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018 ヴァネッサ
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レプリケーターは、オレにも原理はよくわからないが、アイテムを生成してくれる機械だ。各地の先史文明の遺跡で見つかり、先史文明のコインを触媒に望むアイテムを作ってくれる。
作れるアイテムは、ゲームで登場するすべてのアイテムだ。レプリケーターを使えば、世界に一つしかないアイテムも複製できる。
その中でもオレが欲しいのは、レプリケーターがないと作れない失われた武器シリーズだ。神話に登場したり、語り継がれるべき神話すらも失った強力な武器たちである。
「うお!?」
先史文明のコインを入れ終わると、オレの目の前の空間にブオンッと半透明のディスプレイが現れた。そこに書かれているのは、レプリケーターで作り出せるアイテムの一覧のようだ。
「うーん……。アイギスか、アロンダイトか、迷うなぁ……」
どちらも欲しいが、コインの枚数的にどちらかしか手に入らない。
まぁ、口では迷うことを言いつつ、どちらを選ぶかは決まっているんだけどね。
「よし、アイギスにしよう」
オレはアイギスを表示を押すと、ブイーンとレプリケーターが重低音を出して振動する。たぶん、アイギスを作っているのだろう。
オレはわくわくしながらアイギスの誕生を待ちわびていた。
アイギス。前世では神話で語られた神の盾だ。その性能は凄まじいの一言に尽きる。作中最強の盾だった。
その最強の盾をこんな序盤で使えるなんて、もう最高だね!
プシューッと音を立てて、レプリケーターの挙動が止まる。そして、ウィーンとレプリケーターの前方部分が開くと、そこには銀色で幅広の腕輪があった。
これが作中最強の盾、アイギスの待機形態か。フレーバーテキストを読んで知ってはいたが、実際に目にするのは初めてだ。心臓がドキドキとうるさい。
「ゴクリ……ッ」
オレは震える手でアイギスを手に取った。ひんやりとした硬い触感。アルミでできているのかと思うくらい意外にも軽かった。
「これが、アイギス……!」
さっそく左腕に着ける。いつの間にかオレの腕のサイズまで計測されていたのか、アイギスはぴったりとフィットした。
「うひょー! かっけー! この細かな彫刻とか、シンプルながら美しいね! さすが、アイギスだ!」
ひんやりと腕に感じるアイギスの存在感にオレのテンションはバカ上がりだ!
「でも、アイギスって盾だったよな? どうやって使うんだ? うおっ!?」
アイギスを使おうと思った瞬間、オレの持っている盾を覆うようにアイギスが展開した。これがアイギスの盾形態か!
「パッシブじゃなくて発動式なのか。腕輪は着いたままだな。それにしても軽い。いい感じだ」
戻れと念じると、展開されていたアイギスの盾部分が消える。慣れるまでに時間がかかるかもしれないが、それさえもなんだか楽しく思えてきた。
「オレ、アイギスを手に入れたんだ……!」
しみじみと感動が押し寄せてくる。胸がキューッと締め付けられるように苦しくなった。
だが、今回の冒険は作中最強装備であるアイギスさえもおまけだ。本命は別の物なのである。
オレはアイギスの力をもっと試したい欲求を振り切って、もう一度レプリケーターを起動させた。
◇
最初の大きな空間へと戻ってきた。経年劣化によって朽ちた物が散乱するまるで廃墟みたいな所だ。部屋の中央には大きな物体が鎮座しており、部屋のそこかしこには赤黒いスライムが徘徊しているのが見えた。
ここからでも見える。あの中央に鎮座する鋭角的な物体。あれこそがオレの真に求めていたものだ。
オレはスライムたちを避けるようにして中央の物体に近づいていく。
すると、前回近づいた時は何も起きなかったのに、今回は違った。まるで中央の物体がオレを迎え入れるようにタラップが伸びてきたのだ。
うんうん。ゲームの通りだね。
オレはタラップを登ると、中央の銀色の物体の中に入った。中は意外にも明るく、整然としていた。塵一つ落ちていない白色の通路だ。荒れ果てた外とのギャップに眩暈がしそうだね。
『ドラゴン級航空戦艦ヴァネッサへようこそ。お待ちしておりました』
突如響いたのは、透き通った女性の声だった。
『あなたのお名前を知りたく存じます』
「オレはアベル。アベル・ヴィアラットだ」
『アベル・ヴィアラット様を艦長として登録いたしました』
「よっしゃ!」
できることは知っていた。だが、本当に自分が航空戦艦ヴァネッサの所有者になれるとはな。
ヴァネッサは先史文明の遺産、アーティファクトだ。航空戦艦の名の通り、空を飛んで移動することができる。ゲームの後半で主人公たちが手に入れる交通手段、飛空艇でも空を飛べるのだが、ヴァネッサはそれよりも早く手に入れることができるのだ。
まぁ、ヴァネッサを手に入れるためには、レプリケーターを使って自分の身分を『王族』にする必要がある。
とはいっても、この王族の身分は先史文明の中だけで通用するものだけどね。実際にオレがこの国の王族になったわけじゃない。
設定では、ヴァネッサは王族のプライベートジェットのような存在なのだ。起動するには、どうしても王族になる必要があった。
そのためにレプリケーターで作る武器をアイギスだけに我慢しなくちゃいけなかったが、オレは武器よりもヴァネッサを選択したのだ。
この主な移動手段が馬の世界で航空戦艦なんて場違い甚だしいね。だが、そのメリットは計り知れない。
作れるアイテムは、ゲームで登場するすべてのアイテムだ。レプリケーターを使えば、世界に一つしかないアイテムも複製できる。
その中でもオレが欲しいのは、レプリケーターがないと作れない失われた武器シリーズだ。神話に登場したり、語り継がれるべき神話すらも失った強力な武器たちである。
「うお!?」
先史文明のコインを入れ終わると、オレの目の前の空間にブオンッと半透明のディスプレイが現れた。そこに書かれているのは、レプリケーターで作り出せるアイテムの一覧のようだ。
「うーん……。アイギスか、アロンダイトか、迷うなぁ……」
どちらも欲しいが、コインの枚数的にどちらかしか手に入らない。
まぁ、口では迷うことを言いつつ、どちらを選ぶかは決まっているんだけどね。
「よし、アイギスにしよう」
オレはアイギスを表示を押すと、ブイーンとレプリケーターが重低音を出して振動する。たぶん、アイギスを作っているのだろう。
オレはわくわくしながらアイギスの誕生を待ちわびていた。
アイギス。前世では神話で語られた神の盾だ。その性能は凄まじいの一言に尽きる。作中最強の盾だった。
その最強の盾をこんな序盤で使えるなんて、もう最高だね!
