171 / 386
声が聞こえない
声が聞こえない・・・その11
しおりを挟む
でも、どうして、愛奈ちゃんが自分の名前の事を?
「愛奈ちゃん?どうして自分の名前・・・あっ、ちょっと待ってて・・・」
そう言って、またスマホを両手で塞いで雪子の方に視線を移してみると、
相変わらず面白そうな瞳のまま、愛奈との会話で慌てている裕子を見つめている。
「ちょっと、雪子?今、愛奈ちゃんが自分の名前の事で・・・」
「裕子、愛奈さんを甘く見てはダメよ!言ったでしょ?ふーちゃんの遺伝子がって!ふふっ」
ふふって・・・あのね・・・。ん?
あっ、もしかして、愛奈ちゃん、私にカマかけてるって事?
突然、とんでもない方向から話題を浮かび上がらせて、
思わずのひと言を引き出すその話術って。
確か、夏樹さんがよく使う手法だったわ。
という事は、まさか、本当に夏樹さんの遺伝子が愛奈ちゃんの中に・・・?
「ちょっと、雪子?」
「考え過ぎよ。裕子」
「えっ・・・?」
「そんなわけないでしょ?」
「あ~も~、びっくりさせないでよ」
ふふっ・・・面白そうに笑みを浮かべながら、
雪子は、裕子が両手で塞いでいるスマホを取り上げる。
「愛奈さん、あんまり変な事を訊いちゃだめですよ。裕子が、困ってますよ」
「へへっ・・・。でも、お母さん、ホントにどこも何ともないの?」
「ええ・・・。心配してくれてありがとうね。愛奈さん」
まったく、もう~。
だから、今、スマホで会話している雪子さんは、いったい、どちらの雪子さん?
「それから、あまり、お父さんの事を悪く思わないでね」
「そんな事をいったって、今日は、翔太ね、会社を休んでるのよ」
「知ってるわよ・・・」
「知ってるって?やっぱり、お父さんが翔太に頼んだのね?」
「そうみたい。きっと、お父さんは、私の事が心配で翔太さんに頼んだのかもしれないわね」
「そうみたいって、お母さんは、何とも思わないの?」
「どうして?」
「だって、お母さんのメールの相手の事にしたって、勝手に翔太に確かめさせるなんて少しひどくない?」
「ふふっ・・・。別に、気にしていないわよ」
「お母さんはそうでも、私は、なんか、見張られているみたいで気持ち悪いわ!」
「そうね・・・。お父さんも、ちょっと、やり過ぎかもしれないわね」
「まったく、お母さんっていつものんきなんだから。それで、翔太は?」
「それが、いつの間にか見えなくなったみたいだったから、途中で帰ったんじゃないかしら?」
「途中でって?翔太は、お母さんと会ったの?」
「ううん。何となく見張ってるみたいな仕草だったから、私からは声をかけなかったの」
「まったくも~。翔太ったら・・・」
「ふふっ・・・それじゃ、そろそろ切るわね」
「あっはい。それじゃ、お母さん、裕子おばさんと温泉でゆっくりしてきてね!」
雪子は、愛奈との会話を終えると、スマホを手提げバッグの中にしまいながら、
「裕子と温泉でゆっくりしてきてねって、愛奈さんが」と、
笑みを浮かべながら、裕子に愛奈の言葉を伝えると・・・
「愛奈ちゃん、おばさんって、語尾をつけてたんでしょ?」
「ふふっ・・・。どうして、分かったの?」
「あ~もう。やっぱり・・・でも、さっき、翔太君が何とかって言ってなかった?」
「うん。なんかね、また、翔太さんが旦那さんに頼まれたみたいで」
「頼まれたって・・・。もしかして、雪子の事を監視してたの?」
「そうみたい・・・。それより、そろそろ旅館に入らない?」
そう言って席を立つ雪子に、まだ何か訊きたそうな顔の裕子であったが、
いつまでも表のベンチでというわけにもいかないので、とりあえず旅館の中へと向かった。
「愛奈ちゃん?どうして自分の名前・・・あっ、ちょっと待ってて・・・」
そう言って、またスマホを両手で塞いで雪子の方に視線を移してみると、
相変わらず面白そうな瞳のまま、愛奈との会話で慌てている裕子を見つめている。
「ちょっと、雪子?今、愛奈ちゃんが自分の名前の事で・・・」
「裕子、愛奈さんを甘く見てはダメよ!言ったでしょ?ふーちゃんの遺伝子がって!ふふっ」
ふふって・・・あのね・・・。ん?
