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010 ゴブリンの巣窟②
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「……こんなところでしょうか。クルトさん、何か見落としはありますか?」
「ひゃい!?」
神々しいまでにかわいいリリーに見惚れていたからだろう。急にラインハルトに声をかけられて、男が出しちゃいけない変な声が出ちゃった。ちょっと恥ずかしい。で、何の話だっけ?
「あー…そうだな……」
素直に話を聞いていなかったとは言えず、何か考えがあるかのように顎に手を当て軽く俯く僕。
何の話をしてたっけ……たしか、パーティの連携について話をしていたはず……。そういえば、まだ僕ができることを話してなかったな。
「僕は、本職ほどの腕はないけど、一応、短弓が使えるよ。だから“釣り役”もできなくはない」
『極致の魔剣』では、ポーターなのにモンスターを釣ってこいって無茶ブリされることが多かったから、必死になって弓の練習をしたっけ……。
「あとはそうだな……。ここのゴブリン程度なら1体だったら倒せると思うから回してもらっても大丈夫だよ」
レベル1ダンジョンのモンスターだからね。僕でもなんとか勝てる。
「あとは、必要無いかもしれないけど、こんなのも買ってきた。煙玉っていう煙幕を張るアイテムだよ」
けっこういいお値段したから効果は期待できると思う。
「それはどのように使うのですか?」
「モンスターを釣りすぎちゃった時に、パーティが煙に包まれないように前方に投げるんだ。上手くいくと、モンスターが煙の中に入るのを躊躇ったり、煙の中で混乱してくれるから、敵の分断、各個撃破を狙えるよ」
「なるほど……」
僕の説明に、ラインハルトが少し考える様子を見せる。
「使う判断は、私がしてもいいでしょうか?」
「いいよ」
僕はラインハルトの言葉に大人しく頷く。こんな物を勝手に使われたら迷惑だからね。ラインハルトの判断は正しい。むしろ、優しいとも言える。パーティの即席メンバーが、こんなアイテム持っていたら、普通取り上げられるだろう。そして、こんなアイテムを用意するなんて、自分たちの実力が信じられないのかと怒られるはずだ。冒険者ってプライド高い人が多いからね。他人にナメられたら冒険者生活は終わりなのだ。僕みたいにね。
◇
「ゴブ2!」
マルギットが鋭い声を上げ、こちらに向かって走って来る。前を見ると、ゴブリンが2体走って来るのが見える。マルギットの報告通りだ。
ゴブリンが2体ってことは、今回はイザベルの魔法は温存だろう。
僕は短弓を引いて構え、マルギットとすれ違いざまに矢を放つ。僕の放った矢は、前を行くゴブリンのお腹に命中。しかし、ゴブリンはそんなこと気にする素振りも見せずに走って来る。ダンジョンのモンスターは、多少の怪我では動じることは無い。できることならもっと致命的な所、例えば心臓や頭、膝なんかを射抜きたいけど……まぁ僕の弓の実力なんてこんなものだ。
「さあ!かかってきなさい!」
そう言ってパーティメンバーの誰よりも前に居るのは、バックラーを構えたルイーゼだ。彼女は、このパーティの盾役なのだ。
「シュッシュッ」
ルイーゼとゴブリンが交差する瞬間。ルイーゼが素早く2体のゴブリンをバックラーで殴りつける。本来なら、バックラーの代わりにルイーゼの剣が閃き、それで戦闘終了なのだが、ルイーゼはゴブリンを倒すことを禁じられている。今のバックラーでの打撃も、倒さないように優しく撫でるようにしているらしい。
バックラーで殴られたゴブリンが、何が起こったのか理解が追いつかないのか、立ち止まり、一瞬だけ忘我の隙を晒す。
「はあっ!」
その隙を見逃さないのがラインハルトだ。ラインハルトの剣が2度、Vの字を描くように振られ、ゴブリンが2体とも空気に溶けるように煙となって消える。これで戦闘終了だ。
ゴブリンの居た跡にカランカランと音を立てて残るのは、僕が放った矢とドロップアイテムである棍棒が1本ずつ。今回はハズレのドロップアイテムだね。
「うーん……ルイーゼ」
「何よ?」
「盾でゴブリンを殴るのもナシにしましょう」
「えぇー!?何でよ!?」
どうやらルイーゼに新たな縛りを設けるらしい。たしかに、ルイーゼが強すぎて戦闘が楽になりすぎている部分があるのは否めない。なんていうか、本当に1人だけ別次元に強いんだ。
「ルイーゼが手を出すと、簡単すぎます。私たちはこのダンジョンに連携の練習に来たのですよ?」
とのことらしい。ルイーゼはパーティのリーダーだけど、口ではラインハルトに勝てないのか、言い負かされていることが多い。
「それはいいけどさー。もう周りに獲物が居ないんだよねー」
マルギットの言葉にラインハルトが考える仕草を見せる。
「狩るスピードが速すぎましたか……。クルトさん、この場合は移動ですか?」
ラインハルトは、一応僕を立ててくれるのか、僕に確認することが多い。冷静沈着に見えて、彼もまた初心者冒険者。不安もあるのかもしれない。もしくは、僕から少しでも知識を得ようとしているのかな?
ここは情報提供して好感度を稼いでおこうかな。彼らみたいにポーターもどきを差別しないパーティは貴重だし。もしかしたら、次回もパーティに誘ってもらえるかもしれない。
「移動だね。その前に道の確認かな。次の安地までの道のりが確保できていたら移動。ルイーゼが強すぎて一気にここまで来ちゃったけど、普通は安地から安地に移動してダンジョンの奥に潜るんだ。ダンジョンから出る場合も、安地から安地への移動が基本だよ。だから、ダンジョンの地図や安地の情報は、とても重要なんだ。今回はしてないみたいだけど、地図は自分たちで作った方が良いよ」
そういえば、『極致の魔剣』での地図の製作は僕の仕事だったから、地図は全部持ってきちゃったけど……僕が描いた物だし、別にいいよね?
「ひゃい!?」
神々しいまでにかわいいリリーに見惚れていたからだろう。急にラインハルトに声をかけられて、男が出しちゃいけない変な声が出ちゃった。ちょっと恥ずかしい。で、何の話だっけ?
「あー…そうだな……」
素直に話を聞いていなかったとは言えず、何か考えがあるかのように顎に手を当て軽く俯く僕。
何の話をしてたっけ……たしか、パーティの連携について話をしていたはず……。そういえば、まだ僕ができることを話してなかったな。
「僕は、本職ほどの腕はないけど、一応、短弓が使えるよ。だから“釣り役”もできなくはない」
『極致の魔剣』では、ポーターなのにモンスターを釣ってこいって無茶ブリされることが多かったから、必死になって弓の練習をしたっけ……。
「あとはそうだな……。ここのゴブリン程度なら1体だったら倒せると思うから回してもらっても大丈夫だよ」
レベル1ダンジョンのモンスターだからね。僕でもなんとか勝てる。
「あとは、必要無いかもしれないけど、こんなのも買ってきた。煙玉っていう煙幕を張るアイテムだよ」
けっこういいお値段したから効果は期待できると思う。
「それはどのように使うのですか?」
「モンスターを釣りすぎちゃった時に、パーティが煙に包まれないように前方に投げるんだ。上手くいくと、モンスターが煙の中に入るのを躊躇ったり、煙の中で混乱してくれるから、敵の分断、各個撃破を狙えるよ」
「なるほど……」
僕の説明に、ラインハルトが少し考える様子を見せる。
「使う判断は、私がしてもいいでしょうか?」
「いいよ」
僕はラインハルトの言葉に大人しく頷く。こんな物を勝手に使われたら迷惑だからね。ラインハルトの判断は正しい。むしろ、優しいとも言える。パーティの即席メンバーが、こんなアイテム持っていたら、普通取り上げられるだろう。そして、こんなアイテムを用意するなんて、自分たちの実力が信じられないのかと怒られるはずだ。冒険者ってプライド高い人が多いからね。他人にナメられたら冒険者生活は終わりなのだ。僕みたいにね。
◇
「ゴブ2!」
マルギットが鋭い声を上げ、こちらに向かって走って来る。前を見ると、ゴブリンが2体走って来るのが見える。マルギットの報告通りだ。
ゴブリンが2体ってことは、今回はイザベルの魔法は温存だろう。
僕は短弓を引いて構え、マルギットとすれ違いざまに矢を放つ。僕の放った矢は、前を行くゴブリンのお腹に命中。しかし、ゴブリンはそんなこと気にする素振りも見せずに走って来る。ダンジョンのモンスターは、多少の怪我では動じることは無い。できることならもっと致命的な所、例えば心臓や頭、膝なんかを射抜きたいけど……まぁ僕の弓の実力なんてこんなものだ。
「さあ!かかってきなさい!」
そう言ってパーティメンバーの誰よりも前に居るのは、バックラーを構えたルイーゼだ。彼女は、このパーティの盾役なのだ。
「シュッシュッ」
ルイーゼとゴブリンが交差する瞬間。ルイーゼが素早く2体のゴブリンをバックラーで殴りつける。本来なら、バックラーの代わりにルイーゼの剣が閃き、それで戦闘終了なのだが、ルイーゼはゴブリンを倒すことを禁じられている。今のバックラーでの打撃も、倒さないように優しく撫でるようにしているらしい。
バックラーで殴られたゴブリンが、何が起こったのか理解が追いつかないのか、立ち止まり、一瞬だけ忘我の隙を晒す。
「はあっ!」
その隙を見逃さないのがラインハルトだ。ラインハルトの剣が2度、Vの字を描くように振られ、ゴブリンが2体とも空気に溶けるように煙となって消える。これで戦闘終了だ。
ゴブリンの居た跡にカランカランと音を立てて残るのは、僕が放った矢とドロップアイテムである棍棒が1本ずつ。今回はハズレのドロップアイテムだね。
「うーん……ルイーゼ」
「何よ?」
「盾でゴブリンを殴るのもナシにしましょう」
「えぇー!?何でよ!?」
どうやらルイーゼに新たな縛りを設けるらしい。たしかに、ルイーゼが強すぎて戦闘が楽になりすぎている部分があるのは否めない。なんていうか、本当に1人だけ別次元に強いんだ。
「ルイーゼが手を出すと、簡単すぎます。私たちはこのダンジョンに連携の練習に来たのですよ?」
とのことらしい。ルイーゼはパーティのリーダーだけど、口ではラインハルトに勝てないのか、言い負かされていることが多い。
「それはいいけどさー。もう周りに獲物が居ないんだよねー」
マルギットの言葉にラインハルトが考える仕草を見せる。
「狩るスピードが速すぎましたか……。クルトさん、この場合は移動ですか?」
ラインハルトは、一応僕を立ててくれるのか、僕に確認することが多い。冷静沈着に見えて、彼もまた初心者冒険者。不安もあるのかもしれない。もしくは、僕から少しでも知識を得ようとしているのかな?
ここは情報提供して好感度を稼いでおこうかな。彼らみたいにポーターもどきを差別しないパーティは貴重だし。もしかしたら、次回もパーティに誘ってもらえるかもしれない。
「移動だね。その前に道の確認かな。次の安地までの道のりが確保できていたら移動。ルイーゼが強すぎて一気にここまで来ちゃったけど、普通は安地から安地に移動してダンジョンの奥に潜るんだ。ダンジョンから出る場合も、安地から安地への移動が基本だよ。だから、ダンジョンの地図や安地の情報は、とても重要なんだ。今回はしてないみたいだけど、地図は自分たちで作った方が良いよ」
そういえば、『極致の魔剣』での地図の製作は僕の仕事だったから、地図は全部持ってきちゃったけど……僕が描いた物だし、別にいいよね?
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