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第二章
054 罠師
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そんな一見単純そうで、しかし考えが読めないマルギットだけど、今回のダンジョン『オーク砦』攻略でのMVPを決めるとしたら、間違いなく彼女だ。モンスターの撃破数が多いというわけではない。マルギットは勇者化していないので、オークの撃破数は僕と同じく0だ。では、何がそんなにすごかったのか。それは彼女のギフトが深く関係している。
マルギットのギフト【罠師】はすごい。罠の場所が分かるだけではなく、罠の所有権とでもいうべきものまで奪うことができる。所有権というのは、ちょっと分かりにくい表現かもしれないけど、マルギットの話を聞いてると、彼女の感覚的には、どうも所有権のような感じみたいだ。
まず、マルギットは罠の位置が感覚的に分かるらしい。
「罠みっけー!」
罠を見つけると、マルギットは近寄っていき罠の傍で床や壁に手を着く。そして、深呼吸1つ分くらいの時間そうしている。
「よし! あーしのになったよー!」
この“マルギットの”になると、罠は作動しなくなる。正確には、僕たちパーティメンバーには罠が作動しなくなる。どういう原理かはよく分からないけど、罠が僕たちに対して機能しなくなるのは確かだ。
罠というのは、通常は1回もしくは既定の回数発動すると無力化してしまう物だ。ワイヤートラップで矢を放つ罠があったとして、1度ワイヤーの仕掛けが発動して矢を放ってしまったら、後はもう無力な置物になってしまう。
しかし、普通ならとっくの昔に無力な置物になっているべきダンジョンの罠は、まだ稼働している。どうも時間が経つと仕掛けが復活するらしいというのが通説だ。そして、ダンジョンのモンスターはダンジョンの罠にかからないことでも知られている。
でも、この“マルギットの”になると、僕たちとは逆に、普通なら罠にかからないハズのモンスターが罠にかかるようになる。“マルギットの”になると、罠が僕たちの味方になるのだ。
他にも罠を拾ったり、ストックしたり、設置したりもできるらしい。罠に関してかなり汎用性の高いギフトみたいだ。そして、これ以上は無いってくらい冒険者向きのギフトだ。日常生活で罠を仕掛けたり仕掛けられたりなんて滅多に無いことだと思う。街中ではなんの意味も無い死にギフトだ。それが、冒険者になると途端に輝き出す。ダンジョンなんて罠の宝庫と言えるからね。高レベルダンジョンなんて即死トラップ満載である。それらを全て無効化し、利用すらできるマルギットの【罠師】は、とても冒険者向きのギフトだ。
マルギットのギフトの性能を知らなかった僕は、彼女を試す意味も込めて、罠が多いことで知られるここ『オーク砦』を選んだわけだけど……とんでもないものが出てきたね。まさかここまですごいギフトが出てくるなんて思いもよらなかった。試すだなんてとんでもない話だったね。マルギットは罠のスペシャリストだ。それでいて驕ったところが無い。実はマルギットってすごい人物なのではないだろうか?
僕がマルギットを尊敬の眼差しで見ていたら、彼女の碧の瞳と目が合った。運命かな?
「んー? なにクルクル? もしかして、見惚れてた?」
「え……?」
何を言ってるんだろうと思ったら、マルギットが両腕を開いて手を頭の後ろへとやり、胸を張って腰をしならせた。いわゆるセクシーポーズだけど、体のラインがモロに出るピッチリした装備のマルギットがやると破壊力がすごい。すご過ぎて直視できない。
「あれー? クルクル、顔赤くなってなーい?」
“にししっ”と無邪気に笑うマルギットは、自分の魅力をちゃんと理解しているのだろうか?
「あらマルギット、抜け駆けは感心しないわね。貴女もクルトが好きだったの?」
そんなマルギットにもしなだれかかるようにして現れたのはイザベルだ。僕に流し目を送りながらマルギットの耳元でなにかを囁く。すごい色気だ。本当に年下? 本当に15歳?
「ちょ!? ちが!?」
イザベルから“なにか”を囁かれたマルギットが顔を真っ赤にして首をブンブン横に振った。いったい何を囁かれたんだろう? とても気になる。
「クルトも、マルギットよりも私を見なさいな」
そう言って黒いドレスの胸元を下に引っ張っていくイザベル。え!? そんなに下げちゃうの!? 見えちゃいけないところまで見えちゃうよ!? 僕は慌てて視線を外そうとするけど、まるで磁石のように視線がイザベルの胸元に吸い寄せられてしまう。すごい吸引力だ。
イザベルからなんとか目を逸らすと、なにか不思議なことをしているリリーが目に入った。なにをやっているんだろう? 手を胸の端に当てて胸の中央に向かってゴソゴソ動かしているけど……。
「私、も…見て…!」
見てって……ひょっとしてリリーも胸をアピールしたいのだろうか? でも、その……言っちゃかわいそうだけど、リリーの胸って全然無い。真っ平らだ。今も胸を寄せて上げようとしているのだろうけど、服がクシャクシャになっているだけである。なんだこのかわいい生き物。
「ちょっとそこ! なにやってるのよ! ハレンチなのはいけないんだからね! とくにイザベル!」
ルイーゼが、まるで僕を守るようにイザベルたちとの間に入りイザベルたちを威嚇する。
「ちょっとくらいいいじゃない。ねぇ?」
イザベルの流し目が僕を見るけど、僕からはなにも言えないよ。
「さあ皆さん、遊んでないでそろそろ帰りますよ。家に帰るまでが冒険ですからね」
「「「「「はーい」」」」」
「よろしい。良い返事です」
まとめ役のラインハルトに促されて、素直に帰る準備をする僕ら『融けない六華』のメンバーたち。ラインハルトの言う通り、家に帰るまでが冒険だ。ここはダンジョンのボス部屋。ダンジョンの最奥。僕たちは、ようやく折り返し地点に着いたに過ぎない。気を引き締めないと! 僕は両手で頬を叩き、自分に活を入れるのだった。
マルギットのギフト【罠師】はすごい。罠の場所が分かるだけではなく、罠の所有権とでもいうべきものまで奪うことができる。所有権というのは、ちょっと分かりにくい表現かもしれないけど、マルギットの話を聞いてると、彼女の感覚的には、どうも所有権のような感じみたいだ。
まず、マルギットは罠の位置が感覚的に分かるらしい。
「罠みっけー!」
罠を見つけると、マルギットは近寄っていき罠の傍で床や壁に手を着く。そして、深呼吸1つ分くらいの時間そうしている。
「よし! あーしのになったよー!」
この“マルギットの”になると、罠は作動しなくなる。正確には、僕たちパーティメンバーには罠が作動しなくなる。どういう原理かはよく分からないけど、罠が僕たちに対して機能しなくなるのは確かだ。
罠というのは、通常は1回もしくは既定の回数発動すると無力化してしまう物だ。ワイヤートラップで矢を放つ罠があったとして、1度ワイヤーの仕掛けが発動して矢を放ってしまったら、後はもう無力な置物になってしまう。
しかし、普通ならとっくの昔に無力な置物になっているべきダンジョンの罠は、まだ稼働している。どうも時間が経つと仕掛けが復活するらしいというのが通説だ。そして、ダンジョンのモンスターはダンジョンの罠にかからないことでも知られている。
でも、この“マルギットの”になると、僕たちとは逆に、普通なら罠にかからないハズのモンスターが罠にかかるようになる。“マルギットの”になると、罠が僕たちの味方になるのだ。
他にも罠を拾ったり、ストックしたり、設置したりもできるらしい。罠に関してかなり汎用性の高いギフトみたいだ。そして、これ以上は無いってくらい冒険者向きのギフトだ。日常生活で罠を仕掛けたり仕掛けられたりなんて滅多に無いことだと思う。街中ではなんの意味も無い死にギフトだ。それが、冒険者になると途端に輝き出す。ダンジョンなんて罠の宝庫と言えるからね。高レベルダンジョンなんて即死トラップ満載である。それらを全て無効化し、利用すらできるマルギットの【罠師】は、とても冒険者向きのギフトだ。
マルギットのギフトの性能を知らなかった僕は、彼女を試す意味も込めて、罠が多いことで知られるここ『オーク砦』を選んだわけだけど……とんでもないものが出てきたね。まさかここまですごいギフトが出てくるなんて思いもよらなかった。試すだなんてとんでもない話だったね。マルギットは罠のスペシャリストだ。それでいて驕ったところが無い。実はマルギットってすごい人物なのではないだろうか?
