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第二章
053 突然の商人ムーヴ
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「実はこの剣、折れても再生するんだよ」
「どういうことよ?」
ルイーゼの言う通り、普通はいきなりこんなこと言われても分からないよね。これは一度見てもらった方が早いかな。
「ハルト、この剣折ってくれない?」
「それは……折れないことはないと思いますが……本当にいいんですか?」
僕はラインハルトに白い剣を渡して力強く頷く。
「ポッキリやっちゃって!」
「では……ふんっ!」
ラインハルトが白い剣を床に叩きつけると、先程よりも大きな打撃音と共に、まるで鈴の音のような高い音を響かせて、白い剣が中ほどからポッキリと2つに折れた。勇者の力があるとはいえ、すごいな。
「これでいいですか?」
「うん。ありがとう、ハルト」
僕がラインハルトから剣を受け取ると、ルイーゼたちが悲しそうな顔で口を開く。
「あーあーあー……」
「ほんとに折っちゃうし……」
「大丈夫、大丈夫だから」
僕はルイーゼたちを宥めながらマジックバッグから“ある物”を取り出す。
「水差し?」
「うん」
僕が取り出したのは水差しだ。しかし、ただの水差しじゃない。実はこれも宝具なのだ。“永遠たる水脈”と大層な名前が付いているが、その名の通り、永遠に新鮮な水が出てくる水差しである。この宝具のおかげで、僕たちの水問題は一気に解消された。間違いなく有能な宝具だ。まぁイザベルには「そんなどこの水かも分からない水を飲むのは気持ち悪い」と不評だけどね。
「これに水をかけると……」
僕は白い剣の折れた刀身に水をかけていく。すると、まるで水が凍ったかのように固まり、白い刀身が形作られていく。まるで刀身が成長するかのように素早く伸びていく。水をザッとかけただけで、すぐ元通りだ。
「え? 水かけただけで?」
「すご…!」
「まるで氷柱ね」
氷柱という表現はピッタリだね。
「こんな感じで、折れたり欠けたりしても水をかければすぐ元通りになるから、多少手荒に扱っても問題ないよ」
僕は白い芸術品のような剣を鞘に仕舞うとルイーゼに差し出す。
「名は“手折られぬ氷華”ヴァージン・スノー」
宝具の剣と聞くと、火や雷を纏ったり、強力なビームを出したりする宝具を想像しやすいけど、中にはこんな宝具もある。宝具の能力として地味な部類だけど、有能な宝具だと思うよ。鋭い切れ味を誇る名剣と言ってもいい宝具だし、文字通り不朽の名剣だね。
「氷華……」
ルイーゼがおずおずと手を伸ばしてヴァージン・スノーを受け取った。これでルイーゼの武器の問題は解決だね。今思ったけど、『融けない六華』のリーダーの愛剣がこれってなかなか運命的なものを感じるね。もっと早く渡してもよかったかな。
そうだな。僕が持ってる宝具だけど、皆に使ってもらった方が絶対に良いよね。僕が持っていても宝具の持ち腐れだし。
ということで、露天商よろしく絨毯の上に宝具を並べていく僕。剣が5本に大剣が1本、槍も1本あるし、あとはナックルダスターまであった。これはリリーに使ってもらおう。武器だけじゃない。防具や装飾品の宝具もある。
「クルト? 急にどうしたのですか?」
いきなりせっせと床に宝具を並べ出した僕を見て、ラインハルトが疑問の声を上げる。
「宝具だけど、僕が持ってても仕方ないから皆に使ってもらおうと思って。もっと早く気が付けばよかったな……。よかったら使ってよ」
「これが全て宝具ですか…?」
「うはー! しゅげー! クルクル商人みたい」
「本当に使ってもいいの? 宝具って高価なんでしょ?」
「全然使っていいよ。むしろ使ってください。使わない方がもったいないから」
「そういうことなら……」
皆、宝具に興味はあったのか、僕の出した宝具を見始めた。
「これはどんな効果が?」
「これは“心を灯す温かな光”ビッグトーチだね。効果は光る」
「……それだけですか?」
「うん。それだけ」
まぁ中には微妙な宝具もあるけど、そこは許してほしい。
「ねーねー、これはー?」
「これは……」
こうして僕は、レベル4ダンジョンのボス部屋で暢気に商人の真似事を始めるのだった。
◇
「それにしても……」
僕は選ばれなかった宝具をマジックバッグに片付けながらマルギットを見つめる。マルギットは軽くステップを踏みながら、その膝下を覆う真っ赤な脚甲の調子を確かめていた。あの派手な脚甲も宝具である。名前は“衝撃の赤雷”ブーステッド・シェルブリット。発動すると、まるで足裏が爆発でもしたかのような勢いの推進力が生まれるだけの宝具だ。普通に使うとコケるだけである。そんな扱いの難しい宝具を敢えて選択したマルギットの真意は分からない。
「ひゅー! かっけー!」
マルギットがキラキラした瞳でブーステッド・シェルブリットを見ている。もしかしたら、その効果ではなく見た目に惹かれたのかもしれないね。それでいいのかと思わなくもないけど、マルギットが幸せならOKです!