プシューッと音を立てて、レプリケーターの挙動が止まる。そして、ウィーンとレプリケーターの前方部分が開くと、そこには銀色で幅広の腕輪があった。
これが作中最強の盾、アイギスの待機形態か。フレーバーテキストを読んで知ってはいたが、実際に目にするのは初めてだ。心臓がドキドキとうるさい。
「ゴクリ……ッ」
オレは震える手でアイギスを手に取った。ひんやりとした硬い触感。アルミでできているのかと思うくらい意外にも軽かった。
「これが、アイギス……!」
さっそく左腕に着ける。いつの間にかオレの腕のサイズまで計測されていたのか、アイギスはぴったりとフィットした。
「うひょー! かっけー! この細かな彫刻とか、シンプルながら美しいね! さすが、アイギスだ!」
ひんやりと腕に感じるアイギスの存在感にオレのテンションはバカ上がりだ!
「でも、アイギスって盾だったよな? どうやって使うんだ? うおっ!?」
アイギスを使おうと思った瞬間、オレの持っている盾を覆うようにアイギスが展開した。これがアイギスの盾形態か!
「パッシブじゃなくて発動式なのか。腕輪は着いたままだな。それにしても軽い。いい感じだ」
戻れと念じると、展開されていたアイギスの盾部分が消える。慣れるまでに時間がかかるかもしれないが、それさえもなんだか楽しく思えてきた。
「オレ、アイギスを手に入れたんだ……!」
しみじみと感動が押し寄せてくる。胸がキューッと締め付けられるように苦しくなった。
だが、今回の冒険は作中最強装備であるアイギスさえもおまけだ。本命は別の物なのである。
オレはアイギスの力をもっと試したい欲求を振り切って、もう一度レプリケーターを起動させた。
◇
最初の大きな空間へと戻ってきた。経年劣化によって朽ちた物が散乱するまるで廃墟みたいな所だ。部屋の中央には大きな物体が鎮座しており、部屋のそこかしこには赤黒いスライムが徘徊しているのが見えた。
ここからでも見える。あの中央に鎮座する鋭角的な物体。あれこそがオレの真に求めていたものだ。
オレはスライムたちを避けるようにして中央の物体に近づいていく。
すると、前回近づいた時は何も起きなかったのに、今回は違った。まるで中央の物体がオレを迎え入れるようにタラップが伸びてきたのだ。
うんうん。ゲームの通りだね。
オレはタラップを登ると、中央の銀色の物体の中に入った。中は意外にも明るく、整然としていた。塵一つ落ちていない白色の通路だ。荒れ果てた外とのギャップに眩暈がしそうだね。
『ドラゴン級航空戦艦ヴァネッサへようこそ。お待ちしておりました』
突如響いたのは、透き通った女性の声だった。
『あなたのお名前を知りたく存じます』
「オレはアベル。アベル・ヴィアラットだ」
『アベル・ヴィアラット様を艦長として登録いたしました』
「よっしゃ!」
できることは知っていた。だが、本当に自分が航空戦艦ヴァネッサの所有者になれるとはな。
ヴァネッサは先史文明の遺産、アーティファクトだ。航空戦艦の名の通り、空を飛んで移動することができる。ゲームの後半で主人公たちが手に入れる交通手段、飛空艇でも空を飛べるのだが、ヴァネッサはそれよりも早く手に入れることができるのだ。
まぁ、ヴァネッサを手に入れるためには、レプリケーターを使って自分の身分を『王族』にする必要がある。
とはいっても、この王族の身分は先史文明の中だけで通用するものだけどね。実際にオレがこの国の王族になったわけじゃない。
設定では、ヴァネッサは王族のプライベートジェットのような存在なのだ。起動するには、どうしても王族になる必要があった。
そのためにレプリケーターで作る武器をアイギスだけに我慢しなくちゃいけなかったが、オレは武器よりもヴァネッサを選択したのだ。
この主な移動手段が馬の世界で航空戦艦なんて場違い甚だしいね。だが、そのメリットは計り知れない。
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