僕がマルギットを尊敬の眼差しで見ていたら、彼女の碧の瞳と目が合った。運命かな?
「んー? なにクルクル? もしかして、見惚れてた?」
「え……?」
何を言ってるんだろうと思ったら、マルギットが両腕を開いて手を頭の後ろへとやり、胸を張って腰をしならせた。いわゆるセクシーポーズだけど、体のラインがモロに出るピッチリした装備のマルギットがやると破壊力がすごい。すご過ぎて直視できない。
「あれー? クルクル、顔赤くなってなーい?」
“にししっ”と無邪気に笑うマルギットは、自分の魅力をちゃんと理解しているのだろうか?
「あらマルギット、抜け駆けは感心しないわね。貴女もクルトが好きだったの?」
そんなマルギットにもしなだれかかるようにして現れたのはイザベルだ。僕に流し目を送りながらマルギットの耳元でなにかを囁く。すごい色気だ。本当に年下? 本当に15歳?
「ちょ!? ちが!?」
イザベルから“なにか”を囁かれたマルギットが顔を真っ赤にして首をブンブン横に振った。いったい何を囁かれたんだろう? とても気になる。
「クルトも、マルギットよりも私を見なさいな」
そう言って黒いドレスの胸元を下に引っ張っていくイザベル。え!? そんなに下げちゃうの!? 見えちゃいけないところまで見えちゃうよ!? 僕は慌てて視線を外そうとするけど、まるで磁石のように視線がイザベルの胸元に吸い寄せられてしまう。すごい吸引力だ。
イザベルからなんとか目を逸らすと、なにか不思議なことをしているリリーが目に入った。なにをやっているんだろう? 手を胸の端に当てて胸の中央に向かってゴソゴソ動かしているけど……。
「私、も…見て…!」
見てって……ひょっとしてリリーも胸をアピールしたいのだろうか? でも、その……言っちゃかわいそうだけど、リリーの胸って全然無い。真っ平らだ。今も胸を寄せて上げようとしているのだろうけど、服がクシャクシャになっているだけである。なんだこのかわいい生き物。
「ちょっとそこ! なにやってるのよ! ハレンチなのはいけないんだからね! とくにイザベル!」
ルイーゼが、まるで僕を守るようにイザベルたちとの間に入りイザベルたちを威嚇する。
「ちょっとくらいいいじゃない。ねぇ?」
イザベルの流し目が僕を見るけど、僕からはなにも言えないよ。
「さあ皆さん、遊んでないでそろそろ帰りますよ。家に帰るまでが冒険ですからね」
「「「「「はーい」」」」」
「よろしい。良い返事です」
まとめ役のラインハルトに促されて、素直に帰る準備をする僕ら『融けない六華』のメンバーたち。ラインハルトの言う通り、家に帰るまでが冒険だ。ここはダンジョンのボス部屋。ダンジョンの最奥。僕たちは、ようやく折り返し地点に着いたに過ぎない。気を引き締めないと! 僕は両手で頬を叩き、自分に活を入れるのだった。
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