「どういうことよ?」
ルイーゼの言う通り、普通はいきなりこんなこと言われても分からないよね。これは一度見てもらった方が早いかな。
「ハルト、この剣折ってくれない?」
「それは……折れないことはないと思いますが……本当にいいんですか?」
僕はラインハルトに白い剣を渡して力強く頷く。
「ポッキリやっちゃって!」
「では……ふんっ!」
ラインハルトが白い剣を床に叩きつけると、先程よりも大きな打撃音と共に、まるで鈴の音のような高い音を響かせて、白い剣が中ほどからポッキリと2つに折れた。勇者の力があるとはいえ、すごいな。
「これでいいですか?」
「うん。ありがとう、ハルト」
僕がラインハルトから剣を受け取ると、ルイーゼたちが悲しそうな顔で口を開く。
「あーあーあー……」
「ほんとに折っちゃうし……」
「大丈夫、大丈夫だから」
僕はルイーゼたちを宥めながらマジックバッグから“ある物”を取り出す。
「水差し?」
「うん」
僕が取り出したのは水差しだ。しかし、ただの水差しじゃない。実はこれも宝具なのだ。“永遠たる水脈”と大層な名前が付いているが、その名の通り、永遠に新鮮な水が出てくる水差しである。この宝具のおかげで、僕たちの水問題は一気に解消された。間違いなく有能な宝具だ。まぁイザベルには「そんなどこの水かも分からない水を飲むのは気持ち悪い」と不評だけどね。
「これに水をかけると……」
僕は白い剣の折れた刀身に水をかけていく。すると、まるで水が凍ったかのように固まり、白い刀身が形作られていく。まるで刀身が成長するかのように素早く伸びていく。水をザッとかけただけで、すぐ元通りだ。
「え? 水かけただけで?」
「すご…!」
「まるで氷柱ね」
氷柱という表現はピッタリだね。
「こんな感じで、折れたり欠けたりしても水をかければすぐ元通りになるから、多少手荒に扱っても問題ないよ」
僕は白い芸術品のような剣を鞘に仕舞うとルイーゼに差し出す。
「名は“手折られぬ氷華”ヴァージン・スノー」
宝具の剣と聞くと、火や雷を纏ったり、強力なビームを出したりする宝具を想像しやすいけど、中にはこんな宝具もある。宝具の能力として地味な部類だけど、有能な宝具だと思うよ。鋭い切れ味を誇る名剣と言ってもいい宝具だし、文字通り不朽の名剣だね。
「氷華……」
ルイーゼがおずおずと手を伸ばしてヴァージン・スノーを受け取った。これでルイーゼの武器の問題は解決だね。今思ったけど、『融けない六華』のリーダーの愛剣がこれってなかなか運命的なものを感じるね。もっと早く渡してもよかったかな。
そうだな。僕が持ってる宝具だけど、皆に使ってもらった方が絶対に良いよね。僕が持っていても宝具の持ち腐れだし。
ということで、露天商よろしく絨毯の上に宝具を並べていく僕。剣が5本に大剣が1本、槍も1本あるし、あとはナックルダスターまであった。これはリリーに使ってもらおう。武器だけじゃない。防具や装飾品の宝具もある。
「クルト? 急にどうしたのですか?」
いきなりせっせと床に宝具を並べ出した僕を見て、ラインハルトが疑問の声を上げる。
「宝具だけど、僕が持ってても仕方ないから皆に使ってもらおうと思って。もっと早く気が付けばよかったな……。よかったら使ってよ」
「これが全て宝具ですか…?」
「うはー! しゅげー! クルクル商人みたい」
「本当に使ってもいいの? 宝具って高価なんでしょ?」
「全然使っていいよ。むしろ使ってください。使わない方がもったいないから」
「そういうことなら……」
皆、宝具に興味はあったのか、僕の出した宝具を見始めた。
「これはどんな効果が?」
「これは“心を灯す温かな光”ビッグトーチだね。効果は光る」
「……それだけですか?」
「うん。それだけ」
まぁ中には微妙な宝具もあるけど、そこは許してほしい。
「ねーねー、これはー?」
「これは……」
こうして僕は、レベル4ダンジョンのボス部屋で暢気に商人の真似事を始めるのだった。
◇
「それにしても……」
僕は選ばれなかった宝具をマジックバッグに片付けながらマルギットを見つめる。マルギットは軽くステップを踏みながら、その膝下を覆う真っ赤な脚甲の調子を確かめていた。あの派手な脚甲も宝具である。名前は“衝撃の赤雷”ブーステッド・シェルブリット。発動すると、まるで足裏が爆発でもしたかのような勢いの推進力が生まれるだけの宝具だ。普通に使うとコケるだけである。そんな扱いの難しい宝具を敢えて選択したマルギットの真意は分からない。
「ひゅー! かっけー!」
マルギットがキラキラした瞳でブーステッド・シェルブリットを見ている。もしかしたら、その効果ではなく見た目に惹かれたのかもしれないね。それでいいのかと思わなくもないけど、マルギットが幸せならOKです!
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