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(8)寝かしつけ係は昔話をする1

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 ここ最近はお天気があまり良くないせいか、神殿の中は昼でもひんやりとしている。夜ともなれば布団をすっぽりかぶってもおかしくないくらいだ。

「眠れない」

 そんな中、神子さまは今日も床の上でぐるぐる回っていた。何度も言っていますが、せっかくお風呂に入ったのに自ら雑巾になるのはやめてください。

「お布団に入ったら、一二三すやあですよ」
「だから、それはお前だけだと言っているだろう」

 呆れたようにこちらを見上げてる神子さまに、私も思わず苦笑した。削れば削るほど、結果的に増えるものってなあに? 答えは、子どもの体力だよ。

 神殿の広すぎる庭を一緒に駆け回った私は、きっと三日後に筋肉痛が来るんじゃないかな。

「ああ、楊梅やまもも酒が飲みたいなあ。山頂から切り出した氷と一緒に飲んだらよく眠れるだろうなあ。そこの飾り棚にある酒器を使って呑んだら最高だろうなあ」

 あの酒器は、確か我が家の曾祖父が神殿に奉納したものだったはず。なんてものをお渡ししているの!

「何を飲んだくれ親父みたいなことを言っているんです。砂糖漬けにした楊梅やまももの炭酸割りを出しましょうか?」
「そんな子どもの飲み物はいらん」
「だから神子さまは子どもなんですってば」

 桑の実に引き続き、今は楊梅やまももの季節だ。

 大人用はお酒に、子ども用は砂糖漬けにしたのだけれど、神子さまは大人用を味見したくて仕方がないみたい。まったくお酒の美味しさをうそぶいたのは、どの神官さまなのやら。

楊梅やまもも酒を飲むまで、俺は絶対に寝ないからな」

 やれやれ。一応最終手段として、「眠くなるまでいっそ寝ない」もあるけれど、もう少しあがきたいもの。

 となれば、やはりここは寝かしつけの定番、読み聞かせよね! 神官さまたちも、「寝物語」をなぜか超絶推奨していたし。

「一応聞きますけれど、按摩をやりましょうか? よく眠れますよ」
「女がみだりに男の肌に触れるんじゃない」
「いや、変な意味は全くありませんって。足裏を揉むと寝付きがよくなるという話なんですけどね。お嫌ならしょうがないですから、昔話でも聞いていてください」

 この辺りの出身の子どもたちなら、誰でも知っている物語だ。神子さまはご存じかな?

「昔話? それなら、按摩のほうがいいのか? いやでも」

 残念でしたー。もう昔話で決定ですよ。
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