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(7)寝かしつけ係はお祈りする2
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「祈祷の時間に眠るとは、良い度胸だな」
「え、ちょっとなんですか! なにひとの夢にまたずかずかと入ってきてるんですか!」
意識を失った私に声をかけてきたのは、あの美形神官さまだった。まったく、夢を夢だと理解しているのってなんだか変な感じ。
「お前が俺の仕事場にずかずか乗り込んでくるからだろうが!」
「だって神官さまに聞いたら、どうぞどうぞぜひ参加してくださいって言われましたもん」
「だからあのじじいたちの思惑通りに動くんじゃない」
もう神子さまもこの美形神官も、すぐに他の神官さまたちをじじいって呼ぶんだから。まったく口の悪い兄弟だこと。まあ今は言葉遣いは置いておくとして、ちょうどいい機会だし神子さまのことを確認しちゃおう。
「あの前から気になっていたんですけれど、儀式の最中に神子さまの姿が見えなくなるのはどうしてですか?」
「別に気にするほどのことじゃない」
「本当ですね? 生贄にされているとかじゃないんですよね? 私が祈りの間に来た時にはいるのに、途中で姿が見えなくなるのはおかしくありませんか?」
「残念だが、ここは火龍を祀る神殿だ。どこの邪神と勘違いしているのかは知らんが、生贄を捧げる習慣はない」
「それならいいんですけど。あんな幼気な美少年を好んで喰らうとか、とんでもない神さまもいるもんだと心配していたんですよ」
「一度お前とは、神殿のあり方について話し合ったほうがいいらしいな?」
「暴力反対です!」
「はっ、これはただの話し合いだ」
頬をぐにぐにと引っ張られて、抗議の声を上げるもさらりと流されてしまった。おのれ、この美形め。いくら大事な弟とどこの馬の骨かわからない私が仲良しだからって、当たりが強過ぎない?
この様子だとこの間の突然の求婚も、私のひととなりを確かめるための揺さぶりだったに違いないわ。今だって、求婚相手を前にしているとは思えない態度だし。
まったく。弟想いなところも、度を過ぎると嫌われるんだから気をつけたほうがいいよ。弟妹がたくさんいる私が言うんだから、間違いない!
「お前、また明後日な方向に思い込みを発揮しているな」
「いえいえ、滅相もございません」
「なんだその歯が浮くような適当な尊敬語は。丁寧を通り越して、慇懃無礼だぞ」
「とか言うのを真に受けると、馴れ馴れしいって切り捨てられるんですよね。あー、怖い怖い」
「お前というやつは」
のらりくらりと他愛もないおしゃべりを続けていく。あれ、このひと、祈祷の真っ最中なのにこんな無駄話をしていてもいいのかしら。
はたと気がつくと、お祈りはすっかり終わっていた。醜態をさらさずに済んだらしく、私は長椅子に横たわることなくお行儀よく座っている。やった、なんとか助かった!
「おい、目は覚めたか」
「神子さま! ご無事で何よりです!」
「何をもってして無事と言えるのか疑問だがな」
なぜかひどく仏頂面の神子さまが私の隣に立っていた。あの後、お祈りに合流したのかしら。私が気がつかなかっただけで、後ろの方にいたのかも?
それでも姿を見ることができたのが嬉しくて思わず笑顔で話しかけると、神子さまがやれやれと肩を落とした。どうもお疲れみたいね。
「当然だろう、俺が生贄にされるはずがあるか」
「あー、良かったです。結構心配したんですよ……ってあれ、どうして生贄についてのお話をご存知なんです?」
先程の話は、私と若手神官さまだけの秘密のはずなのに……。まさか、神子さまと変態神官さまって、夢の中の出来事を共有するくらい仲がいいの?
「……お前、めちゃくちゃ寝言がうるさかった」
ため息交じりに呟かれて、目覚めて速攻、卒倒したくなった。
「え、ちょっとなんですか! なにひとの夢にまたずかずかと入ってきてるんですか!」
意識を失った私に声をかけてきたのは、あの美形神官さまだった。まったく、夢を夢だと理解しているのってなんだか変な感じ。
「お前が俺の仕事場にずかずか乗り込んでくるからだろうが!」
「だって神官さまに聞いたら、どうぞどうぞぜひ参加してくださいって言われましたもん」
「だからあのじじいたちの思惑通りに動くんじゃない」
もう神子さまもこの美形神官も、すぐに他の神官さまたちをじじいって呼ぶんだから。まったく口の悪い兄弟だこと。まあ今は言葉遣いは置いておくとして、ちょうどいい機会だし神子さまのことを確認しちゃおう。
「あの前から気になっていたんですけれど、儀式の最中に神子さまの姿が見えなくなるのはどうしてですか?」
「別に気にするほどのことじゃない」
「本当ですね? 生贄にされているとかじゃないんですよね? 私が祈りの間に来た時にはいるのに、途中で姿が見えなくなるのはおかしくありませんか?」
「残念だが、ここは火龍を祀る神殿だ。どこの邪神と勘違いしているのかは知らんが、生贄を捧げる習慣はない」
「それならいいんですけど。あんな幼気な美少年を好んで喰らうとか、とんでもない神さまもいるもんだと心配していたんですよ」
「一度お前とは、神殿のあり方について話し合ったほうがいいらしいな?」
「暴力反対です!」
「はっ、これはただの話し合いだ」
頬をぐにぐにと引っ張られて、抗議の声を上げるもさらりと流されてしまった。おのれ、この美形め。いくら大事な弟とどこの馬の骨かわからない私が仲良しだからって、当たりが強過ぎない?
この様子だとこの間の突然の求婚も、私のひととなりを確かめるための揺さぶりだったに違いないわ。今だって、求婚相手を前にしているとは思えない態度だし。
まったく。弟想いなところも、度を過ぎると嫌われるんだから気をつけたほうがいいよ。弟妹がたくさんいる私が言うんだから、間違いない!
「お前、また明後日な方向に思い込みを発揮しているな」
「いえいえ、滅相もございません」
「なんだその歯が浮くような適当な尊敬語は。丁寧を通り越して、慇懃無礼だぞ」
「とか言うのを真に受けると、馴れ馴れしいって切り捨てられるんですよね。あー、怖い怖い」
「お前というやつは」
のらりくらりと他愛もないおしゃべりを続けていく。あれ、このひと、祈祷の真っ最中なのにこんな無駄話をしていてもいいのかしら。
はたと気がつくと、お祈りはすっかり終わっていた。醜態をさらさずに済んだらしく、私は長椅子に横たわることなくお行儀よく座っている。やった、なんとか助かった!
「おい、目は覚めたか」
「神子さま! ご無事で何よりです!」
「何をもってして無事と言えるのか疑問だがな」
なぜかひどく仏頂面の神子さまが私の隣に立っていた。あの後、お祈りに合流したのかしら。私が気がつかなかっただけで、後ろの方にいたのかも?
それでも姿を見ることができたのが嬉しくて思わず笑顔で話しかけると、神子さまがやれやれと肩を落とした。どうもお疲れみたいね。
「当然だろう、俺が生贄にされるはずがあるか」
「あー、良かったです。結構心配したんですよ……ってあれ、どうして生贄についてのお話をご存知なんです?」
先程の話は、私と若手神官さまだけの秘密のはずなのに……。まさか、神子さまと変態神官さまって、夢の中の出来事を共有するくらい仲がいいの?
「……お前、めちゃくちゃ寝言がうるさかった」
ため息交じりに呟かれて、目覚めて速攻、卒倒したくなった。
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