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第二章
075 リビングアーマー④
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「ヒール!」
ルイーゼが素早く唱えると、その体が淡い緑の光に包まれる。【勇者】のみにその使用を許された回復の奇跡だ。ルイーゼのねじまがってしまっていた左腕が、元の姿を取り戻す。知ってはいたけど、その回復力には舌を巻くほどだ。
ボゥンッ!
お腹に響くような重低音が響き渡る。僕の操るへヴィークロスボウの発射音だ。撃ち出されたボルトは、目に見えないほど高速でリビングアーマーへと飛翔し、ガキュリ! とその脇腹を穿つ。
「くそがっ!」
不満の声が漏れるのを禁じ得なかった。まただ。またリビングアーマーが胴体部分の鎧を回転させ、胸の中心にある赤い宝石、コアをボルトの一撃から逃がしたのだ。
ダメだな。リビングアーマーの予想外の動きに翻弄されてしまっている。
リビングアーマーは、いまだにイザベルの放ったフォイアボルトの炎を炙られているけど、平然としている。本体が金属の鎧だから熱にも強いのだろう。炎を纏うその姿は、まるで煉獄の悪魔のようだ。
撃てば予想外の動きで避ける。その身を燃やしてもケロリとしている。僕とイザベルの後衛組には、相性の悪い相手だ。
「最悪だ……」
僕はへヴィークロスボウの硬い巻き上げ機を回して弦を巻き上げながら悪態をつく。へヴィークロスボウの数は4つ。もう4射してしまい、僕にはもう攻撃手段が無い。早く巻き上げないと!
焦ってしまっているのが自分でも分かる。こういう時こそ落ち着くべきだ。
「ふー……」
僕はへヴィークロスボウの巻き上げ作業をしながら、熱い息を吐き出し、戦況を見守る。
キュィィィィィイイイイイイイイン!!
いまだに炎を背負うリビングアーマーの腕の激しい回転音が響く。リビングアーマーの動きは、先程とは明らかに違っていた。大振りなどはせず、細かな動きでルイーゼを高速回転する大剣で追いかける。
高速で回転する大剣は、ただ触れるだけでも危険な最悪の凶器だ。大げさに振りかぶる必要なんて無い威力を秘めている。ただ当てさえすればいい。そのことをリビングアーマーも理解しているのだろう。コンパクトな動きで、ルイーゼに触れようと大剣を走らせる。
ルイーゼは距離に余裕を持たせてリビングアーマーの回転大剣をスラリと躱していく。その姿は、まるで妖精が踊っているかのようだ。
「もういい、かしら?」
ルイーゼから疑問の声が飛ぶ。もうリビングアーマーを倒してしまってもいいのかという意味だろう。僕はルイーゼにリビングアーマーの討伐を禁止していた。その理由は2つ。ルイーゼの耐久力がレベル7ダンジョンでも通じるかのテストと、僕たち勇者ではない後衛組が戦力として役立つのか確かめるためだ。
おそらく、ルイーゼならこの厄介なリビングアーマーの討伐も簡単なはずだ。それこそ、ラインハルトとリリーが見せたように、一瞬で片付けてしまえるだろう。でも、それでは本当に勇者の力頼りになってしまう。
なんとかして勇者ではないイザベルや僕、マルギットの実力もレベル7ダンジョンでも通用すると証明したかったけど、それも難しいみたいだ。リビングアーマーは、イザベルの精霊魔法を喰らっても平然としているし、僕のへヴィークロスボウも避けてしまう。正直、打つ手無しだ。
このままルイーゼに任せてしまおうか……。
ルイーゼとラインハルトとリリー。この3人の【勇者】としての実力が通じると分かっただけでも収穫といえば収穫だろう。
僕は、ようやく弦を巻き上げ終えたヘヴィークロスボウにボルトを装填し、構える。狙うはリビングアーマーの胸に輝く赤い宝石だ。よくよく狙いをつける。これを外したら、またしばらくなにもできなくなってしまう。ルイーゼが討伐の催促をしている今、これがラストチャンスになるはずだ。
「神よ……」
ブォンッ!
へヴィークロスボウの発射音が響く。これで決まってくれればいい。しかし、そんな淡い期待は文字通り叩き落とされることになる。
ガキィイイン!
耳障りな高い金属音を立てて、へヴィークロスボウのボルトがリビングアーマーの回転大剣に叩き落とされた。もう避ける必要すら無い。そんなリビングアーマーの意思すら感じられる行動だ。
「そろそろ頃合いかしら……」
赤々と燃え盛るリビングアーマーを見つめながらイザベルが零す。イザベルの言うように、そろそろ潮時なのかもしれない。僕はルイーゼにリビングアーマーの撃破許可を出そうと口を開く。
「ル……」
「ツヴァイン! 放水よ!」
僕の言葉を遮って、イザベルが水の精霊に命を下した。
放水? リビングアーマーに水をかけるの?
リビングアーマーにとっては微々たるダメージだったかもしれないけど、せっかく赤々と輝くまで燃やしたのだ。イザベルお得意のフォイアボルトで更に燃やして、ダメージを加速させた方が良いと思うんだけど……。
きっと、イザベルはもうリビングアーマーの討伐を諦めちゃったんだろう。だからリビングアーマーの纏う炎を消火して、ルイーゼが火傷を負わないようにしているのかな?
ルイーゼが素早く唱えると、その体が淡い緑の光に包まれる。【勇者】のみにその使用を許された回復の奇跡だ。ルイーゼのねじまがってしまっていた左腕が、元の姿を取り戻す。知ってはいたけど、その回復力には舌を巻くほどだ。
ボゥンッ!
お腹に響くような重低音が響き渡る。僕の操るへヴィークロスボウの発射音だ。撃ち出されたボルトは、目に見えないほど高速でリビングアーマーへと飛翔し、ガキュリ! とその脇腹を穿つ。
「くそがっ!」
不満の声が漏れるのを禁じ得なかった。まただ。またリビングアーマーが胴体部分の鎧を回転させ、胸の中心にある赤い宝石、コアをボルトの一撃から逃がしたのだ。
ダメだな。リビングアーマーの予想外の動きに翻弄されてしまっている。
リビングアーマーは、いまだにイザベルの放ったフォイアボルトの炎を炙られているけど、平然としている。本体が金属の鎧だから熱にも強いのだろう。炎を纏うその姿は、まるで煉獄の悪魔のようだ。
撃てば予想外の動きで避ける。その身を燃やしてもケロリとしている。僕とイザベルの後衛組には、相性の悪い相手だ。
「最悪だ……」
僕はへヴィークロスボウの硬い巻き上げ機を回して弦を巻き上げながら悪態をつく。へヴィークロスボウの数は4つ。もう4射してしまい、僕にはもう攻撃手段が無い。早く巻き上げないと!
焦ってしまっているのが自分でも分かる。こういう時こそ落ち着くべきだ。
「ふー……」
僕はへヴィークロスボウの巻き上げ作業をしながら、熱い息を吐き出し、戦況を見守る。
キュィィィィィイイイイイイイイン!!
いまだに炎を背負うリビングアーマーの腕の激しい回転音が響く。リビングアーマーの動きは、先程とは明らかに違っていた。大振りなどはせず、細かな動きでルイーゼを高速回転する大剣で追いかける。
高速で回転する大剣は、ただ触れるだけでも危険な最悪の凶器だ。大げさに振りかぶる必要なんて無い威力を秘めている。ただ当てさえすればいい。そのことをリビングアーマーも理解しているのだろう。コンパクトな動きで、ルイーゼに触れようと大剣を走らせる。
ルイーゼは距離に余裕を持たせてリビングアーマーの回転大剣をスラリと躱していく。その姿は、まるで妖精が踊っているかのようだ。
「もういい、かしら?」
ルイーゼから疑問の声が飛ぶ。もうリビングアーマーを倒してしまってもいいのかという意味だろう。僕はルイーゼにリビングアーマーの討伐を禁止していた。その理由は2つ。ルイーゼの耐久力がレベル7ダンジョンでも通じるかのテストと、僕たち勇者ではない後衛組が戦力として役立つのか確かめるためだ。
おそらく、ルイーゼならこの厄介なリビングアーマーの討伐も簡単なはずだ。それこそ、ラインハルトとリリーが見せたように、一瞬で片付けてしまえるだろう。でも、それでは本当に勇者の力頼りになってしまう。
なんとかして勇者ではないイザベルや僕、マルギットの実力もレベル7ダンジョンでも通用すると証明したかったけど、それも難しいみたいだ。リビングアーマーは、イザベルの精霊魔法を喰らっても平然としているし、僕のへヴィークロスボウも避けてしまう。正直、打つ手無しだ。
このままルイーゼに任せてしまおうか……。
ルイーゼとラインハルトとリリー。この3人の【勇者】としての実力が通じると分かっただけでも収穫といえば収穫だろう。
僕は、ようやく弦を巻き上げ終えたヘヴィークロスボウにボルトを装填し、構える。狙うはリビングアーマーの胸に輝く赤い宝石だ。よくよく狙いをつける。これを外したら、またしばらくなにもできなくなってしまう。ルイーゼが討伐の催促をしている今、これがラストチャンスになるはずだ。
「神よ……」
ブォンッ!
へヴィークロスボウの発射音が響く。これで決まってくれればいい。しかし、そんな淡い期待は文字通り叩き落とされることになる。
ガキィイイン!
耳障りな高い金属音を立てて、へヴィークロスボウのボルトがリビングアーマーの回転大剣に叩き落とされた。もう避ける必要すら無い。そんなリビングアーマーの意思すら感じられる行動だ。
「そろそろ頃合いかしら……」
赤々と燃え盛るリビングアーマーを見つめながらイザベルが零す。イザベルの言うように、そろそろ潮時なのかもしれない。僕はルイーゼにリビングアーマーの撃破許可を出そうと口を開く。
「ル……」
「ツヴァイン! 放水よ!」
僕の言葉を遮って、イザベルが水の精霊に命を下した。
放水? リビングアーマーに水をかけるの?
リビングアーマーにとっては微々たるダメージだったかもしれないけど、せっかく赤々と輝くまで燃やしたのだ。イザベルお得意のフォイアボルトで更に燃やして、ダメージを加速させた方が良いと思うんだけど……。
きっと、イザベルはもうリビングアーマーの討伐を諦めちゃったんだろう。だからリビングアーマーの纏う炎を消火して、ルイーゼが火傷を負わないようにしているのかな?
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