8 / 77
008 英雄の卵と安全地帯
しおりを挟む
出発する前は、このパーティ大丈夫だろうかと不安に思っていたが、蓋を開けてみれば大丈夫どころか英雄の卵が居た。結局、ダンジョンのボスであるゴブリンキングも1人で倒してしまったルイーゼ。彼女の強さは僕の想像以上だった。ルイーゼの強さは、百華繚乱(仮)の面々にとっても予想外のことだったようだ。皆がルイーゼの強さに驚いていた。
それもそのはず。つい昨日まで、ルイーゼの強さは普通の初心者冒険者と変わらなかったそうだ。ラインハルトとの模擬戦では負け越していたらしい。それが、今日になったら突然強くなっていた。その原因は不明だ。ラインハルトじゃないけど、少しもやもやしたものを感じる。
「心当たりとかは無いの?」
「無いわね。けど、今日はなんだか調子がいいの!」
そう笑顔で答えるルイーゼはかわいいけど、不安にもなる。突然強くなったのなら、突然元に戻ることもありえるだろう。それがもし戦闘中だったら……。あまりルイーゼの強さに頼りきりになるのは良くない。ルイーゼがいつ元に戻ってもいいようにバックアップをしっかりしないと。
「とにかく、ルイーゼが想像以上に強くなってるのは分かったわ」
「ふふーん!」
イザベルの言葉に胸を張って得意げな笑みを見せるルイーゼ。そんなルイーゼもかわいらしい。
「でも、それじゃあパーティの連携の練習にはならないの。ルイーゼは敵を攻撃禁止よ」
イザベルの言う通り、ルイーゼが敵を全て倒している現状では、連携の練習なんてあったものじゃないのは確かだ。攻撃禁止は言い過ぎかもしれないけど、ルイーゼには攻撃を控えてもらうしかない。
「えー…」
「えーじゃないわよ。これはルイーゼの為でもあるんだから。防御に専念していれば、戦闘中に強さが元に戻っても大丈夫でしょう?」
「それはそうかもだけど……なんだかもやもやしそうだわ」
不満そうな声を上げたルイーゼだけど、イザベラの言葉にしぶしぶ頷いたのだった。
◇
「では、ここからは当初の予定通りパーティの連携を確認しましょう」
パンッと手を叩いてラインハルトが話を進める。どうやら彼はパーティの司会進行をすることが多いみたいだ。こういうことはパーティリーダーであるルイーゼがやりそうなものだけど、彼女は細かいことが苦手なようで、ラインハルトが担当することが多い。このパーティの副リーダー、もしくは影のリーダーはラインハルトと云えるだろう。
「クルトさん、この近くに安全な場所はありますか?」
「安地ならすぐ近くにあるよ」
僕は『ゴブリンの巣窟』の地図を頭の中で広げて答える。安地を求めるってことは、拠点を構えて定点狩りかな?
「そうですか。案内をお願いします」
「分かった。僕の言う通りに進んでね」
僕は了解を返すと、パーティを安全地帯まで案内するのだった。
◇
「ここが安全な場所……ですか?」
僕がパーティを案内したのは、洞窟の袋小路になっている場所だ。只の行き止まりだね。ラインハルトが不思議そうな声を上げるのも無理はないかな。
「貴方、道を間違えたの?」
「いや、ここで合ってるよ」
僕はイザベルに自信満々に頷いて返す。ここには何度かお世話になったからよく覚えているんだ。
「え? どゆこと?」
「さあ?」
マルギットとルイーゼが不思議そうに顔を見合わせていた。
「この行き止まり一帯が安地なんだよ。ここはモンスターが湧かない場所なんだ」
ダンジョンのモンスターは、倒せば煙になって消えるし、現れる時は煙のように唐突にポッと湧いて現れる。僕ら冒険者は、モンスターが唐突に現れることを“湧く”もしくは“ポップ”と呼ぶ。
モンスターがどこに湧くかは分からないけど、ダンジョンによっては、ある程度の規則性が見つかっている。その中の1つが“安全地帯”通称“安地”の存在だ。安地ではなぜかモンスターが湧かない。僕ら冒険者は、この安地を駆使してダンジョンに挑むのだ。
安地にパーティの拠点を置いて、“釣り役”と呼ばれる者が、モンスターをパーティの拠点である安地まで誘き寄せる。そして、安地でモンスターを迎え撃つ。
なぜ、わざわざ誘き寄せてまでして安地でモンスターと戦うかと云えば、事故を防ぐためだ。モンスターと戦っていたら、すぐ横にモンスターが湧いて襲いかかってきてパーティが壊滅したなんて事態を避けるためだ。
安地までモンスターを誘き寄せて迎撃し、モンスターを殲滅していく。そして、次の安地までの道が確保できたら、次の安地へと移動する。そうして少しずつダンジョンの奥に進んでいく。これが基本的なダンジョンの攻略方法になる。
ただ、それは安地の場所が分かっていればの話。まだ挑戦者が少なく情報も少ない高難易度ダンジョンや、新しくできたダンジョンなんかは安地の情報もなにも無いところから手探りで始める必要がある。安地の情報というのは、時に驚くような高値で取引されることもある価値の高い情報だ。
ただまぁ、今回はレベル1のダンジョンの安地の情報だ。『ゴブリンの巣窟』は、冒険者なら一度は来たことのあるほど人気のあるダンジョンだし、冒険者なら大半の人間が安地を知っているだろう。安地の情報の価値なんて小遣い稼ぎにもならないほど、ジュース一杯分の価値でもあれば上等な部類だ。それなら気前よくタダで教えて恩を売った方が良い。『百華繚乱(仮)』の面々は、ポーターもどきである僕を冒険者と扱ってくれる貴重なパーティだ。なるべく心証を良くして、次に繋げたい。
