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004 残り者
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「本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付嬢のお姉さんが浮かべた笑みに少し救われる思いがする。接客のための愛想笑いだと分かっているけど、こんな僕にも笑いかけてくれるのを嬉しく感じてしまう。
「パーティへの参加希望の申請に……」
僕の言葉に受付嬢のお姉さんの笑みがピクリと一瞬壊れる。そうだね。僕は悪い意味で有名人だから、受付嬢のお姉さんも僕が勇者を擁するパーティ『極致の魔剣』のお荷物ポーターもどきだと知っていたのだろう。そんな僕が、パーティ参加希望を申請する……。僕がとうとう、あるいはやっと『極致の魔剣』をクビになったのだと分かったはずだ。
「かしこまりました。こちらの板にご記入ください」
そんなビッグニュースを知っても、受付嬢のお姉さんはプロだった。一瞬驚きを面に出したけど、今はいつもの笑みを浮かべて僕の接客をしている。そのことが、なぜかとてもありがたく感じた。
「代筆致しましょうか?」
「大丈夫です」
お姉さんに申し出を断り、僕は羽根ペンを手に取った。僕の数少ない自慢の1つが、文字の読み書きができることだ。農夫の三男だった僕には文字を習う機会なんて無かったけど、冒険者には必要だと昔ルドルフが教えてくれたんだ。……ルドルフ、どうしてこんなことになっちゃったんだろうね…?
木の板に焼き印された項目に従って書いていく。自分の名前と希望するパーティの役割、特技について。クルト、ポーターと書いたところで羽根ペンが止まる。特技……普通はギフトの能力を書いてアピールするところだけど、僕のギフト【勇者の友人】は、【勇者】にしか効果が働かず、その効果もほとんど無いというゴミギフトだ。神様から賜ったものをゴミ呼ばわりなんて教会の人に怒られそうだけど、本当にゴミなのだから仕方がない。
結局、特技の項目には「特になし」と記入して受付嬢のお姉さんに木の板を提出した。
「よろしくおねがいします」
「はい。承りました」
これでパーティの参加希望の申請は終わりだ。後はギルドが条件の合う者同士を集めてパーティを作ってくれる。
「ポーターの希望ですね。丁度ポーターを探してるパーティが1つありますよ」
タイミングがいいね。運命かな?
「へぇ、どんなところですか?」
飛び付きたくなるのを堪えてパーティの詳細を確認する。もしかしたら、違反スレスレのグレーな危ないパーティかもしれないからね。そうじゃなくても冒険者の中でポーターの立場は一部のガチポーターを除けばとても弱い。付いて行く人たちのことはちゃんと確認しないと、どんな無理を言われるか分かったものじゃない。できれば優しい人たちだといいけど……。
「先日結成したばかりの認定レベル1のパーティですよ。パーティ名もまだ決まってないそうです」
そう言って苦笑いを浮かべる受付嬢のお姉さん。そういえば、もう成人式も終わって新人が入る頃合いか。たぶん、成人したばかりの新人さんのパーティだろう。
新成人の相手は面倒って聞くんだよなぁ……。皆、自分のギフトの力を過信して失敗をするらしい。巷では成人病と呼ばれている成人式後の風物詩だ。普通なら笑い話で済むけど、ちょっとしたミスが命に関わりかねない冒険者という職業では、成人病は致命的な問題となる。新成人は、いつ爆発するか分からない爆弾のようなものだ。いつ致命的なミスをしてパーティを危険に曝すか分からない。しかも、今回はそんな新成人が複数人居るパーティらしい……できれば遠慮したいな……。
「どこに行くんですか?」
まぁ贅沢は言っていられない身の上だ。新成人を抱えていても、戦闘がそんなに激しくないダンジョンならたぶん大丈夫だろう。
「レベル1ダンジョン『ゴブリンの巣窟』の予定ですね」
「うーん……」
よりにもよって『ゴブリンの巣窟』かぁ……。あそこは巣窟の名の通り、ゴブリンが次から次へと現れる戦闘主体のダンジョンだ。パーティの連携や敵の殲滅力が試されるレベル1のダンジョンの中では比較的難しい部類のダンジョンといえる。そんな所に新成人の初心者パーティと行くのは……ちょっと考えてしまう。
しかも、『ゴブリンの巣窟』はポーターに敬遠されやすいダンジョンだ。ダンジョンのゴブリンを倒すと、ガラクタをドロップする。そのガラクタの中から有用な金属片や鉱石を拾っていくのだが……数が集まると重くて持つのが大変なのだ。金属だからね。装備の整ってない今、僕もできれば遠慮したいところだが……。
「あの、他のポーターの募集って…?」
「残念ですが……」
「ですよねー……」
僕のタイミングがいいのではなく、相手が売れ残っていたようだ。
今日はもうこのパーティの募集しか残っていないらしい。そりゃそうだ。良い条件の募集なんて、もうとっくに売り切れだろう。残っているのは、受けるかどうか迷ってしまうような微妙な条件の募集ばかりだ。いや、まだ募集があるだけ良い方かもしれないな……。
さて、どうするかな…?
受付嬢のお姉さんが浮かべた笑みに少し救われる思いがする。接客のための愛想笑いだと分かっているけど、こんな僕にも笑いかけてくれるのを嬉しく感じてしまう。
「パーティへの参加希望の申請に……」
僕の言葉に受付嬢のお姉さんの笑みがピクリと一瞬壊れる。そうだね。僕は悪い意味で有名人だから、受付嬢のお姉さんも僕が勇者を擁するパーティ『極致の魔剣』のお荷物ポーターもどきだと知っていたのだろう。そんな僕が、パーティ参加希望を申請する……。僕がとうとう、あるいはやっと『極致の魔剣』をクビになったのだと分かったはずだ。
「かしこまりました。こちらの板にご記入ください」
そんなビッグニュースを知っても、受付嬢のお姉さんはプロだった。一瞬驚きを面に出したけど、今はいつもの笑みを浮かべて僕の接客をしている。そのことが、なぜかとてもありがたく感じた。
「代筆致しましょうか?」
「大丈夫です」
お姉さんに申し出を断り、僕は羽根ペンを手に取った。僕の数少ない自慢の1つが、文字の読み書きができることだ。農夫の三男だった僕には文字を習う機会なんて無かったけど、冒険者には必要だと昔ルドルフが教えてくれたんだ。……ルドルフ、どうしてこんなことになっちゃったんだろうね…?
木の板に焼き印された項目に従って書いていく。自分の名前と希望するパーティの役割、特技について。クルト、ポーターと書いたところで羽根ペンが止まる。特技……普通はギフトの能力を書いてアピールするところだけど、僕のギフト【勇者の友人】は、【勇者】にしか効果が働かず、その効果もほとんど無いというゴミギフトだ。神様から賜ったものをゴミ呼ばわりなんて教会の人に怒られそうだけど、本当にゴミなのだから仕方がない。
結局、特技の項目には「特になし」と記入して受付嬢のお姉さんに木の板を提出した。
「よろしくおねがいします」
「はい。承りました」
これでパーティの参加希望の申請は終わりだ。後はギルドが条件の合う者同士を集めてパーティを作ってくれる。
「ポーターの希望ですね。丁度ポーターを探してるパーティが1つありますよ」
タイミングがいいね。運命かな?
「へぇ、どんなところですか?」
飛び付きたくなるのを堪えてパーティの詳細を確認する。もしかしたら、違反スレスレのグレーな危ないパーティかもしれないからね。そうじゃなくても冒険者の中でポーターの立場は一部のガチポーターを除けばとても弱い。付いて行く人たちのことはちゃんと確認しないと、どんな無理を言われるか分かったものじゃない。できれば優しい人たちだといいけど……。
「先日結成したばかりの認定レベル1のパーティですよ。パーティ名もまだ決まってないそうです」
そう言って苦笑いを浮かべる受付嬢のお姉さん。そういえば、もう成人式も終わって新人が入る頃合いか。たぶん、成人したばかりの新人さんのパーティだろう。
新成人の相手は面倒って聞くんだよなぁ……。皆、自分のギフトの力を過信して失敗をするらしい。巷では成人病と呼ばれている成人式後の風物詩だ。普通なら笑い話で済むけど、ちょっとしたミスが命に関わりかねない冒険者という職業では、成人病は致命的な問題となる。新成人は、いつ爆発するか分からない爆弾のようなものだ。いつ致命的なミスをしてパーティを危険に曝すか分からない。しかも、今回はそんな新成人が複数人居るパーティらしい……できれば遠慮したいな……。
「どこに行くんですか?」
まぁ贅沢は言っていられない身の上だ。新成人を抱えていても、戦闘がそんなに激しくないダンジョンならたぶん大丈夫だろう。
「レベル1ダンジョン『ゴブリンの巣窟』の予定ですね」
「うーん……」
よりにもよって『ゴブリンの巣窟』かぁ……。あそこは巣窟の名の通り、ゴブリンが次から次へと現れる戦闘主体のダンジョンだ。パーティの連携や敵の殲滅力が試されるレベル1のダンジョンの中では比較的難しい部類のダンジョンといえる。そんな所に新成人の初心者パーティと行くのは……ちょっと考えてしまう。
しかも、『ゴブリンの巣窟』はポーターに敬遠されやすいダンジョンだ。ダンジョンのゴブリンを倒すと、ガラクタをドロップする。そのガラクタの中から有用な金属片や鉱石を拾っていくのだが……数が集まると重くて持つのが大変なのだ。金属だからね。装備の整ってない今、僕もできれば遠慮したいところだが……。
「あの、他のポーターの募集って…?」
「残念ですが……」
「ですよねー……」
僕のタイミングがいいのではなく、相手が売れ残っていたようだ。
今日はもうこのパーティの募集しか残っていないらしい。そりゃそうだ。良い条件の募集なんて、もうとっくに売り切れだろう。残っているのは、受けるかどうか迷ってしまうような微妙な条件の募集ばかりだ。いや、まだ募集があるだけ良い方かもしれないな……。
さて、どうするかな…?
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