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 おそらく誰も信じてくれないだろうが、私はこの国の第一王女だったりする。それがなぜこんな辺境で暮らしているかというと、義妹の身代わりで呪いを受けたからだ。

 今代の聖女は義妹のデボラただひとり。王家と神殿の繋がり強化のために、第二王女として迎えられたのけれど、これがなかなかどうしてわがままがすごい。まあ、あの子の立場を考えると頭ごなしに叱るわけにもいかないし、うちの両親も突き放せないんだろうけれど。

 それでもさすがに、国を守護する聖なる薔薇を盛大に切った結果、茨の呪いを発動させちゃうとは思わないよね。「だってキレイだったんだもん」じゃないよ。切るなよ、絶対に切るなよと言われているものを切ってしまう、それがデボラクオリティー。

 しかも私がかつてねだられて作った、お手製のお守り(材料:折り紙、状態:作成者が不器用なためボロボロ)をデボラが持っていたせいで、呪いが私に移っちゃうとかね……。いや、聖女が死ぬよりはいいんだろうけどさ。

 本来なら即死のところを、私付きのノアが絵本の眠り姫になぞらえて「長き眠り」に置き換えてくれたので、なんとかこうやって生きているというわけ。

 ちなみに呪いが解けるまで城で保護される予定が、デボラが私を見るたびに泣きわめいたために辺境まで運ばれちゃったのだとか。起きたら見知らぬ田舎だもん、びっくりしちゃうよ。デボラの癇癪、恐るべし。

 もちろん、起こしてくれるはずの白馬の王子さまはやってきませんでした。一応幼なじみの婚約者――隣国の第二王子――はいたんだけどねえ。なんでも、呪いにかかってぶっ倒れるような鈍臭くて年増の姉より、若くてぴちぴちの義妹の方がいいってうちの両親の前でほざいたらしいよ。けっ、バーカ、バーカ。

 それでどうやって目覚めたかと言うと、不明。そう、不明なのだ。その辺り、ノアは詳しく話してくれない。これは予想なんだけれど、たぶん自力なんじゃない? 一応第一王女だというのに、人気なさ過ぎか。婚約者どころか、王子さまじゃなくってもいいからさ、誰かちゅーのひとつくらい、試してくれよ。1回や2回、減るもんでもなし。はっ、まさか。

『もしかして、ドン引きするくらい大口開けてた?』
『いいえ』
『薄目が開いていた?』
『別に』
『寝相が悪すぎた?』
『特には』
『ま、まさかいびきが!』
『まあ気持ちよさそうに寝てはいましたが』
『じゃあ、どうして!』

 王子さまもいないのに目覚めてしまったとか、非常にいたたまれない。城の両親になんて報告すればいいのよ。王子さまのキスはなかったけど、自力で起きましたよ☆とか完全に不名誉だ。婚約者を失ったあげく行き遅れ決定とか、親不孝以外のなにものでもないのでは?

 城に帰れないとうち震える私にアフターフォローを申し出てくれたのもまたノアだ。完全にとばっちりだろうに文句を言うこともない、忠義者だよ、君は。そんなこんなで、ほとぼりがさめるまでと言いつつ、もう数ヶ月もここでのんびり暮らしている。……政務ほっぽりだしてるんだけど、大丈夫なのかな……。いやうん、考えないようにしておこう。
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