それもそのはず。つい昨日まで、ルイーゼの強さは普通の初心者冒険者と変わらなかったそうだ。ラインハルトとの模擬戦では負け越していたらしい。それが、今日になったら突然強くなっていた。その原因は不明だ。ラインハルトじゃないけど、少しもやもやしたものを感じる。
「心当たりとかは無いの?」
「無いわね。けど、今日はなんだか調子がいいの!」
そう笑顔で答えるルイーゼはかわいいけど、不安にもなる。突然強くなったのなら、突然元に戻ることもありえるだろう。それがもし戦闘中だったら……。あまりルイーゼの強さに頼りきりになるのは良くない。ルイーゼがいつ元に戻ってもいいようにバックアップをしっかりしないと。
「とにかく、ルイーゼが想像以上に強くなってるのは分かったわ」
「ふふーん!」
イザベルの言葉に胸を張って得意げな笑みを見せるルイーゼ。そんなルイーゼもかわいらしい。
「でも、それじゃあパーティの連携の練習にはならないの。ルイーゼは敵を攻撃禁止よ」
イザベルの言う通り、ルイーゼが敵を全て倒している現状では、連携の練習なんてあったものじゃないのは確かだ。攻撃禁止は言い過ぎかもしれないけど、ルイーゼには攻撃を控えてもらうしかない。
「えー…」
「えーじゃないわよ。これはルイーゼの為でもあるんだから。防御に専念していれば、戦闘中に強さが元に戻っても大丈夫でしょう?」
「それはそうかもだけど……なんだかもやもやしそうだわ」
不満そうな声を上げたルイーゼだけど、イザベラの言葉にしぶしぶ頷いたのだった。
◇
「では、ここからは当初の予定通りパーティの連携を確認しましょう」
パンッと手を叩いてラインハルトが話を進める。どうやら彼はパーティの司会進行をすることが多いみたいだ。こういうことはパーティリーダーであるルイーゼがやりそうなものだけど、彼女は細かいことが苦手なようで、ラインハルトが担当することが多い。このパーティの副リーダー、もしくは影のリーダーはラインハルトと云えるだろう。
「クルトさん、この近くに安全な場所はありますか?」
「安地ならすぐ近くにあるよ」
僕は『ゴブリンの巣窟』の地図を頭の中で広げて答える。安地を求めるってことは、拠点を構えて定点狩りかな?
「そうですか。案内をお願いします」
「分かった。僕の言う通りに進んでね」
僕は了解を返すと、パーティを安全地帯まで案内するのだった。
◇
「ここが安全な場所……ですか?」
僕がパーティを案内したのは、洞窟の袋小路になっている場所だ。只の行き止まりだね。ラインハルトが不思議そうな声を上げるのも無理はないかな。
「貴方、道を間違えたの?」
「いや、ここで合ってるよ」
僕はイザベルに自信満々に頷いて返す。ここには何度かお世話になったからよく覚えているんだ。
「え? どゆこと?」
「さあ?」
マルギットとルイーゼが不思議そうに顔を見合わせていた。
「この行き止まり一帯が安地なんだよ。ここはモンスターが湧かない場所なんだ」
ダンジョンのモンスターは、倒せば煙になって消えるし、現れる時は煙のように唐突にポッと湧いて現れる。僕ら冒険者は、モンスターが唐突に現れることを“湧く”もしくは“ポップ”と呼ぶ。
モンスターがどこに湧くかは分からないけど、ダンジョンによっては、ある程度の規則性が見つかっている。その中の1つが“安全地帯”通称“安地”の存在だ。安地ではなぜかモンスターが湧かない。僕ら冒険者は、この安地を駆使してダンジョンに挑むのだ。
安地にパーティの拠点を置いて、“釣り役”と呼ばれる者が、モンスターをパーティの拠点である安地まで誘き寄せる。そして、安地でモンスターを迎え撃つ。
なぜ、わざわざ誘き寄せてまでして安地でモンスターと戦うかと云えば、事故を防ぐためだ。モンスターと戦っていたら、すぐ横にモンスターが湧いて襲いかかってきてパーティが壊滅したなんて事態を避けるためだ。
安地までモンスターを誘き寄せて迎撃し、モンスターを殲滅していく。そして、次の安地までの道が確保できたら、次の安地へと移動する。そうして少しずつダンジョンの奥に進んでいく。これが基本的なダンジョンの攻略方法になる。
ただ、それは安地の場所が分かっていればの話。まだ挑戦者が少なく情報も少ない高難易度ダンジョンや、新しくできたダンジョンなんかは安地の情報もなにも無いところから手探りで始める必要がある。安地の情報というのは、時に驚くような高値で取引されることもある価値の高い情報だ。
ただまぁ、今回はレベル1のダンジョンの安地の情報だ。『ゴブリンの巣窟』は、冒険者なら一度は来たことのあるほど人気のあるダンジョンだし、冒険者なら大半の人間が安地を知っているだろう。安地の情報の価値なんて小遣い稼ぎにもならないほど、ジュース一杯分の価値でもあれば上等な部類だ。それなら気前よくタダで教えて恩を売った方が良い。『百華繚乱(仮)』の面々は、ポーターもどきである僕を冒険者と扱ってくれる貴重なパーティだ。なるべく心証を良くして、次に繋げたい。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる