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第二章
072 リビングアーマー
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僕たち『融けない六華』のメンバーが固唾を飲んで見守る中、カツカツと高い靴音を響かせて、ルイーゼがついに城門をくぐる。ルイーゼの足取りは大きく、躊躇が無い。見てるこっちがヒヤヒヤする。
「……ッ!!」
不意になにかを察知したルイーゼが、大きくバックステップをした。その瞬間―――。
ガガァアン!!
硬質な物同士が高速で叩きつけられたような大きな音を響かせて、なにかが先程までルイーゼが居た虚空を刈り取った。剣だ。まさにグレートソードと呼ぶべき大きく幅広の黒い大剣が2本、左右からまるでギロチンのように降ってきた。これこそが、この城門の所見殺しの罠だ。ルイーゼはよく回避してくれた。
初撃が外れたのを理解したのか、振り下ろされた2本の大剣がゆっくりと持ち上がっていく。そして、城門の影からぬっと姿を現したのは、2体の巨大な全身鎧だ。ルイーゼの3倍はあろうかという大きさ。影に溶け込むような全身真っ黒な全身鎧の胸には、大きな赤い宝石が見え、宝石から全身にクモの巣のように赤いラインが走り、鼓動のように脈打ち光っている。
リビングアーマー。この内壁の城門の守護者にして、レベル7ダンジョン『万魔の巨城』最初のモンスター。僕たちの実力がレベル7ダンジョンに通じるかどうか試練。その幕が切って落とされた。
「こっちよ!」
ルイーゼが更にバックステップして距離を取り、剣とバックラーを打ち鳴らして挑発する。それに釣られたのか、2体のリビングアーマーは漆黒の大剣を肩に担いで高速でルイーゼに迫る。その見た目とは裏腹に、とても俊敏な動きだ。再び振り下ろされた大剣を、ルイーゼはひらりとバックステップで躱す。ただのバックステップじゃない。緩急を織り交ぜて的を絞らせないように工夫されたバックステップだ。
ガガギャアン!!
リビングアーマーの2本の大剣が、石畳に叩きつけられ、激しい火花と轟音を響かせた。リビングアーマーは大剣を振り抜き隙を晒している。チャンスだ!
「反転攻勢! ハルトたちは右を!」
「了解しました!」
「んっ……!」
僕の合図に飛び出したのは、ラインハルトとリリーだ。ラインハルトが黒の大剣を右肩に担いで、リリーがナックルダスターを手に疾走する。ラインハルトの持つ黒い大剣が、じんわりと赤く染まっていくのが見えた。使うのか! 切り札を!
ラインハルトの黒い大剣。あれは僕がラインハルトに贈った宝具の1つだ。その名も焦がれる刃ビッグトーチ。常に刀身が淡く光っていて光源になる意外と便利な大剣だ。しかし、ビッグトーチの力はそれだけじゃない。その力を極限まで開放すると、刀身が超高温になり赤く輝く。赤く輝く刀身は、切れ味が大きく上がり、全てを焼き斬る……!
距離を詰めるラインハルトとリリーの姿に2体のリビングアーマーが反応した。振り下ろしたはずの2本の漆黒の大剣が跳ね上がり、横薙ぎにラインハルトとリリーに襲いかかる。
「あんたの相手はあたしよッ!」
今にもリリーに襲いかからんとしていた左のリビングアーマーの大剣が、突然弾かれたようにその軌道を真上へと変えた。ルイーゼだ。ルイーゼがバックラーでリビングアーマーの大剣を弾き上げたのだ。
しかし、迫るリビングアーマーの大剣はもう1本ある。迫る漆黒の大剣を前に、ラインハルトとリリーは、むしろ更に加速した。そして―――。
ブォウ!
リビングアーマーの振り抜かれた大剣の鋭く重い風切り音がここまで聞こえてきた。ラインハルトとリリーは……無事だ。ラインハルトは石畳の上に転がるように身を投げ出し、リリーはその小さな体躯を活かしてスライディングで大剣を躱していた。
その漆黒の大剣を振りきったリビングアーマーはもう死に体だ。ぐるりと前転してリビングアーマーの一撃を躱したラインハルトが、跳ね起きた勢いそのままリビングアーマーに斬りかかる。
「ぜああっ!!」
ラインハルトの体が、今度は横に回転しながら、その真っ赤に染まった灼熱の大剣を振るう。ラインハルトのビッグトーチは、リビングアーマーの左脚に直撃し、しかし、音も立てずに振り抜かれた。リビングアーマーの左脚は、その断面を真っ赤して切断された。鎧が融解したのだ。ラインハルトは、音も立てずに、まるで熱したナイフでバターを切るように、いともたやすくリビングアーマーの左脚両断してみせた。
突然左脚を失ったリビングアーマーが更に体勢を崩す。振り抜いた大剣の勢いに振り回されるように体が前に倒れてくる。そこに待ち構えていたのはリリーだ。その左右の脚が開かれ沈み込み、体が大きく右にひねられ、下げられた右腕に力を溜めているのが分かる。
「……ッ!」
リリーの体がリビングアーマーと衝突する瞬間、その体が弾かれたように動き出す。リリーの足から腰へ、腰から胸へ、胸から腕へ、腕から拳へ、回転と力が高速で伝えられていく。生み出されるのは必殺の拳。アッパーカット!
ピシッ!