あっ、もしかして、愛奈ちゃん、私にカマかけてるって事?
突然、とんでもない方向から話題を浮かび上がらせて、
思わずのひと言を引き出すその話術って。
確か、夏樹さんがよく使う手法だったわ。
という事は、まさか、本当に夏樹さんの遺伝子が愛奈ちゃんの中に・・・?
「ちょっと、雪子?」
「考え過ぎよ。裕子」
「えっ・・・?」
「そんなわけないでしょ?」
「あ~も~、びっくりさせないでよ」
ふふっ・・・面白そうに笑みを浮かべながら、
雪子は、裕子が両手で塞いでいるスマホを取り上げる。
「愛奈さん、あんまり変な事を訊いちゃだめですよ。裕子が、困ってますよ」
「へへっ・・・。でも、お母さん、ホントにどこも何ともないの?」
「ええ・・・。心配してくれてありがとうね。愛奈さん」
まったく、もう~。
だから、今、スマホで会話している雪子さんは、いったい、どちらの雪子さん?
「それから、あまり、お父さんの事を悪く思わないでね」
「そんな事をいったって、今日は、翔太ね、会社を休んでるのよ」
「知ってるわよ・・・」
「知ってるって?やっぱり、お父さんが翔太に頼んだのね?」
「そうみたい。きっと、お父さんは、私の事が心配で翔太さんに頼んだのかもしれないわね」
「そうみたいって、お母さんは、何とも思わないの?」
「どうして?」
「だって、お母さんのメールの相手の事にしたって、勝手に翔太に確かめさせるなんて少しひどくない?」
「ふふっ・・・。別に、気にしていないわよ」
「お母さんはそうでも、私は、なんか、見張られているみたいで気持ち悪いわ!」
「そうね・・・。お父さんも、ちょっと、やり過ぎかもしれないわね」
「まったく、お母さんっていつものんきなんだから。それで、翔太は?」
「それが、いつの間にか見えなくなったみたいだったから、途中で帰ったんじゃないかしら?」
「途中でって?翔太は、お母さんと会ったの?」
「ううん。何となく見張ってるみたいな仕草だったから、私からは声をかけなかったの」
「まったくも~。翔太ったら・・・」
「ふふっ・・・それじゃ、そろそろ切るわね」
「あっはい。それじゃ、お母さん、裕子おばさんと温泉でゆっくりしてきてね!」
雪子は、愛奈との会話を終えると、スマホを手提げバッグの中にしまいながら、
「裕子と温泉でゆっくりしてきてねって、愛奈さんが」と、
笑みを浮かべながら、裕子に愛奈の言葉を伝えると・・・
「愛奈ちゃん、おばさんって、語尾をつけてたんでしょ?」
「ふふっ・・・。どうして、分かったの?」
「あ~もう。やっぱり・・・でも、さっき、翔太君が何とかって言ってなかった?」
「うん。なんかね、また、翔太さんが旦那さんに頼まれたみたいで」
「頼まれたって・・・。もしかして、雪子の事を監視してたの?」
「そうみたい・・・。それより、そろそろ旅館に入らない?」
そう言って席を立つ雪子に、まだ何か訊きたそうな顔の裕子であったが、
いつまでも表のベンチでというわけにもいかないので、とりあえず旅館の中へと向かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる