がそう言っていました」
「姿を変えてしまう正義という名の陽炎?でも、なぜ?そこまで深く考える事が出来る人が自ら死を選んでしまったんですか?」
「ふふっ。それは、誘導尋問なのかしら?」
「あっ・・・いえ・・・ははは、参りました」
「ふふっ、でも、流石は刑事さん。抜け目がないですね」
いえいえ、瞬時にそれに気が付いた紗耶香さんの方が遥かに抜け目がないと思われますけど。
でも、上手く聞き出せるかな?って、ちょっとは期待したんだけどな~やっぱり駄目でした。
「それで、あの、先程も訊きました、あの男のためというのは?」
「聞きたいですか?」
えっ?聞きたいですか?って、そこって溜めが入っちゃうんですか?
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