なにか硬質な物が砕けるような音と共に、リリーを圧し潰そうとしていたリビングアーマーの重厚な鎧が白い煙となって消えた。リリーの拳がリビングアーマーのコアである胸の赤い宝石を砕いたのだ。
振り抜かれたリリーの拳は天を突き、その後ろ姿は女神のように凛々しく美しかった。
「……ッ!!」
不意になにかを察知したルイーゼが、大きくバックステップをした。その瞬間―――。
ガガァアン!!
硬質な物同士が高速で叩きつけられたような大きな音を響かせて、なにかが先程までルイーゼが居た虚空を刈り取った。剣だ。まさにグレートソードと呼ぶべき大きく幅広の黒い大剣が2本、左右からまるでギロチンのように降ってきた。これこそが、この城門の所見殺しの罠だ。ルイーゼはよく回避してくれた。
初撃が外れたのを理解したのか、振り下ろされた2本の大剣がゆっくりと持ち上がっていく。そして、城門の影からぬっと姿を現したのは、2体の巨大な全身鎧だ。ルイーゼの3倍はあろうかという大きさ。影に溶け込むような全身真っ黒な全身鎧の胸には、大きな赤い宝石が見え、宝石から全身にクモの巣のように赤いラインが走り、鼓動のように脈打ち光っている。
リビングアーマー。この内壁の城門の守護者にして、レベル7ダンジョン『万魔の巨城』最初のモンスター。僕たちの実力がレベル7ダンジョンに通じるかどうか試練。その幕が切って落とされた。
「こっちよ!」
ルイーゼが更にバックステップして距離を取り、剣とバックラーを打ち鳴らして挑発する。それに釣られたのか、2体のリビングアーマーは漆黒の大剣を肩に担いで高速でルイーゼに迫る。その見た目とは裏腹に、とても俊敏な動きだ。再び振り下ろされた大剣を、ルイーゼはひらりとバックステップで躱す。ただのバックステップじゃない。緩急を織り交ぜて的を絞らせないように工夫されたバックステップだ。
ガガギャアン!!
リビングアーマーの2本の大剣が、石畳に叩きつけられ、激しい火花と轟音を響かせた。リビングアーマーは大剣を振り抜き隙を晒している。チャンスだ!
「反転攻勢! ハルトたちは右を!」
「了解しました!」
「んっ……!」
僕の合図に飛び出したのは、ラインハルトとリリーだ。ラインハルトが黒の大剣を右肩に担いで、リリーがナックルダスターを手に疾走する。ラインハルトの持つ黒い大剣が、じんわりと赤く染まっていくのが見えた。使うのか! 切り札を!
ラインハルトの黒い大剣。あれは僕がラインハルトに贈った宝具の1つだ。その名も焦がれる刃ビッグトーチ。常に刀身が淡く光っていて光源になる意外と便利な大剣だ。しかし、ビッグトーチの力はそれだけじゃない。その力を極限まで開放すると、刀身が超高温になり赤く輝く。赤く輝く刀身は、切れ味が大きく上がり、全てを焼き斬る……!
距離を詰めるラインハルトとリリーの姿に2体のリビングアーマーが反応した。振り下ろしたはずの2本の漆黒の大剣が跳ね上がり、横薙ぎにラインハルトとリリーに襲いかかる。
「あんたの相手はあたしよッ!」
今にもリリーに襲いかからんとしていた左のリビングアーマーの大剣が、突然弾かれたようにその軌道を真上へと変えた。ルイーゼだ。ルイーゼがバックラーでリビングアーマーの大剣を弾き上げたのだ。
しかし、迫るリビングアーマーの大剣はもう1本ある。迫る漆黒の大剣を前に、ラインハルトとリリーは、むしろ更に加速した。そして―――。
ブォウ!
リビングアーマーの振り抜かれた大剣の鋭く重い風切り音がここまで聞こえてきた。ラインハルトとリリーは……無事だ。ラインハルトは石畳の上に転がるように身を投げ出し、リリーはその小さな体躯を活かしてスライディングで大剣を躱していた。
その漆黒の大剣を振りきったリビングアーマーはもう死に体だ。ぐるりと前転してリビングアーマーの一撃を躱したラインハルトが、跳ね起きた勢いそのままリビングアーマーに斬りかかる。
「ぜああっ!!」
ラインハルトの体が、今度は横に回転しながら、その真っ赤に染まった灼熱の大剣を振るう。ラインハルトのビッグトーチは、リビングアーマーの左脚に直撃し、しかし、音も立てずに振り抜かれた。リビングアーマーの左脚は、その断面を真っ赤して切断された。鎧が融解したのだ。ラインハルトは、音も立てずに、まるで熱したナイフでバターを切るように、いともたやすくリビングアーマーの左脚両断してみせた。
突然左脚を失ったリビングアーマーが更に体勢を崩す。振り抜いた大剣の勢いに振り回されるように体が前に倒れてくる。そこに待ち構えていたのはリリーだ。その左右の脚が開かれ沈み込み、体が大きく右にひねられ、下げられた右腕に力を溜めているのが分かる。
「……ッ!」
リリーの体がリビングアーマーと衝突する瞬間、その体が弾かれたように動き出す。リリーの足から腰へ、腰から胸へ、胸から腕へ、腕から拳へ、回転と力が高速で伝えられていく。生み出されるのは必殺の拳。アッパーカット!
ピシッ!
なにか硬質な物が砕けるような音と共に、リリーを圧し潰そうとしていたリビングアーマーの重厚な鎧が白い煙となって消えた。リリーの拳がリビングアーマーのコアである胸の赤い宝石を砕いたのだ。
振り抜かれたリリーの拳は天を突き、その後ろ姿は女神のように凛々しく美しかった。
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