【勇者の友人】~【勇者】のギフトの本体が、僕だった件について~戻って来いって言われたって、今更君たちを“友人”だとは思えないよ。

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
52 / 77
第二章

052 クルトハルト

しおりを挟む
「さすがですね、クルト。そうそうないことですが、たしかに今回のルイーゼのように武器が壊れることはありえます。それに備えて予備の武器を用意しているとは……感服しました。私も見習わなくては」

 褒め過ぎな気がするけど、たぶんラインハルトの場合、本気で言ってる。ちょっと照れるな。照れるといえば、ラインハルトが僕を呼ぶ時“さん”を付けなくなった。パーティ名が『融けない六華』に変わった後、ラインハルト本人から呼び捨てして良いのかと打診があったから“もちろん”と快諾した形だ。なんだかラインハルトに仲間の1人と認められたようで嬉しかった。

 それと同時に、僕もお返しにラインハルトのことを“ハルト”と愛称で呼ばせてもらうことにした。実はまだ呼ぶのに照れがあるけど、せっかく許してくれたからどんどんハルトと呼んでいこうと思う。どうでもいいけど、クルトとハルトってなんだか似てるね。

「そうね。武器を失えば戦闘力はどうしても落ちるもの、備えは必要だわ。さすがは冒険者の先輩ね。私たちは幸運ね、貴方のような優秀なポーターを仲間にできて」
「ひゅー! 2人に褒められるなんてクルクルやるじゃん!」
「すご、い…!」
「いやー、あはは……」

 褒めてもらえるのはとても嬉しいけど、なんか複雑だ。僕はルイーゼの武器が壊れることを予見して予備の武器を用意していたわけじゃない。僕は皆が褒めてくれるような、用意周到な優秀なポーターというわけではないのだ。むしろ逆、これは僕の杜撰ずさんな性格の結果である。

 僕は以前に王国有数の商会であるオスターマイヤー商会で大量の宝具を買ったことがあるんだけど……実はその時買った宝具は全てマジックバッグに入れっぱなしなのだ。剣の宝具なんて、あと5、6本は入ってるんじゃないかな?

 僕だって、本当は必要な物だけを用意した方が良いのは分かってる。マジックバッグの容量も無限ではないし、いくら3つも重量軽減の宝具を使っているとはいえ、限界というものがある。それぐらい僕にも分かる。分かっているけど……なにかの間違いで必要になるかもしれないじゃん?

 オスターマイヤー商会から買った宝具は、たしかに中には首を傾げる物もあったけど、全体的には有能な宝具たちだ。まぁアイギス・リングの件でちょっと不信感もあるけど……基本的には冒険で役立つ宝具たちである。その取捨選択が僕にはできない。僕には決断力というものが無いんだな。ついでに言えば、もったいない精神と心配性な部分が邪魔をしている気がする。どうにも切り捨てるという判断が苦手だ。だから結局、全部持ってきてしまう。いつかマジックバッグの容量を超えて溢れちゃいそうで怖いな。その前に重くて持てなくなるのが先かな。どうにかしないとね。

「こんな高そうな剣いいの? 折れても弁償できないわよ?」
「この剣は折れても大丈夫だよ。そういう宝具だから」
「宝具!?」

 ルイーゼが体をビクリとさせて剣に伸ばしていた手を引っ込めてしまった。宝具という言葉に驚いたみたいだ。

「なるほど。それが宝具ですか」
「たしかに華美な宝剣ね。繊細な飾りは女性らしさを感じさせるわ」
「あーし、剣のほーぐって初めて見たかもー」
「私、も…」

 いつの間にか周りに集まっていた『融けない六華』の面々。まぁ冒険者や富裕層でもなければ宝具ってあまり見かけない物かもしれない。そういえば、まだ『融けない六華』ではダンジョンで宝具を見つけてなかったね。だからますます珍しく感じるのだろう。

「宝具って高いんでしょ!? ほんとにいいの!? あたし、また壊しちゃうかもよ!?」
「大丈夫だよ」

 僕は鞘も柄も真っ白な剣をスラリと抜いてみせる。

「おぉー!」
「キレー…」

 現れたのは、どこまでも真っ白な穢れ一つ無いまさに純白の刀身だ。皆の視線が剣へと集まっているのが分かる。僕が剣をゆっくり振り上げると、皆の顔も自然と上を向いてなんだか面白かった。笑ってしまいそうになるのを堪えて、僕は剣を床に向けて思いっきり叩きつける。

「え!?」
「な!?」
「ちょ!?」

 絨毯が敷かれているためか、まるで鈍器で殴ったかような重苦しい音が辺りに響き渡った。

「ちょいちょいちょい! クルクル!? 何やってんの!?」
「そうよ! そんなことして折れたりしたらどうするのよ!?」
「クルト…?」
「貴方、気は確か?」
「なん、で…?」

 皆、僕の突然の凶行に驚いているようだ。まぁ、いきなりこんなことすれば驚くのは当たり前かな。まるで僕が危ない人みたいだね。反省しよう。

「ごめん、ごめん。ちょっとね……」

 僕は剣の状態を確認する。

「うーん……折れないどころかヒビさえ入らないし、欠けもしないかぁ……」

 なんだか僕の非力さが浮き彫りになっただけで恥ずかしい思いだ。これでも筋力には自信があったんだけどな……。

「良かったじゃない! もっと大切にしなさいよ!」

 ルイーゼがすごい剣幕で言う。たしかにルイーゼの言うことは正論だ。だけど、それは普通の剣ならの話。僕はネタバラシをするために口を開くのだった。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

処